Category

インタビュー

  • 【福島県交通安全協会】小櫻輝会長インタビュー【2024.3】

    【福島県交通安全協会】小櫻輝会長インタビュー【2024.3】

    経歴  こざくら・あきら 1941年生まれ。㈱桜交通、㈱さくら観光代表取締役。県交通安全協会副会長を経て、2015年6月から現職。  ――昨年、県内交通事故死者数の増加数・増加率が全国ワースト2位であることが報じられました。  「昨年、全国の交通事故死者数は2678人となり、2015年以来8年ぶりに前年を上回りました。県内でも昨年は交通事故発生件数、死者数、傷者数のいずれも増加しています。特に交通事故死者数は55人で、22年の47人を8人上回り、年間の死者数が前年を超えたのは17年以来6年ぶりとなりました。新型コロナウイルス感染症の5類引き下げに伴い、人の動きが活発化したことが影響していると思われます。  今年は年初から交通死亡事故が多発し、1月19日には『交通死亡事故多発全県警報』が発令されました。1月末現在、9人が交通事故の犠牲となり、うち高齢者は8人です。高齢者の交通事故防止対策をより一層強化していく必要があります」  ――協会では65歳以上の高齢運転者が運転免許証を返納する際に「運転卒業証書」を交付しています。  「地区交通安全協会と連携し、運転免許証を返納する高齢運転者の長きにわたる安全運転に敬意を表して、『運転卒業証書』交付事業を展開しています。22年12月から昨年末までに2994人の方に交付しました。運転免許証を返納しやすい環境づくりを進め、高齢化社会を地域全体で支える機運を盛り上げていきたいと考えます。運転免許証返納の相談は、免許センター、警察署などで受け付けています。電話相談は、安全運転相談ダイヤル『♯8080』(シャープ ハレバレ)にお願いいたします」  ――協会では以前から3人1チームで互いに無事故・無違反を目指す「セーフティチャレンジ事業」を行っていますが、現在の状況は。  「1996年に開始し、今年で29回目となります。昨年も多くの方々にご参加いただき、9年連続で2万チーム、6万人を超えました。昨年の無事故・無違反達成率は88・9%と高く、県内の交通事故防止に大きく寄与しています。今年も6月から参加の受付を開始します」  ――来年度の重点事業について。  「本県は第11次交通安全計画で、2025年までに年間交通事故死者数を50人以下にする目標を掲げています。当協会では昨年に続き『交通死亡事故の抑止』を掲げ、地区交通安全協会、関係機関・団体と協力しながら交通安全諸対策を推進していきます。特に高齢者の事故防止対策として、県警と連携して夜光反射材の普及促進やシートベルト着用などの促進活動『ピカッと・カチッと大作戦』に注力するほか、『ドライバー総参加のセーフティチャレンジ事業』による県民の安全運転・事故防止への意識高揚を図っていきます」  ――今後の抱負。  「交通事故根絶に向けた努力は、県民の皆さま方とともに継続させなければならない重要な課題です。今年も引き続き地区交通安全協会と一丸となり、悲惨な交通事故を1件でも少なくするため、活動を強化していきます。県民の皆さま方には交通ルールや交通マナーを守り、安全運転を重ねてお願い致します。なお、最後になりますが、皆さまからお預かりした会費が地域の交通安全活動の大きな支えになっておりますことをご理解の上、交通安全協会へのご入会を改めてお願いいたします」

  • 【矢吹町】蛭田泰昭町長インタビュー

    【矢吹町】蛭田泰昭町長インタビュー

    経歴 ひるた・やすあき 1958年生まれ。早稲田大政経学部卒。農林中央金庫本店審査部主任考査役(部長)、高松支店長(四国地区総括)、全国酪農業協同組合連合会常務理事、共栄火災海上保険常勤監査役などを歴任。昨年12月の町長選で再選を果たす。  ――昨年12月の町長選で再選を果たしました。  「前回の選挙戦の際には『現場主義』を基本に、町民の皆さんの日々の中に足を運んで、声をきちんと聞いていくことを訴えました。車座になっていろいろと話をしたことが非常に良かったのですが、2020年1月に初登庁したあと、4月に矢吹町で初めて新型コロナの感染者が出まして、そこから本当に新型コロナとの戦いが始まりました。毎日のように防災無線で注意点を呼び掛けることをはじめ、対策に取り組む中で、皆さんと車座になって話を聞くこともできませんでした。私にとってそれは残念であり、ストレスでもありました。  新型コロナや二度の福島県沖地震、台風19号など対応に追われた1期4年でしたが、今回、あらためて、町内を回って、夕暮れ時の明かりのついた家の前から手を振ってくれる町民の姿を見て、胸が熱くなりました。住宅団地の前を通りました時には、わざわざ降りてきていただいて『町長さん、よくやってくれたね。また頑張ってください』と言っていただきました。こんなに嬉しいことはないですね。選挙戦を通して、一定の信任を得ることができましたことと、新型コロナでなかなか接触できなかった方々と様々な接点を持つことができて、私としてはやはり『これがエネルギーになるな』と。いい経験ができたと思います」  ――デジタル技術を活用したまちづくりを進めています。  「以前から国の『デジタル田園都市国家構想』に基づき、『デジタル田園タウン』の推進を図ってきました。東京都狛江市や三菱商事、成城大学などと連携し、データ連携と蓄積、サービスの共有を図ることで導入・運営コストの削減とパフォーマンスの大幅アップを目指しています。  また、町では子どもたちの運動能力向上や高齢者の健康づくりを目的として国の『デジタル田園都市国家構想交付金』の採択を受け、スポーツを軸にした地域課題の解決に向けた『スポーツ×デジタル振興プロジェクト』に取り組んでいます。新型コロナの影響もあり、町民の全世代で、スポーツや健康づくりへの参加機会を増やしていくことが重要です。そのため、2026年度の本格始動を目指し、町民がそれぞれの形でスポーツや運動を楽しめる町になるよう、体の組成や体力測定・健康診断などの数値を分かりやすく示し、全町民を対象にスポーツ科学に基づく健康長寿と体力・運動能力向上に役立つプログラムを提供していきます。同時に、ジュニアアスリート支援活動を行い、将来のアスリート発掘にもつなげていきたいと思っています。 まずは自身の健康状態や体組成を把握します。測定データは、今後開設予定の住民向けサイトなどから確認できるようにします。個々の課題に応じて、トップアスリートを指導するトレーナーが考案した運動メニューが提供される仕組みにします。  一方で、子どもたちだけでなく、健康長寿・予防医療・生活習慣病予防などに向けたヘルスケアも行っていきたいと思っています。今後はジム機能を備えたクラブハウスや町民が気軽に運動できる『マルチフィールド』を新設したいと思っています。  このプロジェクトはスポーツ庁の『スポーツ・健康まちづくり優良自治体表彰2023』にも福島県で初めて選ばれました。町民ばかりではなく、周辺地域との関係人口や交流・流入人口が増えるよう取り組んでいきたいと思っています。  また、公共交通にもデジタル技術を活用していきたいと考えています。以前から高齢者福祉向上のために、70歳以上の町民を対象にした『行き活きタクシー』というタクシー事業を改善を重ねながら行ってきました。ただ、2024年問題などタクシー運転手不足が叫ばれる中で、希望する方に『いつでも、どこでも』というサービス提供が難しくなってきました。そこで、代替策としてコミュニティーバスの実証実験を行っており、今後はオンデマンドバス、自動運転バスに移行したいと思っています。今後はAIを活用して、町民ニーズに合わせた運行内容の見直しなど、中心市街地における新たな運行システムの構築を図っていきたいと考えています。地域公共交通の充実は高齢者だけでなく、子どもたちの安全な登下校や部活動での移動手段の確保などへの発展性も見据えていきたいと思います。  よく『誰1人取り残さない』社会を目指すと言われます。特に高齢化の一人暮らしが増える中にあって『誰1人取り残さない』ためにデジタルの力を借りることは新しい社会を目指す上で大変重要です。福島県沖地震が発生した際、民生委員や行政区長など地域を見守っていただいている方には、地震発生直後の深夜から訪問活動を行っていただき、非常にありがたかった半面、そういった方々に過重な負担を欠けてはいけないと思いました。スマホやタブレットを各住宅に配布するなど、デジタルの力を道具として、民生委員などの負担を大幅に軽減できるのではと考えています。当然、個別ケースで従来の対面は重要ですが。特に5G時代になった今は、より鮮明な画像で確認できます。プライバシーの問題もありますが、平時はスイッチオフ、緊急時に使用する等、解消策は用意できると思います。  学校教育にもデジタル化は重要です。町内の進出企業に、小学校4校・中学校1校の全クラスに電子黒板を寄付していただきました。最大限活用し、今後は先生方の負担軽減や新たな教育に大いに活用していきたいと思います」  ――いい部屋ネットの自治体ランキングで、県内1位になりました。  「私は1期目、雑誌等インタビューで『矢吹町を魅力ある町にして選んでいただけるようにしたいと思います。そのためには、就業できる企業や農業法人等が必要ですし、生活に必要な物が豊かに手に入る環境整備も求められます。加えて福祉関係が充実して暮らし易い環境を順次整備していけば、交通の要衝であり、自然環境でも恵まれている矢吹町を選択してもらえると思います』と話しました。そんな中、『いい部屋ネットランキング』の『住み心地ランキング2023年(福島県版)』では、県内59市町村中第1位にランクされています。これまでの取り組みが少しでも功を奏して、矢吹町の評価アップに貢献できたのではと感慨深いものがあり、移住を希望される方にとっても参考にしていただけるものと思っています。また、矢吹町の子どもたちに、誇りと自信、郷土愛をもたらしてくれるものだと期待しながら、矢吹中学校等で矢吹町についてお話を続けています」  ――今後の抱負。  「長きにわたったコロナ禍は生活様式の見直しばかりではなく、働き方の変化をもたらしました。自宅や移住先におけるテレワークが多くの企業で行われることで、経費が安い土地へのオフィス移転なども行われています。今だからこそ、地方が本当に輝き、存在感を発揮できる条件が揃い始めたと私は思います。  矢吹町の交通面では、高速道路、新幹線、空港へのアクセスを考えれば素晴らしい立地条件であると言えます。都市部に負けない利便性と情報、仕事等を自然豊かな地方に住みながら、デジタルを大いに生かすことができます。2期目の抱負として、デジタル技術を活用したまちづくりを目指していきたいと思っています。現在は、町民の活動を記録し、住民サービスに生かす『ライフログモデル』の実用化に取り組んでいます。『誰1人取り残さない』町づくりにはツールとしてのデジタル活用が必要です。肝心なところは人間対人間のフェースtoフェースが大切ですが。町スポーツ×デジタル振興プロジェクトも推進し、活性化に努めていきます。  今年は、遊水地整備事業、国道4号の4車線化など矢吹町の将来の姿に大きな影響を与える事業が本格的に動き出します。2期目においても粉骨砕身、矢吹町を前に進めるために一層の努力を続けてまいります。町民の皆様のご理解、ご協力よろしくお願い申し上げます」

  • 【下郷町】星學町長インタビュー【2024.3】

    【下郷町】星學町長インタビュー【2024.3】

    経歴  ほし・まなぶ 1947年生まれ。日本大学東北工業高卒。下郷町建設課長、助役、副町長などを経て、2013年9月の町長選で初当選。2017年、2021年の町長選で再選を果たし、現在3期目。  ――昨年5月から新型コロナウイルスの感染法上の位置付けが「5類」になりました。  「町民の生活面については、新型コロナウイルスの感染拡大により、冠婚葬祭の規模縮小や近所間での往来を遠慮するなど、日常生活の変化がうかがえました。昨年5月から5類へ移行したことで、この間、変化した地域生活も回復してきたと感じています。感染症対策も緩和される中、これまで中止となっていた町内の各種行事や会議、県や国への要望活動など4年ぶりに再開されるものが多くあり、少しずつ以前の生活が戻ってきた感覚です。一方で、イベント等が開催される中でも、以前より規模を縮小しての開催だったり、久しぶりの開催により勝手が分からなくなるなど、従来通りにはいかない部分も少なからずあります。  観光面では、観光客の入り込みはほぼコロナ前に戻りつつあり、活気が戻っているのを実感しています。急激な観光客回復に合わせて、外国人観光客の増加も顕著で、昨年はピーク時の約1・5倍に当たるおよそ9万人の外国人が来訪され、過去最高の数字を記録しました。こうした現状もあって、インバウンド対策の重要性を痛感しているところです。  2024年度の事業については、これまで国の臨時交付金を活用していたものが、新年度以降は不透明であるため、観光振興策をはじめ多くの事業において勝負の一年になると考えています。  また、この4年間は商工業の後押しに注力してきましたし、物価高騰策による町民への支援やプレミアム商品券の発行などによって消費拡大に努めてきたので、今年も様々な取り組みを通して地域活性化につなげていきたいと考えています」 会津縦貫南道路に期待  ――第6次下郷町総合計画は4年が経過しました。  「今年は第6次総合計画の最終年度ですが、『豊かな心を育む』、『にぎわいと産業の創出』、『健やかな暮らし』、『住みよいまち』、『まちづくり人づくり』の基本目標を掲げ、多角的な事業を展開してきました。なかでも、『住みよいまち』の実現に向けた取り組みとして会津縦貫南道路の小沼崎バイパスの開通があり、事業の詳細は後述しますが、これにより交流人口の増加が期待でき、まちづくりの面でも大きく寄与するものと考えています。今後、会津縦貫南道路をはじめとした道路交通網が整備される中、町民の多様化するニーズに応えるべく、第6次総合計画の検証をしながら、第7次総合計画に盛り込んでいく考えです。また、町営住宅の改築事業も進めており、新規移住者の受け皿の確保に努めています。  『豊かな心を育む』取り組みとしては、子どもへの教育に注力しており、町の将来を担う人材の育成という意味でも大きな意義があります。教育の充実によって子育て世代の移住・定住を促進し、少子化対策の方策にもなると考えています。具体的には国の制度に上乗せした保育所の一部無償化や学校給食の無料化を実施しており、今後もより良い教育環境の整備に向けて取り組んでいきます。  『にぎわいと産業の創出』では、商工業の活性化や観光交流事業の推進という形で交流人口の拡大を目指しており、先述した小沼崎バイパスの開通というハード面だけでなく、ソフト面も併せることで相乗効果を狙っていく考えです」  ――先ほどお話のあった会津縦貫南道路の国道118号線小沼崎バイパスが3月3日に開通となります。  「主な効果としては、小沼崎バイパスを利用して鳳坂トンネルを通過することで、須賀川方面へ抜ける時間が以前より短縮できます。冬期間や大雨による通行止め等の心配もないので、通年で安心・安全に走行できる利点もありますし、医療機関への安全な搬送ルートの確保という点でも大きな効果が見込まれます。会津縦貫南道路では最初に開通する区間だけあって注目度も高く、地域住民の皆さまにとっても喜ばしいニュースではないかと見ています。利便性が向上することで観光誘客につながり、交流人口の増加はもちろん、雇用が生まれ、定住人口増加に結び付く可能性もあるので、私個人としても開通は非常に喜ばしい限りです。  会津縦貫南道路は、同じ地域高規格道路の会津縦貫北道路とともに、栃木西部・会津路を結ぶ交通の要です。この会津縦貫道路を縦軸とし、新潟県からいわき市へ延びる国道289号、また、先に開通した鳳坂トンネルを含む国道118号の整備が進めば、この2つの道路が横軸となり、本町は縦軸と横軸が交わる交通の要となり得るので、今後の本町にとって大きな可能性をもたらすという点でも、これを意識した施策が必要になると考えています。  現在は5工区となる下郷田島バイパスの整備に向けて準備しており、田島から栃木西部につながる道路として何らかの方向性を定めてほしいと県に要望しています。将来的に本町を含めた南会津管内に交流人口の増加や、救急医療体制においても大きな効果をもたらすと考えられるので、一日も早い開通を目指して取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「まずは第7次総合計画に向けて、第6次総合計画を具現化して進めることが何より重要であると考えています。先ほども述べた会津縦貫南道路が全線開通すると町内に3つのICが設置され、それに伴って観光地に入る道路、主に国道289号や町道・県道の整備も併せて実施する必要があり、バイパス整備だけでなく周辺道路を含めた道路網の整備は今後も注力していく考えです。  ほかにも、町営住宅の改修事業や教育振興など、町民の住みよさという点において様々な課題があるほか、本町の特色である観光業においても、観光資源の磨き上げが重要な課題であると考えています。それぞれが相互に作用し得るので、住環境整備と教育振興、観光振興を3つの柱に据えて取り組んでいく考えです。  また、町内男女ともに未婚の方の割合が増えており、婚活事業への取り組みが求められています。町内の人口減少にも大きく関わる問題であり対策は必須です。とはいえ、ただ婚活イベント等を実施するのではなく、まずは世話焼き人の方を通して町内の成婚率を上げていきたいと考えています。  今年3月で震災から丸13年を迎えますが、海外から見れば未だ福島県に対して原発事故のイメージが残っている一方で、風化してしまっている部分もあります。本町としてもインバウンド対策が必須になってきた中、あらためて風評被害払拭に向けた取り組みを推し進め、さらなるインバウンドの獲得につなげていきたいと考えています」  

  • 【本宮市】高松義行市長インタビュー【2024.3】

    【本宮市】高松義行市長インタビュー【2024.3】

    経歴  たかまつ・ぎぎょう 1954年生まれ。大正大仏教学部卒。1995年から旧本宮町議。2007年から本宮市議、2011年1月の市長選で初当選。現在4期目。  ――昨年10月に「定額タクシー・まちタク」を本格運行し、乗合タクシーが「チョイソコもとみや」としてリニューアルしました。  「デマンド型乗合タクシー、定額タクシー、コミュニティバス、路線バス、鉄道の五つを組み合わせることで、公共交通をより利用しやすくする狙いです。以前の公共交通システムと比べ、利用者が10%増えました。システム改修後に利用が増えているということは、全体として利便性が高まったと捉えます。専門家によると、公共交通システムを改修して2、3カ月間は変化に戸惑い一般的には利用率が下がるそうですが、本宮市の場合は前例を覆しています。  ただ、一部地域では以前のデマンド型乗合タクシーと比べて使い勝手が異なり利便性が下がったとの声が出ました。誰もが納得できる形を目指して改善を重ねていきたいです。  公共交通の在り方をご理解いただくために市の丁寧な説明が必要だと感じています。以前の公共交通システムの利用状況と、今回の利用状況を比べてどのような差が出たのか検証していかなければなりません。  公共交通の利用は、温室効果ガス排出を抑制する『ゼロカーボン』につながるので、多くの方に積極的に活用してほしいです」  ――市では「ゼロカーボンシティ」の実現に向けた取り組みを行っています。5月には水素ステーションがオープン予定で、市でも水素自動車を導入予定です。  「365日24時間営業の水素ステーションが日本で初めて稼働します。なぜ本宮市に設置されるのか。これはあくまでも推測ですが、内陸型の都市工業用物流都市でモデルに適している、さらにゼロカーボンに前向きな企業が多いからではないでしょうか。  水素自動車(FCV)の普及率は電気自動車(EV)に及びません。本宮市では今後、ガソリン車とEV、FCVを組み合わせ、一番効率的なベストミックスを探りたいと思います。水素ステーション利用を普及させるために、まず市長車、副市長車、議長車をFCVにします。幸い、市内の企業が後に続き、数社がFCVを導入しています。  FCVはゼロカーボンシティを目指す一つの手段です。市はこれまでにペーパーレス化に取り組んだり、書類を綴じるファイルを石油由来の物から紙製に変えたりしています。各家庭には太陽光や蓄電池の設置や生ゴミ処理機購入を補助しています。誰もが手軽に貢献できるのは、先ほど申し上げたように公共交通利用です。  4月からはゼロカーボンの達成度を可視化しようと考えています。二酸化炭素排出をどれだけ抑えられたかを市が計測し公表します。市民と企業の方々と達成度を共有して次の目標を目指すということを繰り返していけば自ずと成果が出るのではないでしょうか。2050年までにゼロカーボンシティを目指す本市の目標が夢物語ではなく現実に近づいていると実感してほしいです」  ――1月に能登半島地震が発生しました。震災や台風の被害を乗り越えてきた本宮市として、大地震をどのように受け止めましたか。またどのように対策をしていますか。  「多くの方が亡くなり、今も厳しい避難生活を送っている被災者の方にお悔みとお見舞いを心から申し上げます。  安全安心の確立があって初めて行政は自治体の発展や住民の幸せ実現を掲げられると改めて感じました。防災対策はまずは耐震化や堤防の補強などハード対策です。本市は東日本大震災、令和元年東日本台風で大きな被害を受けましたが県や国、周辺自治体の助力を得てハード面の復旧は進んでいます。  ソフト面は人々の避難行動への働きかけです。本宮市は逃げ遅れゼロを目指し、個人に緊急時の対応をあらかじめ記したマイ避難カード作成を呼び掛けています。年に1度は地域や職場で避難訓練し、いざと言う時に対応できるようにしてほしいです。地震、水害、火山災害など災害の種類によって対応は違ってきます。全ての方が緊急時に命を守る行動がすぐ取れるように、行政は準備を進め、地域社会と連携して備えていきたいです」  ――アサヒビール園福島本宮店は前事業者が撤退の意思を示しましたが郡山市の企業が事業を引き継ぎました。同施設に何を期待しますか。併せて、東北道本宮インターチェンジ周辺の開発の見通しを教えてください。  「ビール園は存続して本当に良かった。本宮市のランドマークと言ってもよく、ビールを愛する人たちが集う交流の場です。市は水面下で存続へと働きかけをしていました。市民の思いを汲み取って引き継いでいただいた会社にはお礼を申し上げます。  コロナ禍で縮小した外食需要が戻ってきており絶好の機会です。市も側面支援していきたいです。大人数が収容できるので、これまでは市役所の納涼会に使ったり、来賓が大勢いる時に利用していました。ビール園は工場が多く物流都市である本宮らしい場所でもあり、今後も賑わいの一角であってほしいです。  本宮インター周辺の開発に関する費用を来年度予算案に組み込んでいます。周辺にはビジネスホテルが進出します。さらに大型のショッピングセンターを呼び込むのが目標です。JRの駅と本宮インターは本市の玄関口です。地権者の理解をいただきながら周辺の開発を進め、内陸型物流工業都市としてさらなる発展につなげます。本宮はかつては多くの人が行き交う宿場町でした。人が集う場所として、現代に新しい形で宿場の機能を復活させたいです。誘致については交渉事ですから、焦らず地に足を付けて臨みます」  ――重点施策についてお聞かせください。  「『人口の減らない市』を掲げています。日本全体で人口が減るという厳しい現実を直視し、右肩下がりを少しでも緩和するためにあらゆる努力をします。本市の人口動態は過去3年間は社会増ですが、自然減を合わせると全体では減っており楽観できません。自然減、すなわち生まれるお子さんが減っているのは日本全体を取り巻く問題であり、政府に方針を示していただいたうえで、自治体としてできることに尽力します。  移住に対する補助金を手厚くすれば住んでくれるかと言うと、決め手にはつながらないのではないでしょうか。やればやるだけ自治体間の競争に陥る恐れがあります。本市はポテンシャルを生かし、バランスの取れた地域づくりに重きを置いていきます。公共交通の大幅な改良も少子高齢化対策の一つです。2024年度を一つの区切りとして、これまでの取り組みの結果を冷静に分析して次なるステップに進みたいです」

