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  • 内堀知事「二つの憂鬱」

    内堀知事「二つの憂鬱」

     ここ最近、内堀雅雄知事(59)を悩ませていたのがジャニーズ事務所の性加害問題と、東京電力福島第一原発の敷地内に溜まる汚染水(ALPS処理水)の海洋放出だ。二つの問題は現在進行形だが、ジャニーズ問題は県としての対応を発表し、海洋放出は国・東電が実行に踏み切ったことで、県の手を離れたかのような雰囲気が漂っている。 ジャニーズ問題、汚染水放出にどう対応したか  世間を大きく揺るがすジャニーズ事務所の性加害問題。所属タレントはこれまで多くのメディアを席巻してきたが、前社長による若手タレントへの複数の性加害を、同事務所があったと認め謝罪すると、大企業を中心に所属タレントのCM起用を見合わせる動きが一斉に広まった。  こうした中で注目を集めたのが福島県の動向だった。  県は震災翌年の2012年度からジャニーズ事務所のアイドルグループ「TOKIO」と連携し、県産農林水産物のPR活動などを展開してきた。TOKIOが震災前から頻繁に県内を訪れ、DASH村などの番組づくりをしてきた縁でメンバーが風評払拭などの取り組みに積極的に関わってきた。震災から12年経ち、メンバーが5人から3人になってもTOKIOの「福島を応援したい」という姿勢は変わらず、県は現在も県産農林水産物のCMやポスターにメンバーを起用している。  2021年度からはTOKIOとの連携がさらに深まり、県は風評・風化戦略室内にTOKIOとの窓口となるバーチャル課「TOKIO課」を設置。昨年5月には西郷村内に福島の自然を生かした交流施設「TOKIO―BA」が設けられ、メンバーが不定期に訪れて来場者と接するなど活動範囲は広がりを見せていた。  前社長による性加害問題は、そんなTOKIOと福島県の結び付きに水を差すものだった。  「所属タレントの起用はチャイルド・アビューズ(子どもへの虐待)を認めることになる」  「被害者への救済策が示されると同時に、事務所運営の抜本的是正が認められなければ取引を続けることはできない」  という厳しい声のもと、経済界のジャニーズ離れが加速していく中、県はTOKIOとの連携を継続するのか、それとも解消するのか――9月15日に発表された「県の正式な考え方」とする談話は次のようなものだった。  《大前提として、いかなる性加害も絶対に許されるものではない。性加害は、被害者の尊厳を踏みにじる極めて悪質な行為》《ジャニーズ事務所においては、人権を尊重し、被害者救済や再発防止策など、社会的責任をしっかり果たすべき》《TOKIOの皆さんは、震災と原発事故後、私たちが風評被害などで最も悩み苦しんでいた時も、福島に寄り添い続け、県民を勇気づけていただいた。長年にわたり、県産農林水産物のPRなどに協力いただくなど、福島を全力で応援し続けていただいていることに心から感謝している》《TOKIOの皆さんには、今後も変わらず福島県を応援していただきたい》  県はTOKIOとの連携を継続すると明言したのだ。この2日前、農林水産省がメンバーの城島茂さんについて、広報大使としての起用を取りやめると発表した際は「国がやめれば県も従うのではないか」と囁かれたが、予想に反して連携解消には向かわなかった。同じく所属タレントの起用を控えると発表した小池百合子東京都知事や大村秀章愛知県知事と比べても、福島県は独自の判断を下したことが見て取れる。  県の判断は概ね好意的に受け止められている。ネット上では「TOKIOとの縁が切れずによかった」「彼らはずっと福島に寄り添い続けてくれた。連携継続は当然だ」と評価され、福島民報と福島テレビが共同で行った県民世論調査でも「連携継続に賛成」と答えた人は73・9%に上った(福島民報9月25日付)。  上辺だけの付き合いしかしてこなかった大企業と異なり、福島県は長い時間をかけてTOKIOとの絆を構築し、県民はメンバーの活動する姿を間近で見続けてきた。県民が寄せる彼らへの尊敬と信頼は絶大。そう考えると、7割以上の人が賛成という結果は驚きでも何でもなく、ごく自然なことと言える。  そうした事実を踏まえた上で、しかし、冷静に判断するための材料をここに提示したい。  