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インタビュー

  • 【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

    【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

    かんけ・ただひろ 1979年5月生まれ。東京の大学を卒業後、海外留学を経て会津土建へ入社。翌年、子会社の㈱エマキへ出向。10年間IT事業の社長を務める。その後、会津土建へ戻り、取締役、常務取締役、副社長を歴任し、昨年6月に代表取締役社長に就任。   会津若松市の会津土建は大正15(1926)年に創業し、会津地方に根ざした総合建設業として成長を続けてきた。建設業界全体がさまざまな課題を抱える中で、先進的な取り組みへの挑戦を続けている。昨年6月に代表取締役社長に就任した菅家忠洋氏(44)に建設業界の現状、今後の経営ビジョンについてインタビューした。 効率化と新たな挑戦を心がけ成長を続けていく。  ――昨年6月8日付で会津土建の代表取締役社長に就任されました。  「私の祖父と父が歴代の社長なので、幼い頃から会社を引き継ぐことに漠然としたイメージはありました。実際に社長となって、もちろん仕事の重みや責任は感じていますが、不安やプレッシャーにさいなまれることはなく、やりがいを感じながら充実した日々を過ごしています。さまざまな方々とお会いする機会に恵まれ、物事に対する見識や感性が膨らみ、人との結びつきやご縁の尊さを実感しています。建設業という仕事自体にとても魅力を感じますし、人のため、社会のために貢献すべく、地域が活性化できるよう情熱をもってまちづくりに努めていきたいと存じます」  ――老舗総合建設会社として地域社会にどう貢献していく考えですか。  「当社は大正15年創業、まもなく100周年を迎える老舗の建設会社です。会社の歴史を十分に理解しながら、新たな伝統を創っていく所存です。現在の会津地域における建設業界を取り巻く環境や政治経済の状況を俯瞰的に捉え、何を成すべきか、深く考えながらも瞬時に見極め、判断していく必要があります。また、今までお付き合いいただいたお客様はもちろんのこと、新たにご縁をいただいた方々、協力会社、職人さん方とより一層の誠心誠意を込めてお付き合いをさせていただきたく存じます。私たち建設会社のミッションは、お客様の満足いく建物を提供すること、そして、安心で安全に生活ができる豊かなインフラを整備し、地域社会に還元することが最重要項目です。社会情勢が目まぐるしく変化する中、安全、品質、コスト、デザイン、付加価値、SDGsなどへのより一層の対応が求められています。今後、PPP(官民のパートナーシップによる公共サービスの提供手法)やPFI(公共施設等の建設・維持管理・運営等を民間の資金、経営能力、技術的能力を活用する手法)事業が推進されると想定し、異業種の方々との交流や連携による柔軟な発想と対応が大事です。そのためにも、私たちも理論に基づいた提言をしながら、発注者、施工業者、設計、学識者、専門機関など、さまざまな意見をまとめながら、産学官による垣根を超えたデザインビルドに取り組むべきだと思います。将来を見通しながら地域の皆さまが納得し、喜ばれる仕事を完遂することが弊社の社会的な役割であるとあらためて認識しています」 ICTとアナログの融合  ――先進的な取り組みについて。  「建設業界では少子高齢化による人手不足が深刻です。そのため、国土交通省は、最先端工法やICT技術を導入することで建設生産システムを向上し効率を良くする『i―Construction』を推進しています。建設現場のみならず、総務や経理の事務的なバックオフィスでも生産性や効率性の向上が図られています。現在は3次元データの活用を深化させ、建設現場をデジタルツインで作業効率を高める取り組みにも着手しています。  スケールの大きい土木現場を施工管理する大々的な建設DXからスマートフォンのアプリケーションに至るまで、会社にとって効果があり、社員の仕事が楽に、スムーズになるのであれば積極的に導入する考えです。時代の潮流に乗り、今後も新しいテクノロジーや大手ゼネコンの取り組み、海外の事例を含め、導入検討や内製化の研究に励む所存です。 一方で、私は何よりも『アナログ』なお付き合いを大切にしようと思っています。人様との信頼関係の構築には対面が不可欠です。『温故知新』を座右の銘に、老若男女問わず、真心と礼儀を尽くしたいと存じます。『デジタル』と『アナログ』それぞれの利点を見極めながら新旧融合を図り、相乗効果が発揮できるよう『機を見るに敏』を意識した対応に徹したいと思います」  ――建設業界の今後の見通しは。  「全国的にみれば、先の東京五輪、リニア中央新幹線の整備、大阪万博、東京の再開発事業など建設需要が旺盛となっています。一方で、本県に目を移せば東日本大震災から12年が経過し、イノベーション・コースト構想や一部まちづくりを残し、復旧・復興事業も終わりを迎え、大型事業も少ない状況です。建設業界はすでに縮小・淘汰の時代が到来したといっても過言ではなく、大都市と地方都市を比較すると経済格差を著しく感じます。これからは新規でゼロから建設するというよりも、既存の建造物・構造物の維持管理やメンテナンスに軸足が移っており、それに応じて業務内容も変化させていく必要があります。  今後は、既存の建設会社だけではなくハウスメーカー、設備会社など関連業種も含めれば競争相手が多く、生き残りは容易ではありません。そうした中で、当社の位置付けを見つめ直しながら、新たなチャレンジを始動していく覚悟が問われます。先行きが見えないことも多々ございますが、私たちが抱く既成概念をリセットし、どん欲に挑戦しながら新たな領域を切り開くことが生き残るポイントだと考えます。厳しい経済状況でも成長している企業が存在するのも事実です。成功事例から学びを得て、業務に反映できるものはぜひ取り入れていきます。激烈な競争を勝ち抜くためにも『メイドイン会津』の地元建設会社として、プライドを大切にしながら企業価値をさらに高め、皆さまから認めていただけるよう、誠心誠意努めていきます」  ――結びに今後の抱負を。  「これから未来の福島を創るにあたり、私たち建設業界は真価を試される大切なターニングポイントにあると思います。故郷のため、そして子どもたちのため、日々技術を磨き、研鑽を積みながら、新しい事業スタイルを常に学び、もう一段上の高みに会社をもっていきたいと強く願っています。その実現に向け、『企業は人なり』の精神をモットーに、社員ファーストで生き生きと働ける環境を提供し、福利厚生を充実させながら、優秀な人材をリクルートしていきます。  また、健康経営優良法人の認証取得や女性活躍社会の推進をはじめ、企業価値の向上に着手していきます。今までの建設会社のイメージを覆し、新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を実現し、魅力溢れる企業体質をもって、社会に貢献していきます。私自身、まだまだ若輩者ではありますが、夢と希望を持って成長していきます」

  • 【須賀川信用金庫】伊藤平男理事長インタビュー

    【須賀川信用金庫】伊藤平男理事長インタビュー

    いとう・ひらお 1958年生まれ。1980年に須賀川信用金庫入庫。同信金理事、常務理事を経て、昨年6月から現職。須賀川創英館高校同窓会会長、須賀川市卓球協会会長、須賀川市体育協会副会長などを務める。  ――昨年6月に新理事長に就任しました。  「本部の経営企画部門に長く勤務しており、前理事長・前々理事長のもとで、経営について指導を受けてきました。理事長就任後、総代を中心に150件ほど挨拶回を行い、お客様から『信用金庫らしく、地元に密着した経営を継続してください』との声を多く聞きました。新理事長として当金庫の方針である『創業の趣意を体し地縁性金融機関として地域の発展に奉仕する』を実践すべく、地域のお客様の声を聞き、地域に根差した信用金庫として地域を支える使命感を感じていますし、須賀川信用金庫理事長の責任の重大さを再認識しているところです。  また、職員にとって安心して働けて、働き甲斐のある職場にすべく、健康状態、家族の状況、金融収支状況などの聞き取りを、私が全職員個別に行いました。職員が安心して働きやすい職場にすることが地域に役立つための条件の一つだと考え、現在努力しているところです。さらに、先人たちが築いた信用・信頼を崩すことなく、高い使命感と強い責任感、変わらぬ道徳観を持ち、役職員が一致団結して一歩ずつ前進していきたいと思います」  ――原料高や人材不足といった問題が深刻化しています。  「理事長就任後の挨拶回りで、取引先の経営状況や経済環境、物価高騰による価格転嫁の状況などを聞き取りしたところ、比較的規模の大きい企業はエネルギー価格・原材料の価格転嫁ができていますが、小規模企業は価格転嫁されにくい状況にあることが分かりました。特にエネルギー価格の転嫁は、部品一つに対していくらにするのが妥当なのかを説明するのが難しいとのことでした。  取引先のヒアリングと財務調査の結果、現段階では当金庫の取引先は比較的安定した経営がなされておりコロナ禍の収束に伴って地域経済も少しずつ回復傾向に向かうと見ています。今後とも常にお客様の状況を把握し、売り上げ回復に向けた対話や具体的な支援をしていきます」  ――今年は創立110周年を迎えます。  「創立110周年は途中経過の位置付けで、創立100周年時のような大々的な記念行事は実施しませんが、現在取り扱っている記念懸賞品付定期預金や10月に予定している須賀川広域消防組合への救急車1台の寄贈、創立110周年記念コンサート、記念旅行やゴルフコンペ、ロゴ入り名刺による活動、記念品の贈呈等のイベントを企画しています」  ――昨年からインボイス制度がスタートしました。  「昨年4月の当金庫のアンケート調査では、取引先の課税事業者の約40%が対応済みとの回答で、現時点では課税事業者のほとんどが登録を申請していると見ています。一方で、家族経営、小規模事業者はインボイス制度への理解が浅いことから当金庫では会計バンク㈱の請求書サービス『スマホインボイスFin Fin』の顧客紹介業務を昨年7月から実施しており、渉外担当者を中心に紹介業務の勉強会を実施して対応しています」  ――今後の抱負。  「地域貢献など、信用金庫本来の使命を果たし、地域に根差した経営に徹して地域経済を守っていきたい。また、職員が十分に能力を発揮でき、やりがい・働きがいのある安心して働くことのできる職場づくりに努めます。もう一つは、業務内容の見直しを図るとともに、DXの推進等によって生産性の向上や、経営基盤の強化・充実を図り、持続可能な経営体質を確立することに注力していきたいと思っています」

  • 【湯川村】佐野盛至村長インタビュー

    【湯川村】佐野盛至村長インタビュー

    さの・せいし 1957年1月生まれ。東京農業大短大農業科卒。湯川村総務課長、産業建設課長などを歴任。村議1期を経て、2023年10月の村長選で初当選。 「住んでみたい」と思える村を創造することが私の使命。  ――10月の湯川村長選で初当選しました。  「前回と同じ顔ぶれによる一騎打ちの選挙戦となり、77票差で当選することができました。前回村長選での落選後、村内をくまなく回り、世代を問わず地域住民との対話を重ね、要望を選挙公約に反映させてきました。今回の当選は、その選挙公約と後援会活動をはじめとする草の根運動が評価された結果と受け止めています」  ――村長就任の抱負について。  「『豊かで希望がもてる湯川村に生まれ変わりましょう!!』をスローガンに掲げました。本村は、県下一おいしいお米がとれるコメどころ、名刹・勝常寺や年間100万人以上が訪れる『道の駅あいづ湯川・会津坂下』を有する、誇れる村です。さらに、子育て支援、教育環境の整備、高齢者が暮らしやすい社会の構築、活力ある産業の創出を実現し、『住み続けたい』、『住んでみたい』と思える〝湯川村〟へと生まれ変わることが私の使命と強く認識しています。地域住民の力と私の行政経験を生かし『新生・湯川村』の創造に向け邁進していきます」  ――選挙戦では6つの公約を掲げました。  「1つは『結婚・子育て支援』です。仲人ボランティアによる結婚支援、小中学校の学校給食費無償化・保育料無料化の実現、18歳までの医療費無料の継続、在宅育児支援手当の支給制度の創設に取り組みます。2つは『教育環境の整備』です。笈川・勝常両小学校の児童数減少、校舎やプールの老朽化を踏まえ、小学校の統合を含め、地域住民と議論を深め、あるべき姿を見出したいと考えています。また、受験対策や補習も対応できる村営学習サポート塾の開設、犯罪を抑止し子どもの命を守るため保育所、幼稚園、小・中学校への防犯カメラ設置を進めます。3つは『高齢者支援』です。交通費負担の軽減と移動の不安をなくすための新たな交通システム導入をはじめ、近隣のスーパーなどと連携した移動販売事業や宅配事業、買物代行事業などの支援策を検討し、高齢者の暮らしを守ります。4つは『地域産業の振興』です。スマート農業の推進・支援、道の駅を最大限活用した地域振興、会津湯川ファームの運営を支援し、雇用確保と税収増加を図ります。5つは『住民活動の推進』です。自分ができることを生かせるボランティア団体に参加し、生きがいをもって活動できるようボランティア団体の育成・活動支援に注力します。結びに『移住・定住の促進』です。交通網に恵まれ、下水道100%整備済みの環境をアピールし、子育て支援と教育環境の充実を図り、移住・定住を促進する所存です」

  • 【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

    【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。  会津若松市は城下町の強みをインバウンドにつなげる一方、小中学校と地元企業をつなぐマッチングサービスや地域発キャッシュレス決済の導入でデジタル技術の恩恵を地方に還元するなど歴史と進取を両立している。国際競争力の高いスノーリゾートにも選定され、宿泊拠点の役割も期待されている。会津若松商工会議所の澁川惠男会頭に経済飛躍の鍵を聞いた。 民間の力こそが地域の未来を拓く。  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが引き下げられて7カ月以上になりました。  「コロナ禍により老舗料亭や観光ホテルの経営破綻があり、管内はダメージを受けました。感染収束後の消費回復を期待していましたが、物価高の影響は大きいです。当商工会議所の退会理由のトップは『廃業』です。中小企業の経営者は高齢の方も多く、後継者がいないというのが主な理由です。コロナ禍からの回復が十分でないうちに物価高が追い打ちをかけて廃業が加速していくのを懸念しています。  明るい兆しはあります。行動制限のない忘新年会シーズンを迎え、飲食業界は予約が相次いでいるようです。感染拡大前の水準に戻りつつある事業所もあります」  ――昨年7月から市内の小中学校と企業をつなぐマッチングサービス「まちスク会津」を用いた実証実験が始まっています。  「まちスク会津は教育支援と地域活性化を両立します。子どもたちにとっては、地域企業・人材と触れ合う機会を増やすことで、企業の認知度向上や地域への理解、魅力発見などにつながります。教育支援を希望する登録企業が増え、本サービスを通して学校と企業の新たなマッチングが生まれており好評です。  今後は当商工会議所で実施している『ジュニアインターンシップ(職場体験)』との連携に加え、サービス充実のために、地域企業・人材の参画を広く呼び掛けます。会津の次代を担う子どもたちが地域を深く知り、将来は地元への就職やUターンにつながってほしいです」  ――観光庁の「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に会津若松市、磐梯町、北塩原村が会津磐梯地域として県内で唯一選ばれました。  「冬季の誘客は会津地方の長年の課題でした。今シーズンは磐梯町と北塩原村のスキー場が連結し、国内最大級のスノーリゾートが誕生しました。南半球のスキーヤー・スノーボーダーが良質な雪を求めて裏磐梯を訪れてきましたが、この流れが会津地方に波及するでしょう。  インバウンドが集中する東京・京阪神間を『ゴールデンルート』と呼びます。東北は対抗軸の『ダイヤモンドルート』を掲げ各自治体や経済団体が盛り上げてきました。今こそ、それを再燃させる時です。  スノーリゾートでは、会津若松は魅力ある宿泊や飲食を提供するベースタウンの役割があります。観光客は国・地域によって食事や宗教、生活様式がさまざまです。違いに対応し、受け入れのレベルを上げる必要があります。当商工会議所はこれまでにも訪日客への対応を学ぶ各種セミナーを開いてきました。会員事業所には観光、旅客、宿泊の事業者がいます。意見を聞きながら今後は業種に特化したセミナーにするなどしてより充実させます。  今年度、会津大学の留学生を対象に市内の観光スポットを巡るモニターツアーを実施しました。鶴ヶ城登閣、弓道や抹茶、赤べこの絵付けなどの体験型コンテンツを通じて会津の魅力を聞きました。素材は十分に魅力的ですが、多言語表記が少ないなどの課題が浮き彫りになりました。改善策を行政に提案し、訪れる全ての方に優しい環境につなげます」  ――「会津コイン」を用いたデジタル商品券事業が始まりました。  「会津コインは会津若松市が進める『スマートシティ』の取り組みの一環です。国は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度にする目標を掲げています。キャッシュレスは増加傾向ですが、既存のキャッシュレス決済はお金の他、マーケティングに活用できる利用者情報などが地域を出てしまうのが課題でした。そこで地域のみで流通する通貨を導入して情報が地域に残るようにしたのが会津コインです。  商品券はこれまで紙ベースでしたが、今回初めてスマホを使ったデジタル形式にしています。当商工会議所やスマートシティAiCTに入居する企業でつくる『AiCTコンソーシアム』などで構成する実行委員会が事業を行っています。当初会津コインが使えるのは6店舗だけでしたが、プレミアムポイント事業の実施で400店舗を超えました。ただ、店舗の加盟申請や消費者の利用設定の手順が複雑な点は否めず、特に高齢の方からさまざまな意見を頂戴しました。市と決済事業者と共に対応を検討したいです。  プレミアム事業が終了した後、どこまで会津コインを利用してもらえるか、事業所に継続していただけるか不安な点はあります。利用者情報を個人が特定されない形に処理して会津コイン参加店舗に提供し、経営に生かしてもらうなどの仕組みづくりが急務です。再生可能エネルギーへのポイント付与構想など、持続可能な開発を進めるインセンティブも有効でしょう。商店街や飲食店業種単位でイベントに活用するなど様々なアイデアに挑戦することで利用が増えていくと思います」 急務の再開発  ――市街地の再開発について。  「中心市街地から大型店が撤退したままの現状に非常に危機感を持っています。都市の活況のバロメーターと言える地価公示や路線価は、昨年は福島、郡山、いわきの県内主要都市の商業地は軒並み前年比プラスになっている一方、会津若松はマイナスに沈んでいます。  当商工会議所は昨年度、再開発に向けた意見を取りまとめ、神明通りや駅前周辺、旧県立病院跡地などの利活用について市に提言しました。多くの利害関係があること、市の財政的な課題もあり、一足飛びに実現しない現状は理解しています。ただ、その中でも中心市街地の再開発は早急に取り組むべきです。まちのシンボルである神明通りはその最たるもの。個性豊かな店を集積したり、インフラなど不足する要素を分析して早めに手立てを考えていきたいです」  ――抱負を教えてください。  「地方は人口減少に伴う縮む経済に直面しています。地域の活力を維持し、若者が住み続けたい、また多くの観光客が訪れたいまちにできるかどうかはここ数年で決まってしまうのではないかと危機感を持っています。会頭就任以来、民間の挑戦こそが地域の未来を切り拓いていく大きな力になると訴えています。危機的な状況だからこそ、この思いを新たにし、徹底した事業所支援を通じて足腰の強い会津若松経済の実現に向けて取り組んでいきます」

  • 【大熊町】吉田淳町長インタビュー

    【大熊町】吉田淳町長インタビュー

     よしだ・じゅん 1956年1月生まれ。大熊町出身。法政大学経営学部卒。1979年に大熊町職員となり、教育総務課長、総務課長などを歴任。2016年1月に副町長となり、2019年11月の町長選で初当選。2023年に再選を果たす。  ――昨年11月12日投開票の町長選を振り返って。  「前回は新人同士の選挙戦でしたが、今回は現職として選挙戦に臨み、表現として適切かどうか分かりませんが、相手候補の動きが見えづらく苦労した点もありました。結果的には全体の約9割の票をいただき、当選できたことは一定の信任が得られたと思っています」  ――2022年に特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されました。  「震災前、町の中心地だった下野上地区を含む860㌶が待望の解除となりました。帰還した住民からはスーパーなど買い物環境の整備を求める声が多数あります。以前、町内にはスーパーが3店舗ありました。買い物環境整備には喫緊の課題として取り組んでいます。医療面では、診療所はあるものの週2日だけなので充実を求める声が出ています。県では県立大野病院の後継病院を開院するとの方針を打ち出しており、医療体制の拡充を進めていきます。  特定復興再生拠点区域より前に避難解除された大川原地区は、役場周辺を中心に環境が整い、今後は大野駅周辺整備を進めていきます。駅前に産業交流施設を建設し、周辺には帰還した方や働く人のために商業施設整備を進めています。それに先駆けて3月には50戸の住宅団地が2つ完成するほか、元々あった民間アパートを町が補助を行いリフォームして約200室整備しました。  こうして、さまざまな環境整備を進めていますが、まずは居住人口を増やさなければなりません。加えて、昨今は国の復興事業の関係で学生が訪れるなど関係人口も増えていますので、そういった大熊町に関心を示してくれる人を増やしていきたい。働く場所も必要になりますから、工業団地への企業誘致なども進めていきます」  ――2023年6月に、福島復興再生特別措置法が改正され、特定復興再生拠点区域から外れたところのうち、帰還意向のある住民が帰還できるよう必要な個所の除染を行い、特定帰還居住区域として定めることで、避難解除を目指す方針が示されました。  「新しい方針のもと、下野上1区を特定帰還居住区域に指定して国から認定を受けました。今年度内にも除染に着手してほしいと要望を出しています。  町内には21行政区ありますが、そのうち帰還困難区域を抱える行政区は下野上1区を含めて10行政区あります。残りの9行政区においても下野上1区に遅れることなく、特定帰還居住区域への指定、除染、解除を目指して国に要望を行っています。町としても、町民の意見を聞きながら、次の除染エリアの選定を検討しています。新しい方針では、1人でも帰還したい住民がいれば除染を行うこととされていますので、なるべく広い区域を住めるエリアとして取り戻したいと思っています」  ――休止している県立大野病院が現在地で建て替えられ、2029年度の開院を目指す方針が示されました。  「県立大野病院は、町内だけの施設ではなく、相双地区の拠点病院に位置付けられていますから、1日も早い開院を目指して整備してほしいと思います。また、先ほどもお話ししましたように、帰還した住民からも近くに病院があってほしいと、医療体制の充実を願う声が出ています。町民の中には、帰還するかどうか迷っている方も多数おり、そういう方々の判断材料という点でも、病院の有無は大きな要素となります。同病院の存在は双葉郡をはじめ、相双地域全体の大きな問題でもありますから、1日でも早い整備をお願いしたいと思います」  ――教育施設「学び舎ゆめの森」の新校舎が完成し、2学期から使用されています。  「震災・原発事故から12年が経ち、ようやく子どもたちの声が聞こえるようになりました。同施設では認定こども園と義務教育施設が一体となっており、0歳から15歳までが保育・授業を受けています。最初は園児・児童・生徒数は計26人でしたが、同施設で行っている新しい教育方針が保護者の間で関心を集め、若い世代が移住して入園・入学する園児・児童・生徒が増加し、まもなく40人を超える勢いです。9月には12年ぶりに運動会が開催され、園児・児童・生徒や保護者以外に地域住民も参加して盛大に行われました。  資材不足の関係で完成が当初予定から遅れ、2学期から新校舎での保育・授業がスタートしましたが、校舎完成前の1学期は町役場や交流施設などを活用し、分散して授業が行われました。不便だった分、工夫しながら学習に取り組み、さらには、学校関係者以外の人とも関わることができたことは、子どもたちにとっていい経験になったと思っています。  新校舎完成後は校舎のつくりや独自の教育プログラムが評判を呼び、視察が増えています。新校舎での授業がスタートした8月から数カ月で視察者は1000人を超えました。また、『グリーン留学』という体験入園・入学プログラムも用意していますので、帰還や定住人口増加の起爆剤につなげていきたいと思います」  ――「長者原じゃんがら念仏踊り」が震災後はじめて町内で披露されました。  「『長者原じゃんがら念仏踊り』と『熊川稚児鹿舞』は町の無形文化財に指定されています。そのうちの一つであるじゃんがら念仏踊りがようやく町内で再開できたことは、区長をはじめ地元の方々に本当に感謝したいと思います」  ――今後の重点事業について。  「まずは避難解除された特定復興再生拠点区域内の環境整備をしっかりと進めていきます。それを経て、特定帰還居住区域の整備へと、1歩ずつ進んでいきたいと思います」  ――今後の抱負。  「先ほども話したように、まずは居住人口を増やしていきたい。震災前は約1万1500人でしたが、現在は住民登録している居住者が600人超、住民登録していない居住者が400人超ほどおり、合わせて1100人が町内で暮らしています。町ではそれを4000人にすることを目指しています。そのためには町に訪れる関係人口を増やすことが必要だと思います。その中で住んでみたい方がいればお試し住宅を利用していただき、子育て世代であれば学び舎ゆめの森を見ればきっと気に入っていただけると思います。働く場所も工業団地の整備を進めており、そこで働く方に町内に住んでいただくための住宅整備も進めています。こうして、様々な事業を行いながら人口増加に向けた取り組みを行っていきたいと思っています。また、戻れない住民の絆の維持のための取り組みも継続して進めていきます」

