2024年の衆院選直前に選挙区内の祭りに参加した27団体に現金計25万円を配ったとして、元衆院議員の亀岡偉民氏(70)=自民党を離党=が公選法違反に問われている。亀岡氏は「選挙目的の寄付ではない」「文化振興団体の寄付活動を手伝ったに過ぎない」と無罪を主張している。7月15日に福島地裁で開かれた公判で検察側は罰金50万円を求刑した。検察側は、衆院選の区割り変更で組み込まれた二本松市で新たに寄付行為をした点などをもって「選挙を意識した寄付」と主張。同市の祭り団体からは公選法違反を窺わせる証拠も押収され、二本松市内での寄付行為が仇となった形だ。
亀岡氏は2024年10月の衆院選公示直前に福島1区内で行われた6つの祭りに参加した27団体に計25万円を寄付したことが公選法違反に問われている。この選挙では、自民党の旧派閥で常態化していた政治資金収支報告書の不記載問題、いわゆる「裏金問題」で自民党は国民の反感を買い、逆風が吹いた。裏金問題は、旧派閥主催の政治資金パーティーで、ノルマ以上のパーティー券を売った議員に現金が還流され政治資金報告書に記載されずに「裏金」となっていたことが問題視された。亀岡氏も不記載が判明したことが響き、落選の憂き目にあった。
公選法は選挙が近いかどうかにかかわらず選挙区内の有権者への寄付をいかなる名義でも禁じている。祭りへの寄付は運営側も当たり前のものとして受け取り、祈祷や食事を「対価」として受け取ったことにすれば、寄付には当たらない抜け道が用意されているため、議員の間では珍しくない。実際、福島市の大波地区で昨年行われた夏祭りでは、亀岡氏の公選法違反疑惑があったばかりにもかかわらず地元選出の国会議員や県議が寄付していた(次ページ一覧表)。一覧表は、亀岡氏側が政治家による祭りへの寄付が慣習として根付いており悪質性がないことを示すために証拠として提出した。証言台に立った祭り関係者も政治家からの寄付を当たり前のものと捉え擁護した。
祭りへの寄付は、刑事告発されたり報道で問題視されたりするが、不起訴や略式起訴になる場合が大半だ。政治家が起訴され公開裁判になるかどうかは、警察・検察の匙加減だが、今回捜査機関が亀岡氏の立件に動いたのは、亀岡氏が落選して議員バッジを失ったからだと言われている。
亀岡氏は落選直後の24年11月14日にホテルの前で捜査員に待ち伏せされ、自宅や事務所など5カ所に家宅捜索が入った。携帯電話とパソコンを半年以上押収され、任意の取り調べを受けた。秘書をはじめ県議など関係する地方議員も取り調べを受け、外堀が埋められていった。
亀岡氏が罪に問われている祭りへの寄付は次の通り。時系列が分かりやすいように2024年衆院選の動きも並べる。
10月3日 飯坂けんか祭り(福島市飯坂町)の2団体
5日 二本松の提灯祭りの2団体
9日 衆院が解散
11日 針道のあばれ山車(二本松市東和地区)
13日 松川提灯祭り(福島市松川町)の祭り本部
13日 福島稲荷神社例大祭(福島市)の10団体
15日 衆院選公示
27日 投開票
福島市の「大波夏祭り2025」に寄付した議員
| 種別 | 寄付額 | 言動や特徴 | |
| A | 県 議 | 3000円 | 福島稲荷神社例大祭への現金寄付を示唆 |
| B | 県 議 | 5000円 | |
| D | 国会議員 | 5000円 | 主催者が呼んでいないのに来た |
| E | 県 議 | 5000円 | |
| F | 県 議 | 5000円 | |
| G | 県 議 | 5000円 | 主催者が呼んでいないのに来た |
| H | 県 議 | 3000円 | |
| I | 市 議 | 3000円 | |
| J | 市 議 | 5000円 | |
| K | 市 議 | 3000円 |
1団体に付き1万円が相場で、福島稲荷神社の場合は5000円の時もあった。
亀岡氏側は祭りへの寄付は福島メセナ協議会の寄付活動を手伝ったに過ぎないと主張している。これに対し検察側は、7月15日の論告求刑で「亀岡氏は衆院解散前の2024年10月3~9日の寄付は『衆院議員』の名義で、解散後の寄付は『福島メセナ協議会』と使い分けていた」と指摘。「衆院議員という肩書を明らかにしたくない場合に使われていると言え、同協議会と亀岡氏は同一視できる」とした。
祭り関係者の取り調べでの供述や法廷での証言によると、亀岡氏は寄付金が入ったのし袋と「衆議院議員亀岡偉民」と書かれた挨拶状を重ねて一緒に渡していたという。衆院議員の名刺がクリップで留められている場合もあった。これをもって、検察側は「受け取る側が亀岡氏からの寄付と認識するのを分かったうえで手渡していたと推認できる」と述べた。
2023年12月に福島市の飯坂温泉で行われた亀岡事務所の忘年会では、製薬会社の役員との懇親の場を設けた。亀岡氏は新型コロナなどの感染症に対応するために国産のmRNAワクチンを開発する政治活動を行っており、この製薬会社とは関わりがあった。会社側から「亀岡事務所の名前では参加しにくい」との要望を受けて福島メセナ協議会の名義で同じ旅館で同時刻に懇親会を開いた。検察側は、この点も亀岡氏と福島メセナ協議会が一体である根拠に挙げた。
区割り変更後初めての選挙だったことも仇となった。亀岡氏は検察側に「選挙を意識した寄付だ」と付け入る隙を与えてしまった。旧福島1区は福島市、伊達地方、相馬地方で構成されたが、2022年施行の新区割りでは相馬地方が外れ、代わりに二本松市、本宮市、安達郡が加わった。検察側は、それまで亀岡氏は二本松市の祭りには寄付していなかったのに23年以降に寄付するようになったことを挙げて「選挙を意識した寄付」と指摘した。寄付額も従来の5000円から1万円に増やしたことも「選挙を意識」と捉えた。
のし袋などの物証を検察側が押さえたのは二本松の提灯祭りに参加する町会からだった。検察側に有利な証言をしたのも二本松市内の祭り関係者だった。亀岡氏は区割り変更と同時期に二本松に寄付対象を拡大させたために選挙目的との疑いを掛けられてしまった。
次回は8月6日午後1時半から弁護人が最終弁論を行う。

