ジャニーズ事務所の関連会社として2020年7月22日に設立された㈱TOKIOは、同事務所と同じ東京都港区赤坂九丁目6―35に本店を置く。資本金1000万円。  事業目的は①芸能人・文化人等のマネジメント、②イベント・コンサート・講演会等の企画、制作および運営、③本・グッズ・CD・DVD等の商品の企画、制作および製造販売、④映画・テレビ番組等の企画、制作および運営、⑤著作権・著作隣接権等の管理、⑥広告の制作、代理店業、⑦不動産の管理および運営。  役員は代表取締役藤島ジュリー景子、取締役城島茂、國分太一、松岡昌宏の各氏。 ジャニーズ資本の会社 TOKIOを起用した「ふくしまの米」をPRするポスター  ㈱TOKIOは対外的に「社長」は城島さん、「副社長」は國分さんと松岡さんと発表しているが、3氏は代表権を持っておらず、創業者一族である藤島氏がオーナーとして君臨しているのである。県は「㈱TOKIOとは付き合いがあるが、ジャニーズ事務所と契約しているわけではない」と説明するが、両社が同じ場所に事務所を構えていることは知っているはずで、詭弁に過ぎない。  こうした状況を、ジャニーズ問題で人権侵害とともに叫ばれているコンプライアンス(法令順守)の視点から考えてみたい。  企業が事件を起こした時、取引先は一斉に契約を解除し、場合によっては違約金を請求することもある。担当社員は優秀で仕事ができる。好感度も高い。本音はその社員と今後も付き合いを継続していきたい。しかし、所属する企業が問題を起こした以上、コンプライアンスの観点から契約を解除せざるを得ない――こうした考え方のもと、県は企業と取引してきたはずだ。  「所属タレントに罪はなく彼らも被害者」と擁護する人もいるが、だったら事件を起こした一般企業の社員も同じように擁護されなければ不公平だ。「TOKIOは他とは別」と言い切るのも、コンプライアンスのなし崩しにつながってしまう。  どこまで行ってもジャニーズ事務所の影がチラつく限り、㈱TOKIOとの連携はどこかスッキリしない感覚に陥るのだ。  しかし、TOKIOとの連携はこれからも是非継続したいということなら、人権尊重とコンプライアンスを担保するためにも、㈱TOKIOがジャニーズ事務所の資本から離脱し、本店も移して独立採算制に移行した方がいい、というのが本誌の見解である。  実際、先の県民世論調査でも「連携継続に反対」は13・2%、「分からない」は12・8%に上った。この3割の人たちも、TOKIOのこれまでの活動に感謝しているはずだが、一方で人権尊重やコンプライアンスの視点は欠くべきではないと考えているのではないか。そういう意味では、TOKIOへの感情移入だけで答えていない冷静な人たちと言えるのかもしれない。  人権尊重に対する認識は、一昔前とは大きく変わっているが、世界標準と比べると日本はまだまだ遅れている。海外では有名な映画監督や大物プロデューサーがかつての性加害行為で追及されると、スポンサー契約を打ち切られ、会社を追われるだけでなく、その会社は生き残るために社名を変更して出直す事態が頻繁に起こっている。社会全体が「性加害は絶対に許さない」という考え方で一致している。  誤解されては困るが、本誌はTOKIOとの連携継続に反対しているわけではない。今まで福島県を応援し続けてくれたことには素直に感謝している。しかし、所属事務所に忌まわしい事件が起きてしまった以上は、モヤモヤ感が残ったまま応援してもらうより、㈱TOKIOにジャニーズ事務所との資本関係を見直してもらい、あらためて結び付きを深めていった方がいいのではないか。  この問題に限らず、内堀知事は難しい問題について踏み込んだ発言を一切しないので、関係見直しを提案することは考えにくいが、人権尊重とコンプライアンスの考えを持ち合わせているなら、先の「県の正式な考え方」を発表して終わるのではなく、県民が素直に歓迎できるよう、TOKIOとのスッキリした新しい関係を構築していくべきだ。 知事の責任を問う神山県議 神山悦子県議  県議会9月定例会は9月11日に開会し、13、14日に代表質問、19、20日に一般質問が行われた。