はせがわ・こういち 1962年生まれ。法政大卒。堀江工業(いわき市)社長。2019年5月に県建設業協会会長に就き、現在4期目。
建設業界は、大規模化する自然災害時の緊急対応やインフラの維持管理など、地域社会の安全・安心を支える重要な役割を担っている。一方で、働き方改革や持続可能な現場環境の構築が問われているほか、後継者不足や広域連携・M&Aといった構造変革の波も押し寄せる。そうした課題について、福島県建設業協会の長谷川浩一会長に話を聞いた。
建設業界と福島県の発展に寄与していきたい。
――令和8年度の事業計画で入札制度の改善が挙げられています。
「県内の建設需要は、東日本大震災などの復旧・復興事業が収束に向かい、事業量は減少傾向にあります。加えて、急激な物価や人件費の高騰の中で、各企業の利益率が大きく圧迫されているのが、我々が直面している大変厳しい現実です。
一方で、いざ災害が発生したときに『地域の守り手』として現場対応を行うのは、地域の建設企業です。
昨年の会津豪雪の際には、当協会では中通りの各支部の協力を得て、会津地方に延べ93台のダンプトラックを派遣し、除雪作業の支援を行いました。この『広域的な支援』については、今年度から福島県の総合評価において加点評価されることとなり、会員企業の昼夜を問わない災害対応の努力が報われるものと受け止めています。
今後も当協会の入札制度等研究提案ワーキンググループにおいて、現行制度の課題等、幅広い議論を行い、時代や環境の変化に合わせ、提言・要望していきたいと考えています」
――後継者不足による廃業や技術者不足による事業縮小を防ぐために取り組まれている施策について。
「先ほどの入札制度の改善にも繋がりますが、事業承継は、企業が健全に存続し、次世代へしっかりとバトンを渡せる環境が整っていることが、大前提であると考えています。
その上で、企業を支える人材の確保は必要不可欠です。仕事の魅力や意義を肌で感じてもらう『アウト・オブ・キッザニア』への参画などを通じて、将来の担い手に向けたPRに力を入れています。また、ホームページをリニューアルし、会員企業の求人情報ページを設けることで、新卒者などに向けた就職活動に役立つ情報の発信に努めています。
将来を担う後継者自身の育成も大切です。当協会には、次代の経営者の育成を目的とした『青年部』組織があります。若い頃に組織で共に活動することで、経営者としての悩みを話せる関係が構築できます。私も青年部では会長を務めましたが、現在の協会執行部にも当時の仲間が多くおり、大変心強い限りです。そういった面でも青年部には、気負わず活動して欲しいと思います」
――4月に東北6県の建設協力会社134社による広域組織「東北トラスティア事業協同組合」が発足し、元請け・下請けの上下関係を廃した並列型パートナーシップという独自のモデルで注目を集めています。このほか、建設業界ではM&Aの動きなども進んでいます。
「今回の取り組みは、技能者の大量離職や資材高騰などの問題と、仕事量の急減が同時に進行している東北の建設業界の中で、金融機関を加えた元請け企業や協力会社との連携で対応していこうという取り組みであり、今後はこれまでのM&A以外にも、さまざまな形での企業連携が進む可能性があると考えられます。
しかし、このような時代にあっても、建設業協会の使命や役割は変わるものではなく、働く方が希望を持っていきいきと活躍できる業界を目指し、業界全体の底上げにつながる仕事を、全国組織や関係行政機関と連携し、今後も続けてまいります」
時間外労働規制後の状況
――時間外労働上限規制の適用から2年が経過しました。
「この2年間で公共工事を中心に適切な工期設定への理解も進み、業界全体として『休む時はしっかり休む』という意識改革が根付いてきました。私たちが目指す『新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)』について手応えを感じる一方で、新たな課題も浮き彫りになってきています。
現状の中東情勢のような予期せぬ社会情勢の急変やトラブルが発生した場合、過去には残業や休日出勤でカバーして工期に間に合わせることも可能でしたが、現在は、厳密に限られた労働時間の中で工期を守り抜くマネジメントを迫られています。
これまでと同じ、あるいはそれ以上の仕事量をこなすには、建設DXによるICT施工やBIM/CIM、遠隔臨場といった生産性の向上が欠かせませんが、こうした省力化投資には多額の初期費用がかかり、ハードルが高くなっています。
また、現場の技能者で見ると、日給や時給といった給与形態も未だ多く、労働時間の減少が収入の減少に直結しかねない側面もあります。
これらの課題を乗り越えるには、物価上昇を適正に反映した積算単価の引き上げや働き方改革の実態に即した歩掛りの改正、工事関係書類の一層の簡素化、DX推進に向けた支援措置等が必要ですので、国や自治体へ引き続き強く要望してまいります。併せて、民間工事の発注者の皆様に対しても建設業の働き方改革についてご理解いただき、余裕を持った工期設定に国等による一層の指導をお願いしたいと考えております」
――今年度の重点事業について。
「令和8年は、『第3期復興・創生期間』や『第1次国土強靱化実施中期計画』が新たにスタートするなど、極めて重要な年です。
当協会では、こうした国の計画に呼応し、また終了を迎えた後も会員企業が健全に事業を継続し、社会に貢献し続けられるよう、業界の羅針盤とすべく新たな『協会ビジョン』策定に本格的に取り組みます。
広報活動としては、県内3カ所の『道の駅』の情報コーナーを活用したPR活動を展開し、建設業の社会的役割と魅力をダイレクトに発信していきます。
更に、会員企業に入職した若手技術者を対象に、既存の土木系研修に加え、今年度から新たに『建築初任者研修』をスタートさせました。今後も教育カリキュラムを充実させ、若手をはじめとする技術者への手厚いサポートを展開してまいります。
近年は、全国的に自然災害が激甚化・頻発化し、公共インフラの老朽化も待ったなしの状況です。福島県では各地域の多岐にわたるインフラを一括で管理する『包括維持管理』を推進するとともに、過去に整備された施設の設計情報などを一元化した『公共土木施設データベースシステム』の構築に取り組まれています。このような県の事業に協力し、人口減少局面にあっても、県民の皆様が安心して生活できる、新たな『インフラの維持管理の仕組みづくり』に取り組んでまいります。
当協会としましては、今年度も、国・県や関係機関の皆様と緊密に連携しながら、事業を力強く前に進め、業界と本県の発展に寄与してまいりたいと考えています」

