  • 【福島市】木幡浩市長インタビュー【2024.3】

    【福島市】木幡浩市長インタビュー【2024.3】

     こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在2期目。  ――福島駅東口再開発事業は着工と開業が1年程度延期されることが決まったあと、昨年12月定例会では規模の見直しを検討することが発表されました。  「再開発事業は計画もテナントもおおむねめどが立っていました。ところが着工までに全国的な資材費・人件費の高騰に見舞われました。市は再開発組合とともに資材の見直し、施設計画の調整、国の補助金の確保と工夫を重ねました。ただ、資材費高騰の影響を抑えるまでの効果は得られず、計画自体の見直しが必要になりました。  商業機能をどうするか検討する必要も出てきました。改めて福島商圏の需要を事業主体の再開発組合がマーケット調査をしたところ、コロナ禍を経て電子商取引(EC)は想定以上に伸張、実店舗の需要は急速に縮小していました。全体的な見直しが必要になり、コスト増による1年延期に加え、設計の見直しでさらに最低1年は遅れることになりました。  再開発事業は基本的に民間事業です。再開発組合はテナントが入る民間部分を、市は組合から買い取った公共部分を維持管理していきます。民間部分の主な収入は家賃ですが、テナント入居が見通せずランニングコストを賄いきれない状況になってしまうことが分かりました。  民間の維持管理部分を減らそうと、現計画では融合している公共部分と民間部分を別棟にする案を考えました。私は『街なかの賑わい創出のために公共部分だけでも先行して建てられないか』と提案し、その検討の中で分棟にすると民間部分の収支改善が図られ、事業継続にめどが付くことが確認されました。  公共部分については、建設費用を抑えるために規模を縮減し、その上で使い勝手の良い施設にしていこうと考えました。劇場ホールとコンベンション両方の機能を備えた建物は難しく、劇場ホール案とコンベンション案を市民に提示しました。あくまで議論のたたき台であり、それ以外の案も不可能ではないと思います。今後進むべき方向を、市民を交えた議論を踏まえ決めたいと思います」  ――ここに来て駅周辺の東西一体のまちづくりという考え方も浮上しています。背景と、今後どのように議論を進めていくのか伺います。  「イトーヨーカドー福島店の撤退で西口の状況が変化することが挙げられます。民間企業の所有地なので市は注視しつつ情報収集してきました。民間の会社が入る話もありますが正確なことはまだ分かりません。売却の可能性も想定し情報収集に努めています。当該地は駅西側の玄関口であり、今後のまちづくりの観点から市として積極的に関与します。仮に所有者が売る場合、市民が望まない形になってはいけない。市が使うことも想定しなければなりません。そうなった時、市が何の案も用意していないのは好ましくない。議会や市民の皆さんの意見を聞き、市としての意向を複数用意していきたいと考えています。  福島駅東口と西口は一体化してまちづくりに取り組まなければなりません。2018年に策定した『風格ある県都を目指すまちづくり構想』では東西を結ぶ駅改札外の自由通路の改善を中長期的課題に位置付けました。まずは中心地の活性化を優先すべきと考えたからです。市が管理する自由通路の改善は、福島駅舎とも関わっています。市は駅舎の建て替えをJRに要望してきました。仮に建て替える場合、自由通路との調和が必要で、JRは市のまちづくりビジョンを参考にするとしています。そのために自由通路を含めた東西一体のまちづくりの方向性を今示しておくことは重要なのです」  ――東口再開発地区にある既存建物の取り壊しが年度内で終了する予定ですが、結論を先延ばしにすれば東口はいつまで経っても「何もない状態」が続くことになります。一方、拙速に結論を出すわけにもいかず、木幡市長としては難しい判断を迫られるのではないかと思います。  「駅の東西両方の賑わいを創出していく必要がありますが、東口の方をより急がなくてはならないという認識です。再開発ビルは民間事業者が銀行から借り入れて建設しています。延期するほど金利負担が増えていき、事業成立が困難になる。もし破綻したら空いたままの土地が生まれます。だからと言って拙速にならないよう慎重に検討していきます」  ――中期財政収支見通しで市財政の厳しさが明らかになっています。そうした中で本庁舎西側で市民センター(仮称)の建設が始まり、今後多くの公共施設の建て替えが控えています。老朽化施設の建て替えは必要ですが、財政収支も考えないと将来世代に大きなツケを回すことになってしまいます。  「福島市はこれまで大型事業を先送りしていた傾向があり、今それらをやらなければならない状況になっています。有効な手が打てるうちに積極的に行うことが必要です。将来の人口減少を考えると、今手を打たないとますます窮地に陥ってしまう。福島市が魅力のないまちになるのをただ待つのは避けたい。将来の人口を維持するためにも今やるべき事業は進め、むしろ先進的で魅力を感じてもらえるように転換したいです」  ――人口減少、少子高齢化が急加速している中、子育て支援や移住促進に注目が集まります。人口減少、少子高齢化対策について地方自治体でできることが限られる中、国はこういう対策に取り組むべきだという考えがあればお聞かせください。  「中核市市長会会長として、子育て世帯の負担軽減など所得に絡んだ施策の充実を国に要望しています。移住を促進しようと自治体同士が負担軽減策で競争すると疲弊してしまいます。効果的な施策を国でしっかりやっていただいて、自治体が創意工夫ある施策を進めていくことが重要です。  人を呼び込むには産業がないと続きません。産業振興、企業誘致にとどまらず、地元産業の高度化が必須と考えます。時代の変化が非常に激しいですから、創業・起業にも力を入れる必要があります。人手不足対策についてはこれまで家庭に入っていた女性や障がい者、高齢者の皆さんにも働いていただけるよう、事業者と行政は環境を整えなければなりません。  外国人雇用も求められています。これからは外国出身者の活躍が地域の活力となります。市は昨年、多文化共生センターを開設しました。事業者をサポートし外国人を雇用することへの理解を促進しています。また、外国人が安心して暮らせる環境づくりを担うのが4月に開校する公立夜間中学です。他地域では夜間中学の生徒の7割は外国にルーツのある方で、日本語教育や居場所づくりの役目があります。以上のような取り組みで、さまざまな人を受け入れ誰もが活躍できる市を目指します」

  • 【伊達市】須田博行市長インタビュー【2024.3】

    【伊達市】須田博行市長インタビュー【2024.3】

     すだ・ひろゆき 1958年生まれ。宇都宮大農学部卒。福島県に入庁後、県北農林事務所長などを歴任。2018年1月の伊達市長選で初当選、22年1月に再選。  ――2月で2期目の折り返しを迎えました。再選を果たした市長選で掲げた公約の進捗状況について。  「まずは『安全安心の確保』です。1月1日に能登半島地震が発生しましたが、改めて自然災害に対する常日頃の備えが重要と痛感しました。また、断水による生活困難をはじめ、能登半島の地形的な要因もあって被災した道路の再開通に時間を要し、復旧活動に支障をきたすなど道路の重要性も再認識したところです。  本市では水道の耐震化を鋭意進めており、200㍉以上の基幹管路の耐震適合率は90%以上、摺上川ダムから引く浄水における貯配水池の耐震化率は98%となっています。大地震が発生しても耐えられる構造となっていますが、100%を目指し今後も耐震化に取り組んでいきます。  令和元年東日本台風では梁川地域を中心に甚大な水害に見舞われました。市では、令和5(2023)年度から、国土交通省と民間事業者の協力を得て、『ワンコイン浸水センサ』を用いた実証実験に、県内で初めて参加しています。浸水が想定される市内14か所にセンサーを設置することで、豪雨の際の浸水状況をリアルタイムに把握ができ、災害対策の迅速化を図ることが可能となります。  また、センサーによって浸水を10㌢ごとに察知できるので、的確な道路の通行止めやアンダーパス対策、危険を伴う夜間の職員出動回避にもつながります。安心・安全の確保には道路整備も不可欠です。本市は相馬福島道路をはじめ、国道4号、同349号、同399号と道路網が東西南北に充実しています。同349号の整備は宮城県側から進んでおり、本県側も国や県に要望しながら速やかな整備の実現に努めます」  ――雇用・子育て環境の充実についても公約として掲げていました。  「若者の定住につながる『雇用の場の確保』については、伊達市新工業団地の造成が完了し、8区画を売り出したところ、6社により全区画売約済みとなりました。1社については2月に開業を迎え、令和6年度中には2社が稼働する見通しです。  堂ノ内地区の大型商業施設については、現在、土地区画整理事業の工事と大型商業施設イオンモール北福島(仮称)の造成工事が鋭意進行中であり、間もなく完成を迎えます。今後は大型商業施設の本体建築工事の着手に向けて準備が着々と進められるとのことで、1日も早く開業することを期待しています。  街中のにぎわいづくりについては、『若者が楽しめる場』として気軽に集まって楽しんでもらえる施設の整備、商店街の魅力向上などを目指し、若手商店主等の意見を伺い、実証事業を進めているところです。  『子育て・教育の充実』については、若い世代にとって定住の重要な条件でもあります。子どもたちを安心して預けられ、子どもたち自身も安全に過ごせる居場所が重要になると考え、本市では3つの認定こども園の整備を進めてきました。  伊達・ひかり認定こども園、保原認定こども園は4月に開園の運びとなります。また、阿武隈急行高子駅北地区の住宅団地内で高子北認定こども園(仮称)の建設が始まり、令和7年4月の開園に向け整備が進められています。そのほか、かみほばら放課後児童クラブ館を新築し、今年4月から開所予定です。  本市ではすべての妊婦、18歳までの子どもとその家族を対象に、相談体制を充実させた『伊達市版ネウボラ事業』を展開しています。今後もネウボラ保健師を中心とした、妊娠期から切れ目のない保健・福祉・教育の三位一体となった子育て支援に一層取り組んでまいります。  市民の健康寿命の延伸を目指す『健幸・福祉のまちづくり』も公約として掲げました。本市では、運動習慣化支援事業として、地区集会所を拠点に参加者同士が交流を図りながら気軽に楽しく運動を行う『元気づくり会』事業を推進しており、現在は146団体が参加しています。コロナ禍で一時活動が制限されましたが、会員の皆さんの強い思いにより、コロナ禍以前の取組が復活しています。昨年5月には、本市の基幹産業である農業と福祉の連携を目指し、障害福祉施設として多機能型事業所『インクルーシブたかこ』が開所しました。〝明るく楽しく健康に〟をモットーに、農業生産活動や就労知識及び能力向上のための訓練などを行っており、障害の有無にかかわらず、さまざまな交流・学びの場として利用されています」  ――新型コロナの影響について。  「感染拡大防止のため、これまでさまざまな行動制限を強いられるなど、市民の皆さまにとって、まさに辛抱の3年間だったと感じます。その思いが昨年5月8日の5類引き下げ以降は、一気に市民の活力となって市内各地に「にぎわい」が戻ったと実感しています。現在、イベントやお祭りなどが通常通りに開催されていますが、特に参加する子どもたちの笑顔が印象的で、対面でのふれあいや繋がりの重要性を感じました」  ――伊達小学校校舎改築工事が竣工しました。  「旧伊達小学校は建築から50年が経過しており、耐震診断の結果からも校舎改築は待ったなしの状況でした。平成28年から学校、保護者、地元住民で構成された検討委員会で議論を重ね、『子どもたちが安心・安全に学べる校舎』、『地域住民のコミュニティの核』との意見集約が成され、『地域と一体となった学校づくり』を目指すこととなりました。  これらを踏まえ、同校は吹奏楽が非常に盛んなことから、校内に講堂を整備し、講堂と音楽室を隣接させ、練習、発表を問わず使い勝手の良い配置としました。校内イベントはもちろん地域住民の各種発表会の場としても活用していきます。  校内はバリアフリー仕様で、ICT教育の充実を図るため、各教室に大型提示装置(ディスプレイ)を設置し、児童のタブレットと連携して授業が行える教育環境を提供しています。地域の皆さまや施工業者のご尽力により、昨年12月末に校舎改築工事が竣工し、引っ越しや備品搬入を経て、1月9日から新校舎での学びがスタートしました。子どもたちからは『ホテルみたい』、『廊下が広くてきれい』と感動や喜びの声が寄せられています」  ――今後の抱負について。  「昨年策定した伊達市第3次総合計画では①安心・安全できれいなまち、②健やかでやさしい健康・福祉のまち、③未来を拓く人を育む教育・文化のまち、④活力とにぎわいあふれる産業のまち、⑤便利で快適に暮らせるまち、⑥みんなでつくる協働のまち――という6つの基本目標を掲げています。まずは前期基本計画に基づき、本市の将来像『人と緑と歴史が結び合うひかり輝く田園空間・伊達市』の実現に向け積極的に市政運営を進めていきます」

  • 【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー【2024.3】

     かんの・けいじ 1952年生まれ。福島県農業短期大学校卒。JA福島さくら代表理事専務、代表理事組合長を務め、2022年6月の総会でJA福島五連会長に選任された。(写真左は昭和カスミソウ)  「第53回日本農業賞」で、JA会津よつばかすみ草部会が集団組織の部大賞に選ばれた。JAグループの中期計画の中で、「ふくしま園芸ギガ団地構想」を掲げており、その1つの成果と言える。同賞受賞の意義やギガ団地構想の今後の展望、さらにはALPS処理水の海洋放出の影響などについて、管野啓二JA福島五連会長にインタビューした。 持続可能な「福島の農業」と「JA」の未来づくりを進める。  ――「第53回日本農業賞」で、JA会津よつばかすみ草部会が集団組織の部大賞に選ばれました。  「昭和村の村おこしを兼ねた、行政とともに進んできた部会活動が認められた大きな成果だと捉えていますし、過疎化している地域として成果を上げたことも大きな意義があると思っています。日本農業大賞を集団・組織の部で本県が受賞するのは第44回JA会津みなみ南郷トマト生産組合以来9年ぶりで、JAグループ福島としても大変名誉なことです。部会長はまだ若く、以前はトラック運転手をしていたという異色の経歴の方です。運ぶのではなく、自ら栽培して地域に貢献したいという熱意からスタートしていますが、その熱意が部会全体に伝わったのかなと思っています。担い手不足が深刻化する本県農業において、山間地でも儲かる農業を実現し、未来に続く農業経営と地域振興を実現されたことは、まさに本県農業の誇りであり、大賞受賞を契機として今後もさらなる担い手づくりと地域農業振興へのご尽力を期待しています」  ――JAグループでは「ふくしま園芸ギガ団地構想」を進めており、園芸品の生産振興に力を入れています。JA会津よつばかすみ草部会の大賞受賞はその成果の1つと言えますが、昭和カスミソウやそのほかの品目(地域)の今後の展望について。  「『ふくしま園芸ギガ団地構想』は、県内各5JAがそれぞれの地域性を生かし、県の補助事業を有効に活用しながら園芸振興を図っており、現在5JA12地区で取り組みを進めています。中身としては『1団地で1億円以上の販売高を目指す』というもので、きゅうり、ピーマン、ねぎ、いちご、トマト、アスパラガス、宿根かすみ草の7品目を中心に取り組んでいます」 園芸ギガ団地を拡大  ――ギガ団地構想は、農家の所得向上と、「農業で生計を立てられる」ということを実践し、若い人の新規参入や担い手不足解消が目的とされています。  「継続して経営を安定させていくためには『売り上げ』、そして所得がいくら確保できるかがとても重要です。いわゆる『儲かる農業』を目指していかなければ持続的な経営につながっていきません。そのためには、技術面の向上とコストをいかに減らせるかがカギです。また、産地の拡大によって販売数のロットを大きくしていかなければ市場での優位性が発揮できません。より所得を確保できる園芸作物の振興に取り組み、十分な収益をあげる農業を実践することによって、農業を生業として選択することができ、それが、新規就農者の獲得にもつながっていくと考えています。  令和5年度(県発表。令和4年5月2日~令和5年5月1日)の新規就農者数は367名(前年比33名増)となり、2030年に340人以上を目指すとした県総合計画を上回る結果となりました。さらに令和5年度は、JAふくしま未来・桃(73億円)、夏秋キュウリ(44・8億円)、JA福島さくら・ピーマン(7億円)、JA会津よつば・昭和かすみ草(6・3億円)、南郷トマト(12・3億円)など、県内の主要品目の販売額が過去最高額を更新するなど、非常に良いニュースがありました。今後の県内各JAで園芸ギガ団地構想の拡大を図り、農家手取り最大化に向け努力していきます」  ――昨年4月、県、JAグループ福島、福島県農業会議、福島県農業振興公社がワンフロアに常駐する総合相談窓口「福島県農業経営・就農支援センター」が開所しました。  「『福島県農業経営・就農支援センター』が発足して10カ月余が経過しました。こうした連携体制は全国でも福島県が唯一で、各県からの注目もあり視察の依頼も増えています。  サテライト窓口も含めた1月末までの10カ月間での相談件数は1164件(就農相談854件、経営相談267件、企業参入相談43件)で、前年同時期対比1・3倍となりました。就農相談については、県が主催するフェアの開催などにより着実に増加するとともに、男女問わず年齢も若い方から定年前後まで実に幅広い方から相談を受けています。県が発表した令和5年度の新規就農者も367名となり、2年連続で300人を超え、センター設置前の令和4年度から連携協議会を設置して取り組んできたことが成果に繋がっています。  ただその中で重要なのは『定着率』だと思っています。福島県では新規就農した方々で3年以上離農せずに定着している方が8割を超えています。特に就農した後のフォローとして販売チャネルの相談や確保がJAグループとして一番の使命だと思っています。  引き続き年間1200件の相談目標に向けて取り組むとともに、現在研修中の方々に対する就農計画の策定や農地の斡旋、販路の確保など、各団体の持てる機能を発揮して、着実に就農に結び付くよう取り組みを強化していきます」  ――「JAグループ福島東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会」の原発賠償の状況について。  「1月末までに請求額が約3710億円、支払額が約3622億円で、賠償率は97・6%となっています。国の風評対策もあり、事故直後のような状況ではありませんが、ALPS処理水の海洋放出開始以降も、県産農畜産物への風評被害は、JA関係団体においても、残念ながら確認されています。国や東京電力には昨年11月17日に開催された『JAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会』での決議事項に基づき、確実かつ速やかな対応を求めていきます」  ――今後の抱負。  「農業に携わっている方々が『来年もまた作りたい、経営を継続したい』と言えるような1年にしたいと思っています。また、国では現在開会中の通常国会において、農政の憲法とされる『食料・農業・農村基本法』の改正を目指しています。食料安全保障の強化や、環境と調和のとれた産業への転換、生産性の高い農業経営、農村・農業人口・コミュニティーの維持などが検討されています。消費者の方々は、これまで『安ければいい』という考えが多かったと思いますが、今後は国家を守るために、食料に対する国民の負担というものを考え、食料安全保障の重要性を理解していただくきっかけとなる年になるのではないかと思っています」

  • 【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

    【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

    かんけ・ただひろ 1979年5月生まれ。東京の大学を卒業後、海外留学を経て会津土建へ入社。翌年、子会社の㈱エマキへ出向。10年間IT事業の社長を務める。その後、会津土建へ戻り、取締役、常務取締役、副社長を歴任し、昨年6月に代表取締役社長に就任。   会津若松市の会津土建は大正15(1926)年に創業し、会津地方に根ざした総合建設業として成長を続けてきた。建設業界全体がさまざまな課題を抱える中で、先進的な取り組みへの挑戦を続けている。昨年6月に代表取締役社長に就任した菅家忠洋氏(44)に建設業界の現状、今後の経営ビジョンについてインタビューした。 効率化と新たな挑戦を心がけ成長を続けていく。  ――昨年6月8日付で会津土建の代表取締役社長に就任されました。  「私の祖父と父が歴代の社長なので、幼い頃から会社を引き継ぐことに漠然としたイメージはありました。実際に社長となって、もちろん仕事の重みや責任は感じていますが、不安やプレッシャーにさいなまれることはなく、やりがいを感じながら充実した日々を過ごしています。さまざまな方々とお会いする機会に恵まれ、物事に対する見識や感性が膨らみ、人との結びつきやご縁の尊さを実感しています。建設業という仕事自体にとても魅力を感じますし、人のため、社会のために貢献すべく、地域が活性化できるよう情熱をもってまちづくりに努めていきたいと存じます」  ――老舗総合建設会社として地域社会にどう貢献していく考えですか。  「当社は大正15年創業、まもなく100周年を迎える老舗の建設会社です。会社の歴史を十分に理解しながら、新たな伝統を創っていく所存です。現在の会津地域における建設業界を取り巻く環境や政治経済の状況を俯瞰的に捉え、何を成すべきか、深く考えながらも瞬時に見極め、判断していく必要があります。また、今までお付き合いいただいたお客様はもちろんのこと、新たにご縁をいただいた方々、協力会社、職人さん方とより一層の誠心誠意を込めてお付き合いをさせていただきたく存じます。私たち建設会社のミッションは、お客様の満足いく建物を提供すること、そして、安心で安全に生活ができる豊かなインフラを整備し、地域社会に還元することが最重要項目です。社会情勢が目まぐるしく変化する中、安全、品質、コスト、デザイン、付加価値、SDGsなどへのより一層の対応が求められています。今後、PPP(官民のパートナーシップによる公共サービスの提供手法)やPFI(公共施設等の建設・維持管理・運営等を民間の資金、経営能力、技術的能力を活用する手法)事業が推進されると想定し、異業種の方々との交流や連携による柔軟な発想と対応が大事です。そのためにも、私たちも理論に基づいた提言をしながら、発注者、施工業者、設計、学識者、専門機関など、さまざまな意見をまとめながら、産学官による垣根を超えたデザインビルドに取り組むべきだと思います。将来を見通しながら地域の皆さまが納得し、喜ばれる仕事を完遂することが弊社の社会的な役割であるとあらためて認識しています」 ICTとアナログの融合  ――先進的な取り組みについて。  「建設業界では少子高齢化による人手不足が深刻です。そのため、国土交通省は、最先端工法やICT技術を導入することで建設生産システムを向上し効率を良くする『i―Construction』を推進しています。建設現場のみならず、総務や経理の事務的なバックオフィスでも生産性や効率性の向上が図られています。現在は3次元データの活用を深化させ、建設現場をデジタルツインで作業効率を高める取り組みにも着手しています。  スケールの大きい土木現場を施工管理する大々的な建設DXからスマートフォンのアプリケーションに至るまで、会社にとって効果があり、社員の仕事が楽に、スムーズになるのであれば積極的に導入する考えです。時代の潮流に乗り、今後も新しいテクノロジーや大手ゼネコンの取り組み、海外の事例を含め、導入検討や内製化の研究に励む所存です。 一方で、私は何よりも『アナログ』なお付き合いを大切にしようと思っています。人様との信頼関係の構築には対面が不可欠です。『温故知新』を座右の銘に、老若男女問わず、真心と礼儀を尽くしたいと存じます。『デジタル』と『アナログ』それぞれの利点を見極めながら新旧融合を図り、相乗効果が発揮できるよう『機を見るに敏』を意識した対応に徹したいと思います」  ――建設業界の今後の見通しは。  「全国的にみれば、先の東京五輪、リニア中央新幹線の整備、大阪万博、東京の再開発事業など建設需要が旺盛となっています。一方で、本県に目を移せば東日本大震災から12年が経過し、イノベーション・コースト構想や一部まちづくりを残し、復旧・復興事業も終わりを迎え、大型事業も少ない状況です。建設業界はすでに縮小・淘汰の時代が到来したといっても過言ではなく、大都市と地方都市を比較すると経済格差を著しく感じます。これからは新規でゼロから建設するというよりも、既存の建造物・構造物の維持管理やメンテナンスに軸足が移っており、それに応じて業務内容も変化させていく必要があります。  今後は、既存の建設会社だけではなくハウスメーカー、設備会社など関連業種も含めれば競争相手が多く、生き残りは容易ではありません。そうした中で、当社の位置付けを見つめ直しながら、新たなチャレンジを始動していく覚悟が問われます。先行きが見えないことも多々ございますが、私たちが抱く既成概念をリセットし、どん欲に挑戦しながら新たな領域を切り開くことが生き残るポイントだと考えます。厳しい経済状況でも成長している企業が存在するのも事実です。成功事例から学びを得て、業務に反映できるものはぜひ取り入れていきます。激烈な競争を勝ち抜くためにも『メイドイン会津』の地元建設会社として、プライドを大切にしながら企業価値をさらに高め、皆さまから認めていただけるよう、誠心誠意努めていきます」  ――結びに今後の抱負を。  「これから未来の福島を創るにあたり、私たち建設業界は真価を試される大切なターニングポイントにあると思います。故郷のため、そして子どもたちのため、日々技術を磨き、研鑽を積みながら、新しい事業スタイルを常に学び、もう一段上の高みに会社をもっていきたいと強く願っています。その実現に向け、『企業は人なり』の精神をモットーに、社員ファーストで生き生きと働ける環境を提供し、福利厚生を充実させながら、優秀な人材をリクルートしていきます。  また、健康経営優良法人の認証取得や女性活躍社会の推進をはじめ、企業価値の向上に着手していきます。今までの建設会社のイメージを覆し、新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を実現し、魅力溢れる企業体質をもって、社会に貢献していきます。私自身、まだまだ若輩者ではありますが、夢と希望を持って成長していきます」