  • 【福島商工会議所】渡邊博美会頭インタビュー(2023.12)

    【福島商工会議所】渡邊博美会頭インタビュー(2023.12)

     わたなべ・ひろみ 1946年生まれ。福島大経済学部卒業後、福島ヤクルト販売入社。2012年に福島商工会議所副会頭。13年11月に会頭就任。現在4期目を務める。  福島商工会議所は職員らの力を結集し、渡邊博美会頭の下、伴走型支援で会員事業所の経営環境の足腰強化に力を入れている。経済に打撃を与える慢性的な人手不足と資材高騰は福島駅前東口再開発に影響し、建設費用が増加。完成が1年延期され2027年度の予定になった。「福島駅東西エリア一体化推進協議会」会長も務める渡邊氏に再開発の行方などを聞いた。 足腰の強い経営環境を共に目指していく  ――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に引き下げ後、福島わらじまつりが通常開催されるなど新型コロナ禍前の活気が戻ってきました。現況を教えてください。  「わらじまつりは今年、まず6月に青森市で行われた東北絆まつりに参加しました。賑わいを見て、福島のイベントも賑わうぞと期待が膨らみました。祭りは参加者が熱狂し、笑顔が観客に伝播します。その光景が復活したのは感慨深いものです。7月末に『ふくしま花火大会』があり、熱気が高まったまま、8月3、4日のわらじまつりで最高潮となりました。大相撲の福島巡業が4日に行われたため、福島市の夏は例年にない盛り上がりでした。  福島駅東口の再開発工事中は賑わい創出のため駅前通りやまちなか広場では週末に各種イベントが開かれて盛況です。県立医大保健科学部と福島学院大学の駅前キャンパスがあるため、多くの若者がイベントに関わっています。学生ならではの自由な視点には目を見張るものがあり、若手も参入しやすい雰囲気が生まれています。これらを起爆剤に、来年はもっと魅力のある街になるよう盛り上げていきます」  ――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。会員事業所からはどのような声がありますか。  「人手不足は日本を覆う問題です。福島県は特に女性の生産年齢人口の流出が全国と比べて高いというデータがあります。要因は様々ですが、女性が魅力を感じる産業を用意できていないという点で、我々経営者にも責任があると感じています。働く場所としてもそうだし、結婚し子育てをする場として不安を感じ、学校を出ると福島を離れてしまう。  価格転嫁について会員事業所を調査していますが、問題なく行っているという事業所はまずありません。燃料費の高騰が特に打撃で、賃金を上げて今いる従業員を雇用し続けられるよう経営者は奮闘しています」  ――資材価格高騰で福島駅東口再開発が1年先送りとなりました。会頭自身も「福島駅東西エリア一体化推進協議会」の会長を務めていますが会議所ではどのような対応をしていきたいですか。  「百貨店の中合が閉店してから福島駅前の歴史あるランドマークが無くなってしまいました。特に私ども高齢者は駅前が一番賑わっていた時代が頭に残っていますから衝撃は大きかった。当会議所には往時の駅前の活気を知る方たちから、なぜ中合を閉めるのかと惜しむ声が聞こえてきました。地方都市では、駅前の活気は衰退し、賑わいは駅の中だけに収まってしまいました。  福島市は東北新幹線の駅があり、交通の便では恵まれています。行政施設とコンベンション施設が駅前に集まると都市機能が向上します。さらに大切なのは、医大保健科学部、福島学院大のキャンパスがあり、近くに大原綜合病院が位置している点です。再開発地区には既に暮らしに密接な教育機関や病院があります。東京や仙台などの大都市では地代が高い分、行政や教育、医療機関の集約は困難でしょう。その点で福島市は再開発で機能を集約しやすい強みがある。自家用車を持っていなくても誰もが暮らしやすい街になる可能性を秘めています。  ただ、資材価格高騰が建設に影響を与えています。完成後も維持費を考える必要があります。そして、暮らす人にとって一番良い方策を考えねばなりません。私は今、関係者に建設中の今こそ、腹を割って話そうと言っています。  資材価格高騰によるコスト上昇や地方の再開発事業の難しさをみると、予算や持続可能性に厳しい部分があるのであれば、福島に住む人にとって一番いいやり方を駅西口と一体化して考える必要があります。後世に悔いが残らぬように、知恵を絞るのは今しかできません。見栄や他の都市に負けたくないという発想ではなく、自分たちのためになる形を追求したいです。  東北中央道ができたことで、福島市には相馬市や山形県米沢市からも訪れるようになりました。福島の魅力は分析すればたくさんあるはずです。構造物だけどんどん造って、継続できませんでしたでは済みません。行政とまちづくりセンター、当会議所で連携を密にして取り組んでいきます」  ――福島市出身の作曲家、故・古関裕而さんが野球殿堂入りしました。街づくりにどうつなげますか。  「古関先生をモデルにしたテレビドラマで火が付き、記念の音楽祭や作曲賞の創設、夫人の金子さんの出身地である愛知県豊橋市とのつながりが生まれました。豊橋市の方たちには花火大会でも筒花火を披露していただきました。  野球のオール早慶戦を11月26日に行いました。早稲田大と慶応大の応援歌をどちらも古関先生が作曲している縁からです。現役生やOBが試合をし、市や当会議所も準備に関わりました。応援合戦は盛り上がりました。古関先生の縁で福島に若い人が来てくれた。試合後も果物や温泉を楽しんで、福島の魅力を知っていただいたようです。福島の魅力はたくさんありますが、古関先生はそれらをつなぐ要です」  ――今年度取り組んでいる重点施策について。  「激変する経営環境に対応できる、足腰の強い経営ができるよう企業や商店の伴走型支援に取り組んでいきます。具体的には人手不足や資材高騰、デジタル移行に対応します。セミナーで一方的に教えるだけではなく、職員が赴いて親身に対応できるよう、商工会議所では人づくりを進めています。来年のカレンダーを配る時期ですが、会員事業所には職員が直接回って配り、ネット環境の整備や人手の確保、新商品開発に使える便利な制度を紹介するなど対面であらゆる相談に乗っています。若手職員が出向くことで気兼ねなく相談できるとの声があります。  浮かび上がった課題は、当会議所の各種委員会で共有して解決策を編み出します。いくつかの委員会では女性や会議所議員になってから1年以内の若手メンバーを委員長に据え新しい風を取り込んでいます。多種多様な意見をまとめていくのは並大抵ではありませんが、その分チャレンジングな発想が生まれます。時代の変化に合わせて新たな経営視点を会員事業所と一緒に磨き上げていきたいです」

  • 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー(2023.12)

    【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー(2023.12)

     すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て昨年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経済活動の制限や各種イベントの中止・規模縮小などを余儀なくされたほか、原材料・燃料費高騰や人手不足など、地方経済を取り巻く環境は厳しい。そんな中、地域経済のかじ取り役である商工会議所では各種課題にどう向き合っているのか。二本松商工会議所の菅野京一会頭にインタビューした。 管内の魅力をもう一度見直していきたい  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」になりました。これを受け、各種イベントなども通常開催されるようになっていますが、管内の動きについて。  「二本松の提灯祭りは管内の大きなイベントの1つで、コロナ禍以降は中止や規模縮小、アルコール販売禁止などの規制の中での開催を余儀なくされましたが、今年は規制がなくなり盛況でした。ほかにも、8月には各地の夏祭りが通常開催され、想像以上の盛況ぶりでした。多くの人がこういったイベントを待ち望んでいたことを実感しました。もちろん、コロナが完全に消滅したわけではありませんが、5類に移行したことで、イベント等が通常開催され、まちが活性化していると思います。  二本松の菊人形は昨年と比べ1割増の観光客が訪れました。以前から『菊のまち二本松』のPRのため、女性会を中心にJR上野駅や市内各店舗などには『菊手水』の設置や各家の軒先でも菊が飾られ、観光客を迎えています。昨年開館した城報館でも物品の販売を行いましたが、市が菊人形来場者への1割引補助を行ったところ大好評でした。  また、来年の1月には菓子博、2月には酒まつりが行われます。両イベントも規制をなくしコロナ禍前と同規模で行う予定です」  ――円安や燃料高が深刻な課題となっています。  「燃料・物価高は、当然大きな問題ですが、それ以上に管内では人手不足が深刻です。家族経営のような小規模事業者は別にして、どの会員企業に聞いても、やはり人手不足が一番深刻な課題であるとの話が出ます。そんな中、会員企業によっては外国人研修生を迎えて補っている企業もあります。  会議所としては、市と合同で意見交換をしながら人手不足に向けた課題解決を図っています。特に、地元の若者がこの地域に残って、地元企業で働いてほしいという思いから、高校生に対する研修制度などのカリキュラムを少しでも設けていただければ、若者の興味も地元に向けられるのではないのかと思います。市内には認知度は高くないものの、世界に誇れるような企業が多いのです。これまで、企業ガイドブックといったパンフレット配布を行ってきましたが、今後は映像でまとめたDVDなどを各学校に配布することを考えています。やはり、実際の映像を、自分の目で見てもらった方がより説得力があるでしょうからね。ほかにも、企業説明会などを実施し、会議所として少しでも人手不足解消に向けた活動を行っていきたいと思っています。  また、市内では空き店舗利用が多く、伝統的に菓子店が多いので空き店舗を利用した菓子店がオープンするなどしています。とはいえ、まだまだ空き店舗が目立つ状況ですから、さらなる対策を講じていきたい。  今年からインボイス制度がはじまりましたが、会議所では説明会を常時開催しています。会員企業には零細企業も多く、猶予制度の中身等を理解していない企業も少なくありませんので、丁寧な説明を続けていきたいと思います」  ――国・県に望みたいことは。  「安達太良山のくろがね小屋は閉鎖されたままになっています。県でも2025年の完成を目指すことになっていますが、建設に向けては資材をヘリコプター輸送しなければならないなどの問題があります。中通りでも有数の日本百名山の1つでもあり、観光資源でもありますから、トイレの問題はもちろん、登山者や観光客の安全を守るという意味でも早期の建設をお願いしたいと思います」  ――現在の重点事業について。  「会議所が果たすべき役割の原点に立ち返り『会員と共に一歩前へ! ~信頼される「地域総合経済団体」を目指して~』を基本行動に据え、施策事業を実行するとともにさらなる組織強化に努めていきます。  特に人口減少や高齢化などの事業者が抱える社会構造的な課題に対して、『地元事業者の経営基盤の強化』と『持続性のある地域の活性化』を活動計画の柱として、各種事業を展開していきたいと思っています。  具体的には、巡回相談・専門相談を各種経営支援事業の核として、会員企業の実態とニーズに即した支援を寄り添いながら実施していきます。また、IT化によるDX支援など、経営の効率化と生産性の向上につながる支援や働き方改革、社会保障などの諸制度に対して、即応できる体制の強化を図り、労働環境改善、健康経営を進めていきます。  また、会議所だけの事業ではありませんが菊人形が今年で67回目を迎え70回の節目が迫っています。東日本で菊人形を開催しているのは二本松市だけで、70年の長い間継続したことは誇りであり、技術継承も必要だと思います。二本松の菊人形は、菊栄会が中心になって行われていますが、次の80、90周年を見据えて、会議所としても、例えば体験型の催しなど、70周年に向けた提案を行っていきたいと思います」  ――今後の抱負。  「就任直後も話したようにオール二本松で当たっていきたいと思います。そういう意味では、常議員をはじめ、会員企業の皆さんには積極的に参加していただき感謝しかありません。夏祭りや酒祭りといったイベントにしても、会員企業と一緒になってもっとアイデアをひねりながら、さらにいいイベントにしていきたいと思います。  二本松市は、すごくいいところがたくさんあるにもかかわらず、地元住民が知らないことも多くあります。もう一度、二本松市の魅力を再発見する取り組みを進めていきながら、インバウンドにつなげていきたいと思います。いまは円安の影響で外国人観光客が多く国内に訪れています。市内でもエビスサーキットには多くの外国人が訪れるなど地盤はあると思います。以前からインバウンドに向けた取り組みを行ってきましたが、あらためて、市内にインバウンド観光客が訪れる仕組みづくりを進めていきたいと思います。  来年1月には岳温泉のあづま館がグランドオープンします。岳温泉の各旅館もコロナ禍の影響で苦労していますが、あづま館はサウナ施設をオープンさせるなど、頑張ってくれています。市内の観光名所である岳温泉は安達太良山とセットで大きな魅力の1つです。そういった管内の魅力をもう一度見直していきたいと思います」

  • 【原町商工会議所】高橋隆助会頭インタビュー(2023.12)

    【原町商工会議所】高橋隆助会頭インタビュー(2023.12)

     たかはし・りゅうすけ 1951年生まれ。原町高、拓殖大卒。㈱高良代表取締役。原町商工会議所副会頭を経て2010年11月から現職。現在5期目。  原町商工会議所の高橋隆助会頭は昨年から5期目の任期に入り、この間、震災・原発事故や新型コロナウイルス感染症の拡大など、厳しい環境下で、舵取り役を担ってきた。高橋会頭にコロナ5類以降の管内の経済状況や、地域の課題、今年度の重点事業、今後の抱負などについてインタビューを行った。 事業者が安心して事業できる環境を整備する  ――新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に移行しました。  「5類移行により、状況は変わりつつあります。移動制限がなく、会議やセミナーなどはリアル開催になりました。親睦会などもこれまで通りの開催となり、飲食店も賑わいを取り戻しています。これからはビヨンドコロナをどのように行動していくかがカギになってくると思います。例えば、コロナ禍で営業自粛を余儀なくされた事業所に勤務していた方々が離職し、現在も前職復帰が進まない事例があります。また、オンライン会議をはじめ、加速度的に発展したIT、IOT、AIなどは今後さらなる発展が予測されます。大きく様変わりをした環境に対応していくことも急務だと思います」  ――円安や物価高が深刻になっています。  「8月に会員に実施した管内景気調査によると、約半数の事業者が『業績が悪化している』と回答しており、その理由に『仕入れ価格の動向』が最も多く挙げられています。経営上の問題としては全業種で『売り上げの停滞・減少』が挙げられ、製造業・サービス業では『価格転嫁できていない』、商業・建設業では『人材不足』の割合が高くなっています。物価高が経営を圧迫する中、『適正な価格転嫁』と『人材の確保』が今後の経営上の取り組みとして大変重要だと捉えています」  ――10月に「第4回ロボテス縁日 ロボット・ドローン大集合」が行われました。  「国家プロジェクトである『福島イノベーション・コースト構想』の認知度向上を軸に、南相馬市や県内外でロボット・ドローンの開発に取り組む企業・団体・大学等が研究と開発の成果を広く発表し、県民の皆様に親しんでいただける機会として開催されています。4回目の開催となった今年は、浪江町に設立された『福島国際研究教育機構(F―REI)』と『福島水素エネルギー研究フィールド』を紹介するコーナーを新たに設け、浜通り広域に渡って『復興』を感じ取ることができる内容としました。日本のロボット・ドローン産業の拠点として『福島ロボットテストフィールド』の知名度を向上させ、それがまた新たな産業を生み出す『種』となり復興の好循環へとつながることを祈念しています」  ――「相馬野馬追」が5月に変更する素案が決まりましたが、どう捉えていますか。  「かつてこの地域では『暮・正月』『お盆』『相馬野馬追』の3つの行事が生活や仕事の大きな節目となっていました。経済界も同様でこの3つの行事前に『納品』『集金』『支払い』などの商慣習を区切りとして行っていたこともありました。時代の変化と共にその慣習も見られなくなってきましたが、『相馬野馬追』はこの地域にとって生活慣習などにも影響する大切な行事です。その開催時期が変更されることは、近年の猛暑の影響もあり多くの人が賛成するところですが、地域行事・イベントをはじめ多くの生活や仕事のスケジュールが変わっていくことになろうと思います。例えば出場する騎馬武者は準備が2カ月前倒しになり、自分の準備や馬の調教もずれ込んできます。相馬野馬追に付随する行事もずれ込みますが、その半面6月、7月には仕事や事業に集中できるようになります。このように多くの物事が変わっていきます。今後は市役所を筆頭に全市で検討を重ねていく必要があると思います。商工会議所もしっかりと協力していきたいと考えています」  ――今年度の重点事業についてお聞かせください。  「今年度は次の3点を基本方針に取り組んでいます。1つ目が東日本大震災及び原発事故からの復旧・復興です。国の『第2期・復興創生期間』が残り3年度となる本年は、商工業者同士がつながりを持てる地域経済環境の整備を図りたいと思います。  2つ目は相談業務及び事業所支援の充実です。地域の商工業者に対して、伴走型支援を実施すると同時に個々では解決が困難な問題に対し、会員の意見を集約して建議活動を行っていきます。  3つ目は関係機関との連携強化です。複雑かつ多様化する問題に対して、日本商工会議所をはじめとした関係機関と連携して対処していきたいと考えています。  特に地域経済環境の整備は重要であると捉えており、福島イノベーション・コースト構想を活用して産業交流を促進するため、進出企業と当会議所役員・議員との交流会を実験的に開催しました。引き続き地域資源を活用した産業交流を促進し、新たな取引増加につながる事業を検討していきたいと思います」  ――国・県に望むことは。  「10月から開始したインボイス制度について、十分な理解が進んでいるとは言い難い背景から、中小企業者等への負担軽減措置が必要だと考えています。当会議所においても昨年からセミナーの開催、小冊子の配布、窓口での重点的な相談等を実施していますが、特に小規模事業者への支援を継続していきたいと思います。本制度は単に新たな制度の導入という概念に留まらず、事業者の取引そのものに影響を与えるもので、すでに一部の軽減措置は取られていますが、理解が完全に醸成されるまでは引き続き負担軽減措置をお願いしたいと思います。  また、ロシアのウクライナ侵攻や中東問題等、事業所を取り巻く地政学的環境はこの数年で急激に悪化しました。事業者にとって地政学リスクを踏まえた視点は不可欠となっていますが、自助できることには限りがありますので、国の積極的な関与や支援策の実施により、安定的な経営ができる環境整備を期待します。  加えて、ALPS処理水放出に伴う風評被害への対策や障害が生じた場合の適正な賠償、中間貯蔵施設の除去土壌の最終処分、1日も早い廃炉の実現など、原発事故に関する問題への対応もしっかり行っていただきたいと思います」  ――今後の抱負。  「地政学リスクへの対応、地域資源としてのイノベ構想の利活用、労働力不足、廃炉など、地域の商工業者が抱える問題は山積しています。また、人口減少社会の中での販路拡大や事業承継問題にも継続して取り組む必要があります。会議所としては、事業者が安心して事業を継続できる環境を整備するため、役職員全員で事業に取り組んでいきたいと思います」

