県南地方に住む男性が「白河信用金庫の貸金庫で盗難被害にあった」と訴えている。金融機関の貸金庫での盗難と言えば、三菱UFJ銀行の事件が真っ先に思い浮かぶが、同様のことがあったというのか。早速、関係者を取材した。
被害届提出も「立証不可能」で泣き寝入り

「白河信用金庫の貸金庫を利用していたのですが、ある時、その中の現金が無くなっていることが分かりました。当然、警察に被害届を出しましたが、その後の反応を聞いた限りではどうも犯人の特定などは難しいようです。私としても、(現金が無くなったことを)立証するのは難しいので、このまま泣き寝入りするしかないのかなと、途方に暮れていますが、悔しい気持ちも強い」
そう話すのは、県南地方の自営業の男性(80代)。ここではAさんとしよう。
Aさんはいまから10年以上前に白河信用金庫と貸金庫使用契約を結び、「使いたいときにすぐに使えるように、でも自宅に置いておくのはちょっと怖いから」と、いわゆる「タンス預金」のような感覚で、現金を置いていたという。
写真は実際に貸金庫で使っていたものをAさんが引き取ったボックス。貸金庫自体はコインロッカーを想像してもらえばいい。写真のボックスに保管したいものを入れ、コインロッカーのような貸金庫が複数ある中、自身が契約している場所に、このボックスを入れて施錠するシステム。ボックスは金属製だった。


「貸金庫の鍵は私のほか、白河信金で合鍵を保管していました。専用の袋に合鍵を入れ、そこに私と白河信金が割印を押し、もし(合鍵が入っている袋を)開封したら、分かるような仕組みになっていました」(Aさん)
貸金庫室に入る際は店舗に行き申請する。本人確認などがあった後、専用かつ1回限りのカードキーを渡される。それを使って貸金庫室に入り、自分が契約している貸金庫への出し入れをする。当然、周囲には監視カメラが設置されていたという。
こうして聞くと、セキュリティー的には十分と言える。それでも盗難にあったというのか。
Aさんはこう続けた。
「2024年7月に(Aさんが契約していた貸金庫がある)店舗の改装が行われるとの知らせがありました。そこには改装工事の期間中は、一度、貸金庫内のものを自身で保管してほしいと記されていました」
本誌は同信金から貸金庫利用者(Aさん)に宛てた文書を見せてもらった。そこには店舗が改装されることのほか「工事期間中、現在ご利用の貸金庫に格納されているものを一時的にご自身で保管していただくことになります」と記されていた。
ただ、Aさんは「リスクを伴うので何とかならないか」と掛け合った。
「過去に白河信金の別の店舗で貸金庫を利用していた際も、店舗改装で一時移設したことがありました。ただ、その時は、店舗内の別の場所に保管して、改装が終わったら、新しい貸金庫室に移すという形だったので、今回もそうしてほしいとお願いしたのです」(同)
ただ、それは受け入れてもらえず、翌月、同様の通知(貸金庫の中のものを出して自身で保管するよう促す文書)が届いた。
それでも、Aさんは「リスクを伴うので、そちらで預かってほしい」と頼み、店舗の金庫で預かってもらえることになった。
本誌はその「預かり証」の写しを見せてもらったが、2024年8月19日付で「貸金庫第××号 上記貸金庫を正にお預かりしました 令和6(2024)年8月19日 白河信用金庫」と記されていた。
「その際、(白河信金に)中身を確認してほしいとお願いしましたが、『お客様の貸金庫の中身を見ることはしない』と拒否されました。箱(前出のボックス)に十字で紙テープを巻き、数カ所に私と白河信金が割印を押しました。(紙テープを)破いて開けて、張り替えられたらすぐに分かるように、ということですが、気休めですね」
その後、新しい貸金庫室が使えるようになり、Aさんは預かってもらっていたボックスを移そうと、同信金に出向いた。そこで中身を確認すると、現金が減っていたというのである。
「100万円の束を10個まとめた1000万円の束、大束と言うそうですが、それが引き裂かれ、500万円が無くなっていたのです」
これが2024年10月2日のこと。Aさんはくだんのボックスを新しい貸金庫室に入れず、失意のまま同信金を後にした。
「現金が減っていた」
すると、同年10月29日付で同信金代理人弁護士から通知(内容証明郵便)が届いた。そこには次のように記されている(一部リライトあり)。
貴殿(Aさん)は、令和6年8月19日、貸金庫の移設に伴う一時預かりのために当金庫を訪れた際、ご自身の貸金庫内に格納していた格納品(以下、「本件動産」と言います)を、新しい貸金庫が完成するまでの間、店舗で保管してほしいと申し出、当金庫はこれを預かりました。
