【福島県】衆院選こぼれ話「嵐のあと」

【福島県】衆院選こぼれ話「嵐のあと」

思いがけず目撃した西山氏と馬場氏の抱擁

福島1区で9万9531票を獲得し、初当選を果たした西山尚利氏。支持者が集まる自民党県連で万歳を行い、マスコミ取材を受けた後、同市森合の事務所にも足を運び、支持者らに挨拶した。そこに訪れていたのが福島市長の馬場雄基氏だ。

昨年11月の福島市長選で、西山氏は同級生の子どもである馬場氏を全面的に応援し、歴代最年少市長の誕生を実現させた。その〝恩返し〟とばかりに、衆院選では馬場氏が西山氏を全面的に応援し、市内で開かれた演説会ではマイクを握って支持を訴えていた。

馬場氏は当選を決めた西山氏と抱擁して祝福し、エールを送った(写真)。「福島市出身の代議士が誕生するのは約17年ぶり。県都の歩みを前に進めていくため、私は市長の立場で頑張っていくので、一緒に盛り上げていきましょう」。

本誌記者は取材場所を勘違いして西山氏の事務所に向かったのだが、福島市長選、衆院選という2つの大勝負を制した2人の「絆の深さ」を思いがけず目の当たりにした。

賀詞交歓会で玄葉氏と根本氏が火花

年明け1月5日に開かれた郡山市の新春賀詞交歓会には、福島2区を地盤とする玄葉光一郎、根本拓両衆議院議員の姿があった。

大勢の出席者を前に、共に壇上で挨拶した両氏。最初に話したのは前回(2024年)の衆院選で選挙区で勝利した玄葉氏だった。

「安宅和人・慶応大学教授が都市という選択肢だけでなく、都市以上に価値を創造する小さな町、村、里山を無数につくろうという考えで書いた本『「風の谷」という希望』を読みました。それを読んで思い出したのが、ここにいる皆さんに長年お世話になった佐藤栄佐久の墓にある言葉です。彼の墓には『風の森 霧の谷 虹の大地 翠の谷』と刻まれています。これらの言葉は『うつくしま ふくしま』や『未来博』のテーマでもありました。この本を読んで風の谷を無数につくることが真の豊かさにつながる追求すべきテーマなんだと感じました」

続いて挨拶した根本氏は、前回の衆院選で玄葉氏に敗れ、比例復活で初当選を果たしている。

「昨年までここにいらっしゃった滝田康雄会頭(昨年10月に死去)がいないのは本当に悲しい。滝田会頭には『拓くん』と可愛がっていただきました。私が政治家になることを決意し、郡山に戻ってきた時も歓迎会を開いてくださるなど大変お世話になりました。今は滝田会頭の志を引き継いでいかなければいけないと強く思っているところです」

この時点で18日後に衆議院が解散されると想像していた人は、会場内にどれくらいいただろうか。

一方、常在戦場に身を置く両氏は今年中に衆院選が行われることを見越し、玄葉氏が元知事で岳父の佐藤氏、根本氏が前会頭の滝田氏(共に郡山市出身)を引き合いに出し、出席者の関心を引こうとしたわけ。期せずして、前哨戦が始まっていたことになる。

落選した玄葉氏「知事転身」の可能性は

福島2区で敗れ、比例復活もならなかった玄葉光一郎氏(中道改革連合)はどこへ向かうのか。

落選が決まった直後、玄葉氏は敗戦の弁で「政治家生活の一つの区切りにしたい」と発言。これを受け、各社は「政界引退」と報じたが、玄葉氏自身は「政界を引退する」とは一言も言っていない。

玄葉氏の今後を気にする人が多い象徴として挙げられるのが、本誌のホームページだ。本誌2023年8月号に「玄葉光一郎衆議院議員 空虚な知事転身説」という記事を掲載した。以前から囁かれていた玄葉氏の知事転身説が広まった背景を解説しつつ、本人に知事選立候補の可能性を尋ねたリポートだ。