  • 【福島県温泉協会】遠藤淳一会長インタビュー

    【福島県温泉協会】遠藤淳一会長インタビュー

    えんどう・じゅんいち 1955年生まれ。高湯温泉吾妻屋社長。2015年から福島県温泉協会会長を務める。  ――温泉協会の活動と役割についてお聞かせください。  「名前の通り、福島県内の温泉に関わる旅館を中心とした組織で、会員数が130軒前後の任意団体です。法人団体ではありませんが、日本温泉協会とのつながりや県の薬務行政として温泉審議会に携わるなど、行政とのパイプ役として活動しています。加えて、会員の皆様に向けて温泉に関する勉強会を開催して知識向上に努めたり、各温泉地だけでは難しい取り組みを協会を通じて全県下でやっていったりと、多角的な役割を担っている組織と言えます」  ――コロナの法的位置付けが5類に移行され、9月からは観光キャンペーンが実施されています。  「昨年は全国旅行支援などの補助金制度がありましたが、5類移行に伴ってそれもなくなり、ある意味では今年からが勝負の年になっていくと言えます。温泉協会の会員の強みは、どこの施設も温泉を持っていることです。ある旅行会社が実施した『コロナ禍が明けたら何をしたいですか』というアンケートでは、『温泉に行きたい』という回答が最多でした。我々としても、そうした方々に来ていただけるよう温泉を最大限に活用していく考えです。実際、県の観光キャンペーンの影響もあってか、各地のお客様の入り込みは増えています」  ――高湯温泉と土湯温泉では、脱炭素化に向けた取り組みが進められており、持続可能な観光地づくりに取り組む国立公園内の地域を登録する環境省の「ゼロカーボンパーク」制度で、東北初の登録を受けました。  「都市部の温泉地にも脱炭素化への意識は芽生えつつあり、今回の『ゼロカーボンパーク』の登録によってその流れが大きく波及していくものと見ています。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)や日本温泉協会が中心となり、脱炭素化を目指す動きが広まっていますが、今回の東北初の登録は脱炭素化への取り組みを周知する良いきっかけとなり、今後、高湯・土湯両地域合同で、どのような取り組みを進めていくのか協議していく考えです。  現状の取り組みとしては、土湯温泉では再生可能エネルギーの一つである温泉熱を利用したバイナリー発電施設の整備が進められており、高湯温泉は源泉かけ流しという形をとり自然の地形を生かして引くことを実施しています」  ――今後について。  「国内のインバウンドが増えている一方で、福島県への来客者数は決して多いとは言えません。その原因としては原発事故の影響が未だにあります。その点は国や県に正確な情報発信をお願いしたいですし、温泉地まで足を運ばずとも、国内の関係人口を増やすため行政に要望や提言していく予定です。  また、日本温泉協会で日本固有の温泉文化をユネスコの世界文化遺産に登録しようという動きが群馬県の山本一太知事を中心に展開されており、県温泉協会としても協力していく考えです。登録によって県内インバウンドの増加につながるものと見ています。  このほか、再生可能エネルギー事業において、福島県は原発事故の風評被害等、他県とは異なる状況にあることを考慮のうえ、福島県独自の再生可能エネルギー事業のガイドラインを作成し、温泉関係者や観光等に関係する機関を保護していくことも重要と考えます。  温泉は有限であり無限でないことを念頭に置き、これを守るべく会員皆で協力していく考えです。温泉を好きな皆様に、いつまでもこの素晴らしいお湯を楽しんでいただけるように努力していく所存です」

  • 【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー(2023.12)

    【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー(2023.12)

     おの・えいじゅう 1954年10月生まれ。慶應義塾大商学部卒。オノエー㈱社長。いわき商工会議所副会頭を経て2011年5月から現職。現在5期目。  いわき商工会議所ではコロナ禍や資材・燃料価格高騰で厳しい経営を迫られる会員事業所の相談に乗り、支援を行っているほか、産業振興、政策提言などの活動に取り組んでいる。コロナ禍がひと段落したいま、いわき市の中小企業はどのような経営状況になっているのか。同商議所会頭の小野栄重会頭(オノエー㈱社長)に話を聞いた。 「復興モデルいわき」の実現に邁進する  ──新型コロナウイルスの5類移行が実施され、管内でもイベント等が通常開催されるなど、従来の活気が戻りつつあります。現状についてどう分析していますか。  「市内の3大まつりであるいわき花火大会、いわき七夕まつり、そしていわきおどりが通常開催され、閉塞感が払拭されて、活気が戻った印象を受けます。  しかし、コロナ禍以前と比較するとライフスタイルが大きく変化し、それに対応できる企業とそうでない企業とで差が出始めています。コロナ禍のころには補助金や支援金、ゼロゼロ融資がありましたが、現在はそうしたものも無くなったうえ、融資の返済期間が始まるなど、経営的に厳しい部分が目立っています。  加えて国際情勢の変化による円安や原料高、燃料高といったコスト高が進み、見合った利潤を出すことができず、それも経営を圧迫する要因の一つとなっています。  また、需要が上向いたとしても、人手不足で事業の拡大ができないという問題があり、そうした部分も踏まえて商工会議所が本腰を入れて支援していく必要があり、寄り添った支援をしなければ廃業・倒産のリスクが増えていくと見ています」  ──円安や原料高、燃料高に加えて人手不足や後継者問題について、会員事業所からはどのような声が上がっていますか。  「業種を問わず、すべての業者から今後に対する不安の声が聞こえています。特に原価が上昇した分を価格に転嫁できない企業は利益が出せないので人件費の支払いにも苦労しています。飲食業では大口の宴会予約や団体の宿泊予約があったとしても、それに対応できず事業規模を縮小せざるを得ない状況もあります。  人手不足が顕著な業種は運輸業で、バスの路線減少や観光バスの運行状況への影響、物流の停滞によるエンドユーザーへのしわ寄せなどが大きな問題です。  会員事業所のほとんどが中小・小規模企業で、事業承継もままならない中、廃業を決断する事業所も出てきており、我々としても間に入りマッチングなども含めて支援しなければならないと考えています。  国の補助金制度や専門家派遣制度など、さまざまな支援がありますが、事業者によって経営課題は異なります。一律の補助制度ではなく、事業者ごとに応じたきめ細やかな支援策を商工会議所が窓口となって国に要望していく所存です」  ──JRいわき駅前の並木通り再開発事業の工期延長の発表がありましたが、いわき駅周辺の開発事業の進捗について。  「資材高騰による工期延長は仕方ない部分がありますが、大きな目で見れば順調に進んでいるものと見ています。並木通り再開発事業や駅周辺の開発事業、イトーヨーカドーの跡地の整備事業は、民間主導で立ち上げた中心市街地活性化協議会で定めた中心市街地活性化基本計画に基づき進められており、行政と一体となって取り組んでいます。強固な官民連携は他市に負けない部分だと思います。事業の進捗を注視し、市民の理解をいただきながら事業が進んでいくよう、当会議所としても、連携協力を図りながら中心市街地の魅力を大いにPRしていきたいと思っています。  再開発の一環として整備されるマンションの成約率は90%を超えているようです。マンションの需要も高まっていますし、平地区の居住人口がさらに増え、街中のにぎわい創出につながると考えています。  もっとも、そこに住む人が生きがいを持って楽しく生活していくためには周りの商店街が頑張らなければいけませんし、整備される商業施設がまちの拠点として機能していけるよう、当会議所としても連携を密に取り組んでいかなければなりません。我々としてもさまざまな施設を盛り上げていきたい所存です。  中心市街地活性化の影響を市内各地区に波及させ、活性化に生かしていきたいと考えています」  ──福島第一原発敷地内に溜まるALPS処理水の海洋放出が行われました。影響はいかがでしょうか。  「当初は海洋放出による風評被害の影響を懸念していました。ただ、一部の国で輸入を禁止するという動きはあったものの、俯瞰的に見れば国内では処理水の安全性が理解され、『常磐もの』を応援しようという動きが広まりました。その大きなバックボーンとなったのが全国515の商工会議所の連携であり、販路開拓にご協力いただきました。今後も全国各地の商工会議所との連携は続いていくと思いますし、当会議所としても積極的に音頭を取り、マーケットの拡大に努めていく考えです。  ある意味、『常磐もの』を世界中に発信できる機会であり、マイナスイメージの払拭にもつながります。ピンチをチャンスに生かし、常磐ものを世界に冠たるブランドに発展させ、いずれは輸出規制の緩和や輸出量の増大につなげていきたいと考えています」  ──その他重点事業について。  「活動の3つの柱の1つは中小企業の振興活動です。企業の経営・存続に寄り添い、国や県とのパイプ役となって支援していくほか、市内企業の新たな販路開拓の牽引者としての役割を果たしていきます。  2つ目が産業振興です。市内のポテンシャルを秘めた企業を支援すべく、産業人財育成を進め、地場産業を守りつつ、新産業の萌芽に努めていく必要があります。  3つ目が政策提言・組織の強化です。さまざまな課題について、現場目線で国や日本商工会議所に訴え、市内企業の地盤の強化につなげて、〝変化への挑戦〟に対応できるいわき経済界を作り上げていきます」  ──今後の抱負を。  「会頭就任以来言い続けてきたのが、〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現です。  5期目のキーワードには〝変化への挑戦〟を掲げています。世界情勢が猛スピードで変化する激動の時代に対応し、挑戦することが非常に重要な課題であると考え、今期のテーマを〝挑戦、シン化。そして未来へ〟に定めました。  会員事業所による新たな事業への挑戦、コスト削減への取り組みを積極的に応援し、共に未来へ向かって歩みを進めていきます。こうした歩みを通し、先ほどお話しした〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現に邁進していきます」 いわき商工会議所ホームページ

  • 【富岡町】山本育男町長インタビュー(2023.12)

    【富岡町】山本育男町長インタビュー(2023.12)

    やまもと・いくお 1958年8月生まれ。原町高、東京農業大卒。町議を連続5期務め、副議長などを歴任。2021年7月の富岡町長選で初当選を果たした。 帰還と移住促進や賑わいづくりに取り組んでいく  ――今年4月に「特定復興再生拠点区域」が避難指示解除となりました。  「11月現在で64世帯94人の方が居住しています。震災以前の夜の森地区は多くの方が住んでいた地域でした。同地区の生活環境を充実させ、にぎわいを取り戻すことが、町内の均衡ある発展、ひいては本町の真の復興につながるものと考えているので、買い物環境を備えた住民の憩いと交流の場となる温浴施設の整備を現在検討しています」  ――昨年「共生型サポートセンター」を開設しましたが、現在の状況は。  「特別養護老人ホーム『桜の園』には10月末現在、33人が入所しています。最大48人入所可能なので、運営スタッフを確保しながら、地域福祉の拠点として運営体制強化を図ってまいります。併設しているトータルサポートセンターとみおかは、高齢者等の支援に限らず、カフェやフィットネスジム、ワークショップルームなどがあり、交流の場として多くの方にご利用いただいています」  ――その他取り組んでいる重点事業は。  「1つ目は『農業と商工業の育成』です。現在、玉ネギの集出荷施設を建設中で、年度内に完了する予定です。令和2年4月に供用開始した富岡産業団地は進出企業がほぼ決定し、現在第2産業団地建設に向けて調査中です。  2つ目は『帰還と移住の促進』です。お試し住宅を利用した短期間の町内滞在や、帰還・移住関連補助金の問い合わせに丁寧に対応し、移住定住増加に繋げていきます。首都圏の親子を対象としたツアーを実施し、大変好評をいただきました。本町を訪れる人を一人でも増やすため、町の特性を生かした魅力的なイベントを積極的に企画してまいります。  3つ目は『子どもたちの環境作り』です。来年3月には放課後児童クラブが完成します。子育て世代が安心して働ける環境づくりを進め、子どもたちを大事にする町として充実を図っていきます。また、本町には現在小・中学生が71人いますが、中学校卒業後は町外の高校に進学することになります。その子どもたちが、本町に戻ってきたくなるような教育や施策を進めます」  ――今後の抱負を。  「町内には未だ避難指示が解除されていない地域があります。今後、必要となる環境整備を着実に進め、一刻も早く、1㍉でも広く避難指示の解除を実現させ、町が真に目指すところである町内全域の避難指示解除に向けて邁進していきます。また、にぎわいづくりにも力を入れ、人が人を呼び込む交流人口の拡大にも全力で取り組んでまいります」 富岡町ホームページ

  • 【浅川町】江田文男町長インタビュー(2023.12)

    【浅川町】江田文男町長インタビュー(2023.12)

    えだ・ふみお 1955年生まれ。2003年から町議を4期途中まで務め、その間、副議長などを歴任。2018年10月の町長選で初当選。現在2期目。 子育て支援と福祉環境の充実を図っていく  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されました。  「徐々にコロナ禍前の賑わいが戻りつつあると感じています。『花火の里浅川ロードレース大会』は、今年は過去最高の参加者数となりました。また、『浅川の花火』も、町内外から多くの方に来場いただき、例年以上の人出となり賑わいました。このほかにも、浅川町ならではの魅力ある地域資源が多くありますので、さらなる賑わいづくりのため、町の魅力発信に努めていきます」  ――エスプール(東京都千代田区)と包括連携協定を結び、ゼロカーボンシティへの取り組みを開始するそうですが。  「これまでも、地球温暖化対策実行計画に基づき、住宅用太陽光発電システム設置補助や公共施設照明のLED化、ふくしま森林再生事業への取り組み、ごみの分別指導、食品ロスの削減協力依頼など、さまざまな形で啓発や推進を図ってきました。今後は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、持続可能な地域づくりにつなげるためのロードマップを策定するほか、エネルギー利用の効率化に向け、次世代自動車の導入や建築物に対する高断熱化、太陽光発電設備の導入など、できるところから取り組んでいく予定です」  ――浅川中学校校舎の建て替え工事と、浅川小学校跡地への役場庁舎移転構想について。  「浅川中学校校舎新築工事は、8月に安全祈願祭を行い工事に着手しています。工事の進捗状況は、おおむね順調です。なお、別工事として新たに用地を取得し、テニスコート3面を整備する敷地造成工事は、予定通り8月中に完成し、9月上旬からテニス部の部活動で使用しています。今後も事故がないよう安全管理を徹底し、周辺地域の方々や学校生徒・教職員への安全にも配慮して、来年8月の新校舎完成を目指して工事を進めていきたいと考えています。  また、浅川小学校跡地への役場庁舎移転構想については、引き続き検討していきます」  ――今後の重点事業について。  「人口減少・少子高齢化対策が急務で、引き続き切れ目のない子育て支援と福祉環境の充実を図っていきます。特に子育て支援については、小中学校の入学祝金、高校生の通学費助成等のほか、今年度新たにこども園保育料の軽減や学校給食費の全額補助に取り組んでいます。今後も町民の声に耳を傾け、『子育てするなら浅川町』をモットーに、さらなる充実に努めていきます。そのほか、移住定住の促進や農業者支援、道路改良等の計画的なインフラ整備など、本町の重要課題への対応を一歩ずつ着実に進めていきます」 浅川町ホームページ

  • 【相馬市】立谷秀清市長インタビュー(2023.12)

    【相馬市】立谷秀清市長インタビュー(2023.12)

     たちや・ひできよ 1951年生まれ。県立医大卒。95年から県議1期。2001年の市長選で初当選。現在6期目。18年6月から全国市長会会長を務める。  ――5月に新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に引き下げられました。今年は相馬野馬追が通常開催されるなどイベントが戻りつつありますが市内の状況は。  「ワクチン接種への関心が大分薄れています。新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に引き下げられる一方、ワクチンの副反応への警戒が残っていることが接種率低下につながっているようです。重症化率が高い高齢者や基礎疾患を抱える方を念頭に接種体制を整えています。高齢者が重症化しやすいのは、現在流行しているインフルエンザについても同じです。個人の意思を尊重した上で接種を勧め、流行と重症化リスクを下げるよう対応していきます。催しはできるだけ活発にやりたい。市の新春のつどいは、来年は行います」  ――一昨年2月、昨年3月に福島県沖地震が発生し、相馬市は2年連続で震度6強の揺れに見舞われました。この間、市内では台風などによる水害なども発生しましたが、復興状況と対策はいかがでしょうか。  「多くの住宅が損壊しました。行政として公費解体などできる支援はしてきたつもりですが、被害に遭った方の人生への影響は計り知れません。私の家も大規模半壊で建て替えざるを得ませんでした。70歳を過ぎて家を建てるのは容易でない。解体が必要な家屋は千数百軒で、約90%は解体が済んでいます。難しい判断なので解体はせかさず、時期を待って行政の手を差し伸べます。解体と移転が進むと更地が増えます。街なかを散歩すると空き地が増えているのが分かります。行政として、1年単位ではなく、10年、20年先を考えてリカバリーしなくてはなりません。リカバリーが新たな景観やビジネス創出につながってほしい。  建て替えてまた再起した飲食店やホテルもあり、繁盛している店舗もあります。市としては、もう被害には遭わせないという気持ちで水を吸い上げるポンプ車を新たに2台配備し、さらに宇多川と小泉川の河川改修をしました。過去には水田で保水効果があった土地が宅地化でアスファルトになるなど土地の変化が水害に与える影響は大きいですが、対策を抜かりなく行っていきます」  ――福島第一原発の処理水が放出されました。「常磐ものを食べて応援キャンペーン」が好調ですが観光の状況はいかがでしょうか。  「私が知る限りでは、マイナスの影響はそれほどありません。IAEAの厳しい基準を各国が支持しています。米国のエマニュエル駐日大使が相馬市を訪れ、意見交換をしました。海洋放出については大丈夫、つまり影響がないことを示す科学的な根拠があるという趣旨のことを言ってくれました。  中国内から日本の公共機関や店舗へ嫌がらせの電話が相次ぎ、それに対する反発で国民が冷静になった面はあります。相馬市内でも学校や病院、飲食店に中国語の電話や無言電話がずいぶんあり、業務を妨害されました。市民の間に科学的なデータに基づいて考えようという気持ちが芽生えました。  全国市長会会長として、教育現場で放射線を正しく学ばせてほしいとこれまで訴えてきました。高校入試に出題するように求めましたが、実現はまだ遠いです。副読本だけではリテラシーは十分に身に着かないと思います。  新たな名産として期待がかかるふぐの季節が始まりました。地元料理店での提供も徐々に増え、名物料理としても今後に期待ですが、漁業資源としては好調です。かねてからの名産地である山口県下関市のふぐ取扱業者が相当量買い取ってくれています。この前、全国ふぐ連盟の方々が相馬市を訪れ意見交換をしました。下関近海では温暖化の影響で近年ふぐが不漁です。相馬で獲れたふぐで下関のふぐ産業を支え、双方に実りあるようにしたいです」  ――今年度取り組んでいる重点施策についてお聞かせください。  「行政の役割は困った人たちに対して救いの手を伸べること、すなわち『不幸の緩和』です。自然災害や疫病への対応など住民の生活環境を守る義務を果たしていきます。無責任に夢みたいなことを語るよりも、目の前の義務を果たすことが一番大事なことだと思っています。  物価高で困窮者が増えています。政府が総合経済対策を進めていますので、市町村分について、生活困窮者には特に対応していきたいです」  ――全国市長会会長として政府に求めたいことは。 「たくさんあります。11月15日には副会長ら8人で与党の両政務調査会長と、内閣官房長官らを訪ね、『減税する際に市町村に迷惑を掛けない』との言質を取ってきました。減税とは地方自治体の税収減も意味するからです。  これまで他には児童・生徒が1人1台のタブレット端末で学ぶGIGAスクール構想の財源確保を要望してきました。同構想は5年を迎え、タブレット端末の更新を迎えます。5年に1回更新費用をその都度要望するのは非効率なので恒久財源を付けてほしいと訴えました。文部科学省は基金で対応することになりました。  来年から新型コロナワクチン接種が有料となりますが、単価が高いと市町村間の公費負担に差が出るので、負担に格差がないようにしてほしいと政府に要請しています」  ――今後の抱負を。  「重点施策と重複しますが、不幸な事態を最大限に緩和することです。長い目で見ると人口減少が不幸な事態です。それを解消するには企業誘致に励み、県外に流出が進む女性の働く場所をつくらないといけない。今年は企業誘致がまとまって、市内の工業団地用地をいくつか売却しました。人口減少に歯止めをかけるのは難しいですが、対策を積み重ねていかなければなりません。野球に例えればホームランを打つのではなく、バントでヒットを狙って、着実に返すような守り主体にしていかなければならない。  地道にコツコツが私の信条です。守りを継続していけば攻めに転じるチャンスが必ずある。一つが浜の駅松川浦です。浜の駅には原発事故後の風評被害の中、相馬の魚介類を味わってもらい『安全なんだな』と来場者に納得してもらう役割を担ってもらいました。『攻』というよりは『守』です。今や大勢の人で賑わい、近隣食堂に経済効果が波及するほどです。ところが、賑わいが商店街まで波及するかと期待したところに地震と水害、新型コロナ禍が襲いました。  市を挙げて地道にコツコツ石を積んでいたところを崩された感じです。打撃は大きいですが、『不幸の緩和』のために守り続け、幸福という攻めに転じるために、苦境の中でも対策は積み上げていかねばなりません。行政とはそういうものです」 相馬市ホームページ

  • 【福島県電設業協会】大槻博太会長インタビュー

    【福島県電設業協会】大槻博太会長インタビュー

     おおつき・ひろた 大槻商事、大槻電設工業代表取締役。2017年5月に県電設業協会長に就任(4期目)。福島商工会議所副会頭、県建設産業団体連合会副会長を兼務。 働き易く、魅力ある業界の構築に努める  ――協会の現状についてうかがいます。  「福島県電設業協会の会員数は現在50社であり、年々減少傾向にあります。内線工事、外線工事の有資格者・技術者不足による退会企業もあります」  ――業界を取り巻く課題についてうかがいます。  「まず、喫緊の課題として挙げられるのが『働き方改革』であると考えます。12月1日には自民党本部に陳情にうかがい、現状についてお話しさせていただきました。  労働における時間的な制限と工期がマッチングしなければ働き方改革の根本が揺らぐ事態となります。発注者側に対しては、残業など労働実態を反映させた工期を強く求めたいと思います。  今年は猛暑に見舞われ、作業も過酷を極めましたが、福島県では熱中症対策の一環として気温が35度以上になり作業を止めた場合に、その日の分を工期に加算し、期限を延ばす仕組みを確立していただいております。これは大変画期的なことである点を付言したいと思います。まずは人命が最優先ですので、ぜひ業界全体において浸透を図っていきたいと考えます。  次に、業界内における週休2日制の問題です。単独で受注する工事については完全に実施できますが、建築工事の現場となると大変難しいのが現状です。  建築工事は本体工事、電設工事、設備工事の三つの業者で基本的に構成されていますが、電設・設備業は建築物が完了したタイミングで工事に着手するという事情があります。もし建築工事で遅れが生じても、電設工事や設備工事は建築の工期に合わせなければなりません。その遅れにより作業工程が圧迫され、結果的に残業を余儀なくされてしまうのが実態です。  一方、県では現在この問題に対して、設備調整期間を設定し、特記仕様書にきちんと盛り込むなど適切な対応をしていただいています。運用に関してはこれからの課題となっていますが、設備調整期間が2週間と設定されれば、建築工事概成後、電設工事、設備工事で2週間の期間があらためて認められるようになるため、電設・設備業としては大変助かっています」  ――その他の重点事業についてうかがいます。  「各自治体に対しては、最低制限価格が担保される建築・電気・設備の3分割による分離発注を行っていただけるよう積極的に要請しています」  ――結びに、抱負をお聞かせください。  「業界の発展に向けてはまず魅力づくりが重要と考えます。完全週休2日制の実現など休日の確保をはじめ、電気がいかに日常生活や地域に寄与しているかについて、電設業の立場から効果的なPRを展開することで、電設業界に興味・関心を持っていただけるような取り組みについて議論を重ねていきたいと考えています」