  • 【福島県木材協同組合連合会】鈴木裕一会長インタビュー

    【福島県木材協同組合連合会】鈴木裕一会長インタビュー

     すずき・ゆういち 1948年生まれ。平工業高卒。㈱赤井製材所会長、ダイテック代表取締役、協同組合いわき材加工センター理事長。2018年より福島県木材協同組合連合会長に就任。3期目。 全国有数の林業県として森林資源を有効活用していく  ――福島県木材協同組合連合会の沿革ならびに事業概要について。  「福島県内の各方部にあった木材業者による地区協同組合の活動の総合的な調整や、全県的な相乗効果を高めるため、1964(昭和39)年3月25日に当連合会が設立されました。その後、会員の相互扶助の精神に基づき、会員のために必要となる共同事業等に取り組みながら会員の自主的な経済活動を促進し、経済的地位の向上を図ることを目的に各種事業を展開してきました。  現在、県内における良質な木材の素材生産、流通、木材加工・販売事業者約230組合員により構成される協同組合23組合を会員とし、木材の利用促進活動、木材産業振興対策、木製品に関する証明、JAS製材品の普及、各種受託事業等に鋭意取り組んでいるところです」  ――本県の森林資源や森林産業の現状についてうかがいます。  「本県の森林面積は97万3000㌶で県土面積の約71%を占めています。うち人工林面積は33万4000㌶で、人工林率は34・3%となっています。太平洋戦争後、スギを主体に造林された森林資源は年々充実してきており、まさに利用期を迎えていると言っても過言ではありません。丸太の伐採を担う素材生産事業者と製材・加工事業者等の連携強化による利用促進の取り組みにより、丸太生産量は全国8位で、全国有数の林業県に位置づけられており、生産される製材品の約80%が関東圏を中心に出荷されています」  ――福島県産木材を住宅の新築・増改築に使用することで、さまざまな商品と交換可能なポイントが贈られる「ふくしまの未来を育む森と住まいのポイント事業」の概要と利用状況についてうかがいます。  「県産木材を積極的に使用した木造住宅を新築・増改築・購入した建築主に対して、本県産の農林水産物や商品券等と交換可能なポイントを交付する事業です。本県の豊かな森林環境を保全し、循環型社会の形成を図る狙いがあります。使用している構造用部材の木材使用量によって20万~50万のポイント数が決定され、さらに本県産木材のうち一定量の森林認証材を使用すると10万ポイントが加算されます。今年度の事業の詳細や募集期間(※予算がなくなり次第終了)に関しては当連合会のホームページを参考にしていただければ幸いです」  ――今年度の重点事業について。  「『伐って、使って、植えて、育てる』をスローガンに据え、森林資源の循環利用に向けた事業を一層推進していきます。また、『都市(まち)の木造化推進法』に基づき、商業施設や事業所等の非住宅分野における木材利用の促進をはじめ、大径材を活用した中高層建築物における木造化・木質化の促進に努めます」  ――今後の抱負を。  「木材業はかつて斜陽産業とみられていましたが、加工・管理技術の向上も相まって国内における国産木材のシェアは年々高まっています。環境保護に寄与するなど将来性のある産業なので、今後も業界の発展に一層尽力してまいります」

  • 【福島河川国道事務所】丸山和基所長インタビュー(2024.2)

    【福島河川国道事務所】丸山和基所長インタビュー(2024.2)

    まるやま・かずき 1981年生まれ。北海道大学工学部卒、同大学院工学研究科修了。国土交通省水管理・国土保全局水資源部水資源計画課総合水資源管理戦略室課長補佐などを経て、2022年5月から現職。  ――現在、工事が進められている福島西道路の整備状況について。  「福島西道路(Ⅱ期)は、福島市を南北に縦貫する国道4号の交通混雑や伏拝地区の急勾配区間における冬期のスタック車両による交通への影響などの課題解決に向けた延長約6・3㌔のバイパスです。現在、延長約1・8㌔の(仮)浅川トンネルの掘削工事、(仮)大森川橋の上部工架設工事、(仮)西ノ内こ道橋の下部工工事、松川地区の土工・構造物などの改良工事を進めているところです」  ――「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」の進捗状況と、遊水地の農業利活用について。  「令和元年東日本台風では、阿武隈川流域において既往最大の洪水により、堤防が決壊するなど各地で甚大な被害が発生したことから、ハード・ソフト両面の治水対策について10年間のプロジェクト『令和の大改修』を実施しています。河道掘削は今年度末で全体計画220万立方㍍のうち約170万立方㍍(約8割)の掘削を目指して工事を進めており、遊水地整備では用地協議や代替地整備、橋梁の架替等を実施しているところです。  また、遊水地の利活用については、有識者らによる利活用検討会の発足に向け調整を進めているところであり、農用地としての利用など地域の皆さまの意見も踏まえながら、持続可能で現実的な土地利用の実現に向け検討を進めてまいります」  ――国道399号伊達橋の今後の見通しについて  「伊達橋は、復旧に高い技術力を要することから国の権限代行で実施しているところですが、復旧工事には相当の期間を要することから、地域の交通確保のため橋長301㍍の仮橋を設置することとし、昨年10月29日に開通したところです。仮橋の設置については、関東地方整備局、北海道開発局が保有する応急組立橋を活用することにより早期開通に努めています。現在、既設上部工の撤去工事を実施中で、順次、下部工や上部工に着手する予定です」  ――その他重点事業について  「1つは『流域治水2・0』です。近年の気候変動を踏まえると、2040年頃には降雨量が約1・1倍、流量が約1・2倍となることから、流域治水の取り組みを加速化・深化させる『流域治水プロジェクト2・0』に取り組みます。併せて、地域の皆さまが、災害リスクを『自分ごと』として捉え、主体的に行動していただくとともに、みんなのためにとの考えで流域にも視野を広げていただけるように、流域治水の広報、リスク情報の提供、教育活動等にも取り組んでまいります。  もう1つは『福島北道路』です。福島市北部の国道4号における渋滞や事故などの課題解決を目的として、福島北道路の事業化に向けた調査を進めています。今年度は地域の皆さま方に、当該調査区間における課題等についてご意見を伺う予定としています。  これら社会資本の整備により『安全・安心で活力と魅力ある地域づくり』に貢献してまいりたいと考えておりますので、皆さま方のご理解とご協力を引き続きお願いいたします」  

  • 【福島県石油商業組合】中村謙信理事長インタビュー

    【福島県石油商業組合】中村謙信理事長インタビュー

     なかむら・けんしん 1960年生まれ。明治大卒。会津日石販売㈱代表取締役。2020年6月から福島県石油商業組合理事長を務める。  ――組合の主な取り組みについて。  「業務は多岐に渡りますが、一番の目的は県内の石油の安定供給です。中でも、災害時にはどのルートから的確に供給できるかが大きな課題となってきます。過去の震災において、建物の倒壊があった中、SS(ガソリンスタンド)は構造上、設備の損傷は少なかったものの、従業員も被災しており、なかなか人が集まらず営業がままならないケースや、一般の方や緊急車両を含め多くの方々が給油されたことにより、在庫の燃料が尽きて供給できない事態に見舞われるケースがありました。SSは大元の供給があって初めてお客様に燃料を供給できるので、そうした緊急事態の際、組合は各方面から情報を集め、行政との橋渡しの役割も担うので、平時だけでなく、災害時の安定供給を担うのが当組合の大きな役割であると考えています」  ――物流業界の「2024年問題」が課題となっていますが、石油業界への影響は。  「石油を運搬するタンクローリーのドライバーの労働環境は決して良好とは言えません。タンク容量が限られている中で効率良く運ぶためには、タンクに8割~満タンを入れることが不可欠ですが、近年は効率追求のため計画配送が主流で、各SSで少量のロットで配送してほしくても元売りから受け付けてもらえない実情があります。とはいえ、少量ロットでの配送は仕入れ単価が高くなる問題もあります。加えてトラックドライバーの時間外労働の上限規制、燃料自体の単価高騰など様々な問題が混在し、かなり複雑な様相を呈していると言えます」  ――水素ステーションの設置が進んでいます。  「水素ステーション設置のコストの高さに対して水素自動車の需要は伸びておらず、商売としてはまだ成り立っていないのが現状です。今後、水素自動車が普及していけば水素ステーションの増加は期待できますが、いまのところ見通しは立っていません」  ――今後の重点事業について。  「全国石油商業組合連合会ならびに当組合では、『満タン&灯油プラス1缶運動』を展開しています。これは車の燃料を満タンにし、灯油も1缶多めに備えておくことで、災害時のトラブル回避を呼び掛けるものです。先日の能登半島地震を見ると電気が寸断されて暖が取れない状況が起きていますが、石油は独立性、可搬性に優れたエネルギーですので少量であれば自家用車でも運搬ができ、車内暖房も利用できるので、災害時における利点は大いにあると見ています。  また、近年は合成燃料の開発も進んでおり、二酸化炭素の排出抑制に加え、既存のSS設備をそのまま利用できるので、導入コストを抑えることができます。  そうした中で、石油も含めたエネルギーが選択可能な社会になっていけばと考えています」

  • 【相馬商工会議所】草野清貴会頭インタビュー(2024.2)

    【相馬商工会議所】草野清貴会頭インタビュー(2024.2)

     くさの・きよたか 1946年生まれ。東京電機大学卒。草野建設代表取締役会長。2013年から相馬商工会議所常議員を務め、16年11月から会頭。現在3期目。  新型コロナウイルスは徐々に収まってきたが、円安、物価高、人手不足の影響は深刻さを増している。インバウンドで賑わう首都圏や有名観光地とは異なり、地方経済の回復はまだまだ遠い。加えて相馬市は、二度の福島県沖地震による被害からも完全に立ち直っていない。地元経済界の現状と今後を相馬商工会議所の草野清貴会頭に聞いた。 災い転じて福となるよう新たなことに挑戦していきたい。  ――新型コロナウイルスが昨年5月に5類に移行しました。  「昨年から祭りやイベントなどを従来通り実施していますが、コロナ前と比べても大盛況でした。スポーツ合宿で市内を訪れる人の数も戻っています。  コロナの影響を大きく受けた飲食店や宿泊業などは回復傾向にあります。飲食店は店ごとに差はありますが、コロナ前の7~8割まで回復しています。ただ、昨今の物価高を価格転嫁できておらず、それが雇用に支障を及ぼしており、経営は未だ不安定です。宿泊業は、人流は回復しているものの地震被害の復旧が完了済みの所とこれから建て替えを行う所があり、格差が見られます。地域全体では回復に至っておらず、イベントが行われても市内に宿泊できる場所が少ないのが現状です」  ――2021、22年に発生した福島県沖地震の影響は。  「地震で半壊以上となった市内の建物は2621件、うち公費解体は1176件に上ります。会員事業所も多くが被災しましたが、国・県に要望してグループ補助金が適用され再開に至った所もあります。しかし比較的大規模な宿泊施設はこれから着工となる所もあり、全体的に回復したとは言えません。  地震被害からの回復を目的に県内一斉に行われた宿泊県民割では、管内の宿泊施設の復旧が遅れたため、県に要望し『県民割相馬版』を実施しました。ほかにも15%割増プレミアム商品券や飲食マップ作成、ほろ酔いスタンプラリーや推奨物産品発掘事業『相馬逸品』など、地域経済回復のための事業に取り組んできました。  今後も行政、観光協会、漁協、農協など各種団体と連携し、地域経済浮揚に向け努力していきたい。また事業所に寄り添い、それぞれが抱える課題には伴走型支援を行うなど経営改善普及事業を積極的に進めていきたいと思います」  ――円高・物価高が大きな問題となっています。人手不足や後継者不在も深刻です。  「8割を超える事業所が異口同音に『物価高に対する価格転嫁ができず利益を見いだせない』『賃上げの意思はあるが余力がない』と述べています。中には『高齢化で廃業を検討せざるを得ない』などの声もあります。建設業や運送業からも『人手不足と資材・燃料高騰で業績が低迷している』との声が聞かれる中、4月からは運送業で年間残業時間上限960時間の規制が始まるため、業界の縮小も懸念されます。ただ一方では、価格転嫁をできている事業所もあり『新たなサービスや付加価値を付けて対応している』という意見も少なからずあるので、全体に波及させていきたいと思います。  後継者問題は、特に小規模事業所では深刻に捉えており、事業継続を断念するケースが多い。会議所としては、そういった事業所に積極的に相談するよう呼びかけながら、経営アドバイザー的な役割を果たしていきたいと思います」  ――国・県に望むことは。  「原油、原材料、資材価格の急激な高騰に対応するため、経営環境が逼迫している中小企業・小規模事業所の実態に沿った事業コストの負担軽減支援策を求めたい。また、エネルギー価格高騰の影響を受ける中小企業・小規模事業所に対する総合的な支援および原油価格高騰の影響を抑えるための総合的な対策を迅速かつ的確に実施していただきたい。  また公共事業を受注する際、受注から納品までの期限が長い事業については、当初の見積もり額から値上がりすることが想定されるため再見積もりを認めるなど、受注側に配慮した負担軽減支援策を実施するようお願いしたい」  ――昨年、福島第一原発で処理水海洋放出が行われました。  「幸い、管内で大きな影響は出ていません。日本商工会議所の小林健会頭が全国に呼びかけた『常磐ものの活用促進』により各地から多くのアプローチがあります。当会議所でも水産加工事業者と連携し情報発信を行っており、今後も地元水産物のPRに努めていきます」 人気を集める「福とら」  ――相馬沖で捕れる天然トラフグ「福とら」が人気を集めています。  「『「福とら」泊まって、食べてキャンぺーン』を展開中ですが、お陰様で大変好調です。『福とら』を取り扱う店舗も11に増えていますが、さらなる拡充に努めていきたい。また『福とら』との相乗効果でカレイやヒラメの人気も高まっており、直売所・浜の駅松川浦には週末になると多くの観光客が訪れています。 一方、課題としては他県に比べて水産加工品が少ないので、以前からアオサの加工品などの開発に取り組んでいます。アオサは健康食品として注目されており、現在四つの加工品が発売されています。今後もさらなる加工品開発に取り組んでいきたいと思います」  ――今年度取り組んでいる事業について。  「この間、相馬駅東改札口設置をJR東日本に要望してきましたが、常磐線を管理する水戸支社からは前向きな回答をいただいています。東側には法務局があり、以前から開発のための土地もあって、ようやく東口開発が進むと思います。  東北中央自動車道の開通により中通り方面とのアクセスは格段に向上しましたが、県立医大附属病院への救急搬送には伊達桑折ICで下りなければならず、さらなるアクセス向上が求められます。そこで、国道115号の改良を県に要望していますが、当会議所だけでなく原町、福島、会津若松、会津喜多方の各商工会議所や各種商工団体も加わったことで県にも前向きに検討していただいているので、引き続き改良実現を目指していきます。  また、相馬野馬追の開催時期が今年から5月に変更されます。周知活動はもちろんのこと、これまで以上の誘客につなげられるよう取り組んでいきたい」  ――最後に、今後の抱負をお聞かせください。  「観光をさらなる産業の柱とすべく『福とら』を生かした『新たな食文化の創造』『豊かな海と城下町の歴史を生かした交流事業』『音楽によるマチ起こし事業』など、これまでの基幹事業に文化事業を幅広く加え、新たなアイデアを駆使しながら交流人口拡大に取り組んでいきたい。近年多くの災いに襲われていますが、転じて福となるよう新たなことに挑戦していきたいです」

  • 【棚倉町】湯座一平町長インタビュー(2024.2)

    【棚倉町】湯座一平町長インタビュー(2024.2)

     1961年生まれ。福島大経済学部卒。2012年9月の棚倉町長選で初当選。2020年8月の町長選で無投票での3選を果たした。 健康づくり、教育、観光・農業振興を推進する。  ――昨年5月8日から新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類に引き下げとなりました。町内の状況はいかがでしょうか。  「5類感染症への移行後は、各種イベントやさまざまな活動が再開されるなど、ようやくコロナ禍前の日常生活に戻ってきたと実感しています。コロナ感染が落ち着きを見せる一方で、原油高、物価高騰による影響が地域経済に影を落としている現状です。本町ではこの間、町民の生活支援や経済対策の一環として、昨年8月と12月に『たなぐら応援クーポン券』を発行し、町内における消費喚起ならびに地域経済の活性化に努めました。  また、『一番お金がかかるのは高校生』との声を踏まえ、新たに『高校生等生活応援給付金』事業を展開し、1人当たり年6万円の給付を実施しながら支援に努めました」  ――2024年度の重点事業について。  「まずは健康づくりです。『健幸なまちづくり』をスローガンに老若男女が希望と生きがいを持ち、健康で活動的に暮らせるまちの実現に向け取り組みます。妊娠期から寄り添った伴走型支援に努め、子育て世帯の孤立・孤独化を防ぎ、子育てに寛容な育児リテラシーを醸成し、『産み育てやすい』『子育てが楽しい』と思えるまちづくりを目指します。また、健診受診率の向上をはじめ、『歩く』健康づくり事業を推進し、健康寿命の延伸を図ります。  次に教育です。引き続きキャリア教育を推進するとともに、タブレットを用いた学習教材の活用やICT環境の整備を行い、一人ひとりに合わせた学習を進めます。今年度は新たに、子どもの夢やチャレンジを支援する『こども未来応援事業』を実施していきます。  観光振興では、2025年度に棚倉城築城400年の節目を迎えるにあたり、プレイベントの実施をはじめ、さまざまな観光施策を展開し、交流人口の拡大を図ります。また、棚倉町歴史的風致維持向上計画に掲げる棚倉城跡周辺道路整備や棚倉城下道路整備、馬場都々古別神社門前環境整備を進め、観光資源の高質化に注力します。  農業振興では、推奨園芸作物推進事業として実施するイチゴ、トマト種子補助にキュウリを加え、農家の皆さまが安定的に経営できるよう県やJAなどと連携強化を図り経済的・技術的な支援を継続して実施します。また、農地利用地域計画を策定します」  ――新年の抱負を。  「本年は辰年です。龍が天に昇るような勢いのある1年となるよう、町民の皆さまとともに『チームたなぐら』をさらに上昇気流に乗せたいと考えますので、皆さまのお力添えを賜りますようお願いいたします」

  • 【小野町】村上昭正町長インタビュー(2024.2)

    【小野町】村上昭正町長インタビュー(2024.2)

     1955年生まれ。日大東北工業(現・日大東北)高卒。2004年から小野町議を4期務め、その間、議長を歴任。2021年3月の町長選で初当選。 健康で安心して生活できる町を目指す。  ――間もなく県道36号小野―富岡間が全線開通します。  「全線開通により双葉郡へのアクセスの利便性が増し、小野ICは双葉郡と県中、県南を結ぶ交通の要衝となることから、その優位性を生かしたまちづくりに取り組みます。人、物、情報を還流させ、関係人口や交流人口を増やすため、小野IC周辺近くの国道349号沿いに新庁舎の建設を計画しています。また、防災拠点やターミナル的な物流関係施設、さらには大規模店舗などの誘致活動を進めていこうと考えています。さらに、小野高校が数年後には統合されますので、現在、空き校舎や施設の有効活用などの検討を進めていますが、ICからの導線も考える必要があり、街中の活性化も含めた『(仮称)インターチェンジ未来タウン構想』を策定しているところです」  ――いまお話にあった新庁舎整備について。  「令和9年の開庁に向けて計画を進めており、今年度内に用地交渉を終え、来年度に基本設計に取り掛かる予定です。新庁舎は、防災機能や保健センター機能を併せ持つ複合施設となります。災害時には、防災機能を集約した防災管理室で災害対応にあたるほか、町民の皆さんの避難所となるような設備の充実も図ります。さらに、新庁舎周辺に消防署小野分署や防災公園を設置することで、防災機能の強化を図りたいと考えています」  ――児童館の建設を進めています。  「少子化が進む中、未来を担う子どもたちの健全な育成は、重要な政策課題と捉えています。そのため、廃園となった保育園・幼稚園の跡地に、子どもの活動場所として児童クラブや放課後子ども教室、一時預かり保育などの機能を備えた『(仮称)おのまち児童館』の建設を進めており、令和7年度の開所を目指しています。子どもの安全な遊び場の整備に加え、子ども食堂なども開設することとしており、保護者の皆様からは大きな期待が寄せられています」  ――今後の抱負。  「町の現状をしっかり捉え、持続可能なまちづくりを町民の皆様と進めていきます。また、後継者不足などから農業離れが顕著になっており、農林業改革は待ったなしです。耕作放棄地の活用策について、大学機関やJAなどの協力を得て検討していくほか、新規就農者や研修制度の充実を図り、農家民泊や農家レストランなどの副業についての研究にも取り組みます。そのほか、起業家育成の支援体制整備、外国人との多文化共生の推進、発酵のまちづくりなどにも取り組みます。現在住んでいる方々が、健康で安心して生活できる町を目指し、あらゆる政策を講じていきます」

  • 【鏡石町】木賊正男町長インタビュー(2024.2)

    【鏡石町】木賊正男町長インタビュー(2024.2)

     1956年11月生まれ。須賀川高卒。鏡石町総務課長、教育課長兼公民館長、税務町民課長などを歴任。2022年5月の町長選で無投票初当選。 人口減少対策の受け皿をつくっていきたい。  ――昨年5月から新型コロナウイルスが5類感染症に移行されました。  「5類移行に伴い、町内の商工業者の経済活動にも明るい兆しが見え、制限されていた各種イベントもコロナ禍以前と同じ形で開催することができたので、賑わいが戻ってきたと実感しています」  ――昨年10月には健康福祉センター「ほがらかん」がオープンしました。  「町内の保健福祉施設が老朽化していたことに加え、類似施設の集約や、多目的に使用できる施設にすることを目的に整備を進めてきました。コンセプトの1つに『健康な笑顔が集う場所』があり、安心・安全なまちづくりに向けた福祉避難所としての機能も併せ持った施設となっています。オープンから3カ月でおよそ6000人の方々にご利用いただいています。館内には未就学児を対象とした子育て支援施設もあるため、子育て世代の多くの方々にご利用いただいています。  今後は各種イベント等での利用に加え、先日発生した能登半島地震のような非常時への備えとして、屋外街路灯の下に電源コンセントを設置してあるので、車で避難された方の電源確保やマンホールトイレ、シャワー室の設置など、災害時における一時避難所としての役割が見込まれます。近年は自然災害が多発しており、令和元年東日本台風の際、本町では成田地区の浸水被害があり、そうした経験も踏まえて利活用していく考えです」  ――今後の抱負。  「今年は駅東土地区画整理事業に注力したいと思っており、昨年第3工区の町の保留地の分譲が完了しました。個人所有の土地についても交渉を進めており、少しでも多くの方々に家を建てて住んでいただきたいと考えています。人口問題研究所が発表した2050年の推計によれば、鏡石町は現在の人口から約3000人減の9333人との結果でした。他自治体に比べて本町は人口減少率が低く、年少人口の比率が高いほか、高齢化率も低いので、今後を見据えて人口減少対策の受け皿をつくっていきたいと考えています。  遊水地整備事業についても、用地買収や宅地・建物の補償交渉が具体化しており、その中でも集団移転を希望する方と個人で移転する方がいますから、各々の希望に沿う形で地権者の皆様に寄り添って取り組んでいきます。  就任以来3つのS(スマイル・スピード・シンプル)を基本に町政執行に当たってきましたが、それには町の持っている情報を速やかに発信し、町民の皆様からの信頼を得ることが不可欠です。今後も町民の皆様の信頼を裏切ることなく取り組んでいきます」

