元国会議員事務所のスタッフで、会津若松市議を務めた経験もある男性に金銭トラブルが浮上している。知人・友人に借金を重ね、会津地方在住の女性からは多額の返済を求められて、現在、弁護士を交えて対応しているという。この男性、会津地方ではそれなりに知られているようだが、いったいどんな人物なのだろうか。(志賀)
「300万円と預けた美術品を返して」
「約300万円を貸して、繰り返し返済を求めているのにはぐらかされるばかりです」。こう憤るのは耶麻郡在住の50代女性・Aさんだ。
3年前に夫を亡くし、小さい子どもを育てながら日々の生活に追われる中、一人の既婚男性が親身になってサポートしてくれた。亡くなった義父と同じ無尽(※)に所属し、地元の首長選の手伝いをした際に親切に対応してもらった人物だった。子どもがなついたことで、Aさんも心を許し、いつしか自宅に泊めて「パパ」と呼ぶほど親密な関係となった。ところが、ほどなくして「お金を貸してほしい」と頼まれるようになった。
※任意の互助組織
新聞代や携帯料金、病院代などを立て替え、要求されるがまま金を貸しているうちに、借金額は約300万円まで膨れ上がった。だが、貸した金はいまだに返済されず、連絡も取れなくなってしまった。
実はこの男性、かつて菅家一郎衆院議員の事務所に在籍し、会津若松市議を務めた経験もある伊藤司氏(68)だという。

「『携帯電話で連絡が取れないと仕事に支障が出る』、『病院に行って薬をもらわないと命に関わる』などと言われ、善意で貸し続けてしまいました。早く返してほしいと電話やLINEで催促すると、『収入が入るめどがついた』、『〇日までに振り込む』と約束するが、口座には振り込まれない。問い詰めると『インフルエンザで身動きが取れなかった』、『息子が闇金で借金していて対応に追われていた』などと理由を付けるのです。実姉に電話で報告するなどさまざまな方法で催促し、約30万円分は返してもらったが、そのうち本人と連絡が取れなくなってしまいました。市議で、国会議員事務所にもいた人物なので信用していたが、こんな対応を取られるとは思いませんでした」(Aさん)
最初は何の疑いもなく金を貸し続けていたAさん。次第に生活費も厳しくなり、出費の予定もあったので、半年後に「早く返してほしい。いま借金額がいくらになっているか分かっているのか」と伊藤氏に確認したところ、実際の金額の半分ぐらいの金額を言い出した。そこで「これはまずい」と貸した日付と金額をメモに残した(写真参照)。いよいよ返済の意思がないとみたAさんは、責任を追及できないかと各所に相談した。そうした中で第三者を通して本誌の知るところとなり、Aさんを取材するに至った。

Aさんは過去に収集していた複数の美術品も伊藤氏に預けていた。ネットオークションなどで1点当たり数千円から数万円で購入したものだ。十分な蓄えがあったわけではない中で夫を亡くしたこともあり、売却して生活費の足しにしたい思いがあった。そこで美術品を売却した経験のある伊藤氏に相談して販売を委託したのだという。
ところが、伊藤氏は直接販売せず、美術品をAさんの許可なく他の人物に預けていたことが後から分かった。亡くなった夫や義父が「本物に違いない」と語り、ひときわ思い入れのあった美術品も「詳しい知り合いに鑑定してもらうから任せてほしい」と一方的に持ち出し、そのままになっている。「鑑定の結果、価値が付かないものならそれでもいいので、ひとまずすべて返してほしい。もし手元に残っていないのであればお金で返してほしい」(同)。
夫を亡くした直後、精神的にも経済的にも不安定な時期に、押しの強さに負けて多額の金銭を貸し、返済されないことに悩まされているAさん。こうした状況を生み出した伊藤氏は一体どういう人物なのか。
菅家事務所に数年在籍
伊藤氏は会津若松市在住。中央新報社(資本金500万円)の取締役で、市議選立候補時は職業を「新聞発行業」としていた。だが、実際に発行していた新聞は県立図書館や会津若松市立図書館でも確認できなかった。「『夕刊さきがけ』、『毎夕新聞』など地元夕刊紙の記者を務めていたのではないか」という情報もある。
1999年4月の会津若松市議選に立候補して落選するも、2003年4月の市議選で1396票を獲得し、初当選を果たした。2007年4月の市議選で再選を狙うも1304票で落選した。
市議を経験してからは政治関連の仕事に携わるようになったようで、菅家衆院議員の事務所に入り、数年間にわたって運転手を務めた。だが、年金受給が始まる65歳になったのを理由に退職したという。菅家事務所に確認したところ、菅家氏本人が電話取材に応じ、次のようにコメントした。
