東日大昌平はこの夏、福島県の高校野球史に新たな1ページを刻んだ。絶対王者・聖光学院という壁を打ち破り、甲子園初出場を果たした。甲子園大会でも、1、2回戦に勝利し、ベスト16まで勝ち進んだ。その軌跡を追う。

県大会 1回戦 ○ 4-0 安積
2回戦 ○ 11-0 只見
3回戦 ○ 10-0 勿来工
準々決勝 ○ 4-0 清陵情報
準決勝 ○ 3-2 聖光学院
決勝 ○ 10-7 学法石川
甲子園 1回戦 ○ 2-1 白樺学園(北北海道)
2回戦 ○ 6-2 青森山田(青森)
3回戦 ● 1-4 有明(熊本)
東日大昌平にとって、聖光学院と対戦した県大会準決勝は、間違いなくこの夏最大のヤマ場だった。王者・聖光学院に序盤リードを許しながら、粘り強く戦い、逆転勝利を収めた。これまで県内の多くのチームが跳ね除けられてきた絶対王者を相手に、実力で勝ち切ったのだ。これは、1勝以上の意味があった。「聖光に勝った」という自信がチームをさらに成熟させた。
準決勝の勢いそのままに、決勝では学法石川を破り、念願の甲子園初出場を決めた。
しかも、彼らの戦いは「初出場」だけでは終わらなかった。本誌は聖地・甲子園での初戦、白樺学園(北北海道)戦を現地観戦した。初出場ゆえの多少の硬さは見られたものの、アルプススタンドを彩ったいわき名物・フラダンス部の華やかな応援と、スタンドの一体感がナインを後押しした。
中でも、甲子園のグラウンドで躍動したのが、この夏に覚醒を遂げたエース・照沼佑崇投手だった。伸びのある直球と切れ味鋭い変化球、そしてマウンド上での物怖じしない度胸。全国の強豪を相手に堂々たるピッチングを披露し、相手打線を封じ込めた。「照沼投手を中心とした守りのチーム」――今年の東日大昌平を象徴するようなゲームで、初戦を突破した。
勢いに乗ったチームは2回戦の青森山田(青森)戦にも勝利。3回戦の有明(熊本)戦で、接戦の末、惜しくも敗れはしたものの、見事ベスト16に輝いた。
聖光学院以外の福島県勢が夏の甲子園で白星を挙げたのは1994年の双葉以来、2勝となると1983年の学法石川以来だった(※春を含めると、2000年の福島商=1、2回戦に勝利し、ベスト8)。いわき地区に限ると、1975年の磐城(2回戦からの登場で2勝してベスト8)以来の甲子園勝利だった。
全国の強豪と互角以上に渡り合った東日大昌平ナインの姿は、アルプススタンドから見守る応援団、テレビ画面越しの地元・いわき市民、さらには福島県全体に大きな勇気と感動を与えた。
東日大昌平の戦いぶりは、全国の高校野球ファンにも強烈なインパクトを残した。「福島に東日大昌平あり」ということを全国に知らしめる歴史的な夏となった。
甲子園での激闘を終え、地元に帰ってきた指揮官・江井康胤監督の表情は、心地よい疲労と充実感、さらには「夢の続き」への思いが垣間見えた。激闘の裏側と、チームが得たものについて話を聞いた。

――壮行会の時に「聖光学院に勝ってから、選手たちが一回り大きくなったような印象がある」とおっしゃっていましたけど、甲子園での選手たちの姿は、どのように映りましたか?
江井監督「やっぱり『大人になったな』、『成長したな』と強く感じますね。甲子園という舞台は、本当に人を成長させてくれる場所なんだとあらためて実感しました。初戦こそ甲子園独特の雰囲気で少し硬さがありましたが、選手たちが自分で気持ちを上手くコントロールしながら、普段通りのプレーを見せてくれたと思います。特にエースの照沼がこの夏の大会を通じてたくましく成長してくれたことが何より大きかったですね」
――聖光学院戦からのコンディションやモチベーションの維持は、指導者として難しい舵取りだったのではないでしょうか?
江井監督「どこにピークを持っていくかといったら、まずは最大のヤマ場である聖光学院さんにピークを合わせなければいけません。そこから気持ちを落とさずに一気に突っ走るしかないという状況でした。ただ、一番の勝因は選手たちが『本気』になったことです。いくらこちらが旗を振っても、選手自身がそれに乗って踊ってくれなければ意味がないですから」
――聖光学院に勝てるチームであれば、全国大会でもある程度は戦えるというような手応えもあったのではないでしょうか?
江井監督「それはあります。特に照沼のピッチングが、これだったら全国でも通用するなというのは思っていました。彼が普段通りに力まず投げてくれさえすれば、いいゲームはできると思っていました」
――おそらく、これまでは甲子園に出ることが大きな目標だったと思います。今後はこれを続けること、あるいは甲子園のもっと上のステージに進むことに目標が変わっていくと思いますが、その点についてはどう捉えていますか。
江井監督「そうですね。何でもそうですけど、やっぱり最初の1回目の壁を破るのが結構大変で、今回その壁を乗り越えることができました。その中で、次の目標をきちんと設定して、そこに向けて取り組んでいきたいですね。ただ、私が目標を設定しても、選手がその気にならないと意味がありません。私が一方的に掲げるのではなく、選手自身が『やるぞ』と本気になる目標をともにつくっていきたいですね」
――その点で言うと、来春のセンバツをかけた秋季大会(県大会、東北大会)は、十分な準備期間がない状況で、言ってみれば「ぶっつけ本番」のような形で臨むことになります。甲子園に出場していないチームは、1カ月ほど早く新チームが始動している状況で、そのチームに勝っていかなければなりません。
江井監督「これも初めての経験ですからね。まずは全員にチャンスを与えて、紅白戦の中で適材適所を見極めて、早くチームを作っていくような形になるでしょうね。 ただ、これから甲子園に出ていくチームを作っていくうえでは、こういうスケジュールは当たり前になってきますから」
――そういう難しいスケジュールをこなしていくのも、甲子園常連校になっていくための宿命みたいなものですね。
江井監督「そういうことですね。今年のチームも昨年秋の県大会で初戦敗退して、それを学びにして階段を駆け上がっていきました。今回、甲子園に出たことも、その後のチーム作りについても、すべてが学びで、それをどう生かしていくかが重要だと思います」


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