代表質問は共産党の神山悦子議員、自民党の小林昭一議員、県民連合の亀岡義尚議員が質問台に立ち、それぞれが汚染水(ALPS処理水)の海洋放出に関する質問を行った。一般質問でも、質問した10人中3人がこの問題に触れた。  初日の代表質問について、地元紙は14日付紙面で伝えたが、海洋放出関連の質問・答弁は、福島民報では全く触れられておらず、福島民友では小さく扱われただけだった。  複数議員がこの問題を取り上げた中でも、神山悦子議員は「漁業者をはじめ、県民の合意がないまま海洋放出を強行した国と東京電力に強く抗議し、撤回中止を求めるべき」と迫った。  神山議員は「国、東京電力は県漁連と2015年8月に交わした『関係者の理解なしにいかなる処分も行わない』との約束を反故にした」、「知事はまるで他人事のように、『国が責任を持って対応すべきもの』と述べ、国に責任を丸投げしている。県民を代表する首長としてはいかがなものか」などと述べた。  そのうえで、「東京電力は先日、初回分の7788立方㍍の放出が完了したと発表し、設備の点検のため、現段階では放出を停止しています。海洋放出後に発生したこの間の国内外における様々な問題を見ても、このまま中止することが解決の確かな道ではないでしょうか? 漁業者との約束を反故にし、漁業者をはじめ、県民の合意がないまま海洋放出を強行した国と東京電力に強く抗議し、撤回中止を求めるべきと思いますが、知事の考えをうかがいます」として、内堀知事の見解を問うた。  これに対し、内堀知事はこう答弁した。  「海洋放出に当たっては、廃炉等を進めるうえで、やむを得ないとする意見がある一方で、海洋放出に反対する意見や、新たな風評を懸念する声など、様々な意見が示されています。処理水の海洋放出は、長期間にわたる取り組みが必要であり、安全の確保や新たな風評を生じさせないなど、万全な対策を徹底的に講じることが重要です。このため、8月22日に経済産業大臣に対し、あらためて安全確保の徹底や国内外への正確な情報発信、万全な風評対策に取り組むことに加え、特に水産業については、漁業関係者が風評の発生を強く懸念していることから、復興の取り組みを妨げることなく、将来にわたってなりわいを継続し、次世代へ確実につないでいけるよう、必要な対策を徹底的に講じることを強く求めました。処理水の問題は、福島県だけではなく、日本全体の問題です。引き続き、国に対し、国が前面に立ち、政府一丸となって、万全な対策を講じ、最後まで全責任を全うするよう求めていきます」  神山議員が再質問を行う。  「8月から福島復興共同センターが緊急に署名運動に取り組みました。これは海洋放出を強行しないことを求める緊急署名です。8月31日に7万1617人分の署名を国に提出しています。現時点でオンライン署名は約14万6000人分、紙ベース署名は約5600人分ですから合計約15万1600人分です。さらに、今回の海洋放出決定後に放出差し止め訴訟が福島地裁に提起されました。ここには漁業関係者も入っています。この間、こうした県民運動がいろいろありました」  「知事は2015年の県漁連と国、東京電力が交わした約束について何も触れていませんが、私はこれは重要な約束だったと思うんです。この約束が本当に守られているかどうか、私は客観的に見て破られたと思いますよ。いま、(1回目の海洋放出を終え、設備点検のために)止まっていますから、海洋放出をしないこの状態を県として、知事として国、東京電力に求めることが様々な問題を解決することになり、そういう立場だと思いますから、知事もう一度お答えいただけませんか」  内堀知事の答弁はこうだ。  「ALPS処理水の海洋放出について、県漁連は『ALPS処理水の放出事業が進み、廃炉が完遂した時点で、福島の漁業がなりわいとして継続していれば、約束は果たされたこととしたい』と述べられました。国、東京電力は、こうした漁業者の皆さんの思いをしっかり胸に刻み、新たな風評を生じさせないという決意のもと、漁業者の皆さんが将来にわたり漁業を継続していけるよう万全の対策を講じるなど、最後まで全責任を持って取り組むべきであると考えています」  最後に、神山議員は「そんな先の約束より、いまに注視して、それで皆さんの声を聞いていく、と。知事はそのくらいの立場に立つべきだと思います。