「伊藤氏がかつて所属していたのは間違いないです。ただ、現在はうちの事務所を辞めていて、全く関係はないです。当時から借金を抱えていると聞いていたので、『継続して働いていい』と伝えたのですが、本人の意思が固かった。退職した後は事務所に寄り付こうともしないし、借金返済をめぐってトラブルになっていることもこちらでは全く把握していませんでした」
菅家氏は周知の通り、自民党所属の衆院議員だが、伊藤氏は県民連合所属の県議の手伝いをしていたほか、某野党の福島県支部で運転手兼雑用係を引き受けていた。国会議員の事務所スタッフ、市議の経験もあるということで、選挙の手伝いを求められることが多かったようだ。
ただし、その仕事ぶりは評価されていたとは言えなかったようで、会津地方の政治関係者からは「某野党では事務次長の肩書きを与えられ、勝手な動きをするのではないかと警戒されていたようだ」、「街宣車の運転手の仕事も手を抜きがちで、長めに休憩時間を取って高校野球中継を見ていたことがバレたため、党関係者が呆れて仕事を依頼しなくなったらしい」などの評判が聞かれた。
どの人も共通して語るのは「至るところで金銭トラブルを抱えており評判が悪い」という話だった。「私も何度か金を貸しているが、返してもらったことは一度もない」と語るのは、会津若松市在住の男性だ。
「『ちょっと金が必要になった。数万円貸してくれ』と頼まれ、その後一向に返済されないのに、しばらくすると何事もなかったような感じで別件の連絡を寄こしてくる。おそらく自分が金を借りたことをその場で忘れてしまうのでしょう。一度頭に来て『そんなに金を借りたいなら念書を書け』と伝えたら、ノートにすらすらと書き出したので呆れました(写真参照)。ちなみにこのときの借金もまだ返済されていません」

この男性は腐れ縁と割り切って付き合っていたが、さらに不義理を働かれる出来事が重なったため、現在は連絡を絶っているという。
ちなみに、伊藤氏の自宅の不動産登記簿を確認したところ、建物に根抵当権者会津商工信用組合、極度額360万円、債務者伊藤氏の根抵当権が設定されていた。このほかにも、Aさんをはじめ、複数の人への借金があるということだろうか。
Aさんが「こちらも借金返済や出費の予定がある。月20万円ずつ返済してほしい。毎月25日に遅れた場合は遅延金として1万円を支払ってほしい」と提案したところ、伊藤氏は「了解」とすんなり受け入れた。そのうえで「野党で要職(実際は雑用兼運転手)を任されているので近々収入が入る。必ず返済するから待っていてほしい」など返済予定をチラつかせながら借金を重ねた。
今年2月、このままでは借金を踏み倒されかねないと感じたAさんは行動に出た。自宅にあった伊藤氏の私物をすべて伊藤氏の本宅前に運び出し、延滞損害金を含む返済額総額約320万円を明記した「債務確認書」を新聞受けに投函し、サインして返送するように求めた。
そうしたところ、伊藤氏が一連の借金に関する対応について、代理人(弁護士)に対応を一任した、という旨の文書が送られてきた。今後は借金返済に関して代理人を通して協議を行うことになった。
伊藤氏の自宅を直撃
伊藤氏はAさんの訴えをどう受け止めているのか。5月中旬、伊藤氏の自宅を直撃してコメントを求めた。
――Aさんが伊藤氏に貸したお金が返されないと主張している。
「借金返済に関しては、弁護士さんに対応を任せており、『Aさんと直接やり取りしないでくれ』と言われています」
――弁護士に対応を任せた理由は。
「だって、何百万円なんて請求が来ているが、私がそんなに借りるわけないんですよ。総額数百万円の弁済金を請求されたので、『えー!?』と驚いてしまいました」
――Aさんは美術品も預けていたそうだが、現在どこにあるのか。
「高く売ってもらいたいということで他の人に預けていたんですけど、そちらの対応はそのままになっちゃっています」
――どこに預けているのか。
「個人の人などいろいろです。それが全部(売却委託の手続きなどが)止まっている状況です。それらの返却についても弁護士と相談しているところです。すでに処分しているということはないし、いつでもAさんに返せます」
――Aさんは借金全額の返済を求めている。具体的にいつまでに対応していく考えなのか。
「Aさんには以前から(貸した金を返すように)言われていたし、身に覚えもあったので、少しずつ払っていました。ところが、返済途中にこちらが想定しているより高い金額を指定されたのです」
――「身に覚えがある」のはどれぐらいの金額なのか。
「契約書など交わしているわけではありませんが、あったとしても、数十万円程度だと思います。そうした中で数百万円を請求されたので『えー!?』となって弁護士さんに相談した形です。その話し合いの中で、実際に私が借りていたという話になれば、全額払う考えはあります」
――支払う能力はあるのか。
「だって、そうなったら、用意しなきゃなんねえんだべ?
