本誌3月号に「財政が逼迫する須賀川市と喜多方市 適正ラインに程遠い経常収支比率と財政調整基金残高」という記事を掲載した。今回はその続編として、須賀川市が進めている「公共施設マネジメント」について深掘りしてみたい。ちょうど、この4月から変わる部分も多いので、参考になればと思う。
財政健全化には「さらなる痛み」が必定


須賀川市は2024年4月に「須賀川市行財政改革取組方針」を策定した。その背景には、人口減少が進み歳入増加が見込めない中、新型コロナウイルス感染症対策、地震・豪雨などの自然災害対応、物価高騰対策など、喫緊の事業が相次いだことで、基金の取り崩しや市債発行が常態化し、財政構造の硬直化が進んでいることが挙げられている。このため、行財政改革に取り組む必要があるというのが同方針策定に至った経緯だ。
同方針は橋本克也前市長時代に策定されたもので、2024年度から2028年度までの5年間が対象。その後、2024年7月の市長選で大寺正晃市長が誕生すると同時期に「集中改革プラン」が策定された。これは同方針実施期間の中でも、2025年度から2027年度までの3年間について、集中的に取り組むべきことをまとめたもの。
同プランでは①事務事業の見直し、②公共施設マネジメントの推進、③健全な財政運営の推進、④税外収入の確保・拡大といった重点取り組み事項が定められている。その中でも話題になっているのが公共施設マネジメントの推進について。
昨年3月、大寺市長は以下の声明を発表した。
「集中改革プラン」では、「公共施設マネジメントの推進」を早期に取り組むべき事項としておりますが、本市の現状は、多くの施設で耐用年数の経過が進み、老朽化が進行しているため、今後、このまま大規模改修や建替えを進めると、多額の更新費用が財政を圧迫することが見込まれております。
特に、令和2(2020)年度に策定した「市公共施設等個別施設計画」では、今後36年間の施設の維持更新費用の推計を算出しておりますが、全ての施設を維持した場合、約3166億円の費用が必要となり、計画策定時の推計でも2158億円の不足が見込まれております。
(中略)このため、今後、一部の公共施設において、実験的に開館時間の短縮や休館日の追加を実施するとともに、「市公共施設等個別施設計画」における再編時期の前倒しにより、施設の統廃合を進めるなど、経常経費の削減を図りながら、「集中改革プラン」の目標である「経常収支比率の改善」と「財政調整基金残高の確保」の達成を目指し、各種取組を推進してまいりますので、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
この件については市議会とも協議しながら議論を深めてきた。
市では、①維持管理コストが高い、②建築年数が古い、③短期で再編できる、④人口減少エリアの小中学校等、⑤施設カルテの費用対効果、および費用対効果と施設性能とのクロス評価結果を参考、⑥環境に配慮した公共施設の効率的運営検討委員会の調査結果資料を参考――といった基準で集中改革プラン期間内に再編に取り組む45施設を選定した。
最初に、その45施設の再編案が示されたのは昨年6月に開催された市議会全員協議会だった。
その際の再編案の一例を紹介すると、長沼図書館▽長沼コミュニティセンター内に図書コーナーを設け機能移転、岩瀬図書館▽岩瀬コミュニティセンター内に図書コーナーを設け機能移転、博物館▽民間活力の活用を検討のうえ、収蔵機能に特化――等々だった。
市民の声を受け当初案を修正
これらに対する市民の反響は予想以上に大きかった。市や市議会議員に意見・要望が寄せられたり、施設存続を求めて署名運動に発展した例もあった。
これを受け、市は当初案に変更を加え、今年1月に開かれた議会全員協議会で修正案を示した。それをまとめたのが別表である。