いまちょうど(海洋放出が)止まっていますから、そういった声を聞いて判断すべきだと思いますので、中止という立場も踏まえてご答弁をお願いします」と訴えた。  内堀知事は次のように答弁した。  「ALPS処理水の海洋放出について、漁業者の皆さんからは風評被害などに対する不安や懸念、県産魚介類の販路拡大の支援などを求める意見とともに、我々の願いは漁業を続けていくというその一点であるといった切実な声を示されています。国、東京電力は、そうした漁業者の皆さんの思いを真摯に受け止め、新たな風評を生じさせないという決意のもと、漁業者の皆さんが将来にわたり漁業を継続していけるよう万全の対策を講じるなど、最後まで責任を持って取り組むべきであると考えています」  内堀知事はこれまで通り、「国の責任で」という姿勢に終始した。 国に従順な内堀知事 内堀雅雄知事  この間、本誌で何度も指摘してきたように、内堀知事は官僚出身ということもあってか「国に従順」との評価が定着している。その代表例として言われているのが、原発事故直後、国から県に寄せられたスピーディ(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報を、当時副知事だった内堀氏の判断で公表しなかったとされる問題。「国がスピーディの情報を公表していないのに、県が先駆けて公表するわけにはいかない」といった官僚気質がそうした事態を招いたと言われている。  ほかにもコロナ対策について、本誌では「基本は外出自粛などの徹底と、国民の生活保障、自粛に伴う事業者への減収補償のセットでなければならない。幸い福島県(県民、県内企業など)は原発賠償の経験から『補償』に関する知識があるから先行事例になれる。それを生かして、福島県が率先して事業者への減収補償を行えばいい。福島県がそれをやれば他地域に広がり、コロナ対策が実のあるものとなる」と指摘した。その一方で、「国が『休業補償はしない』という中で、国に従順な内堀知事がそれをやるとは思えないが……」とも書いた。  今回の問題も同様で、国への従順姿勢から海洋放出を黙認し、「国が責任を持って対応すべき」との見解しか示さない。福島県民の代表として役割を果たしているとは言い難い。

  • 内堀知事「二つの憂鬱」

     ここ最近、内堀雅雄知事(59)を悩ませていたのがジャニーズ事務所の性加害問題と、東京電力福島第一原発の敷地内に溜まる汚染水(ALPS処理水)の海洋放出だ。二つの問題は現在進行形だが、ジャニーズ問題は県としての対応を発表し、海洋放出は国・東電が実行に踏み切ったことで、県の手を離れたかのような雰囲気が漂っている。 ジャニーズ問題、汚染水放出にどう対応したか  世間を大きく揺るがすジャニーズ事務所の性加害問題。所属タレントはこれまで多くのメディアを席巻してきたが、前社長による若手タレントへの複数の性加害を、同事務所があったと認め謝罪すると、大企業を中心に所属タレントのCM起用を見合わせる動きが一斉に広まった。  こうした中で注目を集めたのが福島県の動向だった。  県は震災翌年の2012年度からジャニーズ事務所のアイドルグループ「TOKIO」と連携し、県産農林水産物のPR活動などを展開してきた。TOKIOが震災前から頻繁に県内を訪れ、DASH村などの番組づくりをしてきた縁でメンバーが風評払拭などの取り組みに積極的に関わってきた。震災から12年経ち、メンバーが5人から3人になってもTOKIOの「福島を応援したい」という姿勢は変わらず、県は現在も県産農林水産物のCMやポスターにメンバーを起用している。  2021年度からはTOKIOとの連携がさらに深まり、県は風評・風化戦略室内にTOKIOとの窓口となるバーチャル課「TOKIO課」を設置。昨年5月には西郷村内に福島の自然を生かした交流施設「TOKIO―BA」が設けられ、メンバーが不定期に訪れて来場者と接するなど活動範囲は広がりを見せていた。  前社長による性加害問題は、そんなTOKIOと福島県の結び付きに水を差すものだった。  「所属タレントの起用はチャイルド・アビューズ(子どもへの虐待)を認めることになる」  「被害者への救済策が示されると同時に、事務所運営の抜本的是正が認められなければ取引を続けることはできない」  という厳しい声のもと、経済界のジャニーズ離れが加速していく中、県はTOKIOとの連携を継続するのか、それとも解消するのか――9月15日に発表された「県の正式な考え方」とする談話は次のようなものだった。  