本誌2024年7月号で、棚倉町のゴルフ場「棚倉田舎倶楽部」でプロゴルファーを目指して働いていた男性研修生(当時19)が、2022年6月に自死した件を取り上げた。この問題が法廷に持ち込まれることになった。
男性研修生の両親は8月21日、「自死したのは当時の支配人や指導係だった先輩研修生によるパワーハラスメントが原因だった」として、ゴルフ場を運営する棚倉開発㈱と当時の支配人、先輩研修生に計約1億0200万円の損害賠償を求め、福島地裁いわき支部に提訴した。
同日、県庁で開かれた記者会見では、白河労働基準監督署が昨年3月、上司らのパワハラが原因で男性研修生がうつ病を発症し自死したとして、労災認定したことも明らかになった。
報道によると、男性研修生は2021年3月に入社。寮に住み込み、開場準備やボール拾い、キャディー業務などを担当し、勤務後にプロテストに向けて練習していた。ところが同年4、5月ごろから暴言を吐かれたり無視されるようになった。同監督署は当時の支配人から「ばか」「家に帰れ、会社に来なくていい」などと人格を否定するような叱責を受け、胸ぐらをつかまれることもあったと認定。亡くなる2、3カ月前からは1時間程度の激しい叱責を週2、3回受け、2週間以上にわたり休日がない連続勤務もあったという。
男性の両親は「私たちの大切な息子は自分が悪いと思い込み亡くなった。息子は悪くないと証明したくてこういう形(提訴)になった」とのコメントを公表した。
本誌は男性研修生が亡くなった直後の2022年7月、「棚倉田舎倶楽部で若手研修生がパワハラで自死したらしい」との情報を入手。周辺取材を進め、支配人や先輩研修生との関係などについて情報を得ていた。しかし、遺族が裁判を起こす準備を進めているとして直接取材がかなわず、証言が得られないまま記事化を見送った。その後、2024年5月に『週刊文春』が詳報したのを受け、本誌も取り上げたが、4年越しに裁判が提起されたことになる。
棚倉開発の経営者は、プロゴルファー石川遼選手の父親である石川勝美氏。2018年9月、石川遼氏の家族会社が運営会社の経営権を取得したことに伴い、社長に就任した。民間信用調査機関によると、棚倉開発は2023年12月期から3期連続で減益となっており、直近の2025年12月期の売上高はここ数年で最も低い2億円に落ち込んでいる。
東白川郡内の事情通はこのように指摘する。
「石川氏は月に1回ぐらいしかゴルフ場に来ておらず、経営をほぼ支配人に任せている状況です。そうした中で若い研修生が自ら命を絶ち、労基署からパワハラによる労災認定まで受けたことを考えると、経営者としての責任は重い。以前、ゴルフ場全3コースにメガソーラーを設置する計画が浮上し、地元住民やゴルファーらから反対署名が集まったことがありました(本誌2025年3月号参照)。結局、西コースに設置する案に縮小されたが、あれも当時の支配人の独断で進めたのではないかと囁かれています。いずれの問題も〝社長不在〟に伴うガバナンス不全が根底にあると思います」
棚倉開発は今回の提訴について「コメントを差し控える」としている。棚倉田舎倶楽部は4月24日に開場50周年を迎え、9月30日から10月2日には、50周年記念イベントとして石川遼選手の名を冠したツアーが開催される。節目の年に提起された裁判で、男性研修生の自死に至る経緯や会社側の責任はどこまで明らかにされるのか。
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