そこは何とか対応しますよ。Aさんもね、困っているんだろうなーと思いますよ。母子家庭で生活しているし、総額いくらとか気にしないで借りているうちに、こうした形で(伊藤氏の想定よりも大幅に高い金額を)請求されることになったので」
――お金を借りるときは「これだけ借り続けたらAさんも困るだろうな」と考えなかったのか。
「そういうことかなあ」
――会津若松市周辺で伊藤氏の評判を聞いたら口をそろえて「金銭管理にルーズ」と話していた。
「いろいろ言う人はいるでしょう。まあ、自分はそういうイメージということですかね」
――野党の運転手を務めていたのに、辞めた理由は。
「ここだけの話ですが、行動を監視されていたらしく、勤め始めてしばらくしてから『休憩が長すぎる』と指摘された。『これではやってらんない』と、自ら退職しました」
伊藤氏は「身に覚えがある借金額は数十万円程度」と述べている。ただ、前述した通り、「月20万円ずつ返済してほしい。毎月25日に遅れた場合は遅延金として1万円を支払ってほしい」というAさんの提案を、伊藤氏は「了解」とすんなり受け入れている。また、Aさんが取り急ぎ100万円の一括返済をLINEで求めた際も既読になっている。にもかかわらず、「数百万円の返済が残っているのは初耳。Aさんが生活に困って、急に言い出したのだろう」と主張するのは無理がある。

また、伊藤氏は「返済途中だ」と胸を張るが、実際の返済額は約束と異なる1回数万円程度で、今年1月から返済が止まっている。美術品の売却を依頼されたのに、平然と他の人に預けているのにも違和感を抱く。
Aさんの後悔
伊藤氏が対応を依頼した「れいわ総合法律事務所」の川瀬裕之弁護士に確認したところ、次のような回答が寄せられた。
《当職は伊藤司氏から、相手方との債務弁済協議を受任しております。
本件は、伊藤司氏が相手方から金320万2814円の支払いを求める書面が届いたことから当職が相手方との協議について依頼を受けたもので、令和8年3月25日付で相手方に対し、320万2814円の内訳の説明をお願いする書面を送付しているところです。
相手方からの回答があり次第、伊藤司氏と協議の上、相手方に対し、当方の見解をお伝えする予定です。
なお本件はあくまで民事上の問題に過ぎず、事件性はありませんので、その旨お伝え致します》
事件性はないと言うが、元市議で、国会議員事務所や政党で働くなど「公人」に近かった人物が、かつての肩書きや所属先の名前で信用を得て借金を重ね、平然と返済を滞らせているのは見過ごせない。こうした実態を周知し、新たなトラブルに巻き込まれる人を増やすべきではないと考え、記事化に踏み切った。
今後はAさんの資料・メモと、伊藤氏の記憶をもとに交渉が進められることになる。どのような結論が導き出されるかは分からないが、伊藤氏は過去の自分の発言を振り返りながら、Aさんと真摯に向き合い、返済に対応していく必要があろう。
伊藤氏に関しては、前述の通り、「金を貸しても返してもらえない」との証言が寄せられており、Aさんの前では「本当に必要な金なら他人に貸すはずがない。つまり、貸した金はその人にとって不要な金ということだ」とうそぶいたこともあったという。他にも未整理の金銭問題があると見るのが自然だろう。
取材の最後、Aさんは本誌記者にこのように語った。
「伊藤氏に心を許し、自宅に招き入れて、金まで貸してしまった。あっさり騙された自分が悔しくて、しばらく誰にも話せませんでした。それでも、このままなかったことになるのは納得できない。各方面に相談しながら引き続き借金返済を求めていきたいと思います」
本誌では過去、元議員や元秘書の肩書きを利用したり、政治関係者とのつながりのある人物をめぐる問題やトラブルを取り上げてきた。特に政治関係者とのつながりや肩書きを強調する人物に関しては安易に信用せず、不要なトラブルに巻き込まれないよう、距離感を見極めながら付き合っていく必要がある。
※Aさんのスマホには、平気で約束を破る伊藤氏とのやり取りが残されている

