《大前提として、いかなる性加害も絶対に許されるものではない。性加害は、被害者の尊厳を踏みにじる極めて悪質な行為》《ジャニーズ事務所においては、人権を尊重し、被害者救済や再発防止策など、社会的責任をしっかり果たすべき》《TOKIOの皆さんは、震災と原発事故後、私たちが風評被害などで最も悩み苦しんでいた時も、福島に寄り添い続け、県民を勇気づけていただいた。長年にわたり、県産農林水産物のPRなどに協力いただくなど、福島を全力で応援し続けていただいていることに心から感謝している》《TOKIOの皆さんには、今後も変わらず福島県を応援していただきたい》  県はTOKIOとの連携を継続すると明言したのだ。この2日前、農林水産省がメンバーの城島茂さんについて、広報大使としての起用を取りやめると発表した際は「国がやめれば県も従うのではないか」と囁かれたが、予想に反して連携解消には向かわなかった。同じく所属タレントの起用を控えると発表した小池百合子東京都知事や大村秀章愛知県知事と比べても、福島県は独自の判断を下したことが見て取れる。  県の判断は概ね好意的に受け止められている。ネット上では「TOKIOとの縁が切れずによかった」「彼らはずっと福島に寄り添い続けてくれた。連携継続は当然だ」と評価され、福島民報と福島テレビが共同で行った県民世論調査でも「連携継続に賛成」と答えた人は73・9%に上った(福島民報9月25日付)。  上辺だけの付き合いしかしてこなかった大企業と異なり、福島県は長い時間をかけてTOKIOとの絆を構築し、県民はメンバーの活動する姿を間近で見続けてきた。県民が寄せる彼らへの尊敬と信頼は絶大。そう考えると、7割以上の人が賛成という結果は驚きでも何でもなく、ごく自然なことと言える。  そうした事実を踏まえた上で、しかし、冷静に判断するための材料をここに提示したい。  ジャニーズ事務所の関連会社として2020年7月22日に設立された㈱TOKIOは、同事務所と同じ東京都港区赤坂九丁目6―35に本店を置く。資本金1000万円。  事業目的は①芸能人・文化人等のマネジメント、②イベント・コンサート・講演会等の企画、制作および運営、③本・グッズ・CD・DVD等の商品の企画、制作および製造販売、④映画・テレビ番組等の企画、制作および運営、⑤著作権・著作隣接権等の管理、⑥広告の制作、代理店業、⑦不動産の管理および運営。  役員は代表取締役藤島ジュリー景子、取締役城島茂、國分太一、松岡昌宏の各氏。 ジャニーズ資本の会社 TOKIOを起用した「ふくしまの米」をPRするポスター  ㈱TOKIOは対外的に「社長」は城島さん、「副社長」は國分さんと松岡さんと発表しているが、3氏は代表権を持っておらず、創業者一族である藤島氏がオーナーとして君臨しているのである。県は「㈱TOKIOとは付き合いがあるが、ジャニーズ事務所と契約しているわけではない」と説明するが、両社が同じ場所に事務所を構えていることは知っているはずで、詭弁に過ぎない。  こうした状況を、ジャニーズ問題で人権侵害とともに叫ばれているコンプライアンス(法令順守)の視点から考えてみたい。  企業が事件を起こした時、取引先は一斉に契約を解除し、場合によっては違約金を請求することもある。担当社員は優秀で仕事ができる。好感度も高い。本音はその社員と今後も付き合いを継続していきたい。しかし、所属する企業が問題を起こした以上、コンプライアンスの観点から契約を解除せざるを得ない――こうした考え方のもと、県は企業と取引してきたはずだ。  「所属タレントに罪はなく彼らも被害者」と擁護する人もいるが、だったら事件を起こした一般企業の社員も同じように擁護されなければ不公平だ。「TOKIOは他とは別」と言い切るのも、コンプライアンスのなし崩しにつながってしまう。  どこまで行ってもジャニーズ事務所の影がチラつく限り、㈱TOKIOとの連携はどこかスッキリしない感覚に陥るのだ。  