湯本駅前再開発の住民訴訟いわき市に全国が関心

いわき市が進めているJR湯本駅前の再開発事業を巡り、市が業者を恣意的に選定したなどとして、業務委託料に当たる公金934万円余りを業者から返還を受けるよう市に求める住民訴訟を同駅前の商店主が起こしている。原告側は、「不公正な行政契約は違法」と掲げ、公共に関わる訴訟を支援するネット上のプラットフォームを通じて問題提起。フラガールゆかりの温泉街の再開発事業に全国から関心が寄せられている。

原告は、湯本駅前で洋菓子店を営む長岡裕子さん。代理人は広田次男弁護士ら市内の弁護士6人。被告いわき市の代理人は大谷好信弁護士。審理は福島地裁で川淵健司裁判長の下、合議制で行われている。昨年10月に第1回口頭弁論が開かれ、今年3月24日に3回目の口頭弁論を迎えた。市は住民訴訟の要件を満たさないとして、原告の請求却下、つまり「門前払い」を求めている。次回の口頭弁論は7月16日午後1時半からの予定。

原告側が問題にしている契約は、市がまちづくり会社「㈱ふらゆもり」と結んだ業務委託契約。2023年9月21日に随意契約の形で結んだ。期間は翌24年3月29日まで。再開発エリアで既存店及び新規出店する事業者向けに勉強会を開いたり、地権者や入居者を対象に移転や出店の意向を把握したりする業務を受託した。同社は、まちづくりの任意団体「じょうばん街工房21」に参加する地元の商工業者らで構成されている。

原告側が契約に疑義を抱く根底には、市→(随意契約)まちづくり会社→(再委託)コンサル会社の順に短期間で行われた再委託の経過がある。「最初からコンサル会社に委託するのが筋。まちづくり会社はトンネルの役目ではないか」という仮説だ。いわき市は2023年9月21日にまちづくり会社「ふらゆもり」と業務委託契約(委託料934万2300円)を結び、同社は1カ月後の10月20日に602万2500円で㈱マイロックチョコレーツ(神奈川県川崎市)に再委託した。再委託先は「トコナツ歩兵団」の名で「フラシティいわき」をはじめ市のPR業務を担っており実績がある。湯本駅が位置するいわき湯本温泉では、女将たちが踊る「フラ女将」をプロデュースするなど地元での信頼も厚い。

行政が競争入札ではなく随意契約方式(プロポーザルも含む)を採るには、緊急性やその業者が持つ代えがたい能力・実績に頼る必然性、見積もり金額が妥当かなどの要件を満たす必要がある。原告側は、ふらゆもりが市と随意契約を結んでから1カ月という短期間で再委託した点をもって「業務遂行能力がない」とし、「不適切な随意契約であり、市の裁量権を逸脱し違法」と主張する。

ふらゆもりに業務遂行能力がないことを示す根拠の一つには、同社取締役が、体制が整っていないために「トコナツ歩兵団に頼むしかない」と、内情を語った地元紙のインタビュー記事を挙げる(『日々の新聞』2024年9月30日発行)。同紙面では、いわき市から「受け皿になる株式会社をつくってほしい」と言われたことが同社設立のきっかけと取締役が打ち明けている。

行政が再開発を行う際、事を円滑に進めるために地元の商工業者に窓口となる組織をつくらせる例は珍しくない。全国を見渡せば、いわき市と同じ構図があるかもしれない。原告側は、裁判資料を公共に関わる訴訟支援に特化したウエブプラットフォーム「CALL4(コールフォー)」に掲示している。住民訴訟は、プラットフォームを通じて他地域からの関心を集めそうだ。

再開発が進む、いわき・湯本駅前
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