  • 【県南建設事務所】手塚孝良所長インタビュー

    【県南建設事務所】手塚孝良所長インタビュー

     てづか・たかよし 1967年生まれ。福島市出身。東北大工学部資源工学科卒。1989年福島県入庁。道路整備課主幹、下水道課長などを歴任。今年4月より現職。 県民が求める社会資本整備・管理に取り組む  ――4月に県南建設事務所長に就任されました。管轄地域の印象はいかがでしょうか。  「栃木・茨城両県と接し、東北新幹線、東北道、あぶくま高原道などの高速交通網が発達している一方で、美しく豊かな自然に囲まれた地域でもあります。白河関跡、小峰城跡、棚倉城跡など歴史的文化遺産や伝統文化も多く魅力溢れる地域です」  ――2月4日には国道294号白河バイパスが開通しました。  「市街地を通る現道はクランクが多く、十分な歩道幅も取れないことから、1995(平成7)年度に延長4120㍍のバイパス整備に着手しました。開通により安全・安心な通行が確保されるとともに、市街地を経由して白河中央スマートインターチェンジと国道289号が直結し、白河厚生病院等へのアクセスが向上しました。市の循環バス『こみねっと』が4月からバイパス経由の新規路線を開設したほか、バイパス周辺にある小峰城や南湖公園への観光客も増加しています」  ――建設業界の人材不足が課題となっていますが、県としての対策は。  「県土木・建築総合計画でも目標の一つに『持続可能な建設産業』を掲げています。当事務所では担い手確保として、小学生や高校生、一般の方向けの現場見学会を実施しており、関心を持っていただけるようにそれぞれ内容を工夫しています。  一般の方向けの現場見学会としては、昨年度に南湖トンネル、今年度に堀川ダムでキャンプを実施し、施設の役割や建設業の重要さを学んでいただきました。子どもからお年寄りまで多数の参加があり、建設業をアピールできたのではないかと思います。  トンネルキャンプは全国でも2例目、ダムキャンプは全国でも初の試みだと思われます。今後も、担い手確保に向け日々シンカ(新化)し、有効な取り組みを進めます」  ――結びに抱負を。  「県土木・建築総合計画の地域別計画で定められている『県を越えた広域連携の中心として、自然、歴史、伝統文化をいかしながら、持続的に発展する県南地域』の達成に向けて各種施策に取り組んでいきます。  道路事業では、国道289号、国道118号などの広域的な道路ネットワークの強化、幹線道路の整備を推進することで、地域の物流の円滑化、産業や観光の振興を支援し、活力あるまちづくりを目指します。  国が進める阿武隈川の遊水地群整備をはじめ、各水系の流域治水対策事業や砂防事業などの推進、県有施設の長寿命化事業などにも重点的に取り組み、災害に強く安全で安心なまちづくりに努めます。  安全・安心、豊かさを次代につなげられるよう、県民が求める真に必要な社会資本の整備、管理に取り組んでいきます」 県南建設事務所ホームページ

  • 【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー【2023.11】

    【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー【2023.11】

    たきた・やすお 1944年生まれ。郡山市出身。安積高、学習院大法学部卒。東北アルフレッサ㈱最高顧問。郡山青年会議所理事長、郡山商工会議所青年部会長などを歴任。現在、会頭3期目。  新型コロナは収束していないが、経済活動はコロナ禍前の動きに戻りつつある。一方、円安や物価高の影響は深刻で、人手不足や後継者問題も解消に向かう気配は見えない。こうした中、商都・郡山の経済は今どういう状況にあるのか。郡山商工会議所の滝田康雄会頭に、管内情勢や会員事業所の様子、将来ビジョンなどを聞いた。  ――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行され、管内でも7月にビール祭、8月にはうねめまつりが通常開催されるなどコロナ禍前の活気が戻りつつあると感じますが、滝田会頭は現状をどのように捉えていますか。  「『サマーフェスタ IN KORIYAMA・ビール祭』は7月下旬に3日間開催し、約5万9000人の人出がありました。ようやくイベントを楽しめるという雰囲気が会場にいた皆さんから感じ取ることができたと思います。出店者の方々は、地元の食材を扱う市内の飲食店でしたので、地域経済の活性化と地産地消につながりました。  また、今年のビール祭が成功した背景は、昨年に引き続いて街なかで開催したことにあると思います。昨年、コロナ拡大のリスクを理由に開催に否定的な意見もありましたが、私は感染対策をすれば問題ないと判断し、開催に踏み切りました。今思い返せば、停滞していた経済に大きな刺激になったのではないでしょうか。また、他の地域でも『郡山がやるならウチもやろう』というきっかけになったと聞いており、そういう意味でも、大きな意義があったと考えています。  翌週の8月上旬には、3日間にわたって『郡山うねめまつり』を開催し、約11万5000人の人出がありました。多くの参加団体も、それぞれが盛り上げようと意欲的に取り組んでくれました。市民の方々から、そして地域事業所などからは『開催してもらって大変良かった』と多くの声をいただき、コロナ禍前の日常を皆さんが求めているということを実感しました。  最後に、付言させていただきますが、忘れてならないのは実行委員会をはじめとする関係者の方々の頑張りです。開催準備はもちろん交通整理など、猛暑の中、それぞれの役割を果たしてくれたことが成功の一因であると言えます」  ――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。事業者からはどんな声が聞かれていますか。  「円安基調が続く中、資材・エネルギー価格の高騰など構造的な物価高は多くの中小企業に悪影響を及ぼしています。  人手不足については、特に建設業や製造業及びホテル、祭事といったサービス業で、コロナの影響による労働者の転職が起こりましたが、これら業種の需要が回復しても人手が戻らず困惑しているようです。他業種においても、求人に応募がほとんどないようです。一方で従業員については、賃上げでつなぎ止めている状況もあると聞いています。  また、後継者問題では、経営者の多くが高齢になる中、苦しい経営環境に置かれている中小企業では、廃業や清算を余儀なくされるケースも増えています。  これらを解決するためには、原材料の値上げや人件費の増加分を事業者間の取引等において適切に価格転嫁することが重要でありますが、交渉すること自体が難しいという事業者の声も聞かれます」  ――国や県にはどのような対策を望みますか。  「円安や物価高は構造的な問題であり、多くの事業者が苦労しています。国や県には、人材不足の解消と生産性の向上、さらに適正な価格転嫁が図れるよう、現状をしっかりと検証して政策の展開を図ってほしいと思います。  特にDX化については、具体的にどこに課題があるか、といったことまで踏み込んで対応することが大切で、しっかりと事業者の意見を聞いて、IT人材の活用施策や助成金の拡充など支援体制に繋げてほしいと思います。  そして、中小企業の稼ぐ力が強化されることを望みたいです。事業者が生産性向上や価格転嫁による適正な利益が得られれば、賃上げや雇用の確保につながり、ひいては経済の好循環につながりますので」  ――ゼビオが宇都宮市への本社移転を発表したり、うすいから高級ブランドが撤退したり、日和田ショッピングモールが改装による長期休業に入ったり、来年5月にはイトーヨーカドー郡山店の閉店が発表されるなど、管内は目まぐるしい情勢にあります。それら企業で働く従業員はもちろん、消費者も一定の影響を受ける状況にありますが、会議所ではどのような対応をしていきたいと考えていますか。  「近年の消費動向を見ると、Eコマース(電子商取引)などの進展により、従来の商取引の形態が大きく様変わりしています。  今回、転出した個々の企業が生き残りをかけて新しい取り組みを選択されたと思いますので、その経営判断は尊重せざるを得ませんが、地元の発展にご尽力いただいた企業が郡山を離れることは、まちづくりにおいても地域経済においても大きな痛手です。行政には新たな発展の機会となる計画づくりを進めてほしいと思います。  また、撤退や建て替えまでの期間については地元雇用が失われないよう、各社とも改善策をしっかり講じてほしいと思います。会議所としては、できる限りの協力をしていきたいと考えています」  ――滝田会頭が就任以来掲げている、郡山の未来像を考える取り組み「グランドデザインプロジェクト」について、その進捗と手ごたえをお聞かせください。 「平成30年11月に開かれた常議員会で承認されたグランドデザインプロジェクト構想は、コロナ禍の影響もありましたが、令和3年には路線バス(福島交通)のバスロケーションシステムが導入され、また安積高校の併設型公立中高一貫校については、要望した後に検討する旨のお答えをいただき、令和7年開校が示されるなど、徐々に形になりつつあります。 その一助になったのは、地元で暮らす若者たちの斬新な発想にあると思っています。20年後、30年後の郡山を支えるのは今を生きる若者です。彼らが郡山の将来を考えなければ、住みよいまちは実現しません。若者が考えや意見を出し合い、私たちベテランはそれをサポートする。そういう姿が未来の郡山を形づくっていくのだと思います。 グランドデザインプロジェクトを通じて、提案だけにとどまるのではなく、一つでも具現化していくことを目指していきたいです」

  • 【三春町】坂本浩之町長インタビュー【2023.11】

    【三春町】坂本浩之町長インタビュー【2023.11】

    さかもと・ひろゆき 1956年生まれ。田村高校、専修大学法学部卒。三春町総務課長、副町長などを歴任。2019年9月の町長選で初当選、今年9月に再選を果たす。  ――9月に行われた町長選で無投票再選を飾りました。  「選挙公約を記載したリーフレットを準備するなどして選挙に備えていましたが、無投票になったため、個人演説会もなく、様々な声を聞くことができず残念な部分もあります。選挙で審判を受けるのが本来あるべき形で、無投票によって全町民の信任を得られたわけではないことを自覚しつつ、職務に当たっていきたいと思います」  ――2期目の重要課題についてお聞かせください。  「1つは、1期目から取り組んでいる認定こども園建設と、アウトドア用品大手の『モンベルストア』が出店予定で、それに伴うアウトドア・アクティビティの環境創出です。こども園はすでに着工しており、モンベルストアは間もなく着工します。  また、新たな切り口として住環境を整備したいと思っています。具体的には空き家対策を町として進めていきたい。全国的に空き家の問題が叫ばれていますが、町内でも今後多くの空き家が出てきます。コンパクトシティのまちづくりを進めていくうえでも空き家対策は重要で、それに対する住宅のマスタープランを作成する予定です。  いま町で取り組んでいる第7次長期計画が令和6年で終え、令和7年から第8次長期計画に移行しますが、その中の柱の一つに、住環境の整備を盛り込み、新築や住み替えはもちろん、年を取り夫婦2人、あるいはどちらか一人だけになった時の住まいの流動化ということがあってもいいと思います。例えば、街なかのリフォームした住宅に移り住み思い入れのある元の住宅は残しておく。その方が亡くなってしまい、その住宅を誰も相続しないけど住宅の状態はいい場合は誰か別な方に住んでもらう。そういった形は、手間がかかるため民間業者では難しい。そこを行政として粘り強く地道に行い、少なくとも現在町内に住む方が、住むところがなくなり、町外に出るような事態は避けたいと思っています。  実際、町内には、家主さんから町が10年間の契約でお借りし、リフォームをして若者に貸し出す事業を行っています。現在は外国人実習生が住んでおり、そういった実績もありますから、状態の良い住宅を再利用できると思います。そういった考えにシフトしなければ住宅問題は今後もっと大きくなっていくと思います。簡単なことではありませんが、何もしないというのも行政の怠慢だとも思います。  もう1つは、間もなく町内の農業振興地域内の農用地区域の見直しを終えます。農用地として守っていく農地では、今後、何を栽培するかまだ決まっていないところもあります。町内はピーマンの指定産地になっていますが、すべての農地でピーマンを栽培しているわけではありません。国際情勢により小麦等の値段が高騰しており、国でも輸入に傾き過ぎる大豆と小麦などの栽培の奨励が行われています。とはいえ、農産物は一朝一夕でできるものではありません。町内では以前は大豆栽培が盛んでしたが、そうした過去の事例を踏まえつつ、農家に推奨作物を勧めると同時に、若い方が参入しやすい体制づくりを進めていきたいと考えています」  ――最初にお話があったこども園整備の現状は。  「原材料費高騰の心配がありましたが、事業者の企業努力もあってか大きな遅れはなく、順調に進んでいます。建設地は岩江地区になりますが、近隣から町内に転居する方は同地区に住宅を建てるケースが多く、同地区の住民の平均年齢が若くなっていますから、需要にも見合っていると思います。また、同園は町内東部から郡山市内の職場に通う方の通勤経路の途中に当たるため、利便性もあると思います。いまは広域行政の時代で、保育所や幼稚園も仕組みが変わりつつあり、今後は市町村を乗り越えた利用者の増加も想定しています。これから0歳保育もはじまりますが、今後は子どもを預けるための環境整備と、0歳から18歳のための政策を重点的に行っていきたいと思っています。また、町内唯一の高校である田村高校と連携を図りながら児童・生徒の育成に力を入れたいと考えています」  ――アウトドア用品大手の「モンベル」の店舗が町内にオープン予定で、町は同社と包括連携協定を結びました。  「『モンベルストア』が出店されるのは県内初で、近隣のキャンプ場との連携や登山客が多い会津地方などとも連携しながらつくり上げていきたいと思います。モンベルストアに訪れた方を町内の観光地などに誘導できるようにしたい。通年観光で神社仏閣などを歩いて回ってもらう取り組みに加え、ダム湖であるさくら湖の観光面でも、カヌー発着場の建設が行われています。そういった今までになかったスポーツが楽しめるようになるので期待しています。また、これを機に町民に向けて健康寿命延伸の観点から、町民に歩くことを推奨していきたいと思っています。今後は体力などに応じたコースなどの作成をモンベルと連携できればと考えています」  ――昨年、「滝桜」の天然記念物指定から100周年を迎えました。  「今年の来場者は12万8000人とコロナ前に比べ3割ほど増加しました。まだ5類指定前でしたが、売店も従来通り再開し、飲食の制限もありませんでしたので、その分増えたと見ています。ただ例年より開花が早すぎてバスツアーの来場者がほとんどいなかったのは残念でした」  ――そのほか、今後の重点施策について。  「河川改修が完了し、災害対策はほぼ終えています。ただ、ゲリラ豪雨など予測不可能な災害が多いのが実情で、町内にはアメダスと呼ばれる測定施設がないので町独自で整備しています。また、土砂崩れの危険を回避する傾斜測定を整備していきたいと考えています。そのほか、これからの超高齢化、人口減少の時代を迎えるに当たり、いまのうちに対策を行い、住環境整備やデジタル化によって、対策を講じることが必要になってきます。それらを2期目の任期中に進めていきたいと思っています」  ――今後の抱負。  「様々な政策を行って町民の方と接する中で、町民の方々が安心・安全に生活できる環境を、もっともっとつくっていきたいと感じています。コロナが5類になり、様々な行事で見た町民は皆笑顔でまさしく楽しそうでした。行事など行政が何らかの形で関わっていくと思うので、町民の皆さんが機嫌よく暮らしていただけるような町にしていきたいと思います。そのためにも基本を守り、行政に当たっていきたいと思います」

  • 【飯舘村】杉岡誠村長インタビュー【2023.11】

    【飯舘村】杉岡誠村長インタビュー【2023.11】

    すぎおか・まこと 1976年生まれ。日大理工学部卒。東京工業大大学院理工学研究科博士前期課程修了。飯舘村農政第一係長などを経て2020年月10月の村長選で初当選。 ここに住んでよかったと思う村を目指して。  ――帰還困難区域のうち、5月には長泥地区の特定復興再生拠点区域と拠点区域外の一部である長泥曲田公園の避難指示が解除されましたが、解除された地区について今後どのような取り組みを進めていく考えですか。  「避難指示解除はあくまで地区の再生・発展のための手段ですので、雇用の創出など優先すべきもの、実施できるものから実現していく方針です。現在、資源活用型堆肥製造施設を整備中ですが、同施設がその役割を果たすと思います。また、残る帰還困難区域についても、早期の避難指示解除を目指します」  ――ドラッグストアのハシドラッグと公設民営による出店を目指す他、セブンイレブンの移動販売が始まり、買い物環境の充実が進んでいます。住民の生活環境や利便性向上に向け取り組んでいる事業を教えてください。  「昨年度から村に移住していただいた医師の本田徹先生による訪問診療が浸透してきています。10月から福島交通が運行する路線バス『福島~医大経由南相馬』の運行ルートに飯舘村役場停留所が加わりました。今後も住民のみなさんや村に訪問される方の利便性向上のための事業を進めていきます」  ――休校中の相馬農業高校飯舘校周辺に産業団地を整備する方針を打ち出しました。今後の展望を教えてください。  「整備予定地として、インフラが存在し、整備が容易な村の中心となる場所、アクセスしやすく人が集まりやすい場所、村の産業特性を踏まえ産業集積の拠点となりうる場所を重視しました。令和4年度に実施した候補地調査により予定地としました。村の担い手を育成してきた場所ですので、そのような思いを込めて産業集積を進めたいです」  ――子育て支援や移住・定住に向けた取り組みについて伺います。  「移住については、福島県12市町村移住支援金、ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金の他、村単独での支援制度もあります。令和4年度から引き続き、移住サポートセンターを設置し、状況に応じた制度をご案内しています。  子育て応援策として、今年度から赤ちゃん誕生祝金や、小学校、中学校、高校の入学等準備費用の助成として子育て応援支援金を整備しました。また、不妊治療を受ける夫婦を対象に不妊治療費助成も進めています。  さらに、学んで村に帰ってきた方、移住した方が村内の企業に勤める際には奨学金の返還免除や奨学金返還支援事業補助金制度も整備しました。様々な方が住みやすく、帰って良かった、移住して良かったと実感する、選ばれる村を目指します」

  • 【中島村】加藤幸一町長インタビュー【2023.11】

    【中島村】加藤幸一町長インタビュー【2023.11】

    かとう・こういち 1952年生まれ。岩瀬農業高卒。JAしらかわ理事などを歴任し、2004年から村議2期。2010年9月の村長選で初当選。昨年9月の村長選で4選を果たす。 ひと・くらし・しごとを基本理念に施策を実施。  ――新型コロナウイルスの5類移行の影響について。  「5類移行後は各地区の行事が再開されるなど、コロナ禍前の日常に戻りつつあります。また、中断していた中学3年生のマレーシアへの修学旅行も4年ぶりに再開され、生徒各自が感染対策を徹底したおかげで無事に帰ってくることができ、それぞれにとって素晴らしい経験になったのではないかと思います」  ――役場庁舎改築の進捗状況について。  「新築工事・改築工事共に順調に進んでおり、新南棟庁舎が完成し、5月29日から供用開始となりました。以前の庁舎よりも利便性が向上し、村民の方々からの評判も上々です。現在は旧庁舎の改築を進めており、来年1月中旬の竣工を予定しています」  ――移住・定住促進の取り組みについて。  「今年度は移住・定住パンフレットを作成し、村の分譲地販売と併せてPRを行っているほか、関東圏でのイベントにも参加しています。ほかにも、若い世代に向け、移住・定住支援事業や結婚新生活支援事業について周知していきたいと考えており、条件によっては村から補助金が交付されるので、そうした部分でも魅力ある住環境をアピールしていきます。本村は全国に先駆けて保育所・幼稚園の保育料完全無料化、小・中学校の給食費全額無料化を実施しているので、充実した子育て支援の面でもアピールしていく考えです」  ――4月に第6次総合振興計画を策定しました。  「『みんなが輝らめく 豊かな なかじまむら』を将来像に掲げ、ひと(社会)・くらし(環境)・しごと(経済)3つの基本理念に基づく施策を実施していきます。赤ちゃんから高齢者まで、誰一人取り残さない、全ての人がいきいきと生活を送ることができ、輝く笑顔あふれる村『ひと(社会)』、豊かな自然を大事にするとともに、ライフラインの整備に努め、安心して暮らすことができる環境を整える『くらし(環境)』、村内企業との連携、企業誘致、基幹産業である農業を守り、村民が豊かさを実感できる村づくり『しごと(経済)』を目指して取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「公共事業長寿命化計画等に基づき、中学校や公営住宅、農道などの長寿命化を図っていくほか、災害対策として、ため池浚渫や雨水を阿武隈川に排水する排水ポンプ設置工事を進めています。ほかにも、中島村健康づくり交流センター輝らフィットを活用した健康づくり、介護予防の充実、地域おこし協力隊の活用などを含めた新規就農者支援の体制づくりを進めていく考えです」

  • 【石川町】塩田金次郎町長インタビュー【2023.11】

    【石川町】塩田金次郎町長インタビュー【2023.11】

    しおた・きんじろう 1947年生まれ。学法石川高校、亜細亜大学中退。石川町議2期、県議4期を歴任し、2018年9月の町長選で初当選。現在2期目。 若者に留まってもらうための施策に取り組む。  ――2期目がスタートして1年経ちました。現在の率直なご感想は。  「どこの町村も同様ですが、人口減少と少子高齢化に危機感を持っています。これからの町を担っていく若者にどう留まってもらうか、活力をどう高めていくか、そこに注力した政策づくりをしていかなければいけないと感じています」  ――道の駅整備計画の進捗状況はいかがでしょうか。  「議会から『県内では最後発の道の駅で勝負できるのか』、『赤字になったら一般財源を投入するような負の遺産にならないか』などの意見や要望を受け、これまで議論を重ねてきました。そこで導き出した答えは、設計と建設をヤマト(群馬県前橋市)、運営をTTC(静岡県熱海市)に委ねる、官民連携型の『O(維持管理・運営)+DB(設計施工一括)方式』を取り入れることでした。また、民間に委託する条件として、『地場産品を商品として売り出す』、『職員は地元で採用する』などを盛り込みました。2025年度中の開業を目指しており、来年度着工の予定です」  ――ドクターヘリの実績について。  「出動しないことに越したことはないのですが、昨年8月から運用を開始して25人の搬送実績となりました。その中の7人は、ドクターヘリを利用しなければ助からなかったかもしれない、と報告を受けています。町民が安心して暮らせるよう、今後も医療体制の充実に注力していきます」  ――重点事業について。  「子育て支援の一環として、産婦人科・小児科関連の相談をオンラインで受け付けるサービスを4月から開始しました。産婦人科医や小児科医、助産師が妊娠中の悩みや出産のこと、産後の心身の健康、子育ての悩み相談などに応じています。  もう一つは、町立認定こども園の開設について、来年度内を目標として進めています。将来の町を担っていく子どもたちが健康で元気に暮らせるようにしていきます。 先ほど申し上げたように、いずれも若者に留まってもらうための施策となります」  ――今後の抱負を。  「毎回繰り返してお伝えしていることですが、『聞く力』、『交渉する力』、『発信する力』の3つに注力して、町政運営していきます。限られた予算の中で何ができるかを精査し、ある程度絞って目標を定めていくことが重要だと思っています。町民が何を求めているか『聞き』、財源を確保すために『交渉』し、温泉、桜、鉱物、自由民権運動の発祥の地など町の魅力を『発信』していきます」

