本誌では定期的にJA福島五連会長のインタビューを行い、本誌面に掲載している。その中で、東日本大震災・福島第一原発事故以降、歴代会長が異口同音に話していたのが「震災・原発事故前の農業産出額2330億円への早期回復を図ることが差し当たっての課題」ということだった。
福島県は国内では農業が盛んな地域といった認識を持たれているが、周知の通り、震災・原発事故によって大きなダメージを受けた。原発事故の避難指示区域に指定されたエリアでは営農ができなくなり、そのほかの地域でも、いわゆる風評被害に苦しめられた。
別表に農業産出額の推移をまとめた。震災前の2010年は2330億円だったが、2011年は1851億円に落ち込んだ。その後は、気候や水害・雪害などの影響で上下しているが、おおむね2000億円前後となっている。
農業産出額の推移
| 2010年 | 2330億円 |
| 2011年 | 1851億円 |
| 2012年 | 2021億円 |
| 2013年 | 2049億円 |
| 2014年 | 1837億円 |
| 2015年 | 1973億円 |
| 2016年 | 2077億円 |
| 2017年 | 2071億円 |
| 2018年 | 2113億円 |
| 2019年 | 2086億円 |
| 2020年 | 2116億円 |
| 2021年 | 1913億円 |
| 2022年 | 1970億円 |
| 2023年 | 2163億円 |
| 2024年 | 2874億円 |
原発事故の避難指示区域は解除が進み、かつての住民が戻って生活できるようにはなっているが、農業面でもその他の面でも復興はまだまだ道半ば。いわゆる風評被害については、年月の経過とともに薄れていったが、いまも完全に払拭されたわけではない。加えて、一度スーパーなどで「棚落ち」すると、再度取り扱ってもらうのは簡単ではない。スーパー側も、福島県産が売れないとなれば、別の産地からの仕入れルートを確立させてしまうからだ。
こういった事情から、震災・原発事故以降、福島県の農業産出額は落ち込み、「震災・原発事故前の農業産出額まで回復させること」が課題となっていた。JAグループ福島では3カ年の中期計画を定め、更新していっているが、現在の計画(2025年から2027年まで)でも、目標の最初に「農業産出額目標(2330億円)の早期達成」ということが掲げられている。
そんな中、昨年12月23日の東北農政局の発表よると、2024年の福島県の農業産出額は2874億円と、前年から711億円増となった。東北農政局のリリースでは「コメの価格が上昇したこと」などが要因として挙げられている。
長年、目標にしていた「震災・原発事故前の農業産出額2330億円まで回復させること」を一気に達成したことになる。とはいえ、これは意図していた形なのか。JAグループ福島に見解を聞くと、JA福島中央会の担当者は次のように話した。
「農業産出額が増えた要因としては、コメの価格上昇が挙げられ、それにより農家の方々の収入が増えたことは喜ばしいことです。ただ、浜通り(震災・原発事故の被災エリア)の復興が途上であることや、風評が完全に払拭されていないことなど、まだまだ課題はあります。数字上は目標を達成しましたが、課題をすべてクリアできたわけではないので、そこに向けて、JA大会で決議した計画に基づいて、引き続き各種取り組みを進めていく必要があると思っています」
数字上は目標達成だが、諸手を挙げて喜べる状況ではないということだろう。そう考えると、県内農業の復興に向けてはまだ「続き」があると言えよう。

