しかし、TOKIOとの連携はこれからも是非継続したいということなら、人権尊重とコンプライアンスを担保するためにも、㈱TOKIOがジャニーズ事務所の資本から離脱し、本店も移して独立採算制に移行した方がいい、というのが本誌の見解である。  実際、先の県民世論調査でも「連携継続に反対」は13・2%、「分からない」は12・8%に上った。この3割の人たちも、TOKIOのこれまでの活動に感謝しているはずだが、一方で人権尊重やコンプライアンスの視点は欠くべきではないと考えているのではないか。そういう意味では、TOKIOへの感情移入だけで答えていない冷静な人たちと言えるのかもしれない。  人権尊重に対する認識は、一昔前とは大きく変わっているが、世界標準と比べると日本はまだまだ遅れている。海外では有名な映画監督や大物プロデューサーがかつての性加害行為で追及されると、スポンサー契約を打ち切られ、会社を追われるだけでなく、その会社は生き残るために社名を変更して出直す事態が頻繁に起こっている。社会全体が「性加害は絶対に許さない」という考え方で一致している。  誤解されては困るが、本誌はTOKIOとの連携継続に反対しているわけではない。今まで福島県を応援し続けてくれたことには素直に感謝している。しかし、所属事務所に忌まわしい事件が起きてしまった以上は、モヤモヤ感が残ったまま応援してもらうより、㈱TOKIOにジャニーズ事務所との資本関係を見直してもらい、あらためて結び付きを深めていった方がいいのではないか。  この問題に限らず、内堀知事は難しい問題について踏み込んだ発言を一切しないので、関係見直しを提案することは考えにくいが、人権尊重とコンプライアンスの考えを持ち合わせているなら、先の「県の正式な考え方」を発表して終わるのではなく、県民が素直に歓迎できるよう、TOKIOとのスッキリした新しい関係を構築していくべきだ。 知事の責任を問う神山県議 神山悦子県議  県議会9月定例会は9月11日に開会し、13、14日に代表質問、19、20日に一般質問が行われた。代表質問は共産党の神山悦子議員、自民党の小林昭一議員、県民連合の亀岡義尚議員が質問台に立ち、それぞれが汚染水(ALPS処理水)の海洋放出に関する質問を行った。一般質問でも、質問した10人中3人がこの問題に触れた。  初日の代表質問について、地元紙は14日付紙面で伝えたが、海洋放出関連の質問・答弁は、福島民報では全く触れられておらず、福島民友では小さく扱われただけだった。  複数議員がこの問題を取り上げた中でも、神山悦子議員は「漁業者をはじめ、県民の合意がないまま海洋放出を強行した国と東京電力に強く抗議し、撤回中止を求めるべき」と迫った。  神山議員は「国、東京電力は県漁連と2015年8月に交わした『関係者の理解なしにいかなる処分も行わない』との約束を反故にした」、「知事はまるで他人事のように、『国が責任を持って対応すべきもの』と述べ、国に責任を丸投げしている。県民を代表する首長としてはいかがなものか」などと述べた。  そのうえで、「東京電力は先日、初回分の7788立方㍍の放出が完了したと発表し、設備の点検のため、現段階では放出を停止しています。海洋放出後に発生したこの間の国内外における様々な問題を見ても、このまま中止することが解決の確かな道ではないでしょうか? 漁業者との約束を反故にし、漁業者をはじめ、県民の合意がないまま海洋放出を強行した国と東京電力に強く抗議し、撤回中止を求めるべきと思いますが、知事の考えをうかがいます」として、内堀知事の見解を問うた。  これに対し、内堀知事はこう答弁した。  「海洋放出に当たっては、廃炉等を進めるうえで、やむを得ないとする意見がある一方で、海洋放出に反対する意見や、新たな風評を懸念する声など、様々な意見が示されています。処理水の海洋放出は、長期間にわたる取り組みが必要であり、安全の確保や新たな風評を生じさせないなど、万全な対策を徹底的に講じることが重要です。このため、8月22日に経済産業大臣に対し、あらためて安全確保の徹底や国内外への正確な情報発信、万全な風評対策に取り組むことに加え、特に水産業については、漁業関係者が風評の発生を強く懸念していることから、復興の取り組みを妨げることなく、将来にわたってなりわいを継続し、次世代へ確実につないでいけるよう、必要な対策を徹底的に講じることを強く求めました。