JR福島駅東口の再開発事業は建設資材高騰などによって総事業費が膨れ上がり、「公費依存」の実態が浮き彫りとなっている。だが、問題は駅前再開発事業だけではない。現在、福島市ではごみ処理施設や学校再編など大型事業が同時並行で進められているうえ、今後40年で最大3600億円超という既存公共施設の莫大な更新費用が必要になってくる。
駅前再開発事業と重なり財政硬直化の懸念

JR福島駅東口周辺の未来を左右すると言っても過言ではない「福島駅東口地区第一種市街地再開発事業」。駅前約2㌶を対象に、老朽化した建物や低・未利用地を一体的に再整備し、新たな県都の玄関口を創出する大規模プロジェクトだ。商業施設やホテル、住宅に加え、ホールなどの公共施設を備えた複合施設を整備し、官民連携によってにぎわいや交流を生み出すことを目指している。
ただ、近年の建設資材や人件費の高騰を背景に事業費が大幅に膨らみ、計画は見直しを余儀なくされた。施設規模や整備内容、事業手法の再検討が進められるなど、当初想定したスケジュールにも影響が及んでいる。一方で、市は将来のまちづくりに不可欠な事業として位置付けを維持し、事業の実現に向けて計画の再構築を進めている。
そんな中、6月議会に当たっての市議会全員協議会で示された見直し案によると、事業の規模縮小を図りながらも、総事業費は712億円にまで膨れ上がることが分かった。関連資料によると、資金調達の内訳は補助金324億円、保留床処分金388億円、従前資産(権利変換)99億円で、総床価額は487億円となっている。
ちなみに、「従前資産」とは、地権者が元の土地・建物の対価として受け取る「権利床」の価値を指しており、「保留床処分金」とは、ビルを高層化して新しく生み出した「余った床(保留床)」を売却して得る建設資金のことである。
本来であれば、この保留床は民間のデベロッパーなどに売却し、外部資金を呼び込むのが基本スキームである。しかし今回の計画では、保留床388億円のうち、327億円(約84%)は市取得分(コンベンションホール・会議室などの公共エリア)で占められている。
実質的に「市が公費で保留床を買い支える事業」となっている状況である。
保留床処分金として見込まれている388億円から市取得分の327億円を引いた残りの61億円は、住宅棟が45億円で、これは野村不動産に売却することになっている。16億円は一般オフィス床として売却するが、この売却先は不透明な状況。ある市議によると、市から「全力で売却先を見つけることを約束する」との回答を引き出したとのことだが、買い手がつかなければ市負担になるリスクが残る。
同事業については、6月議会で関連一般質問が複数あり、議員の間でも問題点・疑問点などが多いことをうかがわせる。
一方で、ある市議は「この再開発の巨額負担は、市全体の公共施設管理にも影響を及ぼす」との見解を示す。というのは、現在、福島市では東口再開発事業の327億円(保留床取得費)のほか、市民生活に直結するような大型公共事業が集中・重複しているからだ。
この市議はこう話す。
「現在、市ではあぶくまクリーンセンター改修事業、消防本部庁舎整備事業、福島第一小・福島第四小・清明小など中央地区小学校の統合・再編事業、福島市中央卸売市場の改修事業などが同時並行で進められています。これらはいずれも延期できない・しにくいものばかり。そんな中で、東口再開発事業と工期や支払い時期が重なったら、市の財政は立ち行かなくなるのではないか。ましてやいまは、資材や燃料高騰などの影響で、当初計画より事業費が大幅に膨れ上がったというケースが多いわけですから」


確かに、駅前再開発に300億円超が注ぎ込まれる一方で、市全体の公共施設の老朽化問題は、「待ったなし」の状況だ。
福島市は2017年度に「福島市公共施設等総合管理計画」を策定した。きっかけは、総務省が「公共施設等の全体を把握し、長期的な視点をもって、更新・統廃合・長寿命化などを計画的に行うことにより、財政負担を軽減・平準化するとともに、公共施設等の最適な配置を実現することが必要」といった観点から、全国の自治体に策定を促したもの。それが2014年のことで、これを受け全国で「公共施設等管理計画」策定の動きが加速した。
施設管理計画の概要
福島市の計画は2017年度から10年間の計画で、今年度が最終年度となる。同計画では、①経営的視点による総合的かつ計画的な管理、②施設総量の縮減、③ライフサイクルコストの縮減と平準化、④全庁的な公共施設等マネジメントの推進――という4つの基本方針をもとに、「公共施設は今後40年間で必要となる更新等費用の10%縮減」、「インフラ資産は個別計画に基づき予防保全や長寿命化等により更新等にかかる将来費用を縮減」といった目標を掲げた。この間、2022年度に「追補版」が策定されている。
市財産マネジメント推進課によると、「現在は同計画の振り返り作業中で、それを踏まえて次の10年間の計画案をまとめ、来年3月議会で示し、新年度(来年4月)から実施に入っていくことになります」とのこと。
公共施設等管理計画の1期目(2017〜今年度)から2期目(2027年度〜)に入っていく準備段階で、いまは1期計画の振り返りの作業中のため、実際の成果などは示せる状況にないという。
一方、おおもとの計画の下に、分野別の「個別計画」というものがある。公共施設に関しては、①市民文化系施設、②社会教育系施設、③スポーツレクリエーション系施設、④産業系施設、⑤学校教育系施設、⑥子育て支援系施設、⑦保健・福祉系施設、⑧行政系施設、⑨住宅系施設、⑩公園施設、⑪供給処理施設、⑫その他施設の12分類、インフラ資産に関しては①道路、②橋梁、③上水道施設、④下水道施設の4分類で、計16分類の個別計画がある。
