【相馬玉野メガソーラー】山林大規模開発への懸念

 本誌2021年8、10月号で、相馬市玉野地区で進められているメガソーラー事業についてリポートした。事業者は「GSSGソーラージャパンホールディングス2」という会社で、アメリカ・コロラド州に拠点を置く太陽光発電事業者「GSSG Solar」の日本法人。

メガソーラー事業への反対運動:地元の懸念と説明会

玉野メガソーラー事業地(工事前)
玉野メガソーラー事業地(工事前)
玉野メガソーラー事業地(今年5月撮影)
玉野メガソーラー事業地(今年5月撮影)

 同事業については、大きく以下の2点から、近隣住民や河川下流域の住民から反対の声が出ていた。

 1つは、事業地は主に山林のため、発電所建設(太陽光パネル設置)に当たっては大規模な林地開発を伴うこと。近隣・下流域の住民からは「大規模開発により、山の保水力が失われてしまう。近年は、各地で洪水・土砂災害などが頻発しており、周辺・下流域でそうした災害が起きるのではないか」といった不安が噴出していた。

 もう1つは、計画立案者で事業用地の大部分を所有する人物が、2021年7月に発生した静岡県熱海市の「伊豆山土石流災害」現場の所有者と同一人物であること。この人物は地権者というだけで、直接的には事業に関与しないようだが、近隣住民などからは「あのような問題人物が関係しているとすれば不安だ」との声があった。

 こうした事情もあり、2021年7月と10月に地元住民や下流域の住民を対象とした説明会が行われた。主催者は「相馬市民の会」という住民団体で、事業者の現場担当者を招いての説明会だった。

 説明会で配布された資料によると、事業区域面積は約122㌶で、うち森林面積が約117㌶、開発行為にかかる森林面積が約82㌶、発電容量は約82メガ㍗、最大出力60メガ㍗、太陽光パネル設置枚数16万6964枚などと書かれていた。

 当然、説明会では前述のような不安の声が上がり、事業者は「問題のないように事業を進める」、「保険に入り、災害の際はそれで対応する」と回答した。ただ、そうした説明に反対派の住民は納得せず、平行線をたどった。

メガソーラー事業の現状:山林開発の進行と地元の不安

メガソーラー事業の現状:山林開発の進行と地元の不安

 それからしばらくして、昨年2月ごろに、地元住民から「われわれの訴えも虚しく工事がスタートした」との情報が寄せられた。その直後に現地を訪ねた際は分からなかったが、最近、あらためて現地を訪ねると、山林がかなり切り開かれている様子がうかがえた。

 以前の説明会に出席していた事業者の現場担当者に進捗状況を尋ねたところ、「一度、社内で話を通さないと取材にはお答えできないので、そのうえで再度連絡します」とのことだったが、締め切りまでに連絡はなかった。

 以前の説明会で、事業者は「調整池を設置して洪水・土砂災害などが起きないようにする」と話していたが、あらためて丸裸にされた山林を見ると、近隣・下流域の住民は不安を増大させているだろうと感じる。

関連記事

  1. 【郡山総合体育館】トップリーグ参戦チーム優先使用に不満の声

    【郡山総合体育館】トップリーグ参戦チーム優先使用に不満の声

  2. 【ベスト学院】「県立安積中専門校」を開校

    中学受験【ベスト学院】「県立安積中専門校」を開校

  3. 【東日本国際大学】第1回国際シンポジウム

    【東日本国際大学】第1回国際シンポジウム

  4. 問題だらけの【福島県】消防組織

    問題だらけの【福島県】消防組織【パワハラ】【報酬ピンハネ】

  5. 【聖光学院野球部・斎藤智也監督に聞く】プロの世界に巣立った教え子たち

  6. 首都圏難関校OBが安積中高一貫校に辛辣評価

    首都圏難関校OBが安積中高一貫校に辛辣評価

  7. 遅すぎた福島市メガソーラー抑制宣言

    遅すぎた福島市メガソーラー抑制宣言

  8. 【福島市内で県内初】レインボーマーチ

    【福島市内で県内初】レインボーマーチ

人気記事

  1. 【和久田麻由子】NHK女子アナの結婚相手は会津出身・箱根ランナー【猪俣英希】
  2. 手厚すぎる公務員「病気休暇制度」
  3. 政経東北【2025年10月号】
  4. 後継者問題にあえぐ喜多方ラーメン
  5. 【塙強盗殺人事件】裁判で明らかになったカネへの執着
  6. イオンモール伊達にシネコン計画浮上!?
  7. 【福島市】メガソーラー事業者の素顔
  8. 「県にいじめを報告しない、いわき秀英高校は許せない」2人の男子生徒から娘が性的暴行された父親が激白
  9. 本宮市「コストコ進出説」を追う 地図

最近の記事

  1. 【郡山駅前受験生死亡事故】飲酒運転男の呆れた主張 【郡山駅前受験生死亡事故】飲酒運転男の呆れた主張
  2. 政経東北【2025年10月号】 政経東北【2025年10月号】
  3. 【いわき信用組合】繰り返された横領隠蔽 【いわき信用組合】繰り返された横領隠蔽
  4. 浪江町で高まる教育現場への不信②~給食異物混入が1年半に5件発覚 浪江町で高まる教育現場への不信②~給食異物混入が1年半に5件発覚
  5. 浪江町で高まる教育現場への不信①~認定こども園で「裸体写真誤送信」 浪江町で高まる教育現場への不信①~認定こども園で「裸体写真誤送信」
PAGE TOP