前段で例に挙げた3施設を見ると、長沼図書館は「長沼コミュニティセンター内に図書コーナーを設け機能移転」だったのが、「休館日週2日、開館時間短縮」に変更された。岩瀬図書館も同様。博物館は「民間活力の活用を検討のうえ、収蔵機能に特化」から「民間活力活用を検討、休館日週2日」とされた。詳細は割愛するが、45施設のうち、15施設で当初案から変更があった。
前述したような市民からの意見・要望を受け、取り組み内容を変更したということだ。
ある議員はこう話す。
「当初案については、例えば、『機能集約』とされた図書館の存続を求めて署名運動が展開されるなど、市民の皆さんの反響が想像以上に大きかった。それだけ思い入れがあり、無くなったら困るということでしょうね。そうした声を受け、市当局からは、過去のデータを参照し『この曜日は利用者が少なかった』等々を加味して、休館日を増やしたり、開館時間を短縮するなどした修正案が示されました。議会としても、変更点の詳細な説明を受け、『おおむね了承』『再編やむなし』というのが大勢になりました」
こうして、別表に示した45施設について、取り組み内容に応じた再編を進めていくことになった。すでに取り組みが始まっているもの、2027年度から実施されるものもあるが、ちょうどこの4月から変わる部分も多いので対象施設利用の際は注意を。
なお、これら45施設の2024年度の維持管理費(実績)は、計16億3759万円だった。最大の注目ポイントは、それが再編によってどう変わるのか、ということ。
その点について、市財政課に尋ねると、担当者はこう話した。
「すでに実施しているもの、年度はじめから実施するもの、年度途中から実施するもの、2027年度に実施するもの等々、それぞれ条件が違うので、今回の公共施設マネジメントの取り組みによって、2026年度の維持管理費がどうなるか、といったシミュレーションは出していません」
ただ、「市公共施設等個別施設計画」ではシミュレーションが示されている。前段で紹介した大寺市長の声明では《令和2(2020)年度に策定した「市公共施設等個別施設計画」では、今後36年間の施設の維持更新費用の推計を算出しておりますが、全ての施設を維持した場合、約3166億円の費用が必要》とあった。これを、今回の45施設だけでなく、すべての施設で長期的に再編を進めた場合、維持管理費は約2185億円減の約981億円まで圧縮できるという。
もっとも、今回の45施設を見れば分かるように、市の当初方針通りに行くとは限らない。むしろ、そうならないことが多いと考える必要がある。すなわち、市が「廃止」や「機能集約」などを想定していたとしても、市民の意見を聞く中で「規模縮小(開館日数・時間短縮)」などに変更しなければならない部分が相当数出てくる、と。そう考えると、「市公共施設等個別施設計画」のシミュレーション通り(維持管理費約2185億円減)にはいかない。
サウンディング調査の結果

一方、別表で「民間活力活用を検討」「民間移行」とされた12施設については、昨年10月から今年1月にかけて、サウンディング型市場調査、すなわち民間事業者からの提案募集を行った。
3月6日にその結果が公表され、博物館、文化センター、ふくしま森の科学体験センター(ムシテックワールド)、ふれあいセンター、デイサービスセンター、老人福祉センターはそれぞれ1件、市民温泉と市民交流センターはそれぞれ3件の提案があった。
ただ、詳細な内容については、「今回の本調査によりご提案いただいた内容は、知的財産としてその情報、内容を保護することとしているため、具体的な提案内容等は公表しません」(「サウンディング型市場調査の実施結果」より)とのこと。
「現在は各対象施設の所管部署で、提案内容を精査・検討しているところです」(財政課)
例えば、博物館や文化センターは文化振興課、ふくしま森の科学体験センター(ムシテックワールド)は生涯学習スポーツ課、デイサービスセンターや老人福祉センターは長寿福祉課という具合に、それぞれ所管する部署が違う。提案があった施設の所管部署がその内容を精査し、提案に乗るか、別の方策を探すか等々を検討していくことになるという。
前号記事では、同市の経常収支比率と財政調整基金残高が適正水準に程遠いことを指摘した。
経常収支比率は、収入に対して絶対に必要な支出、いわゆる義務的経費の割合を示すもの。一般家庭に例えると、家賃、生活費(食費・日用品費)、水道光熱費、通信費、車両費(ガソリン代など)といった固定費に該当する。当然、収入に対して固定費の割合が低ければ自由に使えるお金が多い。自治体財政も同様で、この数値が低いほど、新規事業や貯蓄(財政調整基金)などに回せるお金が多いことを意味する。一般的には70%から80%程度が妥当とされ、80%を超えると「財政が硬直化し始めている」と判断される。
同市の2024年度の経常収支比率は、適性水準を大きく超える101・2%だった。
一方、財政調整基金は、一般家庭でいう「貯金」に当たる。当然、あればあっただけ何かあった際の安心材料になる。
同市はコロナ禍前の2019年度に約29億5000万円あった財政調整基金残高が、2024年度は約3億3000万円になり、約26億円(約89%)減った。
一般的に、財政調整基金は標準財政規模の10%程度が適正とされている。「何があった時のためにそのくらいの貯金は持っておいた方がいい」という目安のラインである。それで言うと、同市は約18億円が適正ラインで、現状は15億円ほど足りていない。
そんな中、同市は集中改革プランの実施期間(2027年度末まで)で、経常収支比率95%以下、財政調整基金残高9億円(標準財政規模の約5%)を目標にしている。いずれも、前述した適正水準には届かない数値だが、まずはそこを達成し、その後は継続して「須賀川市行財政改革取組方針」に基づいた取り組みを進め、「持続可能な財政基盤の確立を目指す」としている。
そこに至るまでには、これまで以上に〝痛み〟を伴うことになろう。

