  • 【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

    かんけ・ただひろ 1979年5月生まれ。東京の大学を卒業後、海外留学を経て会津土建へ入社。翌年、子会社の㈱エマキへ出向。10年間IT事業の社長を務める。その後、会津土建へ戻り、取締役、常務取締役、副社長を歴任し、昨年6月に代表取締役社長に就任。   会津若松市の会津土建は大正15(1926)年に創業し、会津地方に根ざした総合建設業として成長を続けてきた。建設業界全体がさまざまな課題を抱える中で、先進的な取り組みへの挑戦を続けている。昨年6月に代表取締役社長に就任した菅家忠洋氏(44)に建設業界の現状、今後の経営ビジョンについてインタビューした。 効率化と新たな挑戦を心がけ成長を続けていく。  ――昨年6月8日付で会津土建の代表取締役社長に就任されました。  「私の祖父と父が歴代の社長なので、幼い頃から会社を引き継ぐことに漠然としたイメージはありました。実際に社長となって、もちろん仕事の重みや責任は感じていますが、不安やプレッシャーにさいなまれることはなく、やりがいを感じながら充実した日々を過ごしています。さまざまな方々とお会いする機会に恵まれ、物事に対する見識や感性が膨らみ、人との結びつきやご縁の尊さを実感しています。建設業という仕事自体にとても魅力を感じますし、人のため、社会のために貢献すべく、地域が活性化できるよう情熱をもってまちづくりに努めていきたいと存じます」  ――老舗総合建設会社として地域社会にどう貢献していく考えですか。  「当社は大正15年創業、まもなく100周年を迎える老舗の建設会社です。会社の歴史を十分に理解しながら、新たな伝統を創っていく所存です。現在の会津地域における建設業界を取り巻く環境や政治経済の状況を俯瞰的に捉え、何を成すべきか、深く考えながらも瞬時に見極め、判断していく必要があります。また、今までお付き合いいただいたお客様はもちろんのこと、新たにご縁をいただいた方々、協力会社、職人さん方とより一層の誠心誠意を込めてお付き合いをさせていただきたく存じます。私たち建設会社のミッションは、お客様の満足いく建物を提供すること、そして、安心で安全に生活ができる豊かなインフラを整備し、地域社会に還元することが最重要項目です。社会情勢が目まぐるしく変化する中、安全、品質、コスト、デザイン、付加価値、SDGsなどへのより一層の対応が求められています。今後、PPP(官民のパートナーシップによる公共サービスの提供手法)やPFI(公共施設等の建設・維持管理・運営等を民間の資金、経営能力、技術的能力を活用する手法)事業が推進されると想定し、異業種の方々との交流や連携による柔軟な発想と対応が大事です。そのためにも、私たちも理論に基づいた提言をしながら、発注者、施工業者、設計、学識者、専門機関など、さまざまな意見をまとめながら、産学官による垣根を超えたデザインビルドに取り組むべきだと思います。将来を見通しながら地域の皆さまが納得し、喜ばれる仕事を完遂することが弊社の社会的な役割であるとあらためて認識しています」 ICTとアナログの融合  ――先進的な取り組みについて。  「建設業界では少子高齢化による人手不足が深刻です。そのため、国土交通省は、最先端工法やICT技術を導入することで建設生産システムを向上し効率を良くする『i―Construction』を推進しています。建設現場のみならず、総務や経理の事務的なバックオフィスでも生産性や効率性の向上が図られています。現在は3次元データの活用を深化させ、建設現場をデジタルツインで作業効率を高める取り組みにも着手しています。  スケールの大きい土木現場を施工管理する大々的な建設DXからスマートフォンのアプリケーションに至るまで、会社にとって効果があり、社員の仕事が楽に、スムーズになるのであれば積極的に導入する考えです。時代の潮流に乗り、今後も新しいテクノロジーや大手ゼネコンの取り組み、海外の事例を含め、導入検討や内製化の研究に励む所存です。 一方で、私は何よりも『アナログ』なお付き合いを大切にしようと思っています。人様との信頼関係の構築には対面が不可欠です。『温故知新』を座右の銘に、老若男女問わず、真心と礼儀を尽くしたいと存じます。『デジタル』と『アナログ』それぞれの利点を見極めながら新旧融合を図り、相乗効果が発揮できるよう『機を見るに敏』を意識した対応に徹したいと思います」  ――建設業界の今後の見通しは。  「全国的にみれば、先の東京五輪、リニア中央新幹線の整備、大阪万博、東京の再開発事業など建設需要が旺盛となっています。一方で、本県に目を移せば東日本大震災から12年が経過し、イノベーション・コースト構想や一部まちづくりを残し、復旧・復興事業も終わりを迎え、大型事業も少ない状況です。建設業界はすでに縮小・淘汰の時代が到来したといっても過言ではなく、大都市と地方都市を比較すると経済格差を著しく感じます。これからは新規でゼロから建設するというよりも、既存の建造物・構造物の維持管理やメンテナンスに軸足が移っており、それに応じて業務内容も変化させていく必要があります。  今後は、既存の建設会社だけではなくハウスメーカー、設備会社など関連業種も含めれば競争相手が多く、生き残りは容易ではありません。そうした中で、当社の位置付けを見つめ直しながら、新たなチャレンジを始動していく覚悟が問われます。先行きが見えないことも多々ございますが、私たちが抱く既成概念をリセットし、どん欲に挑戦しながら新たな領域を切り開くことが生き残るポイントだと考えます。厳しい経済状況でも成長している企業が存在するのも事実です。成功事例から学びを得て、業務に反映できるものはぜひ取り入れていきます。激烈な競争を勝ち抜くためにも『メイドイン会津』の地元建設会社として、プライドを大切にしながら企業価値をさらに高め、皆さまから認めていただけるよう、誠心誠意努めていきます」  ――結びに今後の抱負を。  「これから未来の福島を創るにあたり、私たち建設業界は真価を試される大切なターニングポイントにあると思います。故郷のため、そして子どもたちのため、日々技術を磨き、研鑽を積みながら、新しい事業スタイルを常に学び、もう一段上の高みに会社をもっていきたいと強く願っています。その実現に向け、『企業は人なり』の精神をモットーに、社員ファーストで生き生きと働ける環境を提供し、福利厚生を充実させながら、優秀な人材をリクルートしていきます。  また、健康経営優良法人の認証取得や女性活躍社会の推進をはじめ、企業価値の向上に着手していきます。今までの建設会社のイメージを覆し、新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を実現し、魅力溢れる企業体質をもって、社会に貢献していきます。私自身、まだまだ若輩者ではありますが、夢と希望を持って成長していきます」

  • 【須賀川信用金庫】伊藤平男理事長インタビュー

    いとう・ひらお 1958年生まれ。1980年に須賀川信用金庫入庫。同信金理事、常務理事を経て、昨年6月から現職。須賀川創英館高校同窓会会長、須賀川市卓球協会会長、須賀川市体育協会副会長などを務める。  ――昨年6月に新理事長に就任しました。  「本部の経営企画部門に長く勤務しており、前理事長・前々理事長のもとで、経営について指導を受けてきました。理事長就任後、総代を中心に150件ほど挨拶回を行い、お客様から『信用金庫らしく、地元に密着した経営を継続してください』との声を多く聞きました。新理事長として当金庫の方針である『創業の趣意を体し地縁性金融機関として地域の発展に奉仕する』を実践すべく、地域のお客様の声を聞き、地域に根差した信用金庫として地域を支える使命感を感じていますし、須賀川信用金庫理事長の責任の重大さを再認識しているところです。  また、職員にとって安心して働けて、働き甲斐のある職場にすべく、健康状態、家族の状況、金融収支状況などの聞き取りを、私が全職員個別に行いました。職員が安心して働きやすい職場にすることが地域に役立つための条件の一つだと考え、現在努力しているところです。さらに、先人たちが築いた信用・信頼を崩すことなく、高い使命感と強い責任感、変わらぬ道徳観を持ち、役職員が一致団結して一歩ずつ前進していきたいと思います」  ――原料高や人材不足といった問題が深刻化しています。  「理事長就任後の挨拶回りで、取引先の経営状況や経済環境、物価高騰による価格転嫁の状況などを聞き取りしたところ、比較的規模の大きい企業はエネルギー価格・原材料の価格転嫁ができていますが、小規模企業は価格転嫁されにくい状況にあることが分かりました。特にエネルギー価格の転嫁は、部品一つに対していくらにするのが妥当なのかを説明するのが難しいとのことでした。  取引先のヒアリングと財務調査の結果、現段階では当金庫の取引先は比較的安定した経営がなされておりコロナ禍の収束に伴って地域経済も少しずつ回復傾向に向かうと見ています。今後とも常にお客様の状況を把握し、売り上げ回復に向けた対話や具体的な支援をしていきます」  ――今年は創立110周年を迎えます。  「創立110周年は途中経過の位置付けで、創立100周年時のような大々的な記念行事は実施しませんが、現在取り扱っている記念懸賞品付定期預金や10月に予定している須賀川広域消防組合への救急車1台の寄贈、創立110周年記念コンサート、記念旅行やゴルフコンペ、ロゴ入り名刺による活動、記念品の贈呈等のイベントを企画しています」  ――昨年からインボイス制度がスタートしました。  「昨年4月の当金庫のアンケート調査では、取引先の課税事業者の約40%が対応済みとの回答で、現時点では課税事業者のほとんどが登録を申請していると見ています。一方で、家族経営、小規模事業者はインボイス制度への理解が浅いことから当金庫では会計バンク㈱の請求書サービス『スマホインボイスFin Fin』の顧客紹介業務を昨年7月から実施しており、渉外担当者を中心に紹介業務の勉強会を実施して対応しています」  ――今後の抱負。  「地域貢献など、信用金庫本来の使命を果たし、地域に根差した経営に徹して地域経済を守っていきたい。また、職員が十分に能力を発揮でき、やりがい・働きがいのある安心して働くことのできる職場づくりに努めます。もう一つは、業務内容の見直しを図るとともに、DXの推進等によって生産性の向上や、経営基盤の強化・充実を図り、持続可能な経営体質を確立することに注力していきたいと思っています」

  • 【湯川村】佐野盛至村長インタビュー

    さの・せいし 1957年1月生まれ。東京農業大短大農業科卒。湯川村総務課長、産業建設課長などを歴任。村議1期を経て、2023年10月の村長選で初当選。 「住んでみたい」と思える村を創造することが私の使命。  ――10月の湯川村長選で初当選しました。  「前回と同じ顔ぶれによる一騎打ちの選挙戦となり、77票差で当選することができました。前回村長選での落選後、村内をくまなく回り、世代を問わず地域住民との対話を重ね、要望を選挙公約に反映させてきました。今回の当選は、その選挙公約と後援会活動をはじめとする草の根運動が評価された結果と受け止めています」  ――村長就任の抱負について。  「『豊かで希望がもてる湯川村に生まれ変わりましょう!!』をスローガンに掲げました。本村は、県下一おいしいお米がとれるコメどころ、名刹・勝常寺や年間100万人以上が訪れる『道の駅あいづ湯川・会津坂下』を有する、誇れる村です。さらに、子育て支援、教育環境の整備、高齢者が暮らしやすい社会の構築、活力ある産業の創出を実現し、『住み続けたい』、『住んでみたい』と思える〝湯川村〟へと生まれ変わることが私の使命と強く認識しています。地域住民の力と私の行政経験を生かし『新生・湯川村』の創造に向け邁進していきます」  ――選挙戦では6つの公約を掲げました。  「1つは『結婚・子育て支援』です。仲人ボランティアによる結婚支援、小中学校の学校給食費無償化・保育料無料化の実現、18歳までの医療費無料の継続、在宅育児支援手当の支給制度の創設に取り組みます。2つは『教育環境の整備』です。笈川・勝常両小学校の児童数減少、校舎やプールの老朽化を踏まえ、小学校の統合を含め、地域住民と議論を深め、あるべき姿を見出したいと考えています。また、受験対策や補習も対応できる村営学習サポート塾の開設、犯罪を抑止し子どもの命を守るため保育所、幼稚園、小・中学校への防犯カメラ設置を進めます。3つは『高齢者支援』です。交通費負担の軽減と移動の不安をなくすための新たな交通システム導入をはじめ、近隣のスーパーなどと連携した移動販売事業や宅配事業、買物代行事業などの支援策を検討し、高齢者の暮らしを守ります。4つは『地域産業の振興』です。スマート農業の推進・支援、道の駅を最大限活用した地域振興、会津湯川ファームの運営を支援し、雇用確保と税収増加を図ります。5つは『住民活動の推進』です。自分ができることを生かせるボランティア団体に参加し、生きがいをもって活動できるようボランティア団体の育成・活動支援に注力します。結びに『移住・定住の促進』です。交通網に恵まれ、下水道100%整備済みの環境をアピールし、子育て支援と教育環境の充実を図り、移住・定住を促進する所存です」

  • 【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。  会津若松市は城下町の強みをインバウンドにつなげる一方、小中学校と地元企業をつなぐマッチングサービスや地域発キャッシュレス決済の導入でデジタル技術の恩恵を地方に還元するなど歴史と進取を両立している。国際競争力の高いスノーリゾートにも選定され、宿泊拠点の役割も期待されている。会津若松商工会議所の澁川惠男会頭に経済飛躍の鍵を聞いた。 民間の力こそが地域の未来を拓く。  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが引き下げられて7カ月以上になりました。  「コロナ禍により老舗料亭や観光ホテルの経営破綻があり、管内はダメージを受けました。感染収束後の消費回復を期待していましたが、物価高の影響は大きいです。当商工会議所の退会理由のトップは『廃業』です。中小企業の経営者は高齢の方も多く、後継者がいないというのが主な理由です。コロナ禍からの回復が十分でないうちに物価高が追い打ちをかけて廃業が加速していくのを懸念しています。  明るい兆しはあります。行動制限のない忘新年会シーズンを迎え、飲食業界は予約が相次いでいるようです。感染拡大前の水準に戻りつつある事業所もあります」  ――昨年7月から市内の小中学校と企業をつなぐマッチングサービス「まちスク会津」を用いた実証実験が始まっています。  「まちスク会津は教育支援と地域活性化を両立します。子どもたちにとっては、地域企業・人材と触れ合う機会を増やすことで、企業の認知度向上や地域への理解、魅力発見などにつながります。教育支援を希望する登録企業が増え、本サービスを通して学校と企業の新たなマッチングが生まれており好評です。  今後は当商工会議所で実施している『ジュニアインターンシップ(職場体験)』との連携に加え、サービス充実のために、地域企業・人材の参画を広く呼び掛けます。会津の次代を担う子どもたちが地域を深く知り、将来は地元への就職やUターンにつながってほしいです」  ――観光庁の「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に会津若松市、磐梯町、北塩原村が会津磐梯地域として県内で唯一選ばれました。  「冬季の誘客は会津地方の長年の課題でした。今シーズンは磐梯町と北塩原村のスキー場が連結し、国内最大級のスノーリゾートが誕生しました。南半球のスキーヤー・スノーボーダーが良質な雪を求めて裏磐梯を訪れてきましたが、この流れが会津地方に波及するでしょう。  インバウンドが集中する東京・京阪神間を『ゴールデンルート』と呼びます。東北は対抗軸の『ダイヤモンドルート』を掲げ各自治体や経済団体が盛り上げてきました。今こそ、それを再燃させる時です。  スノーリゾートでは、会津若松は魅力ある宿泊や飲食を提供するベースタウンの役割があります。観光客は国・地域によって食事や宗教、生活様式がさまざまです。違いに対応し、受け入れのレベルを上げる必要があります。当商工会議所はこれまでにも訪日客への対応を学ぶ各種セミナーを開いてきました。会員事業所には観光、旅客、宿泊の事業者がいます。意見を聞きながら今後は業種に特化したセミナーにするなどしてより充実させます。  今年度、会津大学の留学生を対象に市内の観光スポットを巡るモニターツアーを実施しました。鶴ヶ城登閣、弓道や抹茶、赤べこの絵付けなどの体験型コンテンツを通じて会津の魅力を聞きました。素材は十分に魅力的ですが、多言語表記が少ないなどの課題が浮き彫りになりました。改善策を行政に提案し、訪れる全ての方に優しい環境につなげます」  ――「会津コイン」を用いたデジタル商品券事業が始まりました。  「会津コインは会津若松市が進める『スマートシティ』の取り組みの一環です。国は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度にする目標を掲げています。キャッシュレスは増加傾向ですが、既存のキャッシュレス決済はお金の他、マーケティングに活用できる利用者情報などが地域を出てしまうのが課題でした。そこで地域のみで流通する通貨を導入して情報が地域に残るようにしたのが会津コインです。  商品券はこれまで紙ベースでしたが、今回初めてスマホを使ったデジタル形式にしています。当商工会議所やスマートシティAiCTに入居する企業でつくる『AiCTコンソーシアム』などで構成する実行委員会が事業を行っています。当初会津コインが使えるのは6店舗だけでしたが、プレミアムポイント事業の実施で400店舗を超えました。ただ、店舗の加盟申請や消費者の利用設定の手順が複雑な点は否めず、特に高齢の方からさまざまな意見を頂戴しました。市と決済事業者と共に対応を検討したいです。  プレミアム事業が終了した後、どこまで会津コインを利用してもらえるか、事業所に継続していただけるか不安な点はあります。利用者情報を個人が特定されない形に処理して会津コイン参加店舗に提供し、経営に生かしてもらうなどの仕組みづくりが急務です。再生可能エネルギーへのポイント付与構想など、持続可能な開発を進めるインセンティブも有効でしょう。商店街や飲食店業種単位でイベントに活用するなど様々なアイデアに挑戦することで利用が増えていくと思います」 急務の再開発  ――市街地の再開発について。  「中心市街地から大型店が撤退したままの現状に非常に危機感を持っています。都市の活況のバロメーターと言える地価公示や路線価は、昨年は福島、郡山、いわきの県内主要都市の商業地は軒並み前年比プラスになっている一方、会津若松はマイナスに沈んでいます。  当商工会議所は昨年度、再開発に向けた意見を取りまとめ、神明通りや駅前周辺、旧県立病院跡地などの利活用について市に提言しました。多くの利害関係があること、市の財政的な課題もあり、一足飛びに実現しない現状は理解しています。ただ、その中でも中心市街地の再開発は早急に取り組むべきです。まちのシンボルである神明通りはその最たるもの。個性豊かな店を集積したり、インフラなど不足する要素を分析して早めに手立てを考えていきたいです」  ――抱負を教えてください。  「地方は人口減少に伴う縮む経済に直面しています。地域の活力を維持し、若者が住み続けたい、また多くの観光客が訪れたいまちにできるかどうかはここ数年で決まってしまうのではないかと危機感を持っています。会頭就任以来、民間の挑戦こそが地域の未来を切り拓いていく大きな力になると訴えています。危機的な状況だからこそ、この思いを新たにし、徹底した事業所支援を通じて足腰の強い会津若松経済の実現に向けて取り組んでいきます」

  • 【大熊町】吉田淳町長インタビュー

     よしだ・じゅん 1956年1月生まれ。大熊町出身。法政大学経営学部卒。1979年に大熊町職員となり、教育総務課長、総務課長などを歴任。2016年1月に副町長となり、2019年11月の町長選で初当選。2023年に再選を果たす。  ――昨年11月12日投開票の町長選を振り返って。  「前回は新人同士の選挙戦でしたが、今回は現職として選挙戦に臨み、表現として適切かどうか分かりませんが、相手候補の動きが見えづらく苦労した点もありました。結果的には全体の約9割の票をいただき、当選できたことは一定の信任が得られたと思っています」  ――2022年に特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されました。  「震災前、町の中心地だった下野上地区を含む860㌶が待望の解除となりました。帰還した住民からはスーパーなど買い物環境の整備を求める声が多数あります。以前、町内にはスーパーが3店舗ありました。買い物環境整備には喫緊の課題として取り組んでいます。医療面では、診療所はあるものの週2日だけなので充実を求める声が出ています。県では県立大野病院の後継病院を開院するとの方針を打ち出しており、医療体制の拡充を進めていきます。  特定復興再生拠点区域より前に避難解除された大川原地区は、役場周辺を中心に環境が整い、今後は大野駅周辺整備を進めていきます。駅前に産業交流施設を建設し、周辺には帰還した方や働く人のために商業施設整備を進めています。それに先駆けて3月には50戸の住宅団地が2つ完成するほか、元々あった民間アパートを町が補助を行いリフォームして約200室整備しました。  こうして、さまざまな環境整備を進めていますが、まずは居住人口を増やさなければなりません。加えて、昨今は国の復興事業の関係で学生が訪れるなど関係人口も増えていますので、そういった大熊町に関心を示してくれる人を増やしていきたい。働く場所も必要になりますから、工業団地への企業誘致なども進めていきます」  ――2023年6月に、福島復興再生特別措置法が改正され、特定復興再生拠点区域から外れたところのうち、帰還意向のある住民が帰還できるよう必要な個所の除染を行い、特定帰還居住区域として定めることで、避難解除を目指す方針が示されました。  「新しい方針のもと、下野上1区を特定帰還居住区域に指定して国から認定を受けました。今年度内にも除染に着手してほしいと要望を出しています。  町内には21行政区ありますが、そのうち帰還困難区域を抱える行政区は下野上1区を含めて10行政区あります。残りの9行政区においても下野上1区に遅れることなく、特定帰還居住区域への指定、除染、解除を目指して国に要望を行っています。町としても、町民の意見を聞きながら、次の除染エリアの選定を検討しています。新しい方針では、1人でも帰還したい住民がいれば除染を行うこととされていますので、なるべく広い区域を住めるエリアとして取り戻したいと思っています」  ――休止している県立大野病院が現在地で建て替えられ、2029年度の開院を目指す方針が示されました。  「県立大野病院は、町内だけの施設ではなく、相双地区の拠点病院に位置付けられていますから、1日も早い開院を目指して整備してほしいと思います。また、先ほどもお話ししましたように、帰還した住民からも近くに病院があってほしいと、医療体制の充実を願う声が出ています。町民の中には、帰還するかどうか迷っている方も多数おり、そういう方々の判断材料という点でも、病院の有無は大きな要素となります。同病院の存在は双葉郡をはじめ、相双地域全体の大きな問題でもありますから、1日でも早い整備をお願いしたいと思います」  ――教育施設「学び舎ゆめの森」の新校舎が完成し、2学期から使用されています。  「震災・原発事故から12年が経ち、ようやく子どもたちの声が聞こえるようになりました。同施設では認定こども園と義務教育施設が一体となっており、0歳から15歳までが保育・授業を受けています。最初は園児・児童・生徒数は計26人でしたが、同施設で行っている新しい教育方針が保護者の間で関心を集め、若い世代が移住して入園・入学する園児・児童・生徒が増加し、まもなく40人を超える勢いです。9月には12年ぶりに運動会が開催され、園児・児童・生徒や保護者以外に地域住民も参加して盛大に行われました。  資材不足の関係で完成が当初予定から遅れ、2学期から新校舎での保育・授業がスタートしましたが、校舎完成前の1学期は町役場や交流施設などを活用し、分散して授業が行われました。不便だった分、工夫しながら学習に取り組み、さらには、学校関係者以外の人とも関わることができたことは、子どもたちにとっていい経験になったと思っています。  新校舎完成後は校舎のつくりや独自の教育プログラムが評判を呼び、視察が増えています。新校舎での授業がスタートした8月から数カ月で視察者は1000人を超えました。また、『グリーン留学』という体験入園・入学プログラムも用意していますので、帰還や定住人口増加の起爆剤につなげていきたいと思います」  ――「長者原じゃんがら念仏踊り」が震災後はじめて町内で披露されました。  「『長者原じゃんがら念仏踊り』と『熊川稚児鹿舞』は町の無形文化財に指定されています。そのうちの一つであるじゃんがら念仏踊りがようやく町内で再開できたことは、区長をはじめ地元の方々に本当に感謝したいと思います」  ――今後の重点事業について。  「まずは避難解除された特定復興再生拠点区域内の環境整備をしっかりと進めていきます。それを経て、特定帰還居住区域の整備へと、1歩ずつ進んでいきたいと思います」  ――今後の抱負。  「先ほども話したように、まずは居住人口を増やしていきたい。震災前は約1万1500人でしたが、現在は住民登録している居住者が600人超、住民登録していない居住者が400人超ほどおり、合わせて1100人が町内で暮らしています。町ではそれを4000人にすることを目指しています。そのためには町に訪れる関係人口を増やすことが必要だと思います。その中で住んでみたい方がいればお試し住宅を利用していただき、子育て世代であれば学び舎ゆめの森を見ればきっと気に入っていただけると思います。働く場所も工業団地の整備を進めており、そこで働く方に町内に住んでいただくための住宅整備も進めています。こうして、様々な事業を行いながら人口増加に向けた取り組みを行っていきたいと思っています。また、戻れない住民の絆の維持のための取り組みも継続して進めていきます」

