【二本松市長選】三保氏の対抗馬探しで迷走する自民党

 任期満了に伴う二本松市長選は11月23日告示、同30日投開票で行われる。この稿を執筆している時点で立候補を正式表明している人はいないが、5回目の当選を目指すとみられる現職・三保恵一氏(76)の対抗馬を自民党二本松総支部が擁立できるかどうかが焦点になっている。

県職員OB、市議会議長、県議、若手経済人に出馬打診

 三保市長は、9月4日に行われた市議会9月定例会の一般質問で堀籠新一議員から「11月の市長選で再選を目指す考えがあるなら、その決意と市政運営への思いをお聞かせ願いたい」と問われたが、態度を明らかにしなかった。

 《三保氏は「残された任期を全うし、市民の声を大切にして期待に応えたい」と述べた上で、「市民、後援会関係者と協議し、対応を検討したい」と明言を避けた》(福島民報9月5日付)

 ただ、実際は立候補に向けた準備は着々と進めており、市内の選挙通によると「9月下旬に開かれる後援会後に三保氏が正式に出馬表明する段取りになっている」という。

 仮に三保氏が立候補すれば、2005年に二本松市と安達・岩代・東和の3町が合併し、現在の二本松市になって以降実施されている全ての市長選に臨むことになる。

 三保氏は旧二本松市で市長を1期務め、合併後の現二本松市で初代市長として2期。2013年の市長選は落選したが、2017年に返り咲き、現在まで2期務めている。通算4期の三保氏は11月の市長選で5回目の当選を目指すが、巷で囁かれるのは「多選による飽き」だ。

 「合併して20年のうち16年も同じ人が市長を務めているわけだから、市民の間に『もうそろそろ別の人に替わってもいいでしょ』という声が出るのは自然」(前出・選挙通)

 もう一つの懸念材料は年齢だ。現在76歳の三保氏は仮にあと1期務めれば80歳。郡山市長を3期務めた品川萬里氏は80歳を迎えるタイミングで引退したので、三保氏も状況は同じだが、11月に行われる福島市長選には32歳の新人・馬場雄基氏が立候補表明していることを踏まえると、若手の台頭をうらやんでいる二本松市民が多いのは事実だ。

 とはいえ、三保氏の選挙の強さは折り紙付きだ。2013年の市長選こそ震災・原発事故対応への不満から県内の首長選挙で起きた〝現職落選ドミノ〟の渦にのみ込まれたが、それ以外は旧二本松市長選に遡っても負けなし。連続5期務めた県議時代(二本松市選挙区)も落選の経験がなく、敗れたのは2001年に立候補した参院選だけだ。

 おかげで三保氏に挑もうとする候補者はなかなか現れず、前回(2021年)は無投票で三保氏が4回目の当選を飾っている。

 ただ、前回は加藤建也議員(67)が「誰も出ないなら私がやる」と決意し、自民党系の議員や2017年の市長選で三保氏に敗れた新野洋元市長が支援する方向でいったんは話がまとまった。

 「ところが、市長選の1カ月前に自民党二本松支部長の高宮光敏県議(54)が反対した。高宮県議は、市議会で三保氏と鋭く対峙する加藤議員を傷付ける(落選させる)わけにはいかないと、加藤議員に出馬撤回を求めたのです」(同)

 高宮県議は、父親で元県議の敏夫氏が合併後最初の二本松市長選で三保氏に敗れた姿を見ており、「勝算の低い選挙には臨むべきではないという考えから加藤議員に翻意を促したようだ」(同)。

 もっとも、既に戦闘モードに入っていた加藤議員や自民党員は納得せず、話し合いの結果、「次の市長選に自民党から必ず候補者を擁立すること」を条件に、加藤議員が立候補を見送った経緯がある。

 「ただ、その後も擁立作業は難航し、高宮県議にも適任者を探している様子がなかったため、党員の間には不満が渦巻いていた」(同)

 そうした中、自民党安達支部から候補者として挙がったのが、旧安達町出身で元県企画調整部長の伊藤泰夫氏(66)だった。

 自民党安達支部の関係者が語る。

 「伊藤氏は福島高、東大経済学部卒業後に県庁に入庁。震災後は原子力損害対策担当理事や避難地域復興局長を務めるなど復興事業の最前線に立っていた」

 伊藤氏は、2023年の県議選に立候補せず引退した遊佐久男元県議の小中高時代の1学年先輩という間柄もあり、自民党安達支部は遊佐氏を通じて伊藤氏に出馬を要請した。

 「しかし、伊藤氏からは『自分はそういう器ではない』ときっぱり断られてしまった」(同)

 この関係者によると、地元の待望論に反し、本人は政治の世界に一切関心を向けていなかったため、自民党安達支部ではすぐに擁立をあきらめたという。

 ちなみに、伊藤氏は2018年3月に県庁を退職後、福島イノベーション・コースト構想推進機構事務局長、同専務理事を経て、現在は同理事長補佐を務めている。

出馬を迫られる高宮県議

 その後は具体名が挙がることもなく市長選イヤー(2025年)に突入。自民党二本松支部では夏を迎えても候補者を決められずにいた。

 前出・選挙通によると、旧岩代町出身で市議会議長の本多勝実氏(60)にも立候補を打診したが、本多氏は首を縦に振らなかったという。

 「その後、前回立候補を取りやめた加藤建也議員や新野洋元市長が高宮光敏県議に『自民党から候補者を立てられなければ、再び三保氏の無投票再選を許してしまう。それだけは絶対に避けなければならない』として『あなたが出馬するしかない』と強く迫ったのです」(事情通)

 背景には、高宮県議が4年前、加藤議員をはじめ二本松支部の自民党員との間で交わした「次の市長選には党から必ず候補者を立てる」という「約束」があった。

 「誰も候補者を立てられなかったのだから、あとはトップ(二本松支部長)のあなた(高宮県議)しかいないでしょ、というわけ」(同)

 ところが、高宮県議は市長選出馬を拒んだという。

 「高宮県議は『自分にも後援者との約束がある』と県議を続ける考えを示したが、最終的には高宮県議の後援者と自民党二本松支部の関係者が協議し、加藤議員らとの約束を優先すべきという結論になった」(同)

 当初は高宮県議が9月中旬にも出馬表明するのではないかとみられていたが、この時の自民党二本松支部の協議では結論が出ず、表明は見送られた。締め切りの都合上、本誌は高宮県議が正式に出馬表明したかどうか見届けられないが、同25日に開かれた後援会役員会では「勝てない選挙に出るべきではない」との声が大勢を占めたという。

 ところが、翌26日付の福島民報では「高宮氏が候補者に浮上」と報じられた。事情通いわく「本人の気持ちは揺れ動いている」。自民党二本松支部は高宮氏に断られることも想定し、党員で元二本松青年会議所(JC)理事長の新野成輝氏(43)にも声を掛けるなど、前回に続く無投票だけは阻止しようと懸命だ。

 あるベテラン党員が言う。

 「新野成輝氏は新野洋元市長の次男で、福島高、会津大を卒業し、現在は市内の会社に勤務している。政治経験はないが、JC活動や党活動に熱心に取り組んできたので待望論が急浮上した。ただ、本人にその気はないようだ」

 誰になるかは不透明だが、今号が店頭に並ぶ頃、自民党二本松支部は三保氏の対抗馬を擁立できているのか。それとも、前回に続き無投票になってしまうのか。

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