2年前、県内の中学校で剣道を指導している現職教員が、全国大会参加時に保護者から徴収した遠征費(旅費)を流用していた疑惑が浮上している。一部保護者が問題視したものの大きな騒ぎにならず、現在に至っているが、このまま終わらせていいのだろうか。
領収書を調整して私的延泊費を精算
事の発端は、2024年9月に大阪で開催された「全日本都道府県対抗少年剣道優勝大会」(主催=大阪市、大阪府剣道連盟)だ。男女混成5人の都道府県代表チームが団体戦で競い合うというもの。福島県も、中学校体育連盟剣道部元役員の男性教員A氏、現役役員B氏の引率で、県内トップクラスの選手5人が2泊3日の旅程で参加することになった。
その際、選手らは1人当たり5万円の参加費を支払い、別途チームウェア代金1万円も集められた。保護者にとってかなりの負担だが、領収書などは渡されず、伝統的に収支報告も行われていなかったという。
一方で、同大会の小学生の部に参加経験のある選手の保護者は「1泊2日だったが、福島県剣道連盟からの補助金で賄えたのでほとんど旅費はかからなかった」と証言し、保護者らには「本当にこんなに旅費がかかるのか」という疑問が生じた。
大会終了後、保護者らはA氏らに収支決算報告を提出するよう要請。送付された資料では不十分だとの声が上がったことから、2025年1月に保護者会説明会が開催された。
本誌が入手した内部資料によると、選手らが払った旅費30万円以外に県剣道連盟からの助成金48万円が予算として入っており、合計78万円で交通費、宿泊費、飲食代、雑費などを支払ったことが報告された。
この際、中体連剣道部の役員2人以外に、女性教員C氏が同行し、その旅費が選手の保護者から集められた旅費で賄われていたことが伝えられた。また、選手らは大会終了後、大阪府で現地解散して保護者らと帰路に就いたが(これもすごい話だが)、A氏、B氏、C氏はそのまま大阪市に留まりホテルに宿泊した。さらに、1泊目、2泊目にはある選手の保護者D氏も同行していた。
当初、A氏らは「それらの費用は各自で支払った」と説明していたが、保護者がホテルに直接確認したところ、実際には旅行会社を通して、すべての料金が一括で支払われていたことが分かった。旅行会社にも確認したところ、教員が指示して、わざわざ領収書を分けて作成させていたという。つまり、予定外の宿泊費を選手に負担させていたことになる。
このほか、実際には特定の保護者や他県の教員を含む計11人で飲食していたにもかかわらず、選手5人分の夕食代として2万5000円を計上し、店側にその金額で領収書を書かせていたことも明らかになった。
このとき大人6人が酒を飲み、総額4、5万かかったとのこと。にもかかわらず、支払いの半分以上を子どもたちの飲食代として計上するのは正しかったのか。説明会で保護者から追及を受け、A氏らは不適切な処理だったことを自ら認めた。
2025年2月の保護者会では、市教委担当者の立ち会いのもと、引率教員が「前回の報告は撤回する」として、前回の収支報告から金額の変更があること、保護者に返金する金額が発生することが伝えられた。そのうえで「県剣道連盟への報告を優先し、それに領収書を合わせた」と説明した。領収書を調整していたことを認めたわけ。
剣道連盟の役員を退任
集めた旅費を自分たちの延泊費や飲食費に宛て、発覚しないように領収書を操作する。こうした一連の対応に保護者らは強い憤りを抱き、責任を追及し続けている。県教委や引率教員が勤める学校の教育委員会に厳正な処分を求め、警察や地元紙などのマスコミにも相談・情報提供した。だが、事件として取り上げられることはなかったという。
あらためて保護者らに取材を申し込んだところ、「直接お話しするのははばかられる」として断られたが、その活動を応援している県内の剣道関係者からさまざまな経緯を聞くことができた。
それによると、保護者らは県剣道連盟に①事件の公表、②3氏への処分、③保護者への返金を求めた。それに対し、県剣道連盟は「刑事処分などが科されたわけではなく、基準を満たしていないので公表する考えはない。返金に関しては当事者同士で対応してほしい。処分に関しては内部で話し合う」と回答したという。
その後の処分結果について、県剣道連盟に確認したところ、A氏、B氏は常任理事に就いていたが退任し、B氏は中体連剣道部の役員からも外れたようだ。同連盟に対する収支報告に関しては大きな問題はなかったため、これをもって幕引きを図りたい考えとみられる。なお、今後は再発防止に向けて、補助金・保護者からの会費等を扱う際は、収支報告と領収書提出を必須条件として再周知・徹底するルールを設けた。
A氏、B氏の勤務先学校がある福島市教委、いわき市教委はどう受け止めているのか確認したところ、「学校活動の中での出来事ではないが、公務員の信用失墜行為に当たる可能性もあるので聞き取りをして、県教委の職員課・義務教育課に事故報告書を上げた」(いわき市教委担当者)とのこと。ただ、県教委のホームページには今回の件に該当すると見られる懲戒処分該当案件は確認できなかった。
もっとも、複数の関係者によると、A氏は今回とは別件で、部活動で全国大会に出場する選手への激励金を自治体からもらっていたのに保護者に渡していなかったとして、昨年度、懲戒処分を受けたという。本誌取材では特定には至らなかったが、県教委HPには該当すると思われる懲戒処分の案件が掲載されていた。仮に今回のような遠征費不正流用が部活動で行われていたら、懲戒処分の対象になっていたかもしれない。
保護者らの主張をA氏、B氏はどのように受け止めているのか。それぞれの所属中学校にファクスを送り、取材協力を求めたが、期日までに回答は返ってこなかった。
「全日本都道府県対抗少年剣道優勝大会」に関しては、保護者に領収書も渡さず、収支報告も行わないのが慣例になっていたという。同様の問題が毎年起きていた可能性がある。こうした問題は、仮に不満があっても、保護者が直接クレームを入れると、試合の出場機会を左右しかねないため、表面化しづらい傾向がある。実際、2025年度の同大会は、福島県チームは参加を辞退することになり、結果的に選手は出場する機会を失ってしまった。
警察関係者や教員が多く、礼節を重んじるはずの剣道界で起きた今回の問題。関係者からは「収支報告をしないこと自体あり得ない」と厳しい声が上がる。教員などの関係者に対する保護者側の不信感はいまも消えておらず、それに付随して、A氏の独善的な指導体制などについてもさまざまな話が囁かれており、後味の悪さだけが残っている。
なお、育成年代の大会における旅費の扱いのずさんさに関しては、他の競技に関しても情報が寄せられており、取材がまとまり次第、リポートしていきたい。


