  • 【星北斗】参議院議員インタビュー(2024.2)

    【星北斗】参議院議員インタビュー(2024.2)

     ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高校、東邦大学医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長。2022年の参院選で初当選。  派閥の政治資金パーティー問題で大揺れの自民党。国民の視線が厳しさを増す中、岸田文雄総裁を先頭にどこまで改革が進むのか注目されるが、そうした状況を本県選挙区選出で無派閥の星北斗参院議員(59)=1期=はどう見ているのか。政治不信を解消する方策と合わせ、自身が今後とるべき行動を率直に語っていただいた。  ――初当選から約1年半が経過しましたが、この間を振り返って。  「昨年の通常国会では何度も質問に立たせていただきました。いくつか印象に残っているのは、感染症関連の法案審議で、私が経験したコロナ対応などをベースに質問を行い、それが制度に反映されたことと、福島復興再生特措法関連の審議で、特定帰還居住区域に帰ってきた被災者が農業を生業としている場合、農地だけでなく水路、取り付け道路、周辺山林の一部も農業に必要であれば除染の対象になるという明確な答弁をいただけたことです。これらの質問は医療従事者や被災者など現場から寄せられた声がヒントになりました。県議や県幹部の皆さんに相談したり、情報をいただけたりしたことで中身の濃い質問にすることもできました。一回生ではありますが、県民のお役に立つ仕事ができて嬉しく思っています。  一方、昨年の臨時国会では厚生労働委員会理事として、野党の先生方との交渉の一端を担わせていただきました。人脈が広がった点では非常に良い経験でしたが、半面、ほとんど質問できなかったので、1月26日から始まる通常国会ではあらためて質問に立ちたいと考えています」  ――派閥の政治資金パーティー問題に国民は憤っています。無派閥の星議員はどう見ていますか。  「私は派閥のプラス面とマイナス面を見極めたいと考え、入会のお誘いはいただいたもののこの間、無派閥の立場をとってきました。そうした中で今回の問題が起こり、現在は無派閥の先輩議員や一回生議員らと『無派閥や一回生だからこそできること・やるべきことがあるのではないか』と議論を重ねています。  派閥と聞いて真っ先に思い浮かぶのはパーティーですが、大臣や副大臣など人事の推薦が行われたり、内規で定めている定年制が有名無実化されているといった報道も見聞きします。そうした中で、私のような一回生が口を挟んで大丈夫なのかと心配する声もあれば、黙って見過ごすのか、無派閥だからこそはっきり物を言うべきではないかという声もいただいています。私は県民に選んでいただき、県民の負託にこたえるため参院議員になりました。であるならば、言うべきことは言わなければならないという立場から、今の自分に何ができるのか先輩議員らと具体的な行動に移すための準備を進めているところです。  私は社会人として三十数年過ごし、その間にはグループに属したり、今現在グループを率いる立場にもいます。とかく政治の世界は特別と言われますが、だからこそ国民が政治から離れていっている面は否めないと思います。私は政治家の保守本流ではありませんが、長く社会人として過ごしてきた自分をベースに、投票してくださる皆さんの立場に立った行動をとっていきたい」  ――何に手を付け、それによってどう変わったかがはっきり見えないと国民は納得しないと思います。  「岸田総裁はパーティーや人事推薦制度をやめる方針を示していますが、派閥そのものをなくすべきという意見もあります。一方で政策集団としての派閥は必要という声もあります。私は参議院なので普段、衆議院の先生方と会うことがなく、厚生労働委員会以外の先生方と接する機会も少ない。そういう意味では、派閥は人の輪を広げるのに有効だし、政治家としての心構えなど先輩議員から教えていただけることも多々あるので、まずはお金の問題を決着させ、人事推薦制度を改めるなどしてから今後の派閥のあり方を考えるべきだと思います。個人的には派閥=悪という考えは持っていません」  ――自民党の支持率が下がるのは当然ですが、野党の支持率も上がっていません。国民の政治そのものに対する不信を政治家は深刻に受け止めるべきだと思います。  「正直〝場外乱闘〟が多すぎると思います。Xやユーチューブで『説明不足だ』『無知だ』といった発信をよく見かけますが、非常に子どもっぽく感じるし、多くの国民は呆れているのではないでしょうか。  政治家が議論を闘わせる場は国会であり〝場外乱闘〟は慎むべきです。議論の中身も週刊誌報道をあげつらうのではなく、この法律・予算をどうしていくのか国民生活に資することを論じるべきです。さらにテレビ中継が入る予算委員会も国民受けを狙ったパフォーマンスではなく、その名の通り予算をめぐる真摯な議論に努めるべきです。ただ誤解されては困りますが、皆さんが見る機会の少ない各種委員会では専門性の高い議論が行われていることを付言したいと思います。  もう一つ大切なのは、質問や議論の中身を国民に知っていただく努力を国会議員自らがすることです。例えば、ネットで私の名前を検索すれば質問している場面が動画で全て出てきます。過去の議事録も検索できます。それを全ての国民に見ていただくことは不可能だが、国会議員がぜひご覧くださいと積極的に発信すれば、興味のある国民は見ると思うのです。私も、そうやって見ていただいた医療従事者から『いい質問をしてくれてありがとう』『動画を見るまでどんな活動をしているか分からなかった』と言っていただき、一定の手ごたえを感じています。マスコミに報じていただく場合もありますが、切り取られた報じ方をされると無用な誤解を招くことがありますからね。  国政報告も、大勢集めて派手なパーティーを開くのではなく、十数人のミニ集会を各地で行えば、私の考えを理解していただけると同時に、皆さんの思いに直接触れることができます。お互いの絆も深まります。政治を身近に感じていただかないことには信頼回復にはつながらないと思います」  ――新型コロナが収束してきた中で、今後はコロナで得られた知見を新たな感染症対策に生かす取り組みが求められます。  「例えば今回の能登半島地震でも避難所に感染症チームが派遣され、コロナの知見を生かした取り組みが展開されています。医療機関も次に何かが起きた時、自身の役割を都道府県と事前に協議することが法律に明記されました。  さらに感染症の専門家が不足した経験から、県独自に必要な予算を確保し、昨年9月から感染症に特化した看護師の育成事業が県主導のもと民間病院で始まっています。福島方式とも呼べるこの取り組みは、全国から注目を集めています」  ――最後に県民にメッセージを。  「私のモットーは、特定の誰かのためではなく、私を国政に送り出してくださった県民の皆さんを思いながら議員活動するということです。そうした姿を知っていただくためにも、これから多くの皆さんと対話をさせていただきたいと思います」

  • 【亀岡偉民】衆議院議員インタビュー(2024.2)

    【亀岡偉民】衆議院議員インタビュー(2024.2)

     かめおか・よしたみ 1955年生まれ。作新学院高、早稲田大卒。現在5期目。この間復興副大臣などを歴任し、現在、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会委員長を務める。  自由民主党福島県連は昨年11月に総務会を開き、新会長に亀岡偉民衆院議員(68、5期、比例東北)を選出した。内閣支持率の低迷が続き、派閥の政治資金パーティーの裏金疑惑も浮上する中で、どのように信頼回復を果たしていく考えなのか。亀岡衆院議員に今後の抱負について語っていただいた。(取材日・1月6日)  ――自民党県連の新会長に就任した経緯と新会長就任の抱負について。  「昨年10月に県議選を終えたのを機に、県連内で体制を新しくしようとの声が上がりました。そうした中で、前会長の根本匠先生(衆院議員、9期、福島2区選出)から『よろしく頼む』と言われて、お受けしました。県議選の時点で有権者から『増税』と言われるなど、政権与党へのイメージが悪かったのは事実であり、自民党がこれから変わるというイメージを持たせる必要がありました。  抱負は、これからいかに自民党の信頼を取り戻すか、ということに尽きます。『自民党だから応援する』ではなく、『こんな取り組みをしている自民党だから応援したい』と言ってもらえる党にすることが大事です。私たちは『原点に立ち返ろう』と呼びかけ合い、『地方から信頼を得られる自民党にしていくために、いま地元で何をすべきか一緒に考えていきましょう』と党内、県連内で話し合っています。  昨今の政策は大都市中心、大企業中心に偏りがちな面がありますが、地方は中小企業、個人事業主の方が多い。地方から景気を回復させるためには、この方たちを助ける必要があります。与党としてスタートアップ事業などに予算を付けているので、これら事業を活用していただき、実績を積み上げることで、信頼回復につなげていきたいと考えています」  ――衆院選小選挙区の区割りが改定されました。亀岡議員が地盤とする福島1区は福島市、二本松市、伊達市、本宮市、伊達郡、安達郡という構成になります。新たに地盤に加わった地域の課題解決に向けて、どう貢献していく考えですか。  「本宮市は令和元年東日本台風で被害を受けましたが、早急に復旧して中心市街地の開発に取り組んでいます。来春には全国初となる24時間営業の水素ステーションが開設される予定で、最先端を走っています。商工団体と行政が連携を密にし、官民一体で課題解決に取り組んでいる印象があります。同市の高松義行市長と、隣接する大玉村の押山利一村長からは『人口増を目指す』という積極的な目標を聞いて感嘆しました。市町村の取り組みを国がバックアップしたらもっと効果を出せるのではないか、と希望が湧きました。  新たにご縁が生まれた地域ですが、父・亀岡高夫(元建設大臣、農林水産大臣)を知っている方も多く、とても温かい環境に置いていただいたと思っています。  ただ、選挙の区割りに関しては有権者の戸惑いを感じます。政治家はその選挙区の代表として国会に行っているのだから、機械的に区割りを決めるのではなく、まず当事者である政治家の意見を聞くべきだったと思います。1票の格差が2倍以上で違憲状態となるから是正しなければならないとのことですが、大都市と地方の不均衡状態を考えると、人口に基づく区割りには違和感を抱きます。『地方と大都市の1票の格差は違憲ではない』と明記するよう、憲法改正を働きかけるのが地方選出国会議員としての責務と考えています」  ――今後の新型コロナウイルスへの対応と、アフターコロナを見据えた戦略についてうかがいます。  「コロナ禍で商売が立ち行かなくなる人が多く出ました。与党自民党では新たな分野へのチャレンジやスタートアップを支援する事業に予算を付けてきたので、今こそ活用してほしい。国が商売の継続を支援し、地方から新たに起業する流れが活発になってほしいですね。  借金返済を迫られると、再起しようとする気持ちを失ってしまうのは事実です。そのため金利の据え置きを再延長できる仕組みを検討して、返せる時に返してもらうやり方で、事業者の方には経営に専念していただき、地方の経済を立て直していくことが大事だと思います」  ――東京電力福島第一原発で増え続ける放射性トリチウムなどを含んだ水(処理水)の海洋放出が始まりました。放出後の本県の風評問題についてどう捉えていますか。  「結果的に、福島県沖の水産物の値段は下がりませんでした。日本中の方に買い支えていただいたおかげです。一方で、県内では風評の影響でインバウンド客が1人も来なくなった地区があり、観光業には大きな打撃となりました。単なる風評被害ではなく『政治的風評被害』と呼ぶべき状況になっています。  やめさせるには風評の元となっている処理水のタンクをどうにかしなければなりません。もし、福島県民がこぞって『タンクを全部なくさない限り風評はなくならない』と考え、双葉町や大熊町のために処理水放出を受け入れていたら、国内で反対の声が上がることはなかっただろうし、諸外国が反対できる状況にもならなかったのではないでしょうか。県内で反対の声が上がったから、日本を批判するための外交に使われた感があります。反対ではなく、どのようにして、タンクが置かれている双葉町、大熊町を守り、復興につなげていけるかが重要だと思います。反対のための反対は止めるべきだし、前に進むためにも、県民の理解を得られるように努力を続けていくしかありません」  ――自民党安倍派・二階派における政治資金パーティーをめぐる裏金問題の影響で、岸田内閣の支持率が低下しています。  「県連会長として、県内の自民党国会議員に聞き取りしましたが、裏金作りは誰も行っていません。パーティー券販売分の一部を受け取る仕組みが慣例としてあり、『収支報告書に書かないでくれ』と言われていたのでどう記載するか会計担当者が苦慮していた実態はありましたが、裏金にした人は1人もいません。  裏金が何を指すのか明確でないままに『裏金問題』と報道されたダメージはものすごく大きいです。『裏金』と言われたものは慣例に起因し、記載が曖昧だったためではないでしょうか。政治資金規正法ができたときに、古くからの慣例を切り替えられなかったかことが問題につながっていると捉えています。  これから検察がどのような捜査をするかは分かりませんが、『裏金』と事実でないことを報道するとしたら大きな問題だと思います。ただ、政治家としては『駄目なものは駄目』としっかり正していきましょうという思いがあります。早く襟を正すことが大事だと考えています」  ――有権者へのメッセージを。  「異常な物価高の中、国民の皆さんに安心してもらえる環境をつくることが私の役目だと考えます。バラマキではなく、理解を得ながら『一緒に頑張りましょう』と並走できる体制で取り組まなければなりません。国民の皆様にはもう一度元気を持ってもらえる政策をつくりながら、政治も進めていくことを示していきたい。地方から経済再生につながる取り組みを進めていきます」

  • 【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー(2024.2)

    【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー(2024.2)

     はせがわ・こういち 1962年生まれ。法政大卒。堀江工業(いわき市)社長。2019年5月に県建設業協会会長に就き、現在3期目。  ――新年の抱負について、お聞かせください。  「令和6年能登半島地震により被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。被災地の1日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。  近年、自然災害の大規模化やインフラの老朽化が進む中、危機管理を担う地域建設業の役割は一層重要度を増しております。災害から県民の生命・財産を守っていくためには、我々が『地域の守り手』としての責務をしっかりと担えるよう、組織体制と経営基盤の一層の強化を図っていかなければなりません。  本年も県土の復興と建設産業の発展に全力を尽くしていきたいと考えています」  ――建設業においては、時間外労働の上限規制が適用され、労働環境の変革が求められる「2024年問題」が課題となっています。この問題にどのように取り組んでいくお考えですか。  「本年4月からは時間外労働時間の削減と週休2日制も含めた働き方改革を推進しなければなりません。本協会では研修会などを通じ、会員の働き方改革を支援してきましたが、課題も残っています。発注者には、施工時期の平準化、適正な予定価格の設定及び工期はもちろん、書類の簡素化や工事検査の効率化、建設DXの活用などを要望しながら、受発注者が連携して、あらゆる観点から労働時間の削減に向けた取り組みを推進していきたいと考えています」  ――2024年度の重点事業について。  「建設業界の働き方改革が問われる1年になるのではないかと考えています。  労働時間の削減に向けて課題となっていた問題点が現場での施工を通じて、あらためて浮き彫りになってくると考えています。会員の意見を集めながら課題解決に向けた取り組みを推進していきたいと考えています。  一方で、昨今の自然災害の発生を踏まえると、本年も想定外の災害が発生することが懸念されます。現在進められている防災・減災、国土強靭化関連事業を円滑に推進することで、災害に強い県土づくりに貢献するとともに、災害発生時には、県の『指定地方公共機関』としての役割が果たせるよう連絡体制の強化や、大規模災害時の広域的支援に備えた資材備蓄の充実など、災害に備えた組織強化に努めていきます。  また、担い手の確保・育成に向けては、新4Kの魅力を積極的に発信していきます。昨年は職業体験イベントを通じ、小中学生やその保護者に対して『建設業の面白さや楽しさ』を伝えることができました。今後も幅広い世代に対して、入職促進に向けた広報活動を展開していきたいと考えています。  人材の育成についても、土木初任者研修をはじめとした各種研修を開催するなど、会員企業の技術者の育成を継続的に支援していきます」

  • 【福島県商工会連合会】轡田倉治会長インタビュー(2024.2)

    【福島県商工会連合会】轡田倉治会長インタビュー(2024.2)

     くつわた・くらじ 1942年生まれ。岩瀬村商工会・岩瀬商工会の会長を6期務める。2012年5月から現職。現在4期目。2021年6月から全国商工会連合会副会長。 伴走型支援で経営安定化を後押し  ――コロナ禍が収束に向かう一方で、円安、原油高、物価高騰による地域経済の低迷が顕著となっています。会員事業所の現況についてうかがいます。  「新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが昨年5月8日以降、季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げとなって以降、人の動きも戻ってきたように実感しています。また、インバウンドの回復も相まって会津地域など観光地がある商工会地区などでは多くの来訪者で賑わっているようです。  しかし、本県の商工会地区の多くは農村・山間部にあるため、都市部に比べ少子高齢化による人口減少によって消費需要が低迷している現状にあります。  また、コロナ禍における『ゼロゼロ融資』の返済時期も重なり資金繰りに苦慮している事業者も出始めています。さらには原油高、物価高、特に『人手が足りない』という悩みの声が数多く聞かれ、事業継続にも支障をきたすなど、非常に心配しています。  これらを踏まえ、当連合会では、事業環境の変化に対応し、生産性向上に向けた経営改善の取り組みに尽力します。具体的には、人手による労力を設備や機械で補完し、デジタル化、人工知能(AI)等技術を活用することで経営効率の向上を図っていきます。今後は、国・県などにおける助成金の活用を含め、より一層の相談支援体制の強化に努めていく考えです」  ――2023年10月から、消費税の仕入れ税額控除の方式としてインボイス制度が導入されました。適格請求書発行事業者になると年間売り上げが1000万円以下であっても免税事業者にはならず消費税の申告義務が生じます。連合会としての対応と、会員事業所への影響についてうかがいます。  「小規模事業者、特に個人事業者の場合、事務処理量の増大に加え、新たな税負担が発生することから、事業者の中には廃業を考えるケースも見られ、看過できない状況にあります。2月、3月はインボイス制度導入後初となる確定申告を迎えますが、混乱が生じる可能性もあり注視しています。  当連合会の上部組織である全国商工会連合会として、同制度施行後の経過措置も含め、中小・小規模事業者に対し複数年度にわたり支援する万全の体制構築の実現に向け、組織一丸となって要望活動を展開しています。この間、商工会職員は、同制度の開始前から現在に至るまで懇切丁寧に説明を重ねてきましたが、確定申告を控える中、これからの申告業務などに対しても事業者に寄り添った支援に注力しなければならないと考えます」 ECサイトが好評  ――震災・原発事故からまもなく13年を迎えます。原発被災地における商工会の現況についてうかがいます。  「被災地域における各商工会の事業再開率は久之浜町(いわき市)100%、広野町97・1%、楢葉町92・4%(地元再開率75・8%)、富岡町92・9%(同54%)、大熊町77・8%(同25・3%)、双葉町73・9%(同25・4%)、浪江町77・3%(同36・3%)、小高(南相馬市)67・3%(同41・8%)、飯舘村73%(同41・7%)、川内村96・4%、葛尾村100%、都路町(田村市)97・2%、川俣町100%、鹿島(南相馬市)96%となっています。  特に、原発事故の被害が甚大だった大熊町、双葉町では、特定復興再生拠点区域内の避難指示が解除されましたが、医療機関の施設再開に年数を要すことから、帰還に躊躇してしまうことがあるようです。当連合会でも、引き続き被災自治体と連携を図りながら、住民と事業者の帰還はもちろん、避難先での事業継続と安定を支援していかなければならないと考えます」  ――2024年度の重点事業と活動方針についてうかがいます。  「アフターコロナを見据えた経営支援として、ECサイト『シオクリビト』による通販事業の充実・強化を図っていきます。今般『売りはモノではなくヒト』をコンセプトに、福島の面白い生産者100人の思いを掲載した『シオクリビト図鑑』を発行しました。同事業は大変好評なので、今後もさらに充実・発展させながら、消費喚起やビジネスチャンスにつなげていきたいと考えます。また、懸案である事業承継をはじめ、創業支援にも鋭意努めていきます」  ――今後の抱負を。  「当連合会は、徹底した伴走型支援を大きな柱に据えた支援を展開しています。職員が積極的に会員事業者に出向くスタイルを貫徹するなど、しっかり寄り添った支援体制を構築しながら中小・小規模事業者の経営安定化・事業継続を強力に後押ししています。おかげさまで『商工会の職員は非常に良くやってくれている』、『よく指導支援していただき助かっている』との声も寄せられています。今後もこの方針を堅持しながら会員事業所から信頼される商工会を目指していきます」

  • 【福島県中小企業家同友会】齋藤記子会長インタビュー(2024.2)

    【福島県中小企業家同友会】齋藤記子会長インタビュー(2024.2)

     さいとう・のりこ 1952年生まれ。(株)cluster取締役会長。福島県中小企業家同友会会津地区会長、同副理事長、同代表理事を経て、2023年4月から現職。 組織強化と会員との信頼構築に挑む  ――新会長に就任して1年が経過しました。  「北海道・東北ブロックでは女性初の会長職ということもあり、重責に押しつぶされそうなときもありました。ただ、藤田光夫前会長に推薦していただいたからには、『何らかの役に立ちたい』という思いでやってきました。時間が経つにつれて、私自身の役目も見えてきて、『決断』、『責任』、『調和』が大事だと思うようになりました。物事についての判断はそれぞれの支部長や代表理事にお任せしています。私はそういった情報を受けて、同友会としてどのような形で進むか、あるいは取りやめるかの『決断』をすることが役目だと思っています。また、同友会では、『深める、進む、新しい』の3つのシンカというスローガンを掲げていますが、理事会などの会合で1人の強い意見で物事が決まっていくのではなく、それぞれが忌憚のない意見を言える雰囲気づくりに努めて『調和』を重んじるのも私の役目です」  ――県内経済の状況について。  「飲食業界をはじめとする中小企業の経営環境の厳しさについて、いろんな方面から話を聞いています。都会には大企業があって、人が多く集まってくるので、景気がよくなれば従業員に還元という形で、給料を上げることができるでしょう。ただ、地方の中小企業ではそう簡単にはいきません。多くの経営者が、日々の仕事に対し給料アップという分かりやすい形でモチベーションを上げたいと思っています。しかし、そのための原資がなければやろうと思ってもできません。どんな商売も単価を上げれば客が減るかもしれず、人口減少でそもそものパイが少なくなっている。そういったところが地方の中小企業の悩みだと思います」  ――同友会や会員の企業で新しい取り組み、頑張っている企業などあれば教えてください。  「会員が経営している喜多方市の橋谷田商店と荒川産業が、県内で発生した古紙を再利用したトイレットペーパー『フクメグリ』を開発し、コープあいづのスーパー全8店舗で売り出しました。こういった先駆的な取り組みを会員同士がコラボレーションしてできていることは喜ばしいです。会津支部では『食と農と工芸委員会』を設けており、さまざまな業種によるコラボレーションが実現可能となっていますが、そうした点は同友会の魅力でもあります」 会員2500名を目指す  ――物価高や燃料高騰など、常に変化が求められる時代ですが、企業や経営者に求められる資質とは何だと思いますか。  「同友会は全国的に『決して悪徳商人にはならない』との声明を出しております。個人的に重んじているのは『職業倫理』です。皆で同じ仕事をするときに、どういう気持ちで向き合うのか。具体的には『値段が高いのに製品の質が悪い』、『サービス単価が高いのに対応が良くない』とならないようにすることを心がけています。  私が経営しているのは福祉事業と介護事業なので、守秘義務を守ることや誠実さが求められます。スタッフは利用者さんに目を向け、管理者がスタッフに目を向けていれば、虐待などさまざまな問題も起きにくいと思っています。もっと言えば、刑事の勘ではないですが、最初の動作や言動でその人の性質は分かるものです。『この人に任せてはまずいな』と思えばすぐに担当から外れていただくなどの対応をしています」  ――今年の抱負を。  「引き続き同友会の組織強化を図っていきます。『支部の下部組織の地区会の規模を100人以内にする』ことによって、会員一人ひとりの顔が見える組織になり、退会者が出にくくなるというデータに基づき、組織改編を行っていきたいと考えています。区切り方としては、距離なのか、地区ごとなのか、というのは各地域の地域性に合わせて進めていきます。どういった改革を行っていくのか、また事業費をどのように運用していくかを具現化していけるよう引き続き取り組んでいきます。  また全体としては、会員が現在1861名ですが、将来的に2500名を目指していきます。そのために私が重要だと考えているのは、同友会事務局の立ち位置です。単なる事務ではなく一緒に創り上げていく『パートナー』だということを浸透させていきたいです。会員を増やすことや、新入会員へのフォローなどは、事務局の協力が欠かせません。また、業務や運営にどういった課題があるかを吸い上げるために、事務局員に対して面談を進めています。いろんな角度からの意見を聞いて、事務局とのパートナーシップを強化し、同友会の運営を行っていきます。  自分の身の丈を知っているので、背伸びせず、周りの方々に協力してもらいながら取り組んでいければと思っています」

