亀岡元衆院議員「無罪主張」の根拠

 昨年10月の衆院選直前に選挙区内の祭りに参加した団体に現金を寄付したとして、元衆院議員の亀岡偉民氏(70)=自民党を離党=が公職選挙法違反(寄付行為)の罪に問われている。亀岡氏は「寄付は文化振興団体の寄付を手伝ったに過ぎず、政治運動や選挙運動とは関係ない」、「団体としての寄付は10年以上前から祭りの時期に手伝っており、偶然衆院選が重なった」として無罪を主張。11月5日の第2回公判では、弁護人が無罪の根拠を示した。

公選法違反疑惑の寄付は「手伝っただけ」

 亀岡氏は昨年10月15日に公示された衆院選直前の同3~13日の間に、立候補した福島1区内の福島市や二本松市で行われた六つの祭りに参加した27団体に計25万円を寄付したとして公職選挙法違反の罪に問われている。亀岡氏側は、寄付は「『福島メセナ協議会』の活動を手伝っただけ」として無罪を主張。検察側は協議会と亀岡氏が「一体」であることを、押収したのし袋などの物的証拠や祭り参加者の証言から示そうとしている。

 地方議員レベルでは、自分が氏子になっている神社の祭りに寄付し、問題になることが度々ある。それでも、刑事裁判にまで発展することはまずない。衆院議員を5期務めた亀岡氏が起訴されたのは珍しいケースと言える。警察・検察は、大物政治家の検挙に動くのはリスクが大きいとして慎重になるからだ。

 捜査機関が亀岡氏の立件に動いたのは、亀岡氏が落選し議員バッジを失ったからだと言われている。そして真の狙いは「自民党の裏金問題の究明」にあるとの見方もある。

 旧安倍派などで見られた政治資金収支報告書の不記載問題、いわゆる裏金問題をめぐっては自民党に逆風が吹き、2024年の衆院選では県内四つの小選挙区で自民党候補3人が落選した。旧安倍派に属していた亀岡氏は立憲民主党の金子恵美氏に敗れた。亀岡氏自身は2018年からの5年間で計348万円の不記載があった。

 11月5日の第2回公判で弁護側は衆院選の公示前から警察が内偵を進めていたと明かした。警察が亀岡氏に注意することはなく、静観していたと言い、弁護側は捜査の不当性を主張している。祭りへの寄付は「福島メセナ協議会」として「政治運動・選挙運動とは無縁に10年以上前から毎年行ってきた」という。「亀岡氏は協議会の役員ではなく、活動を手伝っていたに過ぎないし、衆院選と協議会による寄付の時期が近かったのは偶然の一致」という認識だ。

 さらに、毎年行っていたのに今まで寄付活動が問題視されてこなかった点を挙げ、「狙い撃ちされた」と被害者感を強調した。実際は9月から80団体近くに寄付していたのに、公示日直前の27団体への寄付のみが「つまみ食い的」に立件され、「当選目的の寄付と印象操作された」と警察・検察を批判した。

 公選法は直近に選挙があるかどうかにかかわらず、いかなる名義での寄付も禁止している。ただ、実際に罪に問われるかどうかは捜査機関の胸三寸なのは間違いない。

 第2回公判で弁護人は亀岡氏が無罪とする根拠を約30分にわたって述べた。弁護側の主張は次の通り。

 まず、福島メセナ協議会は芸術やスポーツの振興を目的とする団体で、1996年ごろに亀岡氏の支持者であった福島市内の企業経営者らが複数人で立ち上げた。野球大会に関わり、大会には「亀岡杯」の名を冠した賞があった。

 役員たちが高齢となり死没すると亀岡事務所が会計を引き継いだ。運営は参加費で賄い、独立の会計を維持したとし、「政治資金の関与は全くなかった」という。800万円を引き継ぎ、祭りへの思いが強かった設立者の遺志を受けて地域の祭りに寄付するようになった。祭りへの寄付は遅くとも2013年ごろから始まったという。

 会計は亀岡氏の私設秘書が担当。800万円は両替以外には取り出すことはなく出金のみで、残金が減ると「会費 福島メセナ協議会」と書いた小さな白い箱に保管するようになった。警察に押収された時点での残金は17万7000円だった。

 祭りへの挨拶と寄付は亀岡氏と事務所スタッフで手分けして行っていた。亀岡氏は「有権者の要望を聞く重要な機会であり、地元の行事に赴くのは政治家として当然のこと」と考えていた。神社の氏子総代から「祭りに来て激励してほしい」とせがまれることもあれば、「他の候補者は来たのに」と言われることもあったという。

のし袋を回収

 寄付は多忙を極める選挙活動を前にしても欠かせない活動だった。2024年も9、10月の秋祭りの時期に約80カ所に寄付した。

 2024年9月27日に自民党総裁選が行われ、石破茂氏が総裁に選出された。その後、首相に就任し、衆院解散と総選挙ムードが現実味を増す。だが、自民党県連の役員会に出席した県議から10月解散の情報を秘書を通じて聞かされても、亀岡氏は真に受けなかったという。

 10月9日に衆院が解散されると亀岡事務所は選挙モードに慌てたという。ただし、選挙期間中の第一声の場所や時局講演会の会場を確保する動きは早かった。さかのぼること同3日には福島市街地にあるまちなか広場の使用を市に打診。秘書は「目の回るような忙しさから疲労困憊し、頭が混乱する中」、誤って申請書の使用者欄に亀岡氏の選挙活動とは全く関係のない「福島メセナ協議会」と書いてしまったという。

 時局講演会のために福島青少年会館を確保する際には、秘書は「夜中に意識が朦朧とする中」、申請書を作成し、誤って利用者欄に全く関係がないのに「福島メセナ協議会」と書いてしまった。会館使用後、協議会とは関係ないはずの亀岡氏名義で領収書を受け取ったため食い違いが生じた。秘書は協議会名義で申し込んだ認識は全くなかったという。

 検察側は寄付行為をしていた協議会と亀岡氏が「一体」であることを証明しようと、協議会が亀岡氏の第一声や時局講演会(=選挙運動)を行っていたことをうかがわせる書類を証拠に挙げる。亀岡氏側は「選挙運動に関わる書類に協議会の名があるのは誤り」と反論する。

 同じ福島メセナ協議会による寄付であるはずなのに、衆院解散の9日を境に、それより前は「衆議院議員亀岡偉民」名義、それより後は「福島メセナ協議会」名義になっていた。亀岡氏側によると「後者が正しい」。理由はこうだ。

 10月5日に亀岡氏は秘書が運転する車に乗って二本松の提灯祭りに参加する団体を訪問し、協議会の寄付活動を手伝っていた。協議会の名前を書いたのし袋を渡したつもりが、誤って亀岡氏の名前を書いたのし袋を渡してしまったという。車に2種類ののし袋を常備し、混同してしまったのが原因とする。誤りに気づき、翌6日に秘書が回収し差し替えた。検察が証拠として挙げている「衆議院議員亀岡偉民」と書かれたのし袋は回収できず、警察が押収した物だった。

 寄付額の相場が1団体当たり1万円だった理由については、「原則5000円だったが、選挙モードのため多忙で両替ができない場合に1万円を渡した」と説明した。

 以上のように、第2回公判で亀岡氏が無罪を主張する根拠が明らかになった。今後は検察側の証人3~4人、弁護側の証人3人が出廷し尋問が行われる。

「説明する機会を圧力で潰された」と記者団に話した亀岡氏=10月3日
「説明する機会を圧力で潰された」と記者団に話した亀岡氏=10月3日

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