これらをすべて読み解くと、かなり膨大な量になる。おそらく、全てをチェックしている市民は皆無と言っていいのではないか。
そんな中で、ポイントになるのはどんなところか。
まず、現在、市が所有する建築物(学校、公民館、体育館、市営住宅、行政庁舎など)の延床面積は全体で約97万平方㍍(追補版策定時の2022年度)に及ぶ。このうち、計画が策定された時点で築30年を超えていたものが60%超に上り、現在はさらにその割合が高くなっていると推察される。昭和の高度経済成長期から平成初期にかけて集中的に整備された多くの市有施設が、一斉に大規模改修や建て替え(更新)の時期を迎えようとしているのだ。
同計画(追補版)の試算によると、今後40年間にかかる公共施設の改修・更新に係る費用は、約3632億円(年平均90・8億円)に上る。ただし、これは先の個別計画の公共施設の部分のみ。インフラ資産の改修・更新は別で、今後40年間のインフラ資産の改修・更新にかかる費用は約3644億円(年平均約91・1億円)と試算されている。合計すると、約7300億円、年平均約182億円となる。
個別計画実行の難しさ
前述したように、公共施設等管理計画では「将来的な人口減少と財政規模の縮小に合わせ、公共施設全体の総量(床面積)を10%削減」という目標を掲げている。その進捗については、市財産マネジメント推進課のコメントにあったように「1期計画の振り返りの作業中のため、実際の成果などは示せる状況にない」とのことだったが、現実に目を向けると、簡単ではない事情がある。というのは、本誌ではこれまでに同市のほかに、県内複数の公共施設管理計画の実施状況について取材をしてきたが、なかなか思うように進んでいないからだ。
「総合計画」という大枠の理念は理解を得られても、それを具体的な個別施設に落とし込む「個別計画」の実行段階になると、地域住民との合意形成が難しくなる。「この施設が廃止・規模縮小されたら困る」という反発にあうことが少なくないのだ。
福島市でも事情は同じだろう。渡利、杉妻、飯坂、松川、吾妻など、各地区に置かれた施設の再編計画が持ち上がれば、「〇〇地区の施設は残るのに、なぜこの地区は廃止・規模縮小になるのか」といった激しい抵抗に直面するに違いない。
公共施設の再編や統廃合は、地域住民にとって単なる「施設の削減」にとどまらない。馴染み深いコミュニティー拠点の喪失や利便性の低下を意味するため、感情的な反発を伴いやすいのは当然と言える。だからこそ、今後の計画策定や見直しの局面を迎えた際「行政がどれだけ誠実に情報を開示し、住民と対話できるか」が合意形成のカギとなる。
しかし、これまでの公共施設マネジメントにおける行政手法を振り返ると、必ずしも住民との対話が十分に機能してきたとは言いがたい。あらかじめ行政内部で決定した素案を提示し、形式的なパブリックコメント(意見公募)や地域説明会を開催することで「必要な手続きは踏んだ」とみなす、いわゆる〝アリバイづくり〟に終わってしまうケースが全国的に散見されるからだ。パブリックコメントの募集を行っても、実際に目を通し意見を寄せる市民はごくわずかで、数件から十数件程度の提出にとどまることも珍しくない。結果として、本当の意味で住民が納得しないまま計画が独り歩きしていく構造が生まれてしまう。
2期計画策定に向けて
そうした中で、今回の「福島市公共施設等総合管理計画」の改定作業は、今後の市の姿を左右する重大な局面と言えよう。前述したように、市は今年度中に第1期計画の振り返りを終え、来年3月議会までに第2期計画案を取りまとめる方針だ。さらに、その上位計画を受けて、その後は各分野の「個別計画」についても順次、第2期の策定・改定作業へと移っていくことになろう。
つまり、来年3月の総合計画策定から、その後に続く個別計画の見直しのプロセスは、将来に向けた福島市の公共施設のあり方を決める重要な期間と言える。当然、それに当たっては、パブリックコメントの募集や、各地区での説明会、市民意見交換会など「意見を聞く場」が設けられることになるだろう。
ここで市民に求められるのは、行政主導の決定をただ受け入れるのではなく、自ら主体的に関与していく姿勢だ。「自分の住む地域の施設がどのように再編されようとしているのか」、「老朽化施設を改修したり、建て替えたりする場合は、どれだけの公費が費やされるのか」といった問題に対して、関心を持ち続ける必要がある。
行政が実施する説明会やパブリックコメントの機会を、単なる「通過儀礼」にしてはならない。計画がすべて固まり、事業が動き出してしまってから「そんな話は聞いていない」「撤回しろ」と言っても、覆すことは簡単ではない。言いたいこと、主張したい意見があるならば、計画を練り上げるタイミングで発信しなければ意味がない。
もちろん、市民側にも相応の意識改革と現実認識が求められる。「とにかく自分の地区の施設だけはすべて残してほしい」、「統廃合には一律反対だ」といったエゴに終始していては、自治体の財政は成り立たなくなる。
詰まるところは、行政と住民双方の「落とし所」を探る作業ということになるわけだが、他市町村の事例を見る限り、それが中途半端な再編案になっているように感じる。
福島市は、駅前再開発という華やかな大型プロジェクトの影で、公共施設やインフラの更新といった財政投資を迫られているのが現状だ。来年3月の第2期総合管理計画の策定、それに続く個別計画の見直しがどんな形になるのか注目したい。

