  • 【福島県交通安全協会】小櫻輝会長インタビュー【2024.3】

    経歴  こざくら・あきら 1941年生まれ。㈱桜交通、㈱さくら観光代表取締役。県交通安全協会副会長を経て、2015年6月から現職。  ――昨年、県内交通事故死者数の増加数・増加率が全国ワースト2位であることが報じられました。  「昨年、全国の交通事故死者数は2678人となり、2015年以来8年ぶりに前年を上回りました。県内でも昨年は交通事故発生件数、死者数、傷者数のいずれも増加しています。特に交通事故死者数は55人で、22年の47人を8人上回り、年間の死者数が前年を超えたのは17年以来6年ぶりとなりました。新型コロナウイルス感染症の5類引き下げに伴い、人の動きが活発化したことが影響していると思われます。  今年は年初から交通死亡事故が多発し、1月19日には『交通死亡事故多発全県警報』が発令されました。1月末現在、9人が交通事故の犠牲となり、うち高齢者は8人です。高齢者の交通事故防止対策をより一層強化していく必要があります」  ――協会では65歳以上の高齢運転者が運転免許証を返納する際に「運転卒業証書」を交付しています。  「地区交通安全協会と連携し、運転免許証を返納する高齢運転者の長きにわたる安全運転に敬意を表して、『運転卒業証書』交付事業を展開しています。22年12月から昨年末までに2994人の方に交付しました。運転免許証を返納しやすい環境づくりを進め、高齢化社会を地域全体で支える機運を盛り上げていきたいと考えます。運転免許証返納の相談は、免許センター、警察署などで受け付けています。電話相談は、安全運転相談ダイヤル『♯8080』(シャープ ハレバレ)にお願いいたします」  ――協会では以前から3人1チームで互いに無事故・無違反を目指す「セーフティチャレンジ事業」を行っていますが、現在の状況は。  「1996年に開始し、今年で29回目となります。昨年も多くの方々にご参加いただき、9年連続で2万チーム、6万人を超えました。昨年の無事故・無違反達成率は88・9%と高く、県内の交通事故防止に大きく寄与しています。今年も6月から参加の受付を開始します」  ――来年度の重点事業について。  「本県は第11次交通安全計画で、2025年までに年間交通事故死者数を50人以下にする目標を掲げています。当協会では昨年に続き『交通死亡事故の抑止』を掲げ、地区交通安全協会、関係機関・団体と協力しながら交通安全諸対策を推進していきます。特に高齢者の事故防止対策として、県警と連携して夜光反射材の普及促進やシートベルト着用などの促進活動『ピカッと・カチッと大作戦』に注力するほか、『ドライバー総参加のセーフティチャレンジ事業』による県民の安全運転・事故防止への意識高揚を図っていきます」  ――今後の抱負。  「交通事故根絶に向けた努力は、県民の皆さま方とともに継続させなければならない重要な課題です。今年も引き続き地区交通安全協会と一丸となり、悲惨な交通事故を1件でも少なくするため、活動を強化していきます。県民の皆さま方には交通ルールや交通マナーを守り、安全運転を重ねてお願い致します。なお、最後になりますが、皆さまからお預かりした会費が地域の交通安全活動の大きな支えになっておりますことをご理解の上、交通安全協会へのご入会を改めてお願いいたします」

  • 【矢吹町】蛭田泰昭町長インタビュー

    経歴 ひるた・やすあき 1958年生まれ。早稲田大政経学部卒。農林中央金庫本店審査部主任考査役(部長)、高松支店長(四国地区総括)、全国酪農業協同組合連合会常務理事、共栄火災海上保険常勤監査役などを歴任。昨年12月の町長選で再選を果たす。  ――昨年12月の町長選で再選を果たしました。  「前回の選挙戦の際には『現場主義』を基本に、町民の皆さんの日々の中に足を運んで、声をきちんと聞いていくことを訴えました。車座になっていろいろと話をしたことが非常に良かったのですが、2020年1月に初登庁したあと、4月に矢吹町で初めて新型コロナの感染者が出まして、そこから本当に新型コロナとの戦いが始まりました。毎日のように防災無線で注意点を呼び掛けることをはじめ、対策に取り組む中で、皆さんと車座になって話を聞くこともできませんでした。私にとってそれは残念であり、ストレスでもありました。  新型コロナや二度の福島県沖地震、台風19号など対応に追われた1期4年でしたが、今回、あらためて、町内を回って、夕暮れ時の明かりのついた家の前から手を振ってくれる町民の姿を見て、胸が熱くなりました。住宅団地の前を通りました時には、わざわざ降りてきていただいて『町長さん、よくやってくれたね。また頑張ってください』と言っていただきました。こんなに嬉しいことはないですね。選挙戦を通して、一定の信任を得ることができましたことと、新型コロナでなかなか接触できなかった方々と様々な接点を持つことができて、私としてはやはり『これがエネルギーになるな』と。いい経験ができたと思います」  ――デジタル技術を活用したまちづくりを進めています。  「以前から国の『デジタル田園都市国家構想』に基づき、『デジタル田園タウン』の推進を図ってきました。東京都狛江市や三菱商事、成城大学などと連携し、データ連携と蓄積、サービスの共有を図ることで導入・運営コストの削減とパフォーマンスの大幅アップを目指しています。  また、町では子どもたちの運動能力向上や高齢者の健康づくりを目的として国の『デジタル田園都市国家構想交付金』の採択を受け、スポーツを軸にした地域課題の解決に向けた『スポーツ×デジタル振興プロジェクト』に取り組んでいます。新型コロナの影響もあり、町民の全世代で、スポーツや健康づくりへの参加機会を増やしていくことが重要です。そのため、2026年度の本格始動を目指し、町民がそれぞれの形でスポーツや運動を楽しめる町になるよう、体の組成や体力測定・健康診断などの数値を分かりやすく示し、全町民を対象にスポーツ科学に基づく健康長寿と体力・運動能力向上に役立つプログラムを提供していきます。同時に、ジュニアアスリート支援活動を行い、将来のアスリート発掘にもつなげていきたいと思っています。 まずは自身の健康状態や体組成を把握します。測定データは、今後開設予定の住民向けサイトなどから確認できるようにします。個々の課題に応じて、トップアスリートを指導するトレーナーが考案した運動メニューが提供される仕組みにします。  一方で、子どもたちだけでなく、健康長寿・予防医療・生活習慣病予防などに向けたヘルスケアも行っていきたいと思っています。今後はジム機能を備えたクラブハウスや町民が気軽に運動できる『マルチフィールド』を新設したいと思っています。  このプロジェクトはスポーツ庁の『スポーツ・健康まちづくり優良自治体表彰2023』にも福島県で初めて選ばれました。町民ばかりではなく、周辺地域との関係人口や交流・流入人口が増えるよう取り組んでいきたいと思っています。  また、公共交通にもデジタル技術を活用していきたいと考えています。以前から高齢者福祉向上のために、70歳以上の町民を対象にした『行き活きタクシー』というタクシー事業を改善を重ねながら行ってきました。ただ、2024年問題などタクシー運転手不足が叫ばれる中で、希望する方に『いつでも、どこでも』というサービス提供が難しくなってきました。そこで、代替策としてコミュニティーバスの実証実験を行っており、今後はオンデマンドバス、自動運転バスに移行したいと思っています。今後はAIを活用して、町民ニーズに合わせた運行内容の見直しなど、中心市街地における新たな運行システムの構築を図っていきたいと考えています。地域公共交通の充実は高齢者だけでなく、子どもたちの安全な登下校や部活動での移動手段の確保などへの発展性も見据えていきたいと思います。  よく『誰1人取り残さない』社会を目指すと言われます。特に高齢化の一人暮らしが増える中にあって『誰1人取り残さない』ためにデジタルの力を借りることは新しい社会を目指す上で大変重要です。福島県沖地震が発生した際、民生委員や行政区長など地域を見守っていただいている方には、地震発生直後の深夜から訪問活動を行っていただき、非常にありがたかった半面、そういった方々に過重な負担を欠けてはいけないと思いました。スマホやタブレットを各住宅に配布するなど、デジタルの力を道具として、民生委員などの負担を大幅に軽減できるのではと考えています。当然、個別ケースで従来の対面は重要ですが。特に5G時代になった今は、より鮮明な画像で確認できます。プライバシーの問題もありますが、平時はスイッチオフ、緊急時に使用する等、解消策は用意できると思います。  学校教育にもデジタル化は重要です。町内の進出企業に、小学校4校・中学校1校の全クラスに電子黒板を寄付していただきました。最大限活用し、今後は先生方の負担軽減や新たな教育に大いに活用していきたいと思います」  ――いい部屋ネットの自治体ランキングで、県内1位になりました。  「私は1期目、雑誌等インタビューで『矢吹町を魅力ある町にして選んでいただけるようにしたいと思います。そのためには、就業できる企業や農業法人等が必要ですし、生活に必要な物が豊かに手に入る環境整備も求められます。加えて福祉関係が充実して暮らし易い環境を順次整備していけば、交通の要衝であり、自然環境でも恵まれている矢吹町を選択してもらえると思います』と話しました。そんな中、『いい部屋ネットランキング』の『住み心地ランキング2023年(福島県版)』では、県内59市町村中第1位にランクされています。これまでの取り組みが少しでも功を奏して、矢吹町の評価アップに貢献できたのではと感慨深いものがあり、移住を希望される方にとっても参考にしていただけるものと思っています。また、矢吹町の子どもたちに、誇りと自信、郷土愛をもたらしてくれるものだと期待しながら、矢吹中学校等で矢吹町についてお話を続けています」  ――今後の抱負。  「長きにわたったコロナ禍は生活様式の見直しばかりではなく、働き方の変化をもたらしました。自宅や移住先におけるテレワークが多くの企業で行われることで、経費が安い土地へのオフィス移転なども行われています。今だからこそ、地方が本当に輝き、存在感を発揮できる条件が揃い始めたと私は思います。  矢吹町の交通面では、高速道路、新幹線、空港へのアクセスを考えれば素晴らしい立地条件であると言えます。都市部に負けない利便性と情報、仕事等を自然豊かな地方に住みながら、デジタルを大いに生かすことができます。2期目の抱負として、デジタル技術を活用したまちづくりを目指していきたいと思っています。現在は、町民の活動を記録し、住民サービスに生かす『ライフログモデル』の実用化に取り組んでいます。『誰1人取り残さない』町づくりにはツールとしてのデジタル活用が必要です。肝心なところは人間対人間のフェースtoフェースが大切ですが。町スポーツ×デジタル振興プロジェクトも推進し、活性化に努めていきます。  今年は、遊水地整備事業、国道4号の4車線化など矢吹町の将来の姿に大きな影響を与える事業が本格的に動き出します。2期目においても粉骨砕身、矢吹町を前に進めるために一層の努力を続けてまいります。町民の皆様のご理解、ご協力よろしくお願い申し上げます」

  • 【下郷町】星學町長インタビュー【2024.3】

    経歴  ほし・まなぶ 1947年生まれ。日本大学東北工業高卒。下郷町建設課長、助役、副町長などを経て、2013年9月の町長選で初当選。2017年、2021年の町長選で再選を果たし、現在3期目。  ――昨年5月から新型コロナウイルスの感染法上の位置付けが「5類」になりました。  「町民の生活面については、新型コロナウイルスの感染拡大により、冠婚葬祭の規模縮小や近所間での往来を遠慮するなど、日常生活の変化がうかがえました。昨年5月から5類へ移行したことで、この間、変化した地域生活も回復してきたと感じています。感染症対策も緩和される中、これまで中止となっていた町内の各種行事や会議、県や国への要望活動など4年ぶりに再開されるものが多くあり、少しずつ以前の生活が戻ってきた感覚です。一方で、イベント等が開催される中でも、以前より規模を縮小しての開催だったり、久しぶりの開催により勝手が分からなくなるなど、従来通りにはいかない部分も少なからずあります。  観光面では、観光客の入り込みはほぼコロナ前に戻りつつあり、活気が戻っているのを実感しています。急激な観光客回復に合わせて、外国人観光客の増加も顕著で、昨年はピーク時の約1・5倍に当たるおよそ9万人の外国人が来訪され、過去最高の数字を記録しました。こうした現状もあって、インバウンド対策の重要性を痛感しているところです。  2024年度の事業については、これまで国の臨時交付金を活用していたものが、新年度以降は不透明であるため、観光振興策をはじめ多くの事業において勝負の一年になると考えています。  また、この4年間は商工業の後押しに注力してきましたし、物価高騰策による町民への支援やプレミアム商品券の発行などによって消費拡大に努めてきたので、今年も様々な取り組みを通して地域活性化につなげていきたいと考えています」 会津縦貫南道路に期待  ――第6次下郷町総合計画は4年が経過しました。  「今年は第6次総合計画の最終年度ですが、『豊かな心を育む』、『にぎわいと産業の創出』、『健やかな暮らし』、『住みよいまち』、『まちづくり人づくり』の基本目標を掲げ、多角的な事業を展開してきました。なかでも、『住みよいまち』の実現に向けた取り組みとして会津縦貫南道路の小沼崎バイパスの開通があり、事業の詳細は後述しますが、これにより交流人口の増加が期待でき、まちづくりの面でも大きく寄与するものと考えています。今後、会津縦貫南道路をはじめとした道路交通網が整備される中、町民の多様化するニーズに応えるべく、第6次総合計画の検証をしながら、第7次総合計画に盛り込んでいく考えです。また、町営住宅の改築事業も進めており、新規移住者の受け皿の確保に努めています。  『豊かな心を育む』取り組みとしては、子どもへの教育に注力しており、町の将来を担う人材の育成という意味でも大きな意義があります。教育の充実によって子育て世代の移住・定住を促進し、少子化対策の方策にもなると考えています。具体的には国の制度に上乗せした保育所の一部無償化や学校給食の無料化を実施しており、今後もより良い教育環境の整備に向けて取り組んでいきます。  『にぎわいと産業の創出』では、商工業の活性化や観光交流事業の推進という形で交流人口の拡大を目指しており、先述した小沼崎バイパスの開通というハード面だけでなく、ソフト面も併せることで相乗効果を狙っていく考えです」  ――先ほどお話のあった会津縦貫南道路の国道118号線小沼崎バイパスが3月3日に開通となります。  「主な効果としては、小沼崎バイパスを利用して鳳坂トンネルを通過することで、須賀川方面へ抜ける時間が以前より短縮できます。冬期間や大雨による通行止め等の心配もないので、通年で安心・安全に走行できる利点もありますし、医療機関への安全な搬送ルートの確保という点でも大きな効果が見込まれます。会津縦貫南道路では最初に開通する区間だけあって注目度も高く、地域住民の皆さまにとっても喜ばしいニュースではないかと見ています。利便性が向上することで観光誘客につながり、交流人口の増加はもちろん、雇用が生まれ、定住人口増加に結び付く可能性もあるので、私個人としても開通は非常に喜ばしい限りです。  会津縦貫南道路は、同じ地域高規格道路の会津縦貫北道路とともに、栃木西部・会津路を結ぶ交通の要です。この会津縦貫道路を縦軸とし、新潟県からいわき市へ延びる国道289号、また、先に開通した鳳坂トンネルを含む国道118号の整備が進めば、この2つの道路が横軸となり、本町は縦軸と横軸が交わる交通の要となり得るので、今後の本町にとって大きな可能性をもたらすという点でも、これを意識した施策が必要になると考えています。  現在は5工区となる下郷田島バイパスの整備に向けて準備しており、田島から栃木西部につながる道路として何らかの方向性を定めてほしいと県に要望しています。将来的に本町を含めた南会津管内に交流人口の増加や、救急医療体制においても大きな効果をもたらすと考えられるので、一日も早い開通を目指して取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「まずは第7次総合計画に向けて、第6次総合計画を具現化して進めることが何より重要であると考えています。先ほども述べた会津縦貫南道路が全線開通すると町内に3つのICが設置され、それに伴って観光地に入る道路、主に国道289号や町道・県道の整備も併せて実施する必要があり、バイパス整備だけでなく周辺道路を含めた道路網の整備は今後も注力していく考えです。  ほかにも、町営住宅の改修事業や教育振興など、町民の住みよさという点において様々な課題があるほか、本町の特色である観光業においても、観光資源の磨き上げが重要な課題であると考えています。それぞれが相互に作用し得るので、住環境整備と教育振興、観光振興を3つの柱に据えて取り組んでいく考えです。  また、町内男女ともに未婚の方の割合が増えており、婚活事業への取り組みが求められています。町内の人口減少にも大きく関わる問題であり対策は必須です。とはいえ、ただ婚活イベント等を実施するのではなく、まずは世話焼き人の方を通して町内の成婚率を上げていきたいと考えています。  今年3月で震災から丸13年を迎えますが、海外から見れば未だ福島県に対して原発事故のイメージが残っている一方で、風化してしまっている部分もあります。本町としてもインバウンド対策が必須になってきた中、あらためて風評被害払拭に向けた取り組みを推し進め、さらなるインバウンドの獲得につなげていきたいと考えています」  

  • 【本宮市】高松義行市長インタビュー【2024.3】

    経歴  たかまつ・ぎぎょう 1954年生まれ。大正大仏教学部卒。1995年から旧本宮町議。2007年から本宮市議、2011年1月の市長選で初当選。現在4期目。  ――昨年10月に「定額タクシー・まちタク」を本格運行し、乗合タクシーが「チョイソコもとみや」としてリニューアルしました。  「デマンド型乗合タクシー、定額タクシー、コミュニティバス、路線バス、鉄道の五つを組み合わせることで、公共交通をより利用しやすくする狙いです。以前の公共交通システムと比べ、利用者が10%増えました。システム改修後に利用が増えているということは、全体として利便性が高まったと捉えます。専門家によると、公共交通システムを改修して2、3カ月間は変化に戸惑い一般的には利用率が下がるそうですが、本宮市の場合は前例を覆しています。  ただ、一部地域では以前のデマンド型乗合タクシーと比べて使い勝手が異なり利便性が下がったとの声が出ました。誰もが納得できる形を目指して改善を重ねていきたいです。  公共交通の在り方をご理解いただくために市の丁寧な説明が必要だと感じています。以前の公共交通システムの利用状況と、今回の利用状況を比べてどのような差が出たのか検証していかなければなりません。  公共交通の利用は、温室効果ガス排出を抑制する『ゼロカーボン』につながるので、多くの方に積極的に活用してほしいです」  ――市では「ゼロカーボンシティ」の実現に向けた取り組みを行っています。5月には水素ステーションがオープン予定で、市でも水素自動車を導入予定です。  「365日24時間営業の水素ステーションが日本で初めて稼働します。なぜ本宮市に設置されるのか。これはあくまでも推測ですが、内陸型の都市工業用物流都市でモデルに適している、さらにゼロカーボンに前向きな企業が多いからではないでしょうか。  水素自動車(FCV)の普及率は電気自動車(EV)に及びません。本宮市では今後、ガソリン車とEV、FCVを組み合わせ、一番効率的なベストミックスを探りたいと思います。水素ステーション利用を普及させるために、まず市長車、副市長車、議長車をFCVにします。幸い、市内の企業が後に続き、数社がFCVを導入しています。  FCVはゼロカーボンシティを目指す一つの手段です。市はこれまでにペーパーレス化に取り組んだり、書類を綴じるファイルを石油由来の物から紙製に変えたりしています。各家庭には太陽光や蓄電池の設置や生ゴミ処理機購入を補助しています。誰もが手軽に貢献できるのは、先ほど申し上げたように公共交通利用です。  4月からはゼロカーボンの達成度を可視化しようと考えています。二酸化炭素排出をどれだけ抑えられたかを市が計測し公表します。市民と企業の方々と達成度を共有して次の目標を目指すということを繰り返していけば自ずと成果が出るのではないでしょうか。2050年までにゼロカーボンシティを目指す本市の目標が夢物語ではなく現実に近づいていると実感してほしいです」  ――1月に能登半島地震が発生しました。震災や台風の被害を乗り越えてきた本宮市として、大地震をどのように受け止めましたか。またどのように対策をしていますか。  「多くの方が亡くなり、今も厳しい避難生活を送っている被災者の方にお悔みとお見舞いを心から申し上げます。  安全安心の確立があって初めて行政は自治体の発展や住民の幸せ実現を掲げられると改めて感じました。防災対策はまずは耐震化や堤防の補強などハード対策です。本市は東日本大震災、令和元年東日本台風で大きな被害を受けましたが県や国、周辺自治体の助力を得てハード面の復旧は進んでいます。  ソフト面は人々の避難行動への働きかけです。本宮市は逃げ遅れゼロを目指し、個人に緊急時の対応をあらかじめ記したマイ避難カード作成を呼び掛けています。年に1度は地域や職場で避難訓練し、いざと言う時に対応できるようにしてほしいです。地震、水害、火山災害など災害の種類によって対応は違ってきます。全ての方が緊急時に命を守る行動がすぐ取れるように、行政は準備を進め、地域社会と連携して備えていきたいです」  ――アサヒビール園福島本宮店は前事業者が撤退の意思を示しましたが郡山市の企業が事業を引き継ぎました。同施設に何を期待しますか。併せて、東北道本宮インターチェンジ周辺の開発の見通しを教えてください。  「ビール園は存続して本当に良かった。本宮市のランドマークと言ってもよく、ビールを愛する人たちが集う交流の場です。市は水面下で存続へと働きかけをしていました。市民の思いを汲み取って引き継いでいただいた会社にはお礼を申し上げます。  コロナ禍で縮小した外食需要が戻ってきており絶好の機会です。市も側面支援していきたいです。大人数が収容できるので、これまでは市役所の納涼会に使ったり、来賓が大勢いる時に利用していました。ビール園は工場が多く物流都市である本宮らしい場所でもあり、今後も賑わいの一角であってほしいです。  本宮インター周辺の開発に関する費用を来年度予算案に組み込んでいます。周辺にはビジネスホテルが進出します。さらに大型のショッピングセンターを呼び込むのが目標です。JRの駅と本宮インターは本市の玄関口です。地権者の理解をいただきながら周辺の開発を進め、内陸型物流工業都市としてさらなる発展につなげます。本宮はかつては多くの人が行き交う宿場町でした。人が集う場所として、現代に新しい形で宿場の機能を復活させたいです。誘致については交渉事ですから、焦らず地に足を付けて臨みます」  ――重点施策についてお聞かせください。  「『人口の減らない市』を掲げています。日本全体で人口が減るという厳しい現実を直視し、右肩下がりを少しでも緩和するためにあらゆる努力をします。本市の人口動態は過去3年間は社会増ですが、自然減を合わせると全体では減っており楽観できません。自然減、すなわち生まれるお子さんが減っているのは日本全体を取り巻く問題であり、政府に方針を示していただいたうえで、自治体としてできることに尽力します。  移住に対する補助金を手厚くすれば住んでくれるかと言うと、決め手にはつながらないのではないでしょうか。やればやるだけ自治体間の競争に陥る恐れがあります。本市はポテンシャルを生かし、バランスの取れた地域づくりに重きを置いていきます。公共交通の大幅な改良も少子高齢化対策の一つです。2024年度を一つの区切りとして、これまでの取り組みの結果を冷静に分析して次なるステップに進みたいです」

