「儲かっている経営者」の共通点

伊藤江梨 いとう・えり
1984年1月生まれ。安積黎明高、大阪大卒。共同通信社記者を経て、税理士に転身し、2017年4月に暁経営会計を開業。家業の建設会社を継承し、2020年に同名の株式会社として再出発を果たした。東北税理士会福島県支部連合会広報部長などさまざまな団体の要職を務めている。事実婚で2児の母。
地域で経営者の会計のサポートをしているので、隙あらば儲けたい経営者から「最近はどういう仕事が儲かってる?」と聞かれることがよくある。だが、「この仕事は儲かってますね!」と紹介できる仕事というのは、なかなかないものだ。同じ業種の仕事をしていても、儲かっている人と儲かっていない人がいる。その差は一つだけじゃないので、説明が難しい。総合してやり方が的確で、良い市場を選んで、質の良い顧客を捕まえている。全く同じことをやっても、うまくはいくわけじゃないんだろうな~と思うし、実際同じ人が2店舗目を出店しても、1店舗目と同じようにはいかずに、大体苦戦する。う~ん、儲けるってむずかしい。
ちょっと聞いたことのないような仕事で、「こんなに需要があるんだな!」という仕事に出会うことはある。損害鑑定人とか自動車電気装置整備士とか。ただ、基本的に習得の難しい技術や資格、専門知識(とそれを実務で使える経験)が必要で、ゼロからそこにたどり着くまでには10年かかりますね、という感じ。その技術力・専門性ですら、新しい機械やAIが出てきて「状況が変わってきた」と焦りを覚える人もいる。10年後に通用するかどうかは分からない。
副業は儲かる?
特別な専門性がなくても、ネットを使って副業のように始めたもの(転売とか)が「規模が大きくなってきたので確定申告お願いします!」という人もたまにいる。毎月の給与と同じくらい副業で稼いでいて、「なるほど、うまくやるとこんなに稼げるんだ~」と感心していたら、次の年には収入が激減していたり。誰でもできる儲かる仕事は、1年もするとすぐに世界中の〝ハイエナ〟に真似されて前のようには稼げなくなってしまうか、すぐに別の流行に取って代わられてしまうようだ。世界は厳しい。
女性の起業に多いハンドメイド・お稽古系は、ご想像通り大体儲からない。同じような境遇にある一般の女性が顧客であることが多いので、商品の単価が数千円程度と安く、たくさんの顧客を獲得しないと採算が合わない。儲かっているのは、高くてもたくさんの顧客を獲得できる場合。大抵はパートで働いたほうがよっぽど儲かるが、「自分の好きなことで新たな社会と繋がれてお金も得られる」という側面は儲け以上に生きる時間として価値があるので、馬鹿にしたものでもない。赤字でなく、お金にそれほど困っていないのであれば、そのプライスレスな価値を堪能する生き方はうらやましい。
経営向きの人
人間には経営者に向いている人と向いていない人がいるようだ。優しい人と精神的に弱い人は明らかに向いていない。特に赤字で手元のお金がみるみる減っていくとき、明日までの支払いのお金が工面できないようなときは、想像以上にきつい。他人ごとのはずの私も、人の資金繰りをどうするか考えているうちに眠れなくなる。
取引額もでかいので、やらかしたときの損失も桁違い。夜逃げにあって、数千万円とか億単位の金が回収できなくなったとしても、すぐに心の整理と金の算段をつけて(借金とか)次に進める強メンタルが、経営者には必要だ。普通の人にはできない。10万円だって許せない。
私の考えた最強の経営者
往年の経営者の中でも、最強勢力は有無を言わせぬ「圧」がある。なんとなく逆らえないし、突然呼ばれて「俺、〇時には出ないといけないんだよな」と言われれば、電話を切り次第悪態をつきながらもすぐに支度をして向かうしかない。口調が強いわけではないが、人を自分の思い通りに動かす謎の力がある。実績もあるし自信もあるので人の話を聞かない。やめてほしいが、その謎のパワーはいつか習得したい。
そういう強そうな人でも、過去にはやはりお金を回収できずに大損をこいた話を、紙切れになった手形を見せながらしみじみとしていたりするのが、味わい深い。きっと皆が通る道なのだ。
事業が軌道に乗らず赤字続きで、日々の支払いにも事欠いているような状況で、自分も朝から晩まで休みなく毎日働いても月10万円そこそこしか取れなくて(経営者に最低賃金という概念は適用されない)、いよいよ(割といいとこの)サラリーマンをやめたことを後悔しているのではないかと思ったら、「いや~、大変だけど楽しいですね!
もっと早くにサラリーマンを辞めて始めていれば良かったですよ!」というのを聞いたときには、しびれた。あれはかっこよかった。その後、財務状況を安定させた。きっと経営者に向いているタイプなのだろう。
結局一番いい会社
安定的に儲かっていて、財務内容のいい会社に共通しているのは、「余計な金を使わない」ことだ。毎月、ほとんど同じようなお金の使い方しかしないし、大きな投資も計画的にする。物や機械を大事に長く使う。経理作業も分かりやすくて楽だ。個人の資産家も同じ。十分に稼いで金を使わなければお金はたまる。「貧乏性」というやつ。面白くもなんともないが、まあそういうことなのだ。
苦しい会社は金遣いが荒い。「必要」の基準が低く、「これが必要」「あれも必要」とどんどん新しいものを買っていく。おそらく気質なので、簡単にはどうにもならない。
金は貯めておいても何もならない(むしろ円安で価値は下がっている)ので、惜しみなく使うのは正解でもある。ただ、財布のひもを緩めるのは簡単だが、絞るのは倍苦しい。贅沢はすぐに慣れてありがたみもなくそれが当たり前になる。その水準を下げるのは想像より困難なのだ。
しかしどんな会社にも衰退期が来る。衰退期に「余計な金を使わず今まで通り」をやるとジリ貧になる。結局は金を使って次の儲かるビジネスに大博打を打たないと生き残っていけないのだ。
新たな局面を生き残る
さてさて、いよいよ世間がきな臭くなってきた。新型コロナウイルスの襲来を巨額借入でしのいだ企業がじわじわやられて、倒産件数も増加。インフレやら人手不足やら、経営も生活も苦しく、世界もむちゃくちゃで、次は世界恐慌かな?
という新たな局面。経営者にとっては生き残りをかけて、腕の見せどころだ。会社を潰すと、「あいつは一度会社を潰した」と一生後ろ指をさされる(会社を潰した経営者もいつの間にか戻ってきて、再びなんかしらの事業をやっていることが割とある。図太い)。荒波の中、生き残る者が真に能力ある者。面白くなってきた。

