同記事は無料で読めるので関心のある方は一読していただきたいが、実は衆院選が終わった直後からアクセスが集中し、2月12日現在、人気記事ランキングで第7位となっている。それまでランク外だったので大幅なジャンプアップだ。

とはいえ「衆院選に落選したので次は知事選」という見立ては安直すぎる。某選挙通が言う。

「根本拓氏に3万票以上離されて負けたわけだから、同じ年の知事選に出ても厳しいと思う。もちろん相手にもよるが、そもそも内堀雅雄知事が4期目を目指すかどうかも分からないので、転身説の真偽を考えること自体無意味ではないか」

玄葉氏は連続11回当選で、民主党政権時代には外務大臣など、落選前には衆議院副議長を務めていた。そんな輝かしい経歴を持つ玄葉氏が、今更辻立ちをしたり、必死に選挙区を回ったりするだろうか。40~50代ならともかく、現在61歳の玄葉氏がそれをする姿は正直想像しにくい。一方で、61歳という年齢は政界を完全引退するには早く感じられるため心機一転、知事選に立候補した方がいいと考える人が多いようだ。

「衆院選、知事選とも難しいなら2年後に改選を迎える自民党の星北斗参議院議員と勝負した方が政治の現場に返り咲く可能性は高いのではないか」(マスコミ関係者)

2028年の参院選も含め、玄葉氏の動向を注視したい。

1、3区に出没した荒井広幸氏の狙い

選挙期間中、懐かしい顔を見かけた。衆議院議員を3期、参議院議員を2期務め、故・安倍晋三元首相の盟友としても知られた田村市出身の荒井広幸氏(67)である。

今回の衆院選で、福島1区は新人の西山尚利氏、同3区は元職の上杉謙太郎氏(いずれも自民党)が当選したが、両氏は荒井氏の秘書を務めた経験がある。荒井氏は元秘書2人を応援するため両区に姿を見せ、有権者に支持を訴えたのだ。

「最近、見かけることがなかった荒井氏が急に現れたのは何か考えがあってのことではないか」とその思惑を推測するのは、荒井氏を昔から知る自民党のベテラン党員だ。

「この間、いろいろな選挙があっても姿を見ることがなかった荒井氏が急にやってきて西山氏と上杉氏を激励し、かつて世話になった各所にも挨拶していた。〝機を見るに敏〟の荒井氏のことだから、今秋に行われる知事選を意識しているのではないかと勘ぐってしまいます」(同)

荒井氏は、2016年の参院選で落選した後は東京都内に個人事務所を構え、政治家時代に築いたコネクションを生かしながら各種の相談事に乗っているという。

「本気で立候補するというより、知事選のタイミングで『そう言えば荒井広幸もいたな』と存在感を取り戻そうとしているのかもしれない。もちろん、その先には『荒井氏が本当にやりたいこと』が控えているんだと思う」(同)

荒井氏の存在を県内で確認できるのは、ラジオ福島で週末に放送されている番組「ちょっとブレイク」で声を拝聴するくらい(肩書きは意味不明の「マルチコーディネーター」と名乗っている)。荒井氏には今何をしているのか、県内の政治情勢をどう見ているのか、近々取材を申し込んでみたい。

金山屯氏と髙橋翔氏「タッグ結成」の背景

福島3区に立候補した金山屯氏は2025年1月の山形県知事選、同10月の宮城県知事選に続くチャレンジ。これまで選挙に十数回挑み、本誌も2010年4月号に「県南の首長選で大差の3連敗 金山屯氏が有権者に問いたかったこと」という記事を掲載したことがある。

そんな金山氏の選対本部長を務めたのが、これまた県内の選挙に立候補し続ける郡山市在住の経営者・髙橋翔氏(37)だった。直近では昨秋の福島市と二本松市の市長選で連敗している。