  • 【福島商工会議所】渡邊博美会頭インタビュー(2023.12)

     わたなべ・ひろみ 1946年生まれ。福島大経済学部卒業後、福島ヤクルト販売入社。2012年に福島商工会議所副会頭。13年11月に会頭就任。現在4期目を務める。  福島商工会議所は職員らの力を結集し、渡邊博美会頭の下、伴走型支援で会員事業所の経営環境の足腰強化に力を入れている。経済に打撃を与える慢性的な人手不足と資材高騰は福島駅前東口再開発に影響し、建設費用が増加。完成が1年延期され2027年度の予定になった。「福島駅東西エリア一体化推進協議会」会長も務める渡邊氏に再開発の行方などを聞いた。 足腰の強い経営環境を共に目指していく  ――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に引き下げ後、福島わらじまつりが通常開催されるなど新型コロナ禍前の活気が戻ってきました。現況を教えてください。  「わらじまつりは今年、まず6月に青森市で行われた東北絆まつりに参加しました。賑わいを見て、福島のイベントも賑わうぞと期待が膨らみました。祭りは参加者が熱狂し、笑顔が観客に伝播します。その光景が復活したのは感慨深いものです。7月末に『ふくしま花火大会』があり、熱気が高まったまま、8月3、4日のわらじまつりで最高潮となりました。大相撲の福島巡業が4日に行われたため、福島市の夏は例年にない盛り上がりでした。  福島駅東口の再開発工事中は賑わい創出のため駅前通りやまちなか広場では週末に各種イベントが開かれて盛況です。県立医大保健科学部と福島学院大学の駅前キャンパスがあるため、多くの若者がイベントに関わっています。学生ならではの自由な視点には目を見張るものがあり、若手も参入しやすい雰囲気が生まれています。これらを起爆剤に、来年はもっと魅力のある街になるよう盛り上げていきます」  ――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。会員事業所からはどのような声がありますか。  「人手不足は日本を覆う問題です。福島県は特に女性の生産年齢人口の流出が全国と比べて高いというデータがあります。要因は様々ですが、女性が魅力を感じる産業を用意できていないという点で、我々経営者にも責任があると感じています。働く場所としてもそうだし、結婚し子育てをする場として不安を感じ、学校を出ると福島を離れてしまう。  価格転嫁について会員事業所を調査していますが、問題なく行っているという事業所はまずありません。燃料費の高騰が特に打撃で、賃金を上げて今いる従業員を雇用し続けられるよう経営者は奮闘しています」  ――資材価格高騰で福島駅東口再開発が1年先送りとなりました。会頭自身も「福島駅東西エリア一体化推進協議会」の会長を務めていますが会議所ではどのような対応をしていきたいですか。  「百貨店の中合が閉店してから福島駅前の歴史あるランドマークが無くなってしまいました。特に私ども高齢者は駅前が一番賑わっていた時代が頭に残っていますから衝撃は大きかった。当会議所には往時の駅前の活気を知る方たちから、なぜ中合を閉めるのかと惜しむ声が聞こえてきました。地方都市では、駅前の活気は衰退し、賑わいは駅の中だけに収まってしまいました。  福島市は東北新幹線の駅があり、交通の便では恵まれています。行政施設とコンベンション施設が駅前に集まると都市機能が向上します。さらに大切なのは、医大保健科学部、福島学院大のキャンパスがあり、近くに大原綜合病院が位置している点です。再開発地区には既に暮らしに密接な教育機関や病院があります。東京や仙台などの大都市では地代が高い分、行政や教育、医療機関の集約は困難でしょう。その点で福島市は再開発で機能を集約しやすい強みがある。自家用車を持っていなくても誰もが暮らしやすい街になる可能性を秘めています。  ただ、資材価格高騰が建設に影響を与えています。完成後も維持費を考える必要があります。そして、暮らす人にとって一番良い方策を考えねばなりません。私は今、関係者に建設中の今こそ、腹を割って話そうと言っています。  資材価格高騰によるコスト上昇や地方の再開発事業の難しさをみると、予算や持続可能性に厳しい部分があるのであれば、福島に住む人にとって一番いいやり方を駅西口と一体化して考える必要があります。後世に悔いが残らぬように、知恵を絞るのは今しかできません。見栄や他の都市に負けたくないという発想ではなく、自分たちのためになる形を追求したいです。  東北中央道ができたことで、福島市には相馬市や山形県米沢市からも訪れるようになりました。福島の魅力は分析すればたくさんあるはずです。構造物だけどんどん造って、継続できませんでしたでは済みません。行政とまちづくりセンター、当会議所で連携を密にして取り組んでいきます」  ――福島市出身の作曲家、故・古関裕而さんが野球殿堂入りしました。街づくりにどうつなげますか。  「古関先生をモデルにしたテレビドラマで火が付き、記念の音楽祭や作曲賞の創設、夫人の金子さんの出身地である愛知県豊橋市とのつながりが生まれました。豊橋市の方たちには花火大会でも筒花火を披露していただきました。  野球のオール早慶戦を11月26日に行いました。早稲田大と慶応大の応援歌をどちらも古関先生が作曲している縁からです。現役生やOBが試合をし、市や当会議所も準備に関わりました。応援合戦は盛り上がりました。古関先生の縁で福島に若い人が来てくれた。試合後も果物や温泉を楽しんで、福島の魅力を知っていただいたようです。福島の魅力はたくさんありますが、古関先生はそれらをつなぐ要です」  ――今年度取り組んでいる重点施策について。  「激変する経営環境に対応できる、足腰の強い経営ができるよう企業や商店の伴走型支援に取り組んでいきます。具体的には人手不足や資材高騰、デジタル移行に対応します。セミナーで一方的に教えるだけではなく、職員が赴いて親身に対応できるよう、商工会議所では人づくりを進めています。来年のカレンダーを配る時期ですが、会員事業所には職員が直接回って配り、ネット環境の整備や人手の確保、新商品開発に使える便利な制度を紹介するなど対面であらゆる相談に乗っています。若手職員が出向くことで気兼ねなく相談できるとの声があります。  浮かび上がった課題は、当会議所の各種委員会で共有して解決策を編み出します。いくつかの委員会では女性や会議所議員になってから1年以内の若手メンバーを委員長に据え新しい風を取り込んでいます。多種多様な意見をまとめていくのは並大抵ではありませんが、その分チャレンジングな発想が生まれます。時代の変化に合わせて新たな経営視点を会員事業所と一緒に磨き上げていきたいです」

  • 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー(2023.12)

     すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て昨年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経済活動の制限や各種イベントの中止・規模縮小などを余儀なくされたほか、原材料・燃料費高騰や人手不足など、地方経済を取り巻く環境は厳しい。そんな中、地域経済のかじ取り役である商工会議所では各種課題にどう向き合っているのか。二本松商工会議所の菅野京一会頭にインタビューした。 管内の魅力をもう一度見直していきたい  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」になりました。これを受け、各種イベントなども通常開催されるようになっていますが、管内の動きについて。  「二本松の提灯祭りは管内の大きなイベントの1つで、コロナ禍以降は中止や規模縮小、アルコール販売禁止などの規制の中での開催を余儀なくされましたが、今年は規制がなくなり盛況でした。ほかにも、8月には各地の夏祭りが通常開催され、想像以上の盛況ぶりでした。多くの人がこういったイベントを待ち望んでいたことを実感しました。もちろん、コロナが完全に消滅したわけではありませんが、5類に移行したことで、イベント等が通常開催され、まちが活性化していると思います。  二本松の菊人形は昨年と比べ1割増の観光客が訪れました。以前から『菊のまち二本松』のPRのため、女性会を中心にJR上野駅や市内各店舗などには『菊手水』の設置や各家の軒先でも菊が飾られ、観光客を迎えています。昨年開館した城報館でも物品の販売を行いましたが、市が菊人形来場者への1割引補助を行ったところ大好評でした。  また、来年の1月には菓子博、2月には酒まつりが行われます。両イベントも規制をなくしコロナ禍前と同規模で行う予定です」  ――円安や燃料高が深刻な課題となっています。  「燃料・物価高は、当然大きな問題ですが、それ以上に管内では人手不足が深刻です。家族経営のような小規模事業者は別にして、どの会員企業に聞いても、やはり人手不足が一番深刻な課題であるとの話が出ます。そんな中、会員企業によっては外国人研修生を迎えて補っている企業もあります。  会議所としては、市と合同で意見交換をしながら人手不足に向けた課題解決を図っています。特に、地元の若者がこの地域に残って、地元企業で働いてほしいという思いから、高校生に対する研修制度などのカリキュラムを少しでも設けていただければ、若者の興味も地元に向けられるのではないのかと思います。市内には認知度は高くないものの、世界に誇れるような企業が多いのです。これまで、企業ガイドブックといったパンフレット配布を行ってきましたが、今後は映像でまとめたDVDなどを各学校に配布することを考えています。やはり、実際の映像を、自分の目で見てもらった方がより説得力があるでしょうからね。ほかにも、企業説明会などを実施し、会議所として少しでも人手不足解消に向けた活動を行っていきたいと思っています。  また、市内では空き店舗利用が多く、伝統的に菓子店が多いので空き店舗を利用した菓子店がオープンするなどしています。とはいえ、まだまだ空き店舗が目立つ状況ですから、さらなる対策を講じていきたい。  今年からインボイス制度がはじまりましたが、会議所では説明会を常時開催しています。会員企業には零細企業も多く、猶予制度の中身等を理解していない企業も少なくありませんので、丁寧な説明を続けていきたいと思います」  ――国・県に望みたいことは。  「安達太良山のくろがね小屋は閉鎖されたままになっています。県でも2025年の完成を目指すことになっていますが、建設に向けては資材をヘリコプター輸送しなければならないなどの問題があります。中通りでも有数の日本百名山の1つでもあり、観光資源でもありますから、トイレの問題はもちろん、登山者や観光客の安全を守るという意味でも早期の建設をお願いしたいと思います」  ――現在の重点事業について。  「会議所が果たすべき役割の原点に立ち返り『会員と共に一歩前へ! ~信頼される「地域総合経済団体」を目指して~』を基本行動に据え、施策事業を実行するとともにさらなる組織強化に努めていきます。  特に人口減少や高齢化などの事業者が抱える社会構造的な課題に対して、『地元事業者の経営基盤の強化』と『持続性のある地域の活性化』を活動計画の柱として、各種事業を展開していきたいと思っています。  具体的には、巡回相談・専門相談を各種経営支援事業の核として、会員企業の実態とニーズに即した支援を寄り添いながら実施していきます。また、IT化によるDX支援など、経営の効率化と生産性の向上につながる支援や働き方改革、社会保障などの諸制度に対して、即応できる体制の強化を図り、労働環境改善、健康経営を進めていきます。  また、会議所だけの事業ではありませんが菊人形が今年で67回目を迎え70回の節目が迫っています。東日本で菊人形を開催しているのは二本松市だけで、70年の長い間継続したことは誇りであり、技術継承も必要だと思います。二本松の菊人形は、菊栄会が中心になって行われていますが、次の80、90周年を見据えて、会議所としても、例えば体験型の催しなど、70周年に向けた提案を行っていきたいと思います」  ――今後の抱負。  「就任直後も話したようにオール二本松で当たっていきたいと思います。そういう意味では、常議員をはじめ、会員企業の皆さんには積極的に参加していただき感謝しかありません。夏祭りや酒祭りといったイベントにしても、会員企業と一緒になってもっとアイデアをひねりながら、さらにいいイベントにしていきたいと思います。  二本松市は、すごくいいところがたくさんあるにもかかわらず、地元住民が知らないことも多くあります。もう一度、二本松市の魅力を再発見する取り組みを進めていきながら、インバウンドにつなげていきたいと思います。いまは円安の影響で外国人観光客が多く国内に訪れています。市内でもエビスサーキットには多くの外国人が訪れるなど地盤はあると思います。以前からインバウンドに向けた取り組みを行ってきましたが、あらためて、市内にインバウンド観光客が訪れる仕組みづくりを進めていきたいと思います。  来年1月には岳温泉のあづま館がグランドオープンします。岳温泉の各旅館もコロナ禍の影響で苦労していますが、あづま館はサウナ施設をオープンさせるなど、頑張ってくれています。市内の観光名所である岳温泉は安達太良山とセットで大きな魅力の1つです。そういった管内の魅力をもう一度見直していきたいと思います」

  • 【原町商工会議所】高橋隆助会頭インタビュー(2023.12)

     たかはし・りゅうすけ 1951年生まれ。原町高、拓殖大卒。㈱高良代表取締役。原町商工会議所副会頭を経て2010年11月から現職。現在5期目。  原町商工会議所の高橋隆助会頭は昨年から5期目の任期に入り、この間、震災・原発事故や新型コロナウイルス感染症の拡大など、厳しい環境下で、舵取り役を担ってきた。高橋会頭にコロナ5類以降の管内の経済状況や、地域の課題、今年度の重点事業、今後の抱負などについてインタビューを行った。 事業者が安心して事業できる環境を整備する  ――新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に移行しました。  「5類移行により、状況は変わりつつあります。移動制限がなく、会議やセミナーなどはリアル開催になりました。親睦会などもこれまで通りの開催となり、飲食店も賑わいを取り戻しています。これからはビヨンドコロナをどのように行動していくかがカギになってくると思います。例えば、コロナ禍で営業自粛を余儀なくされた事業所に勤務していた方々が離職し、現在も前職復帰が進まない事例があります。また、オンライン会議をはじめ、加速度的に発展したIT、IOT、AIなどは今後さらなる発展が予測されます。大きく様変わりをした環境に対応していくことも急務だと思います」  ――円安や物価高が深刻になっています。  「8月に会員に実施した管内景気調査によると、約半数の事業者が『業績が悪化している』と回答しており、その理由に『仕入れ価格の動向』が最も多く挙げられています。経営上の問題としては全業種で『売り上げの停滞・減少』が挙げられ、製造業・サービス業では『価格転嫁できていない』、商業・建設業では『人材不足』の割合が高くなっています。物価高が経営を圧迫する中、『適正な価格転嫁』と『人材の確保』が今後の経営上の取り組みとして大変重要だと捉えています」  ――10月に「第4回ロボテス縁日 ロボット・ドローン大集合」が行われました。  「国家プロジェクトである『福島イノベーション・コースト構想』の認知度向上を軸に、南相馬市や県内外でロボット・ドローンの開発に取り組む企業・団体・大学等が研究と開発の成果を広く発表し、県民の皆様に親しんでいただける機会として開催されています。4回目の開催となった今年は、浪江町に設立された『福島国際研究教育機構(F―REI)』と『福島水素エネルギー研究フィールド』を紹介するコーナーを新たに設け、浜通り広域に渡って『復興』を感じ取ることができる内容としました。日本のロボット・ドローン産業の拠点として『福島ロボットテストフィールド』の知名度を向上させ、それがまた新たな産業を生み出す『種』となり復興の好循環へとつながることを祈念しています」  ――「相馬野馬追」が5月に変更する素案が決まりましたが、どう捉えていますか。  「かつてこの地域では『暮・正月』『お盆』『相馬野馬追』の3つの行事が生活や仕事の大きな節目となっていました。経済界も同様でこの3つの行事前に『納品』『集金』『支払い』などの商慣習を区切りとして行っていたこともありました。時代の変化と共にその慣習も見られなくなってきましたが、『相馬野馬追』はこの地域にとって生活慣習などにも影響する大切な行事です。その開催時期が変更されることは、近年の猛暑の影響もあり多くの人が賛成するところですが、地域行事・イベントをはじめ多くの生活や仕事のスケジュールが変わっていくことになろうと思います。例えば出場する騎馬武者は準備が2カ月前倒しになり、自分の準備や馬の調教もずれ込んできます。相馬野馬追に付随する行事もずれ込みますが、その半面6月、7月には仕事や事業に集中できるようになります。このように多くの物事が変わっていきます。今後は市役所を筆頭に全市で検討を重ねていく必要があると思います。商工会議所もしっかりと協力していきたいと考えています」  ――今年度の重点事業についてお聞かせください。  「今年度は次の3点を基本方針に取り組んでいます。1つ目が東日本大震災及び原発事故からの復旧・復興です。国の『第2期・復興創生期間』が残り3年度となる本年は、商工業者同士がつながりを持てる地域経済環境の整備を図りたいと思います。  2つ目は相談業務及び事業所支援の充実です。地域の商工業者に対して、伴走型支援を実施すると同時に個々では解決が困難な問題に対し、会員の意見を集約して建議活動を行っていきます。  3つ目は関係機関との連携強化です。複雑かつ多様化する問題に対して、日本商工会議所をはじめとした関係機関と連携して対処していきたいと考えています。  特に地域経済環境の整備は重要であると捉えており、福島イノベーション・コースト構想を活用して産業交流を促進するため、進出企業と当会議所役員・議員との交流会を実験的に開催しました。引き続き地域資源を活用した産業交流を促進し、新たな取引増加につながる事業を検討していきたいと思います」  ――国・県に望むことは。  「10月から開始したインボイス制度について、十分な理解が進んでいるとは言い難い背景から、中小企業者等への負担軽減措置が必要だと考えています。当会議所においても昨年からセミナーの開催、小冊子の配布、窓口での重点的な相談等を実施していますが、特に小規模事業者への支援を継続していきたいと思います。本制度は単に新たな制度の導入という概念に留まらず、事業者の取引そのものに影響を与えるもので、すでに一部の軽減措置は取られていますが、理解が完全に醸成されるまでは引き続き負担軽減措置をお願いしたいと思います。  また、ロシアのウクライナ侵攻や中東問題等、事業所を取り巻く地政学的環境はこの数年で急激に悪化しました。事業者にとって地政学リスクを踏まえた視点は不可欠となっていますが、自助できることには限りがありますので、国の積極的な関与や支援策の実施により、安定的な経営ができる環境整備を期待します。  加えて、ALPS処理水放出に伴う風評被害への対策や障害が生じた場合の適正な賠償、中間貯蔵施設の除去土壌の最終処分、1日も早い廃炉の実現など、原発事故に関する問題への対応もしっかり行っていただきたいと思います」  ――今後の抱負。  「地政学リスクへの対応、地域資源としてのイノベ構想の利活用、労働力不足、廃炉など、地域の商工業者が抱える問題は山積しています。また、人口減少社会の中での販路拡大や事業承継問題にも継続して取り組む必要があります。会議所としては、事業者が安心して事業を継続できる環境を整備するため、役職員全員で事業に取り組んでいきたいと思います」