その後、当金庫の新しい貸金庫が完成し、貴殿は同年10月2日、新しい貸金庫に本件動産を格納するために当金庫を来訪されましたが、その際、本件動産の中身を確認したところ、現金であることを確認しました。そして、貴殿は、本件動産のうち現金が足りないと主張し、本件動産を新しい貸金庫に格納しないまま、当金庫に置いて行ってしまいました。
しかしながら、当金庫が貴殿とお約束した本件動産の保管期間(即ち、新しい貸金庫が完成するまで)は既に経過しておりますので、現在、当金庫には本件動産の保管義務がありません。
そこで、直ちに、本件動産(現金含む)を全て引き取っていただくようお願い致します。(中略)
貴殿から出されている「現金が足りない」とのご主張については、当金庫は、貴殿立ち会いの下、納品ボックスを開けずにそのまま封印をして預かり、預り場所(金庫室)には監視ビデオを設置していました。したがって、当金庫は、現金不足については一切知りません。そもそも、「貸金庫の当時、現金をいくら格納していたか」を貴殿の方で立証しない限り、不足しているという主張は成り立ちません。
なお、念のため、当金庫では、監視ビデオを警察に提出して現在調査中でありますが、警察の調査結果が出る出ないに拘わらず、本件動産については、保管期間が経過しておりますので、速やかに引き取ることを求めます。
仮に万が一、「本書の到達後1週間以内」にお引き取り頂けない場合は、当金庫では、公証人立ち合いで金額を確定し、預かり台帳に記載の上、預り証を発行して、保管するという手続きを取ります。
そして、上記金額を上級庁へ報告することになります。
即ち、当金庫は金融機関であり、昨今のマネーロンダリング排除の動きから、金融機関としては、誰からいくら預かっているかは、常に明らかにしなければならないところです。そのため、今回、貴殿立ち会いの下、本件動産の中身が現金であることを確認するに至った以上、金額を確定し、預かり台帳に記載して保管することが必要であり、かつ、上級庁や公的機関から問い合わせがある場合は、金額を含めて回答しなければなりません。
その後、Aさんは翌2025年1月までに貸金庫を解約して、収納していたすべてを持ち出した。
さらに同年5月には白河警察署に被害届を提出した。それからしばらくして同署に問い合わせたところ「ハッキリしたことは言いませんでしたが、難しいんだなと感じました」という。
一方で、Aさんは「あのお金(貸金庫に入れておいた現金)は、決してやましいものではないし、(現金が無くなったことは)勘違いでもない」と強調した。
ただ、同信金の通知にあったように「いくら入っていて、そこからいくら無くなった」ということの証拠がなければ、それを立証できないのが現状だ。
Aさんが2024年10月2日の前に、最後に貸金庫を開けたのは2021年8月23日だったという。
「店舗改装で一時的に保管してもらった時のことばかりに気を取られていましたが、ひょっとしたら、その時点(改装のため、一時保管してもらった2024年8月19日時点)ではすでに消えていた可能性もあります。そう考えると、解約する時に合鍵が入っている袋が開けられた形跡がないか等々を確認すべきだったが、そこまで頭が回りませんでした」
白河信金に取材を申し込んだところ、「そういった取材には応じられません」とのこと。
三菱UFJ銀行の事件
繰り返しになるが、「証拠」がないため、第三者としてはこれ以上踏み込めない。「真相は藪の中」だ。それでも、今回の件を記事にしたのは、三菱UFJ銀行の事件があったから。折しも、この稿の締め切り直前、3月24日に同事件の控訴審判決が言い渡された。
この事件は三菱UFJ銀行の支店の貸金庫から顧客の金品(計約3億9000万円相当)を盗んだとして、元行員・山崎由香理被告(47)が窃盗罪に問われている。
報道等によると、山崎被告は2023年3月~2024年10月にかけて、練馬支店(東京都練馬区)と玉川支店(世田谷区)で、顧客6人から預かった金塊計約26㌔(時価総額約3億3000万円相当)や現金計約6145万円などを盗んだ疑いが持たれている。2024年10月に貸金庫利用者から銀行に「預けていた現金がなくなっている」と連絡があり、事件が発覚した。被害総額3億9000万円というのは立証できた分で、実際はもっと多い可能性もある。銀行で預かっていた合鍵を使って貸金庫を開け犯行に及んだとされる。裁判ではそれらが認定され、一審・二審ともに懲役9年が言い渡された。
Aさんも「三菱UFJ銀行の事件があったので取材に応じました」と話していた。

























