森雅子参院議員に〝検察改革の本気度〟を聞く

森雅子参院議員に〝検察改革の本気度〟を聞く

刑事裁判をやり直す再審制度見直しのための改正刑事訴訟法が7月17日、参院本会議で与野党の賛成多数で可決され成立した。裁判所による再審開始決定に対する検察抗告(不服申し立て)は冤罪の救済を阻んできた歴史があり、「原則禁止」が盛り込まれたことを前進と捉える向きがある一方、「全面禁止」を求めてきた冤罪被害者たちは落胆。証拠開示の範囲やその目的外使用禁止を巡っても課題が残り、「改悪」との批判もある。自民党内での法案審査で「全面禁止」を求めてきた元法相で弁護士の森雅子参院議員(4期、福島選挙区)に検察改革について聞いた(インタビューは成立前の7月10日に実施)。

「再審法改正」に残された課題

――なぜ検察抗告の禁止が必要なのか。

「再審手続きでの抗告とは、裁判所が再審開始を決定する前の段階で検察が『ちょっと待った』と本番の裁判に入る前に不服を申し立てることです。無罪が確定するまでに長い時間が掛かる原因となっており、人権侵害だと私たちは繰り返し言ってきました。

検察はそれでも罪があると信じるのなら、公開の裁判で正々堂々と主張すべきです。検察は『プライバシーが侵害されて被害者や遺族が傷つく』などと抗告の必要性を理由づけます。しかし、被害者が最も望むのは真犯人の処罰ではないでしょうか。冤罪であった福井女子中学生殺害事件の遺族の方も14日の参院法務委員会で参考人として意見を述べられます。検察は、被害者や遺族の声を真摯に聞くべきです」

※本誌注。同委員会で被害者の姉・大橋宏子さんは「無実の前川彰司さんを犠牲にし、真犯人を捜そうとしなかった。警察・検察は絶対に許せない。前川さんと私は同じ被害者だ」と強調した。参考人として出席する予定だった前川さんは「採決ありき」の政府・与党の姿勢に疑義を感じ欠席した(時事通信7月14日配信、福島民友7月27日付より)。

――法案は参院で審議中だが、検察抗告の全面禁止を最後まで求めるのか。

「抗告禁止に『原則』と付き、例外が想定されていることから完璧な法案だとは思っていません。ただ、これまでの法律では禁止されていなかったことを考えると前進です。私は自民党内の法案審査では最後まで『全面禁止』を訴えましたが、まずは成立させることが優先すべきなので『原則禁止』の案を受けいれます。今国会で再審法が成立しないと振り出しに戻ってしまうからです。今も無実を訴え再審を求めている人がいます。再審開始決定に至らぬまま亡くなり、継承して再審請求している遺族もいます。その人たちのためにも、たとえ例外の含みが残ったとしても法案成立は急ぐべきです」

――法務大臣を経験したことと検察改革を掲げることの関係は。

「法務大臣を経験した議員は私以外にも十数人はいるはずですが、自民党内の事前法案審査会では誰も見掛けませんでした。副大臣や政務官経験者も見掛けませんでした。弁護士の中でも民事事件に比べ刑事事件を担当する人は少ないです。私は刑事事件や少年事件を多く担当してきたため、検察のあり方についてはとても問題意識を持っていました。

法務省の官僚は検察出身者が多いという点で他の省庁と比べて特異です。一般の官僚を目指す人は国家公務員試験を、検察官は司法試験をというように入り口から違います。私は両方の試験を経験しましたが、公務員はまず公文書管理のルールを徹底的に叩き込まれます。国民の税金を糧にしている公僕だと、とにかく国民のために働きましょうというマインドを学ばされます。そうなっていない人ももちろんいますが。

片や検察官は捜査機関の一員であり、容疑者を取り調べるので、国民に対する目線が違います。法務大臣になった時、事務次官をはじめ秘書官や審議官、局長級のポストなどほとんどが検事で占められていました。東京高検検事長の賭けマージャン問題があり、私も国会で釈明の場に立たされました。世論が検察批判に向いている今が改革のチャンスだと、安倍晋三総理の賛同を得て『法務・検察行政刷新会議』を立ち上げましたが、省内は非協力的でした。

同会議は検察の倫理と綱紀の一層の保持、行政の透明化として適切な文書管理を徹底するよう報告書に取りまとめました。適切な文書管理については、直近では法務省が再審制度見直しに関して自民党の事前審査で使った公文書をすぐに廃棄しており、生かされていません。私は国会でたびたび法務大臣に報告書の内容を徹底するように要求しています」

検察内のハラスメント調査

――大阪地検元検事正の男性が部下の女性への準強制性交罪に問われた事件などをめぐり、議員有志で勉強会を立ち上げ、第三者委員会を設けて法務・検察組織内のハラスメント調査をするよう要求しています。

「有罪か無罪かは司法が判断しますが、それとは別に信頼される検察を目指すために公判中であっても第三者委員会による調査は必要です。国家公務員倫理規定に違反する行政上の問題があると考えています。私たちは個別の刑事事件の有罪無罪を問題にするのではなく、事件の背景には行政機関として綱紀が乱れているのではないか、ハラスメントはないのかとの観点から第三者による調査が必須と思っています。

芸能界やテレビ局、自治体首長のハラスメント事案などで同様の第三者委員会は開かれてきました。省庁で言えば陸上自衛隊郡山駐屯地の部隊内での強制わいせつ事件に端を発して防衛大臣が特別防衛監察を行い、ハラスメントを調査しました。検察内でも進行中の刑事裁判とは別個のものとして広範なハラスメント調査はできるはずです」

――検察は政治家の不正を取り締まる立場でもあります。森参院議員はじめ自民党議員の多くは、いわゆる「裏金問題」で一度信頼を失いました。検察改革をするには足をすくわれぬよう今まで以上に身を引き締める必要があるのでは。

「政治家が罪となる不正を働いた場合、国民に代わって処罰まで持っていけるのは検察しかいないという点で検察への期待は高いはずです。だからこそ検察組織自身が自浄作用を働かせる必要があります。そのためには、悪いことは隠さないということです。私たち政治家も一緒で、自分が悪いことをしてしまったらきちんと説明し、謝罪し、処罰を受けた上で、選挙で国民の審判を受けなければなりません。私自身もそのようにしてきたつもりです」

――再審法改正について県民に伝えたいことは。

「再審法改正を訴えてきたのは、弁護士を目指した原点である社会の不条理を正したいのが出発点です。検察改革に取り組む中で、前出の性被害を訴えている元検事の女性や無実にもかかわらず逮捕勾留され、亡くなった方の遺族から助けを求められました。誰も自ら飛び込んでいったわけではなく、ある日急に被害者になります。東日本大震災や津波、原発事故を経験した福島県県民だからこそ、ある日不条理に巻き込まれる事態は想像に難くないと思います。司法改革、検察改革は普段の暮らしから遠い話題ではありません。防災や事故対策と同じように、不条理の穴に落とし込まれてしまう誰かのためにセーフティーネットを張っておくことなのです」

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