  • 【福島県温泉協会】遠藤淳一会長インタビュー

    えんどう・じゅんいち 1955年生まれ。高湯温泉吾妻屋社長。2015年から福島県温泉協会会長を務める。  ――温泉協会の活動と役割についてお聞かせください。  「名前の通り、福島県内の温泉に関わる旅館を中心とした組織で、会員数が130軒前後の任意団体です。法人団体ではありませんが、日本温泉協会とのつながりや県の薬務行政として温泉審議会に携わるなど、行政とのパイプ役として活動しています。加えて、会員の皆様に向けて温泉に関する勉強会を開催して知識向上に努めたり、各温泉地だけでは難しい取り組みを協会を通じて全県下でやっていったりと、多角的な役割を担っている組織と言えます」  ――コロナの法的位置付けが5類に移行され、9月からは観光キャンペーンが実施されています。  「昨年は全国旅行支援などの補助金制度がありましたが、5類移行に伴ってそれもなくなり、ある意味では今年からが勝負の年になっていくと言えます。温泉協会の会員の強みは、どこの施設も温泉を持っていることです。ある旅行会社が実施した『コロナ禍が明けたら何をしたいですか』というアンケートでは、『温泉に行きたい』という回答が最多でした。我々としても、そうした方々に来ていただけるよう温泉を最大限に活用していく考えです。実際、県の観光キャンペーンの影響もあってか、各地のお客様の入り込みは増えています」  ――高湯温泉と土湯温泉では、脱炭素化に向けた取り組みが進められており、持続可能な観光地づくりに取り組む国立公園内の地域を登録する環境省の「ゼロカーボンパーク」制度で、東北初の登録を受けました。  「都市部の温泉地にも脱炭素化への意識は芽生えつつあり、今回の『ゼロカーボンパーク』の登録によってその流れが大きく波及していくものと見ています。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)や日本温泉協会が中心となり、脱炭素化を目指す動きが広まっていますが、今回の東北初の登録は脱炭素化への取り組みを周知する良いきっかけとなり、今後、高湯・土湯両地域合同で、どのような取り組みを進めていくのか協議していく考えです。  現状の取り組みとしては、土湯温泉では再生可能エネルギーの一つである温泉熱を利用したバイナリー発電施設の整備が進められており、高湯温泉は源泉かけ流しという形をとり自然の地形を生かして引くことを実施しています」  ――今後について。  「国内のインバウンドが増えている一方で、福島県への来客者数は決して多いとは言えません。その原因としては原発事故の影響が未だにあります。その点は国や県に正確な情報発信をお願いしたいですし、温泉地まで足を運ばずとも、国内の関係人口を増やすため行政に要望や提言していく予定です。  また、日本温泉協会で日本固有の温泉文化をユネスコの世界文化遺産に登録しようという動きが群馬県の山本一太知事を中心に展開されており、県温泉協会としても協力していく考えです。登録によって県内インバウンドの増加につながるものと見ています。  このほか、再生可能エネルギー事業において、福島県は原発事故の風評被害等、他県とは異なる状況にあることを考慮のうえ、福島県独自の再生可能エネルギー事業のガイドラインを作成し、温泉関係者や観光等に関係する機関を保護していくことも重要と考えます。  温泉は有限であり無限でないことを念頭に置き、これを守るべく会員皆で協力していく考えです。温泉を好きな皆様に、いつまでもこの素晴らしいお湯を楽しんでいただけるように努力していく所存です」

  • 【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー(2023.12)

     おの・えいじゅう 1954年10月生まれ。慶應義塾大商学部卒。オノエー㈱社長。いわき商工会議所副会頭を経て2011年5月から現職。現在5期目。  いわき商工会議所ではコロナ禍や資材・燃料価格高騰で厳しい経営を迫られる会員事業所の相談に乗り、支援を行っているほか、産業振興、政策提言などの活動に取り組んでいる。コロナ禍がひと段落したいま、いわき市の中小企業はどのような経営状況になっているのか。同商議所会頭の小野栄重会頭(オノエー㈱社長)に話を聞いた。 「復興モデルいわき」の実現に邁進する  ──新型コロナウイルスの5類移行が実施され、管内でもイベント等が通常開催されるなど、従来の活気が戻りつつあります。現状についてどう分析していますか。  「市内の3大まつりであるいわき花火大会、いわき七夕まつり、そしていわきおどりが通常開催され、閉塞感が払拭されて、活気が戻った印象を受けます。  しかし、コロナ禍以前と比較するとライフスタイルが大きく変化し、それに対応できる企業とそうでない企業とで差が出始めています。コロナ禍のころには補助金や支援金、ゼロゼロ融資がありましたが、現在はそうしたものも無くなったうえ、融資の返済期間が始まるなど、経営的に厳しい部分が目立っています。  加えて国際情勢の変化による円安や原料高、燃料高といったコスト高が進み、見合った利潤を出すことができず、それも経営を圧迫する要因の一つとなっています。  また、需要が上向いたとしても、人手不足で事業の拡大ができないという問題があり、そうした部分も踏まえて商工会議所が本腰を入れて支援していく必要があり、寄り添った支援をしなければ廃業・倒産のリスクが増えていくと見ています」  ──円安や原料高、燃料高に加えて人手不足や後継者問題について、会員事業所からはどのような声が上がっていますか。  「業種を問わず、すべての業者から今後に対する不安の声が聞こえています。特に原価が上昇した分を価格に転嫁できない企業は利益が出せないので人件費の支払いにも苦労しています。飲食業では大口の宴会予約や団体の宿泊予約があったとしても、それに対応できず事業規模を縮小せざるを得ない状況もあります。  人手不足が顕著な業種は運輸業で、バスの路線減少や観光バスの運行状況への影響、物流の停滞によるエンドユーザーへのしわ寄せなどが大きな問題です。  会員事業所のほとんどが中小・小規模企業で、事業承継もままならない中、廃業を決断する事業所も出てきており、我々としても間に入りマッチングなども含めて支援しなければならないと考えています。  国の補助金制度や専門家派遣制度など、さまざまな支援がありますが、事業者によって経営課題は異なります。一律の補助制度ではなく、事業者ごとに応じたきめ細やかな支援策を商工会議所が窓口となって国に要望していく所存です」  ──JRいわき駅前の並木通り再開発事業の工期延長の発表がありましたが、いわき駅周辺の開発事業の進捗について。  「資材高騰による工期延長は仕方ない部分がありますが、大きな目で見れば順調に進んでいるものと見ています。並木通り再開発事業や駅周辺の開発事業、イトーヨーカドーの跡地の整備事業は、民間主導で立ち上げた中心市街地活性化協議会で定めた中心市街地活性化基本計画に基づき進められており、行政と一体となって取り組んでいます。強固な官民連携は他市に負けない部分だと思います。事業の進捗を注視し、市民の理解をいただきながら事業が進んでいくよう、当会議所としても、連携協力を図りながら中心市街地の魅力を大いにPRしていきたいと思っています。  再開発の一環として整備されるマンションの成約率は90%を超えているようです。マンションの需要も高まっていますし、平地区の居住人口がさらに増え、街中のにぎわい創出につながると考えています。  もっとも、そこに住む人が生きがいを持って楽しく生活していくためには周りの商店街が頑張らなければいけませんし、整備される商業施設がまちの拠点として機能していけるよう、当会議所としても連携を密に取り組んでいかなければなりません。我々としてもさまざまな施設を盛り上げていきたい所存です。  中心市街地活性化の影響を市内各地区に波及させ、活性化に生かしていきたいと考えています」  ──福島第一原発敷地内に溜まるALPS処理水の海洋放出が行われました。影響はいかがでしょうか。  「当初は海洋放出による風評被害の影響を懸念していました。ただ、一部の国で輸入を禁止するという動きはあったものの、俯瞰的に見れば国内では処理水の安全性が理解され、『常磐もの』を応援しようという動きが広まりました。その大きなバックボーンとなったのが全国515の商工会議所の連携であり、販路開拓にご協力いただきました。今後も全国各地の商工会議所との連携は続いていくと思いますし、当会議所としても積極的に音頭を取り、マーケットの拡大に努めていく考えです。  ある意味、『常磐もの』を世界中に発信できる機会であり、マイナスイメージの払拭にもつながります。ピンチをチャンスに生かし、常磐ものを世界に冠たるブランドに発展させ、いずれは輸出規制の緩和や輸出量の増大につなげていきたいと考えています」  ──その他重点事業について。  「活動の3つの柱の1つは中小企業の振興活動です。企業の経営・存続に寄り添い、国や県とのパイプ役となって支援していくほか、市内企業の新たな販路開拓の牽引者としての役割を果たしていきます。  2つ目が産業振興です。市内のポテンシャルを秘めた企業を支援すべく、産業人財育成を進め、地場産業を守りつつ、新産業の萌芽に努めていく必要があります。  3つ目が政策提言・組織の強化です。さまざまな課題について、現場目線で国や日本商工会議所に訴え、市内企業の地盤の強化につなげて、〝変化への挑戦〟に対応できるいわき経済界を作り上げていきます」  ──今後の抱負を。  「会頭就任以来言い続けてきたのが、〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現です。  5期目のキーワードには〝変化への挑戦〟を掲げています。世界情勢が猛スピードで変化する激動の時代に対応し、挑戦することが非常に重要な課題であると考え、今期のテーマを〝挑戦、シン化。そして未来へ〟に定めました。  会員事業所による新たな事業への挑戦、コスト削減への取り組みを積極的に応援し、共に未来へ向かって歩みを進めていきます。こうした歩みを通し、先ほどお話しした〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現に邁進していきます」 いわき商工会議所ホームページ

  • 【富岡町】山本育男町長インタビュー(2023.12)

    やまもと・いくお 1958年8月生まれ。原町高、東京農業大卒。町議を連続5期務め、副議長などを歴任。2021年7月の富岡町長選で初当選を果たした。 帰還と移住促進や賑わいづくりに取り組んでいく  ――今年4月に「特定復興再生拠点区域」が避難指示解除となりました。  「11月現在で64世帯94人の方が居住しています。震災以前の夜の森地区は多くの方が住んでいた地域でした。同地区の生活環境を充実させ、にぎわいを取り戻すことが、町内の均衡ある発展、ひいては本町の真の復興につながるものと考えているので、買い物環境を備えた住民の憩いと交流の場となる温浴施設の整備を現在検討しています」  ――昨年「共生型サポートセンター」を開設しましたが、現在の状況は。  「特別養護老人ホーム『桜の園』には10月末現在、33人が入所しています。最大48人入所可能なので、運営スタッフを確保しながら、地域福祉の拠点として運営体制強化を図ってまいります。併設しているトータルサポートセンターとみおかは、高齢者等の支援に限らず、カフェやフィットネスジム、ワークショップルームなどがあり、交流の場として多くの方にご利用いただいています」  ――その他取り組んでいる重点事業は。  「1つ目は『農業と商工業の育成』です。現在、玉ネギの集出荷施設を建設中で、年度内に完了する予定です。令和2年4月に供用開始した富岡産業団地は進出企業がほぼ決定し、現在第2産業団地建設に向けて調査中です。  2つ目は『帰還と移住の促進』です。お試し住宅を利用した短期間の町内滞在や、帰還・移住関連補助金の問い合わせに丁寧に対応し、移住定住増加に繋げていきます。首都圏の親子を対象としたツアーを実施し、大変好評をいただきました。本町を訪れる人を一人でも増やすため、町の特性を生かした魅力的なイベントを積極的に企画してまいります。  3つ目は『子どもたちの環境作り』です。来年3月には放課後児童クラブが完成します。子育て世代が安心して働ける環境づくりを進め、子どもたちを大事にする町として充実を図っていきます。また、本町には現在小・中学生が71人いますが、中学校卒業後は町外の高校に進学することになります。その子どもたちが、本町に戻ってきたくなるような教育や施策を進めます」  ――今後の抱負を。  「町内には未だ避難指示が解除されていない地域があります。今後、必要となる環境整備を着実に進め、一刻も早く、1㍉でも広く避難指示の解除を実現させ、町が真に目指すところである町内全域の避難指示解除に向けて邁進していきます。また、にぎわいづくりにも力を入れ、人が人を呼び込む交流人口の拡大にも全力で取り組んでまいります」 富岡町ホームページ

  • 【浅川町】江田文男町長インタビュー(2023.12)

    えだ・ふみお 1955年生まれ。2003年から町議を4期途中まで務め、その間、副議長などを歴任。2018年10月の町長選で初当選。現在2期目。 子育て支援と福祉環境の充実を図っていく  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されました。  「徐々にコロナ禍前の賑わいが戻りつつあると感じています。『花火の里浅川ロードレース大会』は、今年は過去最高の参加者数となりました。また、『浅川の花火』も、町内外から多くの方に来場いただき、例年以上の人出となり賑わいました。このほかにも、浅川町ならではの魅力ある地域資源が多くありますので、さらなる賑わいづくりのため、町の魅力発信に努めていきます」  ――エスプール(東京都千代田区)と包括連携協定を結び、ゼロカーボンシティへの取り組みを開始するそうですが。  「これまでも、地球温暖化対策実行計画に基づき、住宅用太陽光発電システム設置補助や公共施設照明のLED化、ふくしま森林再生事業への取り組み、ごみの分別指導、食品ロスの削減協力依頼など、さまざまな形で啓発や推進を図ってきました。今後は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、持続可能な地域づくりにつなげるためのロードマップを策定するほか、エネルギー利用の効率化に向け、次世代自動車の導入や建築物に対する高断熱化、太陽光発電設備の導入など、できるところから取り組んでいく予定です」  ――浅川中学校校舎の建て替え工事と、浅川小学校跡地への役場庁舎移転構想について。  「浅川中学校校舎新築工事は、8月に安全祈願祭を行い工事に着手しています。工事の進捗状況は、おおむね順調です。なお、別工事として新たに用地を取得し、テニスコート3面を整備する敷地造成工事は、予定通り8月中に完成し、9月上旬からテニス部の部活動で使用しています。今後も事故がないよう安全管理を徹底し、周辺地域の方々や学校生徒・教職員への安全にも配慮して、来年8月の新校舎完成を目指して工事を進めていきたいと考えています。  また、浅川小学校跡地への役場庁舎移転構想については、引き続き検討していきます」  ――今後の重点事業について。  「人口減少・少子高齢化対策が急務で、引き続き切れ目のない子育て支援と福祉環境の充実を図っていきます。特に子育て支援については、小中学校の入学祝金、高校生の通学費助成等のほか、今年度新たにこども園保育料の軽減や学校給食費の全額補助に取り組んでいます。今後も町民の声に耳を傾け、『子育てするなら浅川町』をモットーに、さらなる充実に努めていきます。そのほか、移住定住の促進や農業者支援、道路改良等の計画的なインフラ整備など、本町の重要課題への対応を一歩ずつ着実に進めていきます」 浅川町ホームページ

  • 【相馬市】立谷秀清市長インタビュー(2023.12)

     たちや・ひできよ 1951年生まれ。県立医大卒。95年から県議1期。2001年の市長選で初当選。現在6期目。18年6月から全国市長会会長を務める。  ――5月に新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に引き下げられました。今年は相馬野馬追が通常開催されるなどイベントが戻りつつありますが市内の状況は。  「ワクチン接種への関心が大分薄れています。新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に引き下げられる一方、ワクチンの副反応への警戒が残っていることが接種率低下につながっているようです。重症化率が高い高齢者や基礎疾患を抱える方を念頭に接種体制を整えています。高齢者が重症化しやすいのは、現在流行しているインフルエンザについても同じです。個人の意思を尊重した上で接種を勧め、流行と重症化リスクを下げるよう対応していきます。催しはできるだけ活発にやりたい。市の新春のつどいは、来年は行います」  ――一昨年2月、昨年3月に福島県沖地震が発生し、相馬市は2年連続で震度6強の揺れに見舞われました。この間、市内では台風などによる水害なども発生しましたが、復興状況と対策はいかがでしょうか。  「多くの住宅が損壊しました。行政として公費解体などできる支援はしてきたつもりですが、被害に遭った方の人生への影響は計り知れません。私の家も大規模半壊で建て替えざるを得ませんでした。70歳を過ぎて家を建てるのは容易でない。解体が必要な家屋は千数百軒で、約90%は解体が済んでいます。難しい判断なので解体はせかさず、時期を待って行政の手を差し伸べます。解体と移転が進むと更地が増えます。街なかを散歩すると空き地が増えているのが分かります。行政として、1年単位ではなく、10年、20年先を考えてリカバリーしなくてはなりません。リカバリーが新たな景観やビジネス創出につながってほしい。  建て替えてまた再起した飲食店やホテルもあり、繁盛している店舗もあります。市としては、もう被害には遭わせないという気持ちで水を吸い上げるポンプ車を新たに2台配備し、さらに宇多川と小泉川の河川改修をしました。過去には水田で保水効果があった土地が宅地化でアスファルトになるなど土地の変化が水害に与える影響は大きいですが、対策を抜かりなく行っていきます」  ――福島第一原発の処理水が放出されました。「常磐ものを食べて応援キャンペーン」が好調ですが観光の状況はいかがでしょうか。  「私が知る限りでは、マイナスの影響はそれほどありません。IAEAの厳しい基準を各国が支持しています。米国のエマニュエル駐日大使が相馬市を訪れ、意見交換をしました。海洋放出については大丈夫、つまり影響がないことを示す科学的な根拠があるという趣旨のことを言ってくれました。  中国内から日本の公共機関や店舗へ嫌がらせの電話が相次ぎ、それに対する反発で国民が冷静になった面はあります。相馬市内でも学校や病院、飲食店に中国語の電話や無言電話がずいぶんあり、業務を妨害されました。市民の間に科学的なデータに基づいて考えようという気持ちが芽生えました。  全国市長会会長として、教育現場で放射線を正しく学ばせてほしいとこれまで訴えてきました。高校入試に出題するように求めましたが、実現はまだ遠いです。副読本だけではリテラシーは十分に身に着かないと思います。  新たな名産として期待がかかるふぐの季節が始まりました。地元料理店での提供も徐々に増え、名物料理としても今後に期待ですが、漁業資源としては好調です。かねてからの名産地である山口県下関市のふぐ取扱業者が相当量買い取ってくれています。この前、全国ふぐ連盟の方々が相馬市を訪れ意見交換をしました。下関近海では温暖化の影響で近年ふぐが不漁です。相馬で獲れたふぐで下関のふぐ産業を支え、双方に実りあるようにしたいです」  ――今年度取り組んでいる重点施策についてお聞かせください。  「行政の役割は困った人たちに対して救いの手を伸べること、すなわち『不幸の緩和』です。自然災害や疫病への対応など住民の生活環境を守る義務を果たしていきます。無責任に夢みたいなことを語るよりも、目の前の義務を果たすことが一番大事なことだと思っています。  物価高で困窮者が増えています。政府が総合経済対策を進めていますので、市町村分について、生活困窮者には特に対応していきたいです」  ――全国市長会会長として政府に求めたいことは。 「たくさんあります。11月15日には副会長ら8人で与党の両政務調査会長と、内閣官房長官らを訪ね、『減税する際に市町村に迷惑を掛けない』との言質を取ってきました。減税とは地方自治体の税収減も意味するからです。  これまで他には児童・生徒が1人1台のタブレット端末で学ぶGIGAスクール構想の財源確保を要望してきました。同構想は5年を迎え、タブレット端末の更新を迎えます。5年に1回更新費用をその都度要望するのは非効率なので恒久財源を付けてほしいと訴えました。文部科学省は基金で対応することになりました。  来年から新型コロナワクチン接種が有料となりますが、単価が高いと市町村間の公費負担に差が出るので、負担に格差がないようにしてほしいと政府に要請しています」  ――今後の抱負を。  「重点施策と重複しますが、不幸な事態を最大限に緩和することです。長い目で見ると人口減少が不幸な事態です。それを解消するには企業誘致に励み、県外に流出が進む女性の働く場所をつくらないといけない。今年は企業誘致がまとまって、市内の工業団地用地をいくつか売却しました。人口減少に歯止めをかけるのは難しいですが、対策を積み重ねていかなければなりません。野球に例えればホームランを打つのではなく、バントでヒットを狙って、着実に返すような守り主体にしていかなければならない。  地道にコツコツが私の信条です。守りを継続していけば攻めに転じるチャンスが必ずある。一つが浜の駅松川浦です。浜の駅には原発事故後の風評被害の中、相馬の魚介類を味わってもらい『安全なんだな』と来場者に納得してもらう役割を担ってもらいました。『攻』というよりは『守』です。今や大勢の人で賑わい、近隣食堂に経済効果が波及するほどです。ところが、賑わいが商店街まで波及するかと期待したところに地震と水害、新型コロナ禍が襲いました。  市を挙げて地道にコツコツ石を積んでいたところを崩された感じです。打撃は大きいですが、『不幸の緩和』のために守り続け、幸福という攻めに転じるために、苦境の中でも対策は積み上げていかねばなりません。行政とはそういうものです」 相馬市ホームページ

  • 【福島県電設業協会】大槻博太会長インタビュー

     おおつき・ひろた 大槻商事、大槻電設工業代表取締役。2017年5月に県電設業協会長に就任(4期目)。福島商工会議所副会頭、県建設産業団体連合会副会長を兼務。 働き易く、魅力ある業界の構築に努める  ――協会の現状についてうかがいます。  「福島県電設業協会の会員数は現在50社であり、年々減少傾向にあります。内線工事、外線工事の有資格者・技術者不足による退会企業もあります」  ――業界を取り巻く課題についてうかがいます。  「まず、喫緊の課題として挙げられるのが『働き方改革』であると考えます。12月1日には自民党本部に陳情にうかがい、現状についてお話しさせていただきました。  労働における時間的な制限と工期がマッチングしなければ働き方改革の根本が揺らぐ事態となります。発注者側に対しては、残業など労働実態を反映させた工期を強く求めたいと思います。  今年は猛暑に見舞われ、作業も過酷を極めましたが、福島県では熱中症対策の一環として気温が35度以上になり作業を止めた場合に、その日の分を工期に加算し、期限を延ばす仕組みを確立していただいております。これは大変画期的なことである点を付言したいと思います。まずは人命が最優先ですので、ぜひ業界全体において浸透を図っていきたいと考えます。  次に、業界内における週休2日制の問題です。単独で受注する工事については完全に実施できますが、建築工事の現場となると大変難しいのが現状です。  建築工事は本体工事、電設工事、設備工事の三つの業者で基本的に構成されていますが、電設・設備業は建築物が完了したタイミングで工事に着手するという事情があります。もし建築工事で遅れが生じても、電設工事や設備工事は建築の工期に合わせなければなりません。その遅れにより作業工程が圧迫され、結果的に残業を余儀なくされてしまうのが実態です。  一方、県では現在この問題に対して、設備調整期間を設定し、特記仕様書にきちんと盛り込むなど適切な対応をしていただいています。運用に関してはこれからの課題となっていますが、設備調整期間が2週間と設定されれば、建築工事概成後、電設工事、設備工事で2週間の期間があらためて認められるようになるため、電設・設備業としては大変助かっています」  ――その他の重点事業についてうかがいます。  「各自治体に対しては、最低制限価格が担保される建築・電気・設備の3分割による分離発注を行っていただけるよう積極的に要請しています」  ――結びに、抱負をお聞かせください。  「業界の発展に向けてはまず魅力づくりが重要と考えます。完全週休2日制の実現など休日の確保をはじめ、電気がいかに日常生活や地域に寄与しているかについて、電設業の立場から効果的なPRを展開することで、電設業界に興味・関心を持っていただけるような取り組みについて議論を重ねていきたいと考えています」