処理水の問題は、福島県だけではなく、日本全体の問題です。引き続き、国に対し、国が前面に立ち、政府一丸となって、万全な対策を講じ、最後まで全責任を全うするよう求めていきます」  神山議員が再質問を行う。  「8月から福島復興共同センターが緊急に署名運動に取り組みました。これは海洋放出を強行しないことを求める緊急署名です。8月31日に7万1617人分の署名を国に提出しています。現時点でオンライン署名は約14万6000人分、紙ベース署名は約5600人分ですから合計約15万1600人分です。さらに、今回の海洋放出決定後に放出差し止め訴訟が福島地裁に提起されました。ここには漁業関係者も入っています。この間、こうした県民運動がいろいろありました」  「知事は2015年の県漁連と国、東京電力が交わした約束について何も触れていませんが、私はこれは重要な約束だったと思うんです。この約束が本当に守られているかどうか、私は客観的に見て破られたと思いますよ。いま、(1回目の海洋放出を終え、設備点検のために)止まっていますから、海洋放出をしないこの状態を県として、知事として国、東京電力に求めることが様々な問題を解決することになり、そういう立場だと思いますから、知事もう一度お答えいただけませんか」  内堀知事の答弁はこうだ。  「ALPS処理水の海洋放出について、県漁連は『ALPS処理水の放出事業が進み、廃炉が完遂した時点で、福島の漁業がなりわいとして継続していれば、約束は果たされたこととしたい』と述べられました。国、東京電力は、こうした漁業者の皆さんの思いをしっかり胸に刻み、新たな風評を生じさせないという決意のもと、漁業者の皆さんが将来にわたり漁業を継続していけるよう万全の対策を講じるなど、最後まで全責任を持って取り組むべきであると考えています」  最後に、神山議員は「そんな先の約束より、いまに注視して、それで皆さんの声を聞いていく、と。知事はそのくらいの立場に立つべきだと思います。いまちょうど(海洋放出が)止まっていますから、そういった声を聞いて判断すべきだと思いますので、中止という立場も踏まえてご答弁をお願いします」と訴えた。  内堀知事は次のように答弁した。  「ALPS処理水の海洋放出について、漁業者の皆さんからは風評被害などに対する不安や懸念、県産魚介類の販路拡大の支援などを求める意見とともに、我々の願いは漁業を続けていくというその一点であるといった切実な声を示されています。国、東京電力は、そうした漁業者の皆さんの思いを真摯に受け止め、新たな風評を生じさせないという決意のもと、漁業者の皆さんが将来にわたり漁業を継続していけるよう万全の対策を講じるなど、最後まで責任を持って取り組むべきであると考えています」  内堀知事はこれまで通り、「国の責任で」という姿勢に終始した。 国に従順な内堀知事 内堀雅雄知事  この間、本誌で何度も指摘してきたように、内堀知事は官僚出身ということもあってか「国に従順」との評価が定着している。その代表例として言われているのが、原発事故直後、国から県に寄せられたスピーディ(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報を、当時副知事だった内堀氏の判断で公表しなかったとされる問題。「国がスピーディの情報を公表していないのに、県が先駆けて公表するわけにはいかない」といった官僚気質がそうした事態を招いたと言われている。  ほかにもコロナ対策について、本誌では「基本は外出自粛などの徹底と、国民の生活保障、自粛に伴う事業者への減収補償のセットでなければならない。幸い福島県(県民、県内企業など)は原発賠償の経験から『補償』に関する知識があるから先行事例になれる。それを生かして、福島県が率先して事業者への減収補償を行えばいい。福島県がそれをやれば他地域に広がり、コロナ対策が実のあるものとなる」と指摘した。その一方で、「国が『休業補償はしない』という中で、国に従順な内堀知事がそれをやるとは思えないが……」とも書いた。  今回の問題も同様で、国への従順姿勢から海洋放出を黙認し、「国が責任を持って対応すべき」との見解しか示さない。福島県民の代表として役割を果たしているとは言い難い。