  • 【福島市】木幡浩市長インタビュー【2024.3】

     こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在2期目。  ――福島駅東口再開発事業は着工と開業が1年程度延期されることが決まったあと、昨年12月定例会では規模の見直しを検討することが発表されました。  「再開発事業は計画もテナントもおおむねめどが立っていました。ところが着工までに全国的な資材費・人件費の高騰に見舞われました。市は再開発組合とともに資材の見直し、施設計画の調整、国の補助金の確保と工夫を重ねました。ただ、資材費高騰の影響を抑えるまでの効果は得られず、計画自体の見直しが必要になりました。  商業機能をどうするか検討する必要も出てきました。改めて福島商圏の需要を事業主体の再開発組合がマーケット調査をしたところ、コロナ禍を経て電子商取引(EC)は想定以上に伸張、実店舗の需要は急速に縮小していました。全体的な見直しが必要になり、コスト増による1年延期に加え、設計の見直しでさらに最低1年は遅れることになりました。  再開発事業は基本的に民間事業です。再開発組合はテナントが入る民間部分を、市は組合から買い取った公共部分を維持管理していきます。民間部分の主な収入は家賃ですが、テナント入居が見通せずランニングコストを賄いきれない状況になってしまうことが分かりました。  民間の維持管理部分を減らそうと、現計画では融合している公共部分と民間部分を別棟にする案を考えました。私は『街なかの賑わい創出のために公共部分だけでも先行して建てられないか』と提案し、その検討の中で分棟にすると民間部分の収支改善が図られ、事業継続にめどが付くことが確認されました。  公共部分については、建設費用を抑えるために規模を縮減し、その上で使い勝手の良い施設にしていこうと考えました。劇場ホールとコンベンション両方の機能を備えた建物は難しく、劇場ホール案とコンベンション案を市民に提示しました。あくまで議論のたたき台であり、それ以外の案も不可能ではないと思います。今後進むべき方向を、市民を交えた議論を踏まえ決めたいと思います」  ――ここに来て駅周辺の東西一体のまちづくりという考え方も浮上しています。背景と、今後どのように議論を進めていくのか伺います。  「イトーヨーカドー福島店の撤退で西口の状況が変化することが挙げられます。民間企業の所有地なので市は注視しつつ情報収集してきました。民間の会社が入る話もありますが正確なことはまだ分かりません。売却の可能性も想定し情報収集に努めています。当該地は駅西側の玄関口であり、今後のまちづくりの観点から市として積極的に関与します。仮に所有者が売る場合、市民が望まない形になってはいけない。市が使うことも想定しなければなりません。そうなった時、市が何の案も用意していないのは好ましくない。議会や市民の皆さんの意見を聞き、市としての意向を複数用意していきたいと考えています。  福島駅東口と西口は一体化してまちづくりに取り組まなければなりません。2018年に策定した『風格ある県都を目指すまちづくり構想』では東西を結ぶ駅改札外の自由通路の改善を中長期的課題に位置付けました。まずは中心地の活性化を優先すべきと考えたからです。市が管理する自由通路の改善は、福島駅舎とも関わっています。市は駅舎の建て替えをJRに要望してきました。仮に建て替える場合、自由通路との調和が必要で、JRは市のまちづくりビジョンを参考にするとしています。そのために自由通路を含めた東西一体のまちづくりの方向性を今示しておくことは重要なのです」  ――東口再開発地区にある既存建物の取り壊しが年度内で終了する予定ですが、結論を先延ばしにすれば東口はいつまで経っても「何もない状態」が続くことになります。一方、拙速に結論を出すわけにもいかず、木幡市長としては難しい判断を迫られるのではないかと思います。  「駅の東西両方の賑わいを創出していく必要がありますが、東口の方をより急がなくてはならないという認識です。再開発ビルは民間事業者が銀行から借り入れて建設しています。延期するほど金利負担が増えていき、事業成立が困難になる。もし破綻したら空いたままの土地が生まれます。だからと言って拙速にならないよう慎重に検討していきます」  ――中期財政収支見通しで市財政の厳しさが明らかになっています。そうした中で本庁舎西側で市民センター(仮称)の建設が始まり、今後多くの公共施設の建て替えが控えています。老朽化施設の建て替えは必要ですが、財政収支も考えないと将来世代に大きなツケを回すことになってしまいます。  「福島市はこれまで大型事業を先送りしていた傾向があり、今それらをやらなければならない状況になっています。有効な手が打てるうちに積極的に行うことが必要です。将来の人口減少を考えると、今手を打たないとますます窮地に陥ってしまう。福島市が魅力のないまちになるのをただ待つのは避けたい。将来の人口を維持するためにも今やるべき事業は進め、むしろ先進的で魅力を感じてもらえるように転換したいです」  ――人口減少、少子高齢化が急加速している中、子育て支援や移住促進に注目が集まります。人口減少、少子高齢化対策について地方自治体でできることが限られる中、国はこういう対策に取り組むべきだという考えがあればお聞かせください。  「中核市市長会会長として、子育て世帯の負担軽減など所得に絡んだ施策の充実を国に要望しています。移住を促進しようと自治体同士が負担軽減策で競争すると疲弊してしまいます。効果的な施策を国でしっかりやっていただいて、自治体が創意工夫ある施策を進めていくことが重要です。  人を呼び込むには産業がないと続きません。産業振興、企業誘致にとどまらず、地元産業の高度化が必須と考えます。時代の変化が非常に激しいですから、創業・起業にも力を入れる必要があります。人手不足対策についてはこれまで家庭に入っていた女性や障がい者、高齢者の皆さんにも働いていただけるよう、事業者と行政は環境を整えなければなりません。  外国人雇用も求められています。これからは外国出身者の活躍が地域の活力となります。市は昨年、多文化共生センターを開設しました。事業者をサポートし外国人を雇用することへの理解を促進しています。また、外国人が安心して暮らせる環境づくりを担うのが4月に開校する公立夜間中学です。他地域では夜間中学の生徒の7割は外国にルーツのある方で、日本語教育や居場所づくりの役目があります。以上のような取り組みで、さまざまな人を受け入れ誰もが活躍できる市を目指します」

  • 【伊達市】須田博行市長インタビュー【2024.3】

     すだ・ひろゆき 1958年生まれ。宇都宮大農学部卒。福島県に入庁後、県北農林事務所長などを歴任。2018年1月の伊達市長選で初当選、22年1月に再選。  ――2月で2期目の折り返しを迎えました。再選を果たした市長選で掲げた公約の進捗状況について。  「まずは『安全安心の確保』です。1月1日に能登半島地震が発生しましたが、改めて自然災害に対する常日頃の備えが重要と痛感しました。また、断水による生活困難をはじめ、能登半島の地形的な要因もあって被災した道路の再開通に時間を要し、復旧活動に支障をきたすなど道路の重要性も再認識したところです。  本市では水道の耐震化を鋭意進めており、200㍉以上の基幹管路の耐震適合率は90%以上、摺上川ダムから引く浄水における貯配水池の耐震化率は98%となっています。大地震が発生しても耐えられる構造となっていますが、100%を目指し今後も耐震化に取り組んでいきます。  令和元年東日本台風では梁川地域を中心に甚大な水害に見舞われました。市では、令和5(2023)年度から、国土交通省と民間事業者の協力を得て、『ワンコイン浸水センサ』を用いた実証実験に、県内で初めて参加しています。浸水が想定される市内14か所にセンサーを設置することで、豪雨の際の浸水状況をリアルタイムに把握ができ、災害対策の迅速化を図ることが可能となります。  また、センサーによって浸水を10㌢ごとに察知できるので、的確な道路の通行止めやアンダーパス対策、危険を伴う夜間の職員出動回避にもつながります。安心・安全の確保には道路整備も不可欠です。本市は相馬福島道路をはじめ、国道4号、同349号、同399号と道路網が東西南北に充実しています。同349号の整備は宮城県側から進んでおり、本県側も国や県に要望しながら速やかな整備の実現に努めます」  ――雇用・子育て環境の充実についても公約として掲げていました。  「若者の定住につながる『雇用の場の確保』については、伊達市新工業団地の造成が完了し、8区画を売り出したところ、6社により全区画売約済みとなりました。1社については2月に開業を迎え、令和6年度中には2社が稼働する見通しです。  堂ノ内地区の大型商業施設については、現在、土地区画整理事業の工事と大型商業施設イオンモール北福島(仮称)の造成工事が鋭意進行中であり、間もなく完成を迎えます。今後は大型商業施設の本体建築工事の着手に向けて準備が着々と進められるとのことで、1日も早く開業することを期待しています。  街中のにぎわいづくりについては、『若者が楽しめる場』として気軽に集まって楽しんでもらえる施設の整備、商店街の魅力向上などを目指し、若手商店主等の意見を伺い、実証事業を進めているところです。  『子育て・教育の充実』については、若い世代にとって定住の重要な条件でもあります。子どもたちを安心して預けられ、子どもたち自身も安全に過ごせる居場所が重要になると考え、本市では3つの認定こども園の整備を進めてきました。  伊達・ひかり認定こども園、保原認定こども園は4月に開園の運びとなります。また、阿武隈急行高子駅北地区の住宅団地内で高子北認定こども園(仮称)の建設が始まり、令和7年4月の開園に向け整備が進められています。そのほか、かみほばら放課後児童クラブ館を新築し、今年4月から開所予定です。  本市ではすべての妊婦、18歳までの子どもとその家族を対象に、相談体制を充実させた『伊達市版ネウボラ事業』を展開しています。今後もネウボラ保健師を中心とした、妊娠期から切れ目のない保健・福祉・教育の三位一体となった子育て支援に一層取り組んでまいります。  市民の健康寿命の延伸を目指す『健幸・福祉のまちづくり』も公約として掲げました。本市では、運動習慣化支援事業として、地区集会所を拠点に参加者同士が交流を図りながら気軽に楽しく運動を行う『元気づくり会』事業を推進しており、現在は146団体が参加しています。コロナ禍で一時活動が制限されましたが、会員の皆さんの強い思いにより、コロナ禍以前の取組が復活しています。昨年5月には、本市の基幹産業である農業と福祉の連携を目指し、障害福祉施設として多機能型事業所『インクルーシブたかこ』が開所しました。〝明るく楽しく健康に〟をモットーに、農業生産活動や就労知識及び能力向上のための訓練などを行っており、障害の有無にかかわらず、さまざまな交流・学びの場として利用されています」  ――新型コロナの影響について。  「感染拡大防止のため、これまでさまざまな行動制限を強いられるなど、市民の皆さまにとって、まさに辛抱の3年間だったと感じます。その思いが昨年5月8日の5類引き下げ以降は、一気に市民の活力となって市内各地に「にぎわい」が戻ったと実感しています。現在、イベントやお祭りなどが通常通りに開催されていますが、特に参加する子どもたちの笑顔が印象的で、対面でのふれあいや繋がりの重要性を感じました」  ――伊達小学校校舎改築工事が竣工しました。  「旧伊達小学校は建築から50年が経過しており、耐震診断の結果からも校舎改築は待ったなしの状況でした。平成28年から学校、保護者、地元住民で構成された検討委員会で議論を重ね、『子どもたちが安心・安全に学べる校舎』、『地域住民のコミュニティの核』との意見集約が成され、『地域と一体となった学校づくり』を目指すこととなりました。  これらを踏まえ、同校は吹奏楽が非常に盛んなことから、校内に講堂を整備し、講堂と音楽室を隣接させ、練習、発表を問わず使い勝手の良い配置としました。校内イベントはもちろん地域住民の各種発表会の場としても活用していきます。  校内はバリアフリー仕様で、ICT教育の充実を図るため、各教室に大型提示装置(ディスプレイ)を設置し、児童のタブレットと連携して授業が行える教育環境を提供しています。地域の皆さまや施工業者のご尽力により、昨年12月末に校舎改築工事が竣工し、引っ越しや備品搬入を経て、1月9日から新校舎での学びがスタートしました。子どもたちからは『ホテルみたい』、『廊下が広くてきれい』と感動や喜びの声が寄せられています」  ――今後の抱負について。  「昨年策定した伊達市第3次総合計画では①安心・安全できれいなまち、②健やかでやさしい健康・福祉のまち、③未来を拓く人を育む教育・文化のまち、④活力とにぎわいあふれる産業のまち、⑤便利で快適に暮らせるまち、⑥みんなでつくる協働のまち――という6つの基本目標を掲げています。まずは前期基本計画に基づき、本市の将来像『人と緑と歴史が結び合うひかり輝く田園空間・伊達市』の実現に向け積極的に市政運営を進めていきます」

  • 【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー【2024.3】

     かんの・けいじ 1952年生まれ。福島県農業短期大学校卒。JA福島さくら代表理事専務、代表理事組合長を務め、2022年6月の総会でJA福島五連会長に選任された。(写真左は昭和カスミソウ)  「第53回日本農業賞」で、JA会津よつばかすみ草部会が集団組織の部大賞に選ばれた。JAグループの中期計画の中で、「ふくしま園芸ギガ団地構想」を掲げており、その1つの成果と言える。同賞受賞の意義やギガ団地構想の今後の展望、さらにはALPS処理水の海洋放出の影響などについて、管野啓二JA福島五連会長にインタビューした。 持続可能な「福島の農業」と「JA」の未来づくりを進める。  ――「第53回日本農業賞」で、JA会津よつばかすみ草部会が集団組織の部大賞に選ばれました。  「昭和村の村おこしを兼ねた、行政とともに進んできた部会活動が認められた大きな成果だと捉えていますし、過疎化している地域として成果を上げたことも大きな意義があると思っています。日本農業大賞を集団・組織の部で本県が受賞するのは第44回JA会津みなみ南郷トマト生産組合以来9年ぶりで、JAグループ福島としても大変名誉なことです。部会長はまだ若く、以前はトラック運転手をしていたという異色の経歴の方です。運ぶのではなく、自ら栽培して地域に貢献したいという熱意からスタートしていますが、その熱意が部会全体に伝わったのかなと思っています。担い手不足が深刻化する本県農業において、山間地でも儲かる農業を実現し、未来に続く農業経営と地域振興を実現されたことは、まさに本県農業の誇りであり、大賞受賞を契機として今後もさらなる担い手づくりと地域農業振興へのご尽力を期待しています」  ――JAグループでは「ふくしま園芸ギガ団地構想」を進めており、園芸品の生産振興に力を入れています。JA会津よつばかすみ草部会の大賞受賞はその成果の1つと言えますが、昭和カスミソウやそのほかの品目(地域)の今後の展望について。  「『ふくしま園芸ギガ団地構想』は、県内各5JAがそれぞれの地域性を生かし、県の補助事業を有効に活用しながら園芸振興を図っており、現在5JA12地区で取り組みを進めています。中身としては『1団地で1億円以上の販売高を目指す』というもので、きゅうり、ピーマン、ねぎ、いちご、トマト、アスパラガス、宿根かすみ草の7品目を中心に取り組んでいます」 園芸ギガ団地を拡大  ――ギガ団地構想は、農家の所得向上と、「農業で生計を立てられる」ということを実践し、若い人の新規参入や担い手不足解消が目的とされています。  「継続して経営を安定させていくためには『売り上げ』、そして所得がいくら確保できるかがとても重要です。いわゆる『儲かる農業』を目指していかなければ持続的な経営につながっていきません。そのためには、技術面の向上とコストをいかに減らせるかがカギです。また、産地の拡大によって販売数のロットを大きくしていかなければ市場での優位性が発揮できません。より所得を確保できる園芸作物の振興に取り組み、十分な収益をあげる農業を実践することによって、農業を生業として選択することができ、それが、新規就農者の獲得にもつながっていくと考えています。  令和5年度(県発表。令和4年5月2日~令和5年5月1日)の新規就農者数は367名(前年比33名増)となり、2030年に340人以上を目指すとした県総合計画を上回る結果となりました。さらに令和5年度は、JAふくしま未来・桃(73億円)、夏秋キュウリ(44・8億円)、JA福島さくら・ピーマン(7億円)、JA会津よつば・昭和かすみ草(6・3億円)、南郷トマト(12・3億円)など、県内の主要品目の販売額が過去最高額を更新するなど、非常に良いニュースがありました。今後の県内各JAで園芸ギガ団地構想の拡大を図り、農家手取り最大化に向け努力していきます」  ――昨年4月、県、JAグループ福島、福島県農業会議、福島県農業振興公社がワンフロアに常駐する総合相談窓口「福島県農業経営・就農支援センター」が開所しました。  「『福島県農業経営・就農支援センター』が発足して10カ月余が経過しました。こうした連携体制は全国でも福島県が唯一で、各県からの注目もあり視察の依頼も増えています。  サテライト窓口も含めた1月末までの10カ月間での相談件数は1164件(就農相談854件、経営相談267件、企業参入相談43件)で、前年同時期対比1・3倍となりました。就農相談については、県が主催するフェアの開催などにより着実に増加するとともに、男女問わず年齢も若い方から定年前後まで実に幅広い方から相談を受けています。県が発表した令和5年度の新規就農者も367名となり、2年連続で300人を超え、センター設置前の令和4年度から連携協議会を設置して取り組んできたことが成果に繋がっています。  ただその中で重要なのは『定着率』だと思っています。福島県では新規就農した方々で3年以上離農せずに定着している方が8割を超えています。特に就農した後のフォローとして販売チャネルの相談や確保がJAグループとして一番の使命だと思っています。  引き続き年間1200件の相談目標に向けて取り組むとともに、現在研修中の方々に対する就農計画の策定や農地の斡旋、販路の確保など、各団体の持てる機能を発揮して、着実に就農に結び付くよう取り組みを強化していきます」  ――「JAグループ福島東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会」の原発賠償の状況について。  「1月末までに請求額が約3710億円、支払額が約3622億円で、賠償率は97・6%となっています。国の風評対策もあり、事故直後のような状況ではありませんが、ALPS処理水の海洋放出開始以降も、県産農畜産物への風評被害は、JA関係団体においても、残念ながら確認されています。国や東京電力には昨年11月17日に開催された『JAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会』での決議事項に基づき、確実かつ速やかな対応を求めていきます」  ――今後の抱負。  「農業に携わっている方々が『来年もまた作りたい、経営を継続したい』と言えるような1年にしたいと思っています。また、国では現在開会中の通常国会において、農政の憲法とされる『食料・農業・農村基本法』の改正を目指しています。食料安全保障の強化や、環境と調和のとれた産業への転換、生産性の高い農業経営、農村・農業人口・コミュニティーの維持などが検討されています。消費者の方々は、これまで『安ければいい』という考えが多かったと思いますが、今後は国家を守るために、食料に対する国民の負担というものを考え、食料安全保障の重要性を理解していただくきっかけとなる年になるのではないかと思っています」

  • 【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

    かんけ・ただひろ 1979年5月生まれ。東京の大学を卒業後、海外留学を経て会津土建へ入社。翌年、子会社の㈱エマキへ出向。10年間IT事業の社長を務める。その後、会津土建へ戻り、取締役、常務取締役、副社長を歴任し、昨年6月に代表取締役社長に就任。   会津若松市の会津土建は大正15(1926)年に創業し、会津地方に根ざした総合建設業として成長を続けてきた。建設業界全体がさまざまな課題を抱える中で、先進的な取り組みへの挑戦を続けている。昨年6月に代表取締役社長に就任した菅家忠洋氏(44)に建設業界の現状、今後の経営ビジョンについてインタビューした。 効率化と新たな挑戦を心がけ成長を続けていく。  ――昨年6月8日付で会津土建の代表取締役社長に就任されました。  「私の祖父と父が歴代の社長なので、幼い頃から会社を引き継ぐことに漠然としたイメージはありました。実際に社長となって、もちろん仕事の重みや責任は感じていますが、不安やプレッシャーにさいなまれることはなく、やりがいを感じながら充実した日々を過ごしています。さまざまな方々とお会いする機会に恵まれ、物事に対する見識や感性が膨らみ、人との結びつきやご縁の尊さを実感しています。建設業という仕事自体にとても魅力を感じますし、人のため、社会のために貢献すべく、地域が活性化できるよう情熱をもってまちづくりに努めていきたいと存じます」  ――老舗総合建設会社として地域社会にどう貢献していく考えですか。  「当社は大正15年創業、まもなく100周年を迎える老舗の建設会社です。会社の歴史を十分に理解しながら、新たな伝統を創っていく所存です。現在の会津地域における建設業界を取り巻く環境や政治経済の状況を俯瞰的に捉え、何を成すべきか、深く考えながらも瞬時に見極め、判断していく必要があります。また、今までお付き合いいただいたお客様はもちろんのこと、新たにご縁をいただいた方々、協力会社、職人さん方とより一層の誠心誠意を込めてお付き合いをさせていただきたく存じます。私たち建設会社のミッションは、お客様の満足いく建物を提供すること、そして、安心で安全に生活ができる豊かなインフラを整備し、地域社会に還元することが最重要項目です。社会情勢が目まぐるしく変化する中、安全、品質、コスト、デザイン、付加価値、SDGsなどへのより一層の対応が求められています。今後、PPP(官民のパートナーシップによる公共サービスの提供手法)やPFI(公共施設等の建設・維持管理・運営等を民間の資金、経営能力、技術的能力を活用する手法)事業が推進されると想定し、異業種の方々との交流や連携による柔軟な発想と対応が大事です。そのためにも、私たちも理論に基づいた提言をしながら、発注者、施工業者、設計、学識者、専門機関など、さまざまな意見をまとめながら、産学官による垣根を超えたデザインビルドに取り組むべきだと思います。将来を見通しながら地域の皆さまが納得し、喜ばれる仕事を完遂することが弊社の社会的な役割であるとあらためて認識しています」 ICTとアナログの融合  ――先進的な取り組みについて。  「建設業界では少子高齢化による人手不足が深刻です。そのため、国土交通省は、最先端工法やICT技術を導入することで建設生産システムを向上し効率を良くする『i―Construction』を推進しています。建設現場のみならず、総務や経理の事務的なバックオフィスでも生産性や効率性の向上が図られています。現在は3次元データの活用を深化させ、建設現場をデジタルツインで作業効率を高める取り組みにも着手しています。  スケールの大きい土木現場を施工管理する大々的な建設DXからスマートフォンのアプリケーションに至るまで、会社にとって効果があり、社員の仕事が楽に、スムーズになるのであれば積極的に導入する考えです。時代の潮流に乗り、今後も新しいテクノロジーや大手ゼネコンの取り組み、海外の事例を含め、導入検討や内製化の研究に励む所存です。 一方で、私は何よりも『アナログ』なお付き合いを大切にしようと思っています。人様との信頼関係の構築には対面が不可欠です。『温故知新』を座右の銘に、老若男女問わず、真心と礼儀を尽くしたいと存じます。『デジタル』と『アナログ』それぞれの利点を見極めながら新旧融合を図り、相乗効果が発揮できるよう『機を見るに敏』を意識した対応に徹したいと思います」  ――建設業界の今後の見通しは。  「全国的にみれば、先の東京五輪、リニア中央新幹線の整備、大阪万博、東京の再開発事業など建設需要が旺盛となっています。一方で、本県に目を移せば東日本大震災から12年が経過し、イノベーション・コースト構想や一部まちづくりを残し、復旧・復興事業も終わりを迎え、大型事業も少ない状況です。建設業界はすでに縮小・淘汰の時代が到来したといっても過言ではなく、大都市と地方都市を比較すると経済格差を著しく感じます。これからは新規でゼロから建設するというよりも、既存の建造物・構造物の維持管理やメンテナンスに軸足が移っており、それに応じて業務内容も変化させていく必要があります。  今後は、既存の建設会社だけではなくハウスメーカー、設備会社など関連業種も含めれば競争相手が多く、生き残りは容易ではありません。そうした中で、当社の位置付けを見つめ直しながら、新たなチャレンジを始動していく覚悟が問われます。先行きが見えないことも多々ございますが、私たちが抱く既成概念をリセットし、どん欲に挑戦しながら新たな領域を切り開くことが生き残るポイントだと考えます。厳しい経済状況でも成長している企業が存在するのも事実です。成功事例から学びを得て、業務に反映できるものはぜひ取り入れていきます。激烈な競争を勝ち抜くためにも『メイドイン会津』の地元建設会社として、プライドを大切にしながら企業価値をさらに高め、皆さまから認めていただけるよう、誠心誠意努めていきます」  ――結びに今後の抱負を。  「これから未来の福島を創るにあたり、私たち建設業界は真価を試される大切なターニングポイントにあると思います。故郷のため、そして子どもたちのため、日々技術を磨き、研鑽を積みながら、新しい事業スタイルを常に学び、もう一段上の高みに会社をもっていきたいと強く願っています。その実現に向け、『企業は人なり』の精神をモットーに、社員ファーストで生き生きと働ける環境を提供し、福利厚生を充実させながら、優秀な人材をリクルートしていきます。  また、健康経営優良法人の認証取得や女性活躍社会の推進をはじめ、企業価値の向上に着手していきます。今までの建設会社のイメージを覆し、新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を実現し、魅力溢れる企業体質をもって、社会に貢献していきます。私自身、まだまだ若輩者ではありますが、夢と希望を持って成長していきます」