  • 【県南建設事務所】手塚孝良所長インタビュー

     てづか・たかよし 1967年生まれ。福島市出身。東北大工学部資源工学科卒。1989年福島県入庁。道路整備課主幹、下水道課長などを歴任。今年4月より現職。 県民が求める社会資本整備・管理に取り組む  ――4月に県南建設事務所長に就任されました。管轄地域の印象はいかがでしょうか。  「栃木・茨城両県と接し、東北新幹線、東北道、あぶくま高原道などの高速交通網が発達している一方で、美しく豊かな自然に囲まれた地域でもあります。白河関跡、小峰城跡、棚倉城跡など歴史的文化遺産や伝統文化も多く魅力溢れる地域です」  ――2月4日には国道294号白河バイパスが開通しました。  「市街地を通る現道はクランクが多く、十分な歩道幅も取れないことから、1995(平成7)年度に延長4120㍍のバイパス整備に着手しました。開通により安全・安心な通行が確保されるとともに、市街地を経由して白河中央スマートインターチェンジと国道289号が直結し、白河厚生病院等へのアクセスが向上しました。市の循環バス『こみねっと』が4月からバイパス経由の新規路線を開設したほか、バイパス周辺にある小峰城や南湖公園への観光客も増加しています」  ――建設業界の人材不足が課題となっていますが、県としての対策は。  「県土木・建築総合計画でも目標の一つに『持続可能な建設産業』を掲げています。当事務所では担い手確保として、小学生や高校生、一般の方向けの現場見学会を実施しており、関心を持っていただけるようにそれぞれ内容を工夫しています。  一般の方向けの現場見学会としては、昨年度に南湖トンネル、今年度に堀川ダムでキャンプを実施し、施設の役割や建設業の重要さを学んでいただきました。子どもからお年寄りまで多数の参加があり、建設業をアピールできたのではないかと思います。  トンネルキャンプは全国でも2例目、ダムキャンプは全国でも初の試みだと思われます。今後も、担い手確保に向け日々シンカ(新化)し、有効な取り組みを進めます」  ――結びに抱負を。  「県土木・建築総合計画の地域別計画で定められている『県を越えた広域連携の中心として、自然、歴史、伝統文化をいかしながら、持続的に発展する県南地域』の達成に向けて各種施策に取り組んでいきます。  道路事業では、国道289号、国道118号などの広域的な道路ネットワークの強化、幹線道路の整備を推進することで、地域の物流の円滑化、産業や観光の振興を支援し、活力あるまちづくりを目指します。  国が進める阿武隈川の遊水地群整備をはじめ、各水系の流域治水対策事業や砂防事業などの推進、県有施設の長寿命化事業などにも重点的に取り組み、災害に強く安全で安心なまちづくりに努めます。  安全・安心、豊かさを次代につなげられるよう、県民が求める真に必要な社会資本の整備、管理に取り組んでいきます」 県南建設事務所ホームページ

  • 【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー【2023.11】

    たきた・やすお 1944年生まれ。郡山市出身。安積高、学習院大法学部卒。東北アルフレッサ㈱最高顧問。郡山青年会議所理事長、郡山商工会議所青年部会長などを歴任。現在、会頭3期目。  新型コロナは収束していないが、経済活動はコロナ禍前の動きに戻りつつある。一方、円安や物価高の影響は深刻で、人手不足や後継者問題も解消に向かう気配は見えない。こうした中、商都・郡山の経済は今どういう状況にあるのか。郡山商工会議所の滝田康雄会頭に、管内情勢や会員事業所の様子、将来ビジョンなどを聞いた。  ――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行され、管内でも7月にビール祭、8月にはうねめまつりが通常開催されるなどコロナ禍前の活気が戻りつつあると感じますが、滝田会頭は現状をどのように捉えていますか。  「『サマーフェスタ IN KORIYAMA・ビール祭』は7月下旬に3日間開催し、約5万9000人の人出がありました。ようやくイベントを楽しめるという雰囲気が会場にいた皆さんから感じ取ることができたと思います。出店者の方々は、地元の食材を扱う市内の飲食店でしたので、地域経済の活性化と地産地消につながりました。  また、今年のビール祭が成功した背景は、昨年に引き続いて街なかで開催したことにあると思います。昨年、コロナ拡大のリスクを理由に開催に否定的な意見もありましたが、私は感染対策をすれば問題ないと判断し、開催に踏み切りました。今思い返せば、停滞していた経済に大きな刺激になったのではないでしょうか。また、他の地域でも『郡山がやるならウチもやろう』というきっかけになったと聞いており、そういう意味でも、大きな意義があったと考えています。  翌週の8月上旬には、3日間にわたって『郡山うねめまつり』を開催し、約11万5000人の人出がありました。多くの参加団体も、それぞれが盛り上げようと意欲的に取り組んでくれました。市民の方々から、そして地域事業所などからは『開催してもらって大変良かった』と多くの声をいただき、コロナ禍前の日常を皆さんが求めているということを実感しました。  最後に、付言させていただきますが、忘れてならないのは実行委員会をはじめとする関係者の方々の頑張りです。開催準備はもちろん交通整理など、猛暑の中、それぞれの役割を果たしてくれたことが成功の一因であると言えます」  ――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。事業者からはどんな声が聞かれていますか。  「円安基調が続く中、資材・エネルギー価格の高騰など構造的な物価高は多くの中小企業に悪影響を及ぼしています。  人手不足については、特に建設業や製造業及びホテル、祭事といったサービス業で、コロナの影響による労働者の転職が起こりましたが、これら業種の需要が回復しても人手が戻らず困惑しているようです。他業種においても、求人に応募がほとんどないようです。一方で従業員については、賃上げでつなぎ止めている状況もあると聞いています。  また、後継者問題では、経営者の多くが高齢になる中、苦しい経営環境に置かれている中小企業では、廃業や清算を余儀なくされるケースも増えています。  これらを解決するためには、原材料の値上げや人件費の増加分を事業者間の取引等において適切に価格転嫁することが重要でありますが、交渉すること自体が難しいという事業者の声も聞かれます」  ――国や県にはどのような対策を望みますか。  「円安や物価高は構造的な問題であり、多くの事業者が苦労しています。国や県には、人材不足の解消と生産性の向上、さらに適正な価格転嫁が図れるよう、現状をしっかりと検証して政策の展開を図ってほしいと思います。  特にDX化については、具体的にどこに課題があるか、といったことまで踏み込んで対応することが大切で、しっかりと事業者の意見を聞いて、IT人材の活用施策や助成金の拡充など支援体制に繋げてほしいと思います。  そして、中小企業の稼ぐ力が強化されることを望みたいです。事業者が生産性向上や価格転嫁による適正な利益が得られれば、賃上げや雇用の確保につながり、ひいては経済の好循環につながりますので」  ――ゼビオが宇都宮市への本社移転を発表したり、うすいから高級ブランドが撤退したり、日和田ショッピングモールが改装による長期休業に入ったり、来年5月にはイトーヨーカドー郡山店の閉店が発表されるなど、管内は目まぐるしい情勢にあります。それら企業で働く従業員はもちろん、消費者も一定の影響を受ける状況にありますが、会議所ではどのような対応をしていきたいと考えていますか。  「近年の消費動向を見ると、Eコマース(電子商取引)などの進展により、従来の商取引の形態が大きく様変わりしています。  今回、転出した個々の企業が生き残りをかけて新しい取り組みを選択されたと思いますので、その経営判断は尊重せざるを得ませんが、地元の発展にご尽力いただいた企業が郡山を離れることは、まちづくりにおいても地域経済においても大きな痛手です。行政には新たな発展の機会となる計画づくりを進めてほしいと思います。  また、撤退や建て替えまでの期間については地元雇用が失われないよう、各社とも改善策をしっかり講じてほしいと思います。会議所としては、できる限りの協力をしていきたいと考えています」  ――滝田会頭が就任以来掲げている、郡山の未来像を考える取り組み「グランドデザインプロジェクト」について、その進捗と手ごたえをお聞かせください。 「平成30年11月に開かれた常議員会で承認されたグランドデザインプロジェクト構想は、コロナ禍の影響もありましたが、令和3年には路線バス(福島交通)のバスロケーションシステムが導入され、また安積高校の併設型公立中高一貫校については、要望した後に検討する旨のお答えをいただき、令和7年開校が示されるなど、徐々に形になりつつあります。 その一助になったのは、地元で暮らす若者たちの斬新な発想にあると思っています。20年後、30年後の郡山を支えるのは今を生きる若者です。彼らが郡山の将来を考えなければ、住みよいまちは実現しません。若者が考えや意見を出し合い、私たちベテランはそれをサポートする。そういう姿が未来の郡山を形づくっていくのだと思います。 グランドデザインプロジェクトを通じて、提案だけにとどまるのではなく、一つでも具現化していくことを目指していきたいです」

  • 【三春町】坂本浩之町長インタビュー【2023.11】

    さかもと・ひろゆき 1956年生まれ。田村高校、専修大学法学部卒。三春町総務課長、副町長などを歴任。2019年9月の町長選で初当選、今年9月に再選を果たす。  ――9月に行われた町長選で無投票再選を飾りました。  「選挙公約を記載したリーフレットを準備するなどして選挙に備えていましたが、無投票になったため、個人演説会もなく、様々な声を聞くことができず残念な部分もあります。選挙で審判を受けるのが本来あるべき形で、無投票によって全町民の信任を得られたわけではないことを自覚しつつ、職務に当たっていきたいと思います」  ――2期目の重要課題についてお聞かせください。  「1つは、1期目から取り組んでいる認定こども園建設と、アウトドア用品大手の『モンベルストア』が出店予定で、それに伴うアウトドア・アクティビティの環境創出です。こども園はすでに着工しており、モンベルストアは間もなく着工します。  また、新たな切り口として住環境を整備したいと思っています。具体的には空き家対策を町として進めていきたい。全国的に空き家の問題が叫ばれていますが、町内でも今後多くの空き家が出てきます。コンパクトシティのまちづくりを進めていくうえでも空き家対策は重要で、それに対する住宅のマスタープランを作成する予定です。  いま町で取り組んでいる第7次長期計画が令和6年で終え、令和7年から第8次長期計画に移行しますが、その中の柱の一つに、住環境の整備を盛り込み、新築や住み替えはもちろん、年を取り夫婦2人、あるいはどちらか一人だけになった時の住まいの流動化ということがあってもいいと思います。例えば、街なかのリフォームした住宅に移り住み思い入れのある元の住宅は残しておく。その方が亡くなってしまい、その住宅を誰も相続しないけど住宅の状態はいい場合は誰か別な方に住んでもらう。そういった形は、手間がかかるため民間業者では難しい。そこを行政として粘り強く地道に行い、少なくとも現在町内に住む方が、住むところがなくなり、町外に出るような事態は避けたいと思っています。  実際、町内には、家主さんから町が10年間の契約でお借りし、リフォームをして若者に貸し出す事業を行っています。現在は外国人実習生が住んでおり、そういった実績もありますから、状態の良い住宅を再利用できると思います。そういった考えにシフトしなければ住宅問題は今後もっと大きくなっていくと思います。簡単なことではありませんが、何もしないというのも行政の怠慢だとも思います。  もう1つは、間もなく町内の農業振興地域内の農用地区域の見直しを終えます。農用地として守っていく農地では、今後、何を栽培するかまだ決まっていないところもあります。町内はピーマンの指定産地になっていますが、すべての農地でピーマンを栽培しているわけではありません。国際情勢により小麦等の値段が高騰しており、国でも輸入に傾き過ぎる大豆と小麦などの栽培の奨励が行われています。とはいえ、農産物は一朝一夕でできるものではありません。町内では以前は大豆栽培が盛んでしたが、そうした過去の事例を踏まえつつ、農家に推奨作物を勧めると同時に、若い方が参入しやすい体制づくりを進めていきたいと考えています」  ――最初にお話があったこども園整備の現状は。  「原材料費高騰の心配がありましたが、事業者の企業努力もあってか大きな遅れはなく、順調に進んでいます。建設地は岩江地区になりますが、近隣から町内に転居する方は同地区に住宅を建てるケースが多く、同地区の住民の平均年齢が若くなっていますから、需要にも見合っていると思います。また、同園は町内東部から郡山市内の職場に通う方の通勤経路の途中に当たるため、利便性もあると思います。いまは広域行政の時代で、保育所や幼稚園も仕組みが変わりつつあり、今後は市町村を乗り越えた利用者の増加も想定しています。これから0歳保育もはじまりますが、今後は子どもを預けるための環境整備と、0歳から18歳のための政策を重点的に行っていきたいと思っています。また、町内唯一の高校である田村高校と連携を図りながら児童・生徒の育成に力を入れたいと考えています」  ――アウトドア用品大手の「モンベル」の店舗が町内にオープン予定で、町は同社と包括連携協定を結びました。  「『モンベルストア』が出店されるのは県内初で、近隣のキャンプ場との連携や登山客が多い会津地方などとも連携しながらつくり上げていきたいと思います。モンベルストアに訪れた方を町内の観光地などに誘導できるようにしたい。通年観光で神社仏閣などを歩いて回ってもらう取り組みに加え、ダム湖であるさくら湖の観光面でも、カヌー発着場の建設が行われています。そういった今までになかったスポーツが楽しめるようになるので期待しています。また、これを機に町民に向けて健康寿命延伸の観点から、町民に歩くことを推奨していきたいと思っています。今後は体力などに応じたコースなどの作成をモンベルと連携できればと考えています」  ――昨年、「滝桜」の天然記念物指定から100周年を迎えました。  「今年の来場者は12万8000人とコロナ前に比べ3割ほど増加しました。まだ5類指定前でしたが、売店も従来通り再開し、飲食の制限もありませんでしたので、その分増えたと見ています。ただ例年より開花が早すぎてバスツアーの来場者がほとんどいなかったのは残念でした」  ――そのほか、今後の重点施策について。  「河川改修が完了し、災害対策はほぼ終えています。ただ、ゲリラ豪雨など予測不可能な災害が多いのが実情で、町内にはアメダスと呼ばれる測定施設がないので町独自で整備しています。また、土砂崩れの危険を回避する傾斜測定を整備していきたいと考えています。そのほか、これからの超高齢化、人口減少の時代を迎えるに当たり、いまのうちに対策を行い、住環境整備やデジタル化によって、対策を講じることが必要になってきます。それらを2期目の任期中に進めていきたいと思っています」  ――今後の抱負。  「様々な政策を行って町民の方と接する中で、町民の方々が安心・安全に生活できる環境を、もっともっとつくっていきたいと感じています。コロナが5類になり、様々な行事で見た町民は皆笑顔でまさしく楽しそうでした。行事など行政が何らかの形で関わっていくと思うので、町民の皆さんが機嫌よく暮らしていただけるような町にしていきたいと思います。そのためにも基本を守り、行政に当たっていきたいと思います」

  • 【飯舘村】杉岡誠村長インタビュー【2023.11】

    すぎおか・まこと 1976年生まれ。日大理工学部卒。東京工業大大学院理工学研究科博士前期課程修了。飯舘村農政第一係長などを経て2020年月10月の村長選で初当選。 ここに住んでよかったと思う村を目指して。  ――帰還困難区域のうち、5月には長泥地区の特定復興再生拠点区域と拠点区域外の一部である長泥曲田公園の避難指示が解除されましたが、解除された地区について今後どのような取り組みを進めていく考えですか。  「避難指示解除はあくまで地区の再生・発展のための手段ですので、雇用の創出など優先すべきもの、実施できるものから実現していく方針です。現在、資源活用型堆肥製造施設を整備中ですが、同施設がその役割を果たすと思います。また、残る帰還困難区域についても、早期の避難指示解除を目指します」  ――ドラッグストアのハシドラッグと公設民営による出店を目指す他、セブンイレブンの移動販売が始まり、買い物環境の充実が進んでいます。住民の生活環境や利便性向上に向け取り組んでいる事業を教えてください。  「昨年度から村に移住していただいた医師の本田徹先生による訪問診療が浸透してきています。10月から福島交通が運行する路線バス『福島~医大経由南相馬』の運行ルートに飯舘村役場停留所が加わりました。今後も住民のみなさんや村に訪問される方の利便性向上のための事業を進めていきます」  ――休校中の相馬農業高校飯舘校周辺に産業団地を整備する方針を打ち出しました。今後の展望を教えてください。  「整備予定地として、インフラが存在し、整備が容易な村の中心となる場所、アクセスしやすく人が集まりやすい場所、村の産業特性を踏まえ産業集積の拠点となりうる場所を重視しました。令和4年度に実施した候補地調査により予定地としました。村の担い手を育成してきた場所ですので、そのような思いを込めて産業集積を進めたいです」  ――子育て支援や移住・定住に向けた取り組みについて伺います。  「移住については、福島県12市町村移住支援金、ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金の他、村単独での支援制度もあります。令和4年度から引き続き、移住サポートセンターを設置し、状況に応じた制度をご案内しています。  子育て応援策として、今年度から赤ちゃん誕生祝金や、小学校、中学校、高校の入学等準備費用の助成として子育て応援支援金を整備しました。また、不妊治療を受ける夫婦を対象に不妊治療費助成も進めています。  さらに、学んで村に帰ってきた方、移住した方が村内の企業に勤める際には奨学金の返還免除や奨学金返還支援事業補助金制度も整備しました。様々な方が住みやすく、帰って良かった、移住して良かったと実感する、選ばれる村を目指します」

  • 【中島村】加藤幸一町長インタビュー【2023.11】

    かとう・こういち 1952年生まれ。岩瀬農業高卒。JAしらかわ理事などを歴任し、2004年から村議2期。2010年9月の村長選で初当選。昨年9月の村長選で4選を果たす。 ひと・くらし・しごとを基本理念に施策を実施。  ――新型コロナウイルスの5類移行の影響について。  「5類移行後は各地区の行事が再開されるなど、コロナ禍前の日常に戻りつつあります。また、中断していた中学3年生のマレーシアへの修学旅行も4年ぶりに再開され、生徒各自が感染対策を徹底したおかげで無事に帰ってくることができ、それぞれにとって素晴らしい経験になったのではないかと思います」  ――役場庁舎改築の進捗状況について。  「新築工事・改築工事共に順調に進んでおり、新南棟庁舎が完成し、5月29日から供用開始となりました。以前の庁舎よりも利便性が向上し、村民の方々からの評判も上々です。現在は旧庁舎の改築を進めており、来年1月中旬の竣工を予定しています」  ――移住・定住促進の取り組みについて。  「今年度は移住・定住パンフレットを作成し、村の分譲地販売と併せてPRを行っているほか、関東圏でのイベントにも参加しています。ほかにも、若い世代に向け、移住・定住支援事業や結婚新生活支援事業について周知していきたいと考えており、条件によっては村から補助金が交付されるので、そうした部分でも魅力ある住環境をアピールしていきます。本村は全国に先駆けて保育所・幼稚園の保育料完全無料化、小・中学校の給食費全額無料化を実施しているので、充実した子育て支援の面でもアピールしていく考えです」  ――4月に第6次総合振興計画を策定しました。  「『みんなが輝らめく 豊かな なかじまむら』を将来像に掲げ、ひと(社会)・くらし(環境)・しごと(経済)3つの基本理念に基づく施策を実施していきます。赤ちゃんから高齢者まで、誰一人取り残さない、全ての人がいきいきと生活を送ることができ、輝く笑顔あふれる村『ひと(社会)』、豊かな自然を大事にするとともに、ライフラインの整備に努め、安心して暮らすことができる環境を整える『くらし(環境)』、村内企業との連携、企業誘致、基幹産業である農業を守り、村民が豊かさを実感できる村づくり『しごと(経済)』を目指して取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「公共事業長寿命化計画等に基づき、中学校や公営住宅、農道などの長寿命化を図っていくほか、災害対策として、ため池浚渫や雨水を阿武隈川に排水する排水ポンプ設置工事を進めています。ほかにも、中島村健康づくり交流センター輝らフィットを活用した健康づくり、介護予防の充実、地域おこし協力隊の活用などを含めた新規就農者支援の体制づくりを進めていく考えです」

  • 【石川町】塩田金次郎町長インタビュー【2023.11】

    しおた・きんじろう 1947年生まれ。学法石川高校、亜細亜大学中退。石川町議2期、県議4期を歴任し、2018年9月の町長選で初当選。現在2期目。 若者に留まってもらうための施策に取り組む。  ――2期目がスタートして1年経ちました。現在の率直なご感想は。  「どこの町村も同様ですが、人口減少と少子高齢化に危機感を持っています。これからの町を担っていく若者にどう留まってもらうか、活力をどう高めていくか、そこに注力した政策づくりをしていかなければいけないと感じています」  ――道の駅整備計画の進捗状況はいかがでしょうか。  「議会から『県内では最後発の道の駅で勝負できるのか』、『赤字になったら一般財源を投入するような負の遺産にならないか』などの意見や要望を受け、これまで議論を重ねてきました。そこで導き出した答えは、設計と建設をヤマト(群馬県前橋市)、運営をTTC(静岡県熱海市)に委ねる、官民連携型の『O(維持管理・運営)+DB(設計施工一括)方式』を取り入れることでした。また、民間に委託する条件として、『地場産品を商品として売り出す』、『職員は地元で採用する』などを盛り込みました。2025年度中の開業を目指しており、来年度着工の予定です」  ――ドクターヘリの実績について。  「出動しないことに越したことはないのですが、昨年8月から運用を開始して25人の搬送実績となりました。その中の7人は、ドクターヘリを利用しなければ助からなかったかもしれない、と報告を受けています。町民が安心して暮らせるよう、今後も医療体制の充実に注力していきます」  ――重点事業について。  「子育て支援の一環として、産婦人科・小児科関連の相談をオンラインで受け付けるサービスを4月から開始しました。産婦人科医や小児科医、助産師が妊娠中の悩みや出産のこと、産後の心身の健康、子育ての悩み相談などに応じています。  もう一つは、町立認定こども園の開設について、来年度内を目標として進めています。将来の町を担っていく子どもたちが健康で元気に暮らせるようにしていきます。 先ほど申し上げたように、いずれも若者に留まってもらうための施策となります」  ――今後の抱負を。  「毎回繰り返してお伝えしていることですが、『聞く力』、『交渉する力』、『発信する力』の3つに注力して、町政運営していきます。限られた予算の中で何ができるかを精査し、ある程度絞って目標を定めていくことが重要だと思っています。町民が何を求めているか『聞き』、財源を確保すために『交渉』し、温泉、桜、鉱物、自由民権運動の発祥の地など町の魅力を『発信』していきます」