似たような選挙経歴を持つ金山氏と髙橋氏がタッグを組んだ背景に興味が湧き、選挙期間中の2月3日、白河市で両氏に話を聞いた。

きっかけは、金山氏が山形県知事選に立候補したことだった。

「マスコミから『山形県知事選に県外の男性が出馬する話が出ているが、髙橋さんですか』という問い合わせがありました。『私ではない』と答えつつ、誰が出るのか気になって調べたら金山さんだということが分かった」(髙橋氏)

両氏は2018年の福島県知事選に立候補しているが、面識はなかった。金山氏にシンパシーを感じた髙橋氏は山形県知事選で金山氏を応援することを決めた。しかし、

「いろいろあって、こいつとは一緒にやりたくないと思って途中でクビにしたんだ」(金山氏)

それでも、宮城県知事選では再び髙橋氏が金山氏を応援。金山氏いわく「正直手ごたえはあった」が、結果は3663票(得票率0・4%)で5人中最下位だった。

「それなりの資金を(髙橋氏に)払ってあの結果。正直、こいつには文句を言いたいよね」と口を尖らす金山氏の横で、髙橋氏は「そこはビジネスですから。でも福島県内の某代理店よりはかなり低料金でやっていますよ」と笑った。

なんだかんだと言いながらみたびタッグを組んだ両氏。金山氏は「選挙に出ないと伝えられないことがたくさんある」と言い、髙橋氏も「高齢の金山さんは昨日やったことも忘れている。そういう金山さんの思いや行動を記録に残すのが私の仕事。ウェブ上なら永遠に誰かの目に触れますから」とその意義を説く。

知事選と衆院選の供託金は300万円だ。有効投票数に届かなかった金山氏は計900万円を没収されたが「若い頃から投資をやっていたので何とかなる」と意に介さない。首都機能移転、皇室典範改正、子どもたちが安心して暮らせる平和な国づくり――金山氏が一貫して訴える主義主張は相当な出費と覚悟が伴っていることを知ってほしい。

「棚ぼた当選」菅家氏の強運選挙遍歴

菅家一郎氏
菅家一郎氏

〝棚からぼた餅〟とは、まさにこういうことを言うのだろう。比例東北ブロックに単独立候補し、返り咲きを果たした自民党・元職の菅家一郎氏のことだ。

菅家氏は単独24位で名簿に登載されたが、通常、比例当選する可能性があるのは次の二つだ。①名簿に単独上位で搭載されるケース。②選挙区と比例ブロックに重複立候補し、選挙区では敗れても惜敗率で比例復活するケース。もし名簿下位の候補者が当選するとしたら、選挙区に挑んだ候補者が軒並み勝利し、比例復活枠が使われなかったことで名簿下位にお鉢が回ってきた時だ。

今回の衆院選は、まさにそうした出来事が起きた。高市内閣の高い人気をバックに自民党の候補者が各地の選挙区で勝利。比例復活した人はほとんどいなかった。獲得議席が名簿に載せた候補者を上回る「名簿不足」が発生し、計14議席を他党に譲ったほど。そのため、通常なら圏外の菅家氏も悠々当選できたのだ。

「運が良いだけ」と揶揄する人もいるが、政治家にとって運は極めて大事な要素。いくら優秀で力のある政治家でも、良運に巡り合わなければ総理大臣にはなれない。

その点で言うと、菅家氏は会津若松市議選(1回)、県議選(1回)、会津若松市長選(3回)とも負け知らずで、衆院選も4回連続当選を果たしている。前回(2024年)の衆院選は自民党公認で福島3区から立候補する予定だったが、裏金問題の影響で公示直前に公認が取り消され、立候補を辞退した。当時は敵前逃亡という批判が強かったが、落選ではないため、かろうじて「選挙不敗神話」は保たれていた。

思いがけず5回目の当選を飾った菅家氏の仕事ぶりが注目される。

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