  • 【福島県木材協同組合連合会】鈴木裕一会長インタビュー

     すずき・ゆういち 1948年生まれ。平工業高卒。㈱赤井製材所会長、ダイテック代表取締役、協同組合いわき材加工センター理事長。2018年より福島県木材協同組合連合会長に就任。3期目。 全国有数の林業県として森林資源を有効活用していく  ――福島県木材協同組合連合会の沿革ならびに事業概要について。  「福島県内の各方部にあった木材業者による地区協同組合の活動の総合的な調整や、全県的な相乗効果を高めるため、1964(昭和39)年3月25日に当連合会が設立されました。その後、会員の相互扶助の精神に基づき、会員のために必要となる共同事業等に取り組みながら会員の自主的な経済活動を促進し、経済的地位の向上を図ることを目的に各種事業を展開してきました。  現在、県内における良質な木材の素材生産、流通、木材加工・販売事業者約230組合員により構成される協同組合23組合を会員とし、木材の利用促進活動、木材産業振興対策、木製品に関する証明、JAS製材品の普及、各種受託事業等に鋭意取り組んでいるところです」  ――本県の森林資源や森林産業の現状についてうかがいます。  「本県の森林面積は97万3000㌶で県土面積の約71%を占めています。うち人工林面積は33万4000㌶で、人工林率は34・3%となっています。太平洋戦争後、スギを主体に造林された森林資源は年々充実してきており、まさに利用期を迎えていると言っても過言ではありません。丸太の伐採を担う素材生産事業者と製材・加工事業者等の連携強化による利用促進の取り組みにより、丸太生産量は全国8位で、全国有数の林業県に位置づけられており、生産される製材品の約80%が関東圏を中心に出荷されています」  ――福島県産木材を住宅の新築・増改築に使用することで、さまざまな商品と交換可能なポイントが贈られる「ふくしまの未来を育む森と住まいのポイント事業」の概要と利用状況についてうかがいます。  「県産木材を積極的に使用した木造住宅を新築・増改築・購入した建築主に対して、本県産の農林水産物や商品券等と交換可能なポイントを交付する事業です。本県の豊かな森林環境を保全し、循環型社会の形成を図る狙いがあります。使用している構造用部材の木材使用量によって20万~50万のポイント数が決定され、さらに本県産木材のうち一定量の森林認証材を使用すると10万ポイントが加算されます。今年度の事業の詳細や募集期間(※予算がなくなり次第終了)に関しては当連合会のホームページを参考にしていただければ幸いです」  ――今年度の重点事業について。  「『伐って、使って、植えて、育てる』をスローガンに据え、森林資源の循環利用に向けた事業を一層推進していきます。また、『都市(まち)の木造化推進法』に基づき、商業施設や事業所等の非住宅分野における木材利用の促進をはじめ、大径材を活用した中高層建築物における木造化・木質化の促進に努めます」  ――今後の抱負を。  「木材業はかつて斜陽産業とみられていましたが、加工・管理技術の向上も相まって国内における国産木材のシェアは年々高まっています。環境保護に寄与するなど将来性のある産業なので、今後も業界の発展に一層尽力してまいります」

  • 【福島河川国道事務所】丸山和基所長インタビュー(2024.2)

    まるやま・かずき 1981年生まれ。北海道大学工学部卒、同大学院工学研究科修了。国土交通省水管理・国土保全局水資源部水資源計画課総合水資源管理戦略室課長補佐などを経て、2022年5月から現職。  ――現在、工事が進められている福島西道路の整備状況について。  「福島西道路(Ⅱ期)は、福島市を南北に縦貫する国道4号の交通混雑や伏拝地区の急勾配区間における冬期のスタック車両による交通への影響などの課題解決に向けた延長約6・3㌔のバイパスです。現在、延長約1・8㌔の(仮)浅川トンネルの掘削工事、(仮)大森川橋の上部工架設工事、(仮)西ノ内こ道橋の下部工工事、松川地区の土工・構造物などの改良工事を進めているところです」  ――「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」の進捗状況と、遊水地の農業利活用について。  「令和元年東日本台風では、阿武隈川流域において既往最大の洪水により、堤防が決壊するなど各地で甚大な被害が発生したことから、ハード・ソフト両面の治水対策について10年間のプロジェクト『令和の大改修』を実施しています。河道掘削は今年度末で全体計画220万立方㍍のうち約170万立方㍍(約8割)の掘削を目指して工事を進めており、遊水地整備では用地協議や代替地整備、橋梁の架替等を実施しているところです。  また、遊水地の利活用については、有識者らによる利活用検討会の発足に向け調整を進めているところであり、農用地としての利用など地域の皆さまの意見も踏まえながら、持続可能で現実的な土地利用の実現に向け検討を進めてまいります」  ――国道399号伊達橋の今後の見通しについて  「伊達橋は、復旧に高い技術力を要することから国の権限代行で実施しているところですが、復旧工事には相当の期間を要することから、地域の交通確保のため橋長301㍍の仮橋を設置することとし、昨年10月29日に開通したところです。仮橋の設置については、関東地方整備局、北海道開発局が保有する応急組立橋を活用することにより早期開通に努めています。現在、既設上部工の撤去工事を実施中で、順次、下部工や上部工に着手する予定です」  ――その他重点事業について  「1つは『流域治水2・0』です。近年の気候変動を踏まえると、2040年頃には降雨量が約1・1倍、流量が約1・2倍となることから、流域治水の取り組みを加速化・深化させる『流域治水プロジェクト2・0』に取り組みます。併せて、地域の皆さまが、災害リスクを『自分ごと』として捉え、主体的に行動していただくとともに、みんなのためにとの考えで流域にも視野を広げていただけるように、流域治水の広報、リスク情報の提供、教育活動等にも取り組んでまいります。  もう1つは『福島北道路』です。福島市北部の国道4号における渋滞や事故などの課題解決を目的として、福島北道路の事業化に向けた調査を進めています。今年度は地域の皆さま方に、当該調査区間における課題等についてご意見を伺う予定としています。  これら社会資本の整備により『安全・安心で活力と魅力ある地域づくり』に貢献してまいりたいと考えておりますので、皆さま方のご理解とご協力を引き続きお願いいたします」  

  • 【福島県石油商業組合】中村謙信理事長インタビュー

     なかむら・けんしん 1960年生まれ。明治大卒。会津日石販売㈱代表取締役。2020年6月から福島県石油商業組合理事長を務める。  ――組合の主な取り組みについて。  「業務は多岐に渡りますが、一番の目的は県内の石油の安定供給です。中でも、災害時にはどのルートから的確に供給できるかが大きな課題となってきます。過去の震災において、建物の倒壊があった中、SS(ガソリンスタンド)は構造上、設備の損傷は少なかったものの、従業員も被災しており、なかなか人が集まらず営業がままならないケースや、一般の方や緊急車両を含め多くの方々が給油されたことにより、在庫の燃料が尽きて供給できない事態に見舞われるケースがありました。SSは大元の供給があって初めてお客様に燃料を供給できるので、そうした緊急事態の際、組合は各方面から情報を集め、行政との橋渡しの役割も担うので、平時だけでなく、災害時の安定供給を担うのが当組合の大きな役割であると考えています」  ――物流業界の「2024年問題」が課題となっていますが、石油業界への影響は。  「石油を運搬するタンクローリーのドライバーの労働環境は決して良好とは言えません。タンク容量が限られている中で効率良く運ぶためには、タンクに8割~満タンを入れることが不可欠ですが、近年は効率追求のため計画配送が主流で、各SSで少量のロットで配送してほしくても元売りから受け付けてもらえない実情があります。とはいえ、少量ロットでの配送は仕入れ単価が高くなる問題もあります。加えてトラックドライバーの時間外労働の上限規制、燃料自体の単価高騰など様々な問題が混在し、かなり複雑な様相を呈していると言えます」  ――水素ステーションの設置が進んでいます。  「水素ステーション設置のコストの高さに対して水素自動車の需要は伸びておらず、商売としてはまだ成り立っていないのが現状です。今後、水素自動車が普及していけば水素ステーションの増加は期待できますが、いまのところ見通しは立っていません」  ――今後の重点事業について。  「全国石油商業組合連合会ならびに当組合では、『満タン&灯油プラス1缶運動』を展開しています。これは車の燃料を満タンにし、灯油も1缶多めに備えておくことで、災害時のトラブル回避を呼び掛けるものです。先日の能登半島地震を見ると電気が寸断されて暖が取れない状況が起きていますが、石油は独立性、可搬性に優れたエネルギーですので少量であれば自家用車でも運搬ができ、車内暖房も利用できるので、災害時における利点は大いにあると見ています。  また、近年は合成燃料の開発も進んでおり、二酸化炭素の排出抑制に加え、既存のSS設備をそのまま利用できるので、導入コストを抑えることができます。  そうした中で、石油も含めたエネルギーが選択可能な社会になっていけばと考えています」

  • 【相馬商工会議所】草野清貴会頭インタビュー(2024.2)

     くさの・きよたか 1946年生まれ。東京電機大学卒。草野建設代表取締役会長。2013年から相馬商工会議所常議員を務め、16年11月から会頭。現在3期目。  新型コロナウイルスは徐々に収まってきたが、円安、物価高、人手不足の影響は深刻さを増している。インバウンドで賑わう首都圏や有名観光地とは異なり、地方経済の回復はまだまだ遠い。加えて相馬市は、二度の福島県沖地震による被害からも完全に立ち直っていない。地元経済界の現状と今後を相馬商工会議所の草野清貴会頭に聞いた。 災い転じて福となるよう新たなことに挑戦していきたい。  ――新型コロナウイルスが昨年5月に5類に移行しました。  「昨年から祭りやイベントなどを従来通り実施していますが、コロナ前と比べても大盛況でした。スポーツ合宿で市内を訪れる人の数も戻っています。  コロナの影響を大きく受けた飲食店や宿泊業などは回復傾向にあります。飲食店は店ごとに差はありますが、コロナ前の7~8割まで回復しています。ただ、昨今の物価高を価格転嫁できておらず、それが雇用に支障を及ぼしており、経営は未だ不安定です。宿泊業は、人流は回復しているものの地震被害の復旧が完了済みの所とこれから建て替えを行う所があり、格差が見られます。地域全体では回復に至っておらず、イベントが行われても市内に宿泊できる場所が少ないのが現状です」  ――2021、22年に発生した福島県沖地震の影響は。  「地震で半壊以上となった市内の建物は2621件、うち公費解体は1176件に上ります。会員事業所も多くが被災しましたが、国・県に要望してグループ補助金が適用され再開に至った所もあります。しかし比較的大規模な宿泊施設はこれから着工となる所もあり、全体的に回復したとは言えません。  地震被害からの回復を目的に県内一斉に行われた宿泊県民割では、管内の宿泊施設の復旧が遅れたため、県に要望し『県民割相馬版』を実施しました。ほかにも15%割増プレミアム商品券や飲食マップ作成、ほろ酔いスタンプラリーや推奨物産品発掘事業『相馬逸品』など、地域経済回復のための事業に取り組んできました。  今後も行政、観光協会、漁協、農協など各種団体と連携し、地域経済浮揚に向け努力していきたい。また事業所に寄り添い、それぞれが抱える課題には伴走型支援を行うなど経営改善普及事業を積極的に進めていきたいと思います」  ――円高・物価高が大きな問題となっています。人手不足や後継者不在も深刻です。  「8割を超える事業所が異口同音に『物価高に対する価格転嫁ができず利益を見いだせない』『賃上げの意思はあるが余力がない』と述べています。中には『高齢化で廃業を検討せざるを得ない』などの声もあります。建設業や運送業からも『人手不足と資材・燃料高騰で業績が低迷している』との声が聞かれる中、4月からは運送業で年間残業時間上限960時間の規制が始まるため、業界の縮小も懸念されます。ただ一方では、価格転嫁をできている事業所もあり『新たなサービスや付加価値を付けて対応している』という意見も少なからずあるので、全体に波及させていきたいと思います。  後継者問題は、特に小規模事業所では深刻に捉えており、事業継続を断念するケースが多い。会議所としては、そういった事業所に積極的に相談するよう呼びかけながら、経営アドバイザー的な役割を果たしていきたいと思います」  ――国・県に望むことは。  「原油、原材料、資材価格の急激な高騰に対応するため、経営環境が逼迫している中小企業・小規模事業所の実態に沿った事業コストの負担軽減支援策を求めたい。また、エネルギー価格高騰の影響を受ける中小企業・小規模事業所に対する総合的な支援および原油価格高騰の影響を抑えるための総合的な対策を迅速かつ的確に実施していただきたい。  また公共事業を受注する際、受注から納品までの期限が長い事業については、当初の見積もり額から値上がりすることが想定されるため再見積もりを認めるなど、受注側に配慮した負担軽減支援策を実施するようお願いしたい」  ――昨年、福島第一原発で処理水海洋放出が行われました。  「幸い、管内で大きな影響は出ていません。日本商工会議所の小林健会頭が全国に呼びかけた『常磐ものの活用促進』により各地から多くのアプローチがあります。当会議所でも水産加工事業者と連携し情報発信を行っており、今後も地元水産物のPRに努めていきます」 人気を集める「福とら」  ――相馬沖で捕れる天然トラフグ「福とら」が人気を集めています。  「『「福とら」泊まって、食べてキャンぺーン』を展開中ですが、お陰様で大変好調です。『福とら』を取り扱う店舗も11に増えていますが、さらなる拡充に努めていきたい。また『福とら』との相乗効果でカレイやヒラメの人気も高まっており、直売所・浜の駅松川浦には週末になると多くの観光客が訪れています。 一方、課題としては他県に比べて水産加工品が少ないので、以前からアオサの加工品などの開発に取り組んでいます。アオサは健康食品として注目されており、現在四つの加工品が発売されています。今後もさらなる加工品開発に取り組んでいきたいと思います」  ――今年度取り組んでいる事業について。  「この間、相馬駅東改札口設置をJR東日本に要望してきましたが、常磐線を管理する水戸支社からは前向きな回答をいただいています。東側には法務局があり、以前から開発のための土地もあって、ようやく東口開発が進むと思います。  東北中央自動車道の開通により中通り方面とのアクセスは格段に向上しましたが、県立医大附属病院への救急搬送には伊達桑折ICで下りなければならず、さらなるアクセス向上が求められます。そこで、国道115号の改良を県に要望していますが、当会議所だけでなく原町、福島、会津若松、会津喜多方の各商工会議所や各種商工団体も加わったことで県にも前向きに検討していただいているので、引き続き改良実現を目指していきます。  また、相馬野馬追の開催時期が今年から5月に変更されます。周知活動はもちろんのこと、これまで以上の誘客につなげられるよう取り組んでいきたい」  ――最後に、今後の抱負をお聞かせください。  「観光をさらなる産業の柱とすべく『福とら』を生かした『新たな食文化の創造』『豊かな海と城下町の歴史を生かした交流事業』『音楽によるマチ起こし事業』など、これまでの基幹事業に文化事業を幅広く加え、新たなアイデアを駆使しながら交流人口拡大に取り組んでいきたい。近年多くの災いに襲われていますが、転じて福となるよう新たなことに挑戦していきたいです」

  • 【棚倉町】湯座一平町長インタビュー(2024.2)

     1961年生まれ。福島大経済学部卒。2012年9月の棚倉町長選で初当選。2020年8月の町長選で無投票での3選を果たした。 健康づくり、教育、観光・農業振興を推進する。  ――昨年5月8日から新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類に引き下げとなりました。町内の状況はいかがでしょうか。  「5類感染症への移行後は、各種イベントやさまざまな活動が再開されるなど、ようやくコロナ禍前の日常生活に戻ってきたと実感しています。コロナ感染が落ち着きを見せる一方で、原油高、物価高騰による影響が地域経済に影を落としている現状です。本町ではこの間、町民の生活支援や経済対策の一環として、昨年8月と12月に『たなぐら応援クーポン券』を発行し、町内における消費喚起ならびに地域経済の活性化に努めました。  また、『一番お金がかかるのは高校生』との声を踏まえ、新たに『高校生等生活応援給付金』事業を展開し、1人当たり年6万円の給付を実施しながら支援に努めました」  ――2024年度の重点事業について。  「まずは健康づくりです。『健幸なまちづくり』をスローガンに老若男女が希望と生きがいを持ち、健康で活動的に暮らせるまちの実現に向け取り組みます。妊娠期から寄り添った伴走型支援に努め、子育て世帯の孤立・孤独化を防ぎ、子育てに寛容な育児リテラシーを醸成し、『産み育てやすい』『子育てが楽しい』と思えるまちづくりを目指します。また、健診受診率の向上をはじめ、『歩く』健康づくり事業を推進し、健康寿命の延伸を図ります。  次に教育です。引き続きキャリア教育を推進するとともに、タブレットを用いた学習教材の活用やICT環境の整備を行い、一人ひとりに合わせた学習を進めます。今年度は新たに、子どもの夢やチャレンジを支援する『こども未来応援事業』を実施していきます。  観光振興では、2025年度に棚倉城築城400年の節目を迎えるにあたり、プレイベントの実施をはじめ、さまざまな観光施策を展開し、交流人口の拡大を図ります。また、棚倉町歴史的風致維持向上計画に掲げる棚倉城跡周辺道路整備や棚倉城下道路整備、馬場都々古別神社門前環境整備を進め、観光資源の高質化に注力します。  農業振興では、推奨園芸作物推進事業として実施するイチゴ、トマト種子補助にキュウリを加え、農家の皆さまが安定的に経営できるよう県やJAなどと連携強化を図り経済的・技術的な支援を継続して実施します。また、農地利用地域計画を策定します」  ――新年の抱負を。  「本年は辰年です。龍が天に昇るような勢いのある1年となるよう、町民の皆さまとともに『チームたなぐら』をさらに上昇気流に乗せたいと考えますので、皆さまのお力添えを賜りますようお願いいたします」

  • 【小野町】村上昭正町長インタビュー(2024.2)

     1955年生まれ。日大東北工業(現・日大東北)高卒。2004年から小野町議を4期務め、その間、議長を歴任。2021年3月の町長選で初当選。 健康で安心して生活できる町を目指す。  ――間もなく県道36号小野―富岡間が全線開通します。  「全線開通により双葉郡へのアクセスの利便性が増し、小野ICは双葉郡と県中、県南を結ぶ交通の要衝となることから、その優位性を生かしたまちづくりに取り組みます。人、物、情報を還流させ、関係人口や交流人口を増やすため、小野IC周辺近くの国道349号沿いに新庁舎の建設を計画しています。また、防災拠点やターミナル的な物流関係施設、さらには大規模店舗などの誘致活動を進めていこうと考えています。さらに、小野高校が数年後には統合されますので、現在、空き校舎や施設の有効活用などの検討を進めていますが、ICからの導線も考える必要があり、街中の活性化も含めた『(仮称)インターチェンジ未来タウン構想』を策定しているところです」  ――いまお話にあった新庁舎整備について。  「令和9年の開庁に向けて計画を進めており、今年度内に用地交渉を終え、来年度に基本設計に取り掛かる予定です。新庁舎は、防災機能や保健センター機能を併せ持つ複合施設となります。災害時には、防災機能を集約した防災管理室で災害対応にあたるほか、町民の皆さんの避難所となるような設備の充実も図ります。さらに、新庁舎周辺に消防署小野分署や防災公園を設置することで、防災機能の強化を図りたいと考えています」  ――児童館の建設を進めています。  「少子化が進む中、未来を担う子どもたちの健全な育成は、重要な政策課題と捉えています。そのため、廃園となった保育園・幼稚園の跡地に、子どもの活動場所として児童クラブや放課後子ども教室、一時預かり保育などの機能を備えた『(仮称)おのまち児童館』の建設を進めており、令和7年度の開所を目指しています。子どもの安全な遊び場の整備に加え、子ども食堂なども開設することとしており、保護者の皆様からは大きな期待が寄せられています」  ――今後の抱負。  「町の現状をしっかり捉え、持続可能なまちづくりを町民の皆様と進めていきます。また、後継者不足などから農業離れが顕著になっており、農林業改革は待ったなしです。耕作放棄地の活用策について、大学機関やJAなどの協力を得て検討していくほか、新規就農者や研修制度の充実を図り、農家民泊や農家レストランなどの副業についての研究にも取り組みます。そのほか、起業家育成の支援体制整備、外国人との多文化共生の推進、発酵のまちづくりなどにも取り組みます。現在住んでいる方々が、健康で安心して生活できる町を目指し、あらゆる政策を講じていきます」

  • 【鏡石町】木賊正男町長インタビュー(2024.2)

     1956年11月生まれ。須賀川高卒。鏡石町総務課長、教育課長兼公民館長、税務町民課長などを歴任。2022年5月の町長選で無投票初当選。 人口減少対策の受け皿をつくっていきたい。  ――昨年5月から新型コロナウイルスが5類感染症に移行されました。  「5類移行に伴い、町内の商工業者の経済活動にも明るい兆しが見え、制限されていた各種イベントもコロナ禍以前と同じ形で開催することができたので、賑わいが戻ってきたと実感しています」  ――昨年10月には健康福祉センター「ほがらかん」がオープンしました。  「町内の保健福祉施設が老朽化していたことに加え、類似施設の集約や、多目的に使用できる施設にすることを目的に整備を進めてきました。コンセプトの1つに『健康な笑顔が集う場所』があり、安心・安全なまちづくりに向けた福祉避難所としての機能も併せ持った施設となっています。オープンから3カ月でおよそ6000人の方々にご利用いただいています。館内には未就学児を対象とした子育て支援施設もあるため、子育て世代の多くの方々にご利用いただいています。  今後は各種イベント等での利用に加え、先日発生した能登半島地震のような非常時への備えとして、屋外街路灯の下に電源コンセントを設置してあるので、車で避難された方の電源確保やマンホールトイレ、シャワー室の設置など、災害時における一時避難所としての役割が見込まれます。近年は自然災害が多発しており、令和元年東日本台風の際、本町では成田地区の浸水被害があり、そうした経験も踏まえて利活用していく考えです」  ――今後の抱負。  「今年は駅東土地区画整理事業に注力したいと思っており、昨年第3工区の町の保留地の分譲が完了しました。個人所有の土地についても交渉を進めており、少しでも多くの方々に家を建てて住んでいただきたいと考えています。人口問題研究所が発表した2050年の推計によれば、鏡石町は現在の人口から約3000人減の9333人との結果でした。他自治体に比べて本町は人口減少率が低く、年少人口の比率が高いほか、高齢化率も低いので、今後を見据えて人口減少対策の受け皿をつくっていきたいと考えています。  遊水地整備事業についても、用地買収や宅地・建物の補償交渉が具体化しており、その中でも集団移転を希望する方と個人で移転する方がいますから、各々の希望に沿う形で地権者の皆様に寄り添って取り組んでいきます。  就任以来3つのS(スマイル・スピード・シンプル)を基本に町政執行に当たってきましたが、それには町の持っている情報を速やかに発信し、町民の皆様からの信頼を得ることが不可欠です。今後も町民の皆様の信頼を裏切ることなく取り組んでいきます」

  • 【星北斗】参議院議員インタビュー(2024.2)

     ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高校、東邦大学医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長。2022年の参院選で初当選。  派閥の政治資金パーティー問題で大揺れの自民党。国民の視線が厳しさを増す中、岸田文雄総裁を先頭にどこまで改革が進むのか注目されるが、そうした状況を本県選挙区選出で無派閥の星北斗参院議員(59)=1期=はどう見ているのか。政治不信を解消する方策と合わせ、自身が今後とるべき行動を率直に語っていただいた。  ――初当選から約1年半が経過しましたが、この間を振り返って。  「昨年の通常国会では何度も質問に立たせていただきました。いくつか印象に残っているのは、感染症関連の法案審議で、私が経験したコロナ対応などをベースに質問を行い、それが制度に反映されたことと、福島復興再生特措法関連の審議で、特定帰還居住区域に帰ってきた被災者が農業を生業としている場合、農地だけでなく水路、取り付け道路、周辺山林の一部も農業に必要であれば除染の対象になるという明確な答弁をいただけたことです。これらの質問は医療従事者や被災者など現場から寄せられた声がヒントになりました。県議や県幹部の皆さんに相談したり、情報をいただけたりしたことで中身の濃い質問にすることもできました。一回生ではありますが、県民のお役に立つ仕事ができて嬉しく思っています。  一方、昨年の臨時国会では厚生労働委員会理事として、野党の先生方との交渉の一端を担わせていただきました。人脈が広がった点では非常に良い経験でしたが、半面、ほとんど質問できなかったので、1月26日から始まる通常国会ではあらためて質問に立ちたいと考えています」  ――派閥の政治資金パーティー問題に国民は憤っています。無派閥の星議員はどう見ていますか。  「私は派閥のプラス面とマイナス面を見極めたいと考え、入会のお誘いはいただいたもののこの間、無派閥の立場をとってきました。そうした中で今回の問題が起こり、現在は無派閥の先輩議員や一回生議員らと『無派閥や一回生だからこそできること・やるべきことがあるのではないか』と議論を重ねています。  派閥と聞いて真っ先に思い浮かぶのはパーティーですが、大臣や副大臣など人事の推薦が行われたり、内規で定めている定年制が有名無実化されているといった報道も見聞きします。そうした中で、私のような一回生が口を挟んで大丈夫なのかと心配する声もあれば、黙って見過ごすのか、無派閥だからこそはっきり物を言うべきではないかという声もいただいています。私は県民に選んでいただき、県民の負託にこたえるため参院議員になりました。であるならば、言うべきことは言わなければならないという立場から、今の自分に何ができるのか先輩議員らと具体的な行動に移すための準備を進めているところです。  私は社会人として三十数年過ごし、その間にはグループに属したり、今現在グループを率いる立場にもいます。とかく政治の世界は特別と言われますが、だからこそ国民が政治から離れていっている面は否めないと思います。私は政治家の保守本流ではありませんが、長く社会人として過ごしてきた自分をベースに、投票してくださる皆さんの立場に立った行動をとっていきたい」  ――何に手を付け、それによってどう変わったかがはっきり見えないと国民は納得しないと思います。  「岸田総裁はパーティーや人事推薦制度をやめる方針を示していますが、派閥そのものをなくすべきという意見もあります。一方で政策集団としての派閥は必要という声もあります。私は参議院なので普段、衆議院の先生方と会うことがなく、厚生労働委員会以外の先生方と接する機会も少ない。そういう意味では、派閥は人の輪を広げるのに有効だし、政治家としての心構えなど先輩議員から教えていただけることも多々あるので、まずはお金の問題を決着させ、人事推薦制度を改めるなどしてから今後の派閥のあり方を考えるべきだと思います。個人的には派閥=悪という考えは持っていません」  ――自民党の支持率が下がるのは当然ですが、野党の支持率も上がっていません。国民の政治そのものに対する不信を政治家は深刻に受け止めるべきだと思います。  「正直〝場外乱闘〟が多すぎると思います。Xやユーチューブで『説明不足だ』『無知だ』といった発信をよく見かけますが、非常に子どもっぽく感じるし、多くの国民は呆れているのではないでしょうか。  政治家が議論を闘わせる場は国会であり〝場外乱闘〟は慎むべきです。議論の中身も週刊誌報道をあげつらうのではなく、この法律・予算をどうしていくのか国民生活に資することを論じるべきです。さらにテレビ中継が入る予算委員会も国民受けを狙ったパフォーマンスではなく、その名の通り予算をめぐる真摯な議論に努めるべきです。ただ誤解されては困りますが、皆さんが見る機会の少ない各種委員会では専門性の高い議論が行われていることを付言したいと思います。  もう一つ大切なのは、質問や議論の中身を国民に知っていただく努力を国会議員自らがすることです。例えば、ネットで私の名前を検索すれば質問している場面が動画で全て出てきます。過去の議事録も検索できます。それを全ての国民に見ていただくことは不可能だが、国会議員がぜひご覧くださいと積極的に発信すれば、興味のある国民は見ると思うのです。私も、そうやって見ていただいた医療従事者から『いい質問をしてくれてありがとう』『動画を見るまでどんな活動をしているか分からなかった』と言っていただき、一定の手ごたえを感じています。マスコミに報じていただく場合もありますが、切り取られた報じ方をされると無用な誤解を招くことがありますからね。  国政報告も、大勢集めて派手なパーティーを開くのではなく、十数人のミニ集会を各地で行えば、私の考えを理解していただけると同時に、皆さんの思いに直接触れることができます。お互いの絆も深まります。政治を身近に感じていただかないことには信頼回復にはつながらないと思います」  ――新型コロナが収束してきた中で、今後はコロナで得られた知見を新たな感染症対策に生かす取り組みが求められます。  「例えば今回の能登半島地震でも避難所に感染症チームが派遣され、コロナの知見を生かした取り組みが展開されています。医療機関も次に何かが起きた時、自身の役割を都道府県と事前に協議することが法律に明記されました。  さらに感染症の専門家が不足した経験から、県独自に必要な予算を確保し、昨年9月から感染症に特化した看護師の育成事業が県主導のもと民間病院で始まっています。福島方式とも呼べるこの取り組みは、全国から注目を集めています」  ――最後に県民にメッセージを。  「私のモットーは、特定の誰かのためではなく、私を国政に送り出してくださった県民の皆さんを思いながら議員活動するということです。そうした姿を知っていただくためにも、これから多くの皆さんと対話をさせていただきたいと思います」

  • 【亀岡偉民】衆議院議員インタビュー(2024.2)

     かめおか・よしたみ 1955年生まれ。作新学院高、早稲田大卒。現在5期目。この間復興副大臣などを歴任し、現在、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会委員長を務める。  自由民主党福島県連は昨年11月に総務会を開き、新会長に亀岡偉民衆院議員(68、5期、比例東北)を選出した。内閣支持率の低迷が続き、派閥の政治資金パーティーの裏金疑惑も浮上する中で、どのように信頼回復を果たしていく考えなのか。亀岡衆院議員に今後の抱負について語っていただいた。(取材日・1月6日)  ――自民党県連の新会長に就任した経緯と新会長就任の抱負について。  「昨年10月に県議選を終えたのを機に、県連内で体制を新しくしようとの声が上がりました。そうした中で、前会長の根本匠先生(衆院議員、9期、福島2区選出)から『よろしく頼む』と言われて、お受けしました。県議選の時点で有権者から『増税』と言われるなど、政権与党へのイメージが悪かったのは事実であり、自民党がこれから変わるというイメージを持たせる必要がありました。  抱負は、これからいかに自民党の信頼を取り戻すか、ということに尽きます。『自民党だから応援する』ではなく、『こんな取り組みをしている自民党だから応援したい』と言ってもらえる党にすることが大事です。私たちは『原点に立ち返ろう』と呼びかけ合い、『地方から信頼を得られる自民党にしていくために、いま地元で何をすべきか一緒に考えていきましょう』と党内、県連内で話し合っています。  昨今の政策は大都市中心、大企業中心に偏りがちな面がありますが、地方は中小企業、個人事業主の方が多い。地方から景気を回復させるためには、この方たちを助ける必要があります。与党としてスタートアップ事業などに予算を付けているので、これら事業を活用していただき、実績を積み上げることで、信頼回復につなげていきたいと考えています」  ――衆院選小選挙区の区割りが改定されました。亀岡議員が地盤とする福島1区は福島市、二本松市、伊達市、本宮市、伊達郡、安達郡という構成になります。新たに地盤に加わった地域の課題解決に向けて、どう貢献していく考えですか。  「本宮市は令和元年東日本台風で被害を受けましたが、早急に復旧して中心市街地の開発に取り組んでいます。来春には全国初となる24時間営業の水素ステーションが開設される予定で、最先端を走っています。商工団体と行政が連携を密にし、官民一体で課題解決に取り組んでいる印象があります。同市の高松義行市長と、隣接する大玉村の押山利一村長からは『人口増を目指す』という積極的な目標を聞いて感嘆しました。市町村の取り組みを国がバックアップしたらもっと効果を出せるのではないか、と希望が湧きました。  新たにご縁が生まれた地域ですが、父・亀岡高夫(元建設大臣、農林水産大臣)を知っている方も多く、とても温かい環境に置いていただいたと思っています。  ただ、選挙の区割りに関しては有権者の戸惑いを感じます。政治家はその選挙区の代表として国会に行っているのだから、機械的に区割りを決めるのではなく、まず当事者である政治家の意見を聞くべきだったと思います。1票の格差が2倍以上で違憲状態となるから是正しなければならないとのことですが、大都市と地方の不均衡状態を考えると、人口に基づく区割りには違和感を抱きます。『地方と大都市の1票の格差は違憲ではない』と明記するよう、憲法改正を働きかけるのが地方選出国会議員としての責務と考えています」  ――今後の新型コロナウイルスへの対応と、アフターコロナを見据えた戦略についてうかがいます。  「コロナ禍で商売が立ち行かなくなる人が多く出ました。与党自民党では新たな分野へのチャレンジやスタートアップを支援する事業に予算を付けてきたので、今こそ活用してほしい。国が商売の継続を支援し、地方から新たに起業する流れが活発になってほしいですね。  借金返済を迫られると、再起しようとする気持ちを失ってしまうのは事実です。そのため金利の据え置きを再延長できる仕組みを検討して、返せる時に返してもらうやり方で、事業者の方には経営に専念していただき、地方の経済を立て直していくことが大事だと思います」  ――東京電力福島第一原発で増え続ける放射性トリチウムなどを含んだ水(処理水)の海洋放出が始まりました。放出後の本県の風評問題についてどう捉えていますか。  「結果的に、福島県沖の水産物の値段は下がりませんでした。日本中の方に買い支えていただいたおかげです。一方で、県内では風評の影響でインバウンド客が1人も来なくなった地区があり、観光業には大きな打撃となりました。単なる風評被害ではなく『政治的風評被害』と呼ぶべき状況になっています。  やめさせるには風評の元となっている処理水のタンクをどうにかしなければなりません。もし、福島県民がこぞって『タンクを全部なくさない限り風評はなくならない』と考え、双葉町や大熊町のために処理水放出を受け入れていたら、国内で反対の声が上がることはなかっただろうし、諸外国が反対できる状況にもならなかったのではないでしょうか。県内で反対の声が上がったから、日本を批判するための外交に使われた感があります。反対ではなく、どのようにして、タンクが置かれている双葉町、大熊町を守り、復興につなげていけるかが重要だと思います。反対のための反対は止めるべきだし、前に進むためにも、県民の理解を得られるように努力を続けていくしかありません」  ――自民党安倍派・二階派における政治資金パーティーをめぐる裏金問題の影響で、岸田内閣の支持率が低下しています。  「県連会長として、県内の自民党国会議員に聞き取りしましたが、裏金作りは誰も行っていません。パーティー券販売分の一部を受け取る仕組みが慣例としてあり、『収支報告書に書かないでくれ』と言われていたのでどう記載するか会計担当者が苦慮していた実態はありましたが、裏金にした人は1人もいません。  裏金が何を指すのか明確でないままに『裏金問題』と報道されたダメージはものすごく大きいです。『裏金』と言われたものは慣例に起因し、記載が曖昧だったためではないでしょうか。政治資金規正法ができたときに、古くからの慣例を切り替えられなかったかことが問題につながっていると捉えています。  これから検察がどのような捜査をするかは分かりませんが、『裏金』と事実でないことを報道するとしたら大きな問題だと思います。ただ、政治家としては『駄目なものは駄目』としっかり正していきましょうという思いがあります。早く襟を正すことが大事だと考えています」  ――有権者へのメッセージを。  「異常な物価高の中、国民の皆さんに安心してもらえる環境をつくることが私の役目だと考えます。バラマキではなく、理解を得ながら『一緒に頑張りましょう』と並走できる体制で取り組まなければなりません。国民の皆様にはもう一度元気を持ってもらえる政策をつくりながら、政治も進めていくことを示していきたい。地方から経済再生につながる取り組みを進めていきます」

  • 【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー(2024.2)

     はせがわ・こういち 1962年生まれ。法政大卒。堀江工業(いわき市)社長。2019年5月に県建設業協会会長に就き、現在3期目。  ――新年の抱負について、お聞かせください。  「令和6年能登半島地震により被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。被災地の1日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。  近年、自然災害の大規模化やインフラの老朽化が進む中、危機管理を担う地域建設業の役割は一層重要度を増しております。災害から県民の生命・財産を守っていくためには、我々が『地域の守り手』としての責務をしっかりと担えるよう、組織体制と経営基盤の一層の強化を図っていかなければなりません。  本年も県土の復興と建設産業の発展に全力を尽くしていきたいと考えています」  ――建設業においては、時間外労働の上限規制が適用され、労働環境の変革が求められる「2024年問題」が課題となっています。この問題にどのように取り組んでいくお考えですか。  「本年4月からは時間外労働時間の削減と週休2日制も含めた働き方改革を推進しなければなりません。本協会では研修会などを通じ、会員の働き方改革を支援してきましたが、課題も残っています。発注者には、施工時期の平準化、適正な予定価格の設定及び工期はもちろん、書類の簡素化や工事検査の効率化、建設DXの活用などを要望しながら、受発注者が連携して、あらゆる観点から労働時間の削減に向けた取り組みを推進していきたいと考えています」  ――2024年度の重点事業について。  「建設業界の働き方改革が問われる1年になるのではないかと考えています。  労働時間の削減に向けて課題となっていた問題点が現場での施工を通じて、あらためて浮き彫りになってくると考えています。会員の意見を集めながら課題解決に向けた取り組みを推進していきたいと考えています。  一方で、昨今の自然災害の発生を踏まえると、本年も想定外の災害が発生することが懸念されます。現在進められている防災・減災、国土強靭化関連事業を円滑に推進することで、災害に強い県土づくりに貢献するとともに、災害発生時には、県の『指定地方公共機関』としての役割が果たせるよう連絡体制の強化や、大規模災害時の広域的支援に備えた資材備蓄の充実など、災害に備えた組織強化に努めていきます。  また、担い手の確保・育成に向けては、新4Kの魅力を積極的に発信していきます。昨年は職業体験イベントを通じ、小中学生やその保護者に対して『建設業の面白さや楽しさ』を伝えることができました。今後も幅広い世代に対して、入職促進に向けた広報活動を展開していきたいと考えています。  人材の育成についても、土木初任者研修をはじめとした各種研修を開催するなど、会員企業の技術者の育成を継続的に支援していきます」

  • 【福島県商工会連合会】轡田倉治会長インタビュー(2024.2)

     くつわた・くらじ 1942年生まれ。岩瀬村商工会・岩瀬商工会の会長を6期務める。2012年5月から現職。現在4期目。2021年6月から全国商工会連合会副会長。 伴走型支援で経営安定化を後押し  ――コロナ禍が収束に向かう一方で、円安、原油高、物価高騰による地域経済の低迷が顕著となっています。会員事業所の現況についてうかがいます。  「新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが昨年5月8日以降、季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げとなって以降、人の動きも戻ってきたように実感しています。また、インバウンドの回復も相まって会津地域など観光地がある商工会地区などでは多くの来訪者で賑わっているようです。  しかし、本県の商工会地区の多くは農村・山間部にあるため、都市部に比べ少子高齢化による人口減少によって消費需要が低迷している現状にあります。  また、コロナ禍における『ゼロゼロ融資』の返済時期も重なり資金繰りに苦慮している事業者も出始めています。さらには原油高、物価高、特に『人手が足りない』という悩みの声が数多く聞かれ、事業継続にも支障をきたすなど、非常に心配しています。  これらを踏まえ、当連合会では、事業環境の変化に対応し、生産性向上に向けた経営改善の取り組みに尽力します。具体的には、人手による労力を設備や機械で補完し、デジタル化、人工知能(AI)等技術を活用することで経営効率の向上を図っていきます。今後は、国・県などにおける助成金の活用を含め、より一層の相談支援体制の強化に努めていく考えです」  ――2023年10月から、消費税の仕入れ税額控除の方式としてインボイス制度が導入されました。適格請求書発行事業者になると年間売り上げが1000万円以下であっても免税事業者にはならず消費税の申告義務が生じます。連合会としての対応と、会員事業所への影響についてうかがいます。  「小規模事業者、特に個人事業者の場合、事務処理量の増大に加え、新たな税負担が発生することから、事業者の中には廃業を考えるケースも見られ、看過できない状況にあります。2月、3月はインボイス制度導入後初となる確定申告を迎えますが、混乱が生じる可能性もあり注視しています。  当連合会の上部組織である全国商工会連合会として、同制度施行後の経過措置も含め、中小・小規模事業者に対し複数年度にわたり支援する万全の体制構築の実現に向け、組織一丸となって要望活動を展開しています。この間、商工会職員は、同制度の開始前から現在に至るまで懇切丁寧に説明を重ねてきましたが、確定申告を控える中、これからの申告業務などに対しても事業者に寄り添った支援に注力しなければならないと考えます」 ECサイトが好評  ――震災・原発事故からまもなく13年を迎えます。原発被災地における商工会の現況についてうかがいます。  「被災地域における各商工会の事業再開率は久之浜町(いわき市)100%、広野町97・1%、楢葉町92・4%(地元再開率75・8%)、富岡町92・9%(同54%)、大熊町77・8%(同25・3%)、双葉町73・9%(同25・4%)、浪江町77・3%(同36・3%)、小高(南相馬市)67・3%(同41・8%)、飯舘村73%(同41・7%)、川内村96・4%、葛尾村100%、都路町(田村市)97・2%、川俣町100%、鹿島(南相馬市)96%となっています。  特に、原発事故の被害が甚大だった大熊町、双葉町では、特定復興再生拠点区域内の避難指示が解除されましたが、医療機関の施設再開に年数を要すことから、帰還に躊躇してしまうことがあるようです。当連合会でも、引き続き被災自治体と連携を図りながら、住民と事業者の帰還はもちろん、避難先での事業継続と安定を支援していかなければならないと考えます」  ――2024年度の重点事業と活動方針についてうかがいます。  「アフターコロナを見据えた経営支援として、ECサイト『シオクリビト』による通販事業の充実・強化を図っていきます。今般『売りはモノではなくヒト』をコンセプトに、福島の面白い生産者100人の思いを掲載した『シオクリビト図鑑』を発行しました。同事業は大変好評なので、今後もさらに充実・発展させながら、消費喚起やビジネスチャンスにつなげていきたいと考えます。また、懸案である事業承継をはじめ、創業支援にも鋭意努めていきます」  ――今後の抱負を。  「当連合会は、徹底した伴走型支援を大きな柱に据えた支援を展開しています。職員が積極的に会員事業者に出向くスタイルを貫徹するなど、しっかり寄り添った支援体制を構築しながら中小・小規模事業者の経営安定化・事業継続を強力に後押ししています。おかげさまで『商工会の職員は非常に良くやってくれている』、『よく指導支援していただき助かっている』との声も寄せられています。今後もこの方針を堅持しながら会員事業所から信頼される商工会を目指していきます」

  • 【福島県中小企業家同友会】齋藤記子会長インタビュー(2024.2)

     さいとう・のりこ 1952年生まれ。(株)cluster取締役会長。福島県中小企業家同友会会津地区会長、同副理事長、同代表理事を経て、2023年4月から現職。 組織強化と会員との信頼構築に挑む  ――新会長に就任して1年が経過しました。  「北海道・東北ブロックでは女性初の会長職ということもあり、重責に押しつぶされそうなときもありました。ただ、藤田光夫前会長に推薦していただいたからには、『何らかの役に立ちたい』という思いでやってきました。時間が経つにつれて、私自身の役目も見えてきて、『決断』、『責任』、『調和』が大事だと思うようになりました。物事についての判断はそれぞれの支部長や代表理事にお任せしています。私はそういった情報を受けて、同友会としてどのような形で進むか、あるいは取りやめるかの『決断』をすることが役目だと思っています。また、同友会では、『深める、進む、新しい』の3つのシンカというスローガンを掲げていますが、理事会などの会合で1人の強い意見で物事が決まっていくのではなく、それぞれが忌憚のない意見を言える雰囲気づくりに努めて『調和』を重んじるのも私の役目です」  ――県内経済の状況について。  「飲食業界をはじめとする中小企業の経営環境の厳しさについて、いろんな方面から話を聞いています。都会には大企業があって、人が多く集まってくるので、景気がよくなれば従業員に還元という形で、給料を上げることができるでしょう。ただ、地方の中小企業ではそう簡単にはいきません。多くの経営者が、日々の仕事に対し給料アップという分かりやすい形でモチベーションを上げたいと思っています。しかし、そのための原資がなければやろうと思ってもできません。どんな商売も単価を上げれば客が減るかもしれず、人口減少でそもそものパイが少なくなっている。そういったところが地方の中小企業の悩みだと思います」  ――同友会や会員の企業で新しい取り組み、頑張っている企業などあれば教えてください。  「会員が経営している喜多方市の橋谷田商店と荒川産業が、県内で発生した古紙を再利用したトイレットペーパー『フクメグリ』を開発し、コープあいづのスーパー全8店舗で売り出しました。こういった先駆的な取り組みを会員同士がコラボレーションしてできていることは喜ばしいです。会津支部では『食と農と工芸委員会』を設けており、さまざまな業種によるコラボレーションが実現可能となっていますが、そうした点は同友会の魅力でもあります」 会員2500名を目指す  ――物価高や燃料高騰など、常に変化が求められる時代ですが、企業や経営者に求められる資質とは何だと思いますか。  「同友会は全国的に『決して悪徳商人にはならない』との声明を出しております。個人的に重んじているのは『職業倫理』です。皆で同じ仕事をするときに、どういう気持ちで向き合うのか。具体的には『値段が高いのに製品の質が悪い』、『サービス単価が高いのに対応が良くない』とならないようにすることを心がけています。  私が経営しているのは福祉事業と介護事業なので、守秘義務を守ることや誠実さが求められます。スタッフは利用者さんに目を向け、管理者がスタッフに目を向けていれば、虐待などさまざまな問題も起きにくいと思っています。もっと言えば、刑事の勘ではないですが、最初の動作や言動でその人の性質は分かるものです。『この人に任せてはまずいな』と思えばすぐに担当から外れていただくなどの対応をしています」  ――今年の抱負を。  「引き続き同友会の組織強化を図っていきます。『支部の下部組織の地区会の規模を100人以内にする』ことによって、会員一人ひとりの顔が見える組織になり、退会者が出にくくなるというデータに基づき、組織改編を行っていきたいと考えています。区切り方としては、距離なのか、地区ごとなのか、というのは各地域の地域性に合わせて進めていきます。どういった改革を行っていくのか、また事業費をどのように運用していくかを具現化していけるよう引き続き取り組んでいきます。  また全体としては、会員が現在1861名ですが、将来的に2500名を目指していきます。そのために私が重要だと考えているのは、同友会事務局の立ち位置です。単なる事務ではなく一緒に創り上げていく『パートナー』だということを浸透させていきたいです。会員を増やすことや、新入会員へのフォローなどは、事務局の協力が欠かせません。また、業務や運営にどういった課題があるかを吸い上げるために、事務局員に対して面談を進めています。いろんな角度からの意見を聞いて、事務局とのパートナーシップを強化し、同友会の運営を行っていきます。  自分の身の丈を知っているので、背伸びせず、周りの方々に協力してもらいながら取り組んでいければと思っています」