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  • 【福島県ユーチューバー】車中泊×グルメで登録者数10万人【戦力外110kgおじさん

    【戦力外110kgおじさん】福島県内在住おじさんユーチューバーの素顔  テレビ離れが進む昨今、ユーチューブの全世代の利用率は9割だ。本誌の読者層であるシニア世代も、パソコンやスマートフォンで毎日のようにユーチューブを見ている人は多いはず。数あるチャンネルの中には、県内で活動するユーチューバーも多数存在する。その中に、異色のジャンル「車中泊&グルメ」系で人気を誇る「戦力外110kgおじさん(43歳)」がいる。なぜ視聴者はこのチャンネルにハマるのか、本人へのインタビューをもとに、その謎に迫ってみたい。  週末夜のキャンプ場。辺り一面、真っ暗の中、ポツンと明かりが灯る1台のプリウス。その車の後部座席で、一人焼肉をしながらチューハイ「ストロングゼロ」をキメる――。そんな様子をユーチューブに配信している男性がいる。男性の名は「戦力外110kgおじさん」(以下、戦力外さんと表記)。戦力外さんのユーチューブのチャンネル登録者数は10・5万人。1つの動画が配信されれば20万回再生するのは当たり前で、中にはミリオン(100万回再生)に届きそうな動画も複数ある。 / https://www.youtube.com/watch?v=_SxScudMxQ8&t=23s  「110kg」という名の通りの巨漢が、決して広いとは言えないセダンタイプのプリウスの後部座席で、好きなものをたらふく食べ、大酒を飲む。そんな動画がなぜ多くの人に見られ、そして見続けられるのか。  戦力外さんの動画はチャンネルを開設してすぐに〝バズった〟(人気が出た)わけではない。  戦力外さんがユーチューブに動画を配信し始めたのは2020年2月。当初は釣りの動画を配信していたが、再生回数は数十回程度で、チャンネル登録者数も伸びなかった。  浮上のきっかけとなったのは「顔出し」だった。   戦力外さんは「正直なところ、40代である自分らの世代ってネットで顔出しするなんて気が狂っているというか、抵抗があったんですよね」と話す。今の40代は、匿名性の高い「2ちゃんねる」などを見てきた世代であり、「インターネットでは絶対に顔を出すな」と言われてきた世代でもある。それでも、戦力外さんは再生回数を伸ばしたい一心で顔出しを決意した。  「顔出ししたら登録者が100人を超えたんですよ。ユーチューブには『チャンネル登録者数100人の壁』というのがあります。そこを自力で超えられると、収益化の条件である『チャンネル登録者数1000人・総再生時間4000時間』に近づくと言われています。大体の人はこの100人の壁を超えられず、やめてしまうみたいですね」  チャンネル登録者数100人に達するまで7カ月を要した戦力外さんだったが、そこから1000人になるまでは、わずか3カ月だった。  顔出しと前後して、現在の動画の原点となる「プリウスの快適車中泊キットを110kgおじさんがDIY」という動画を配信したことも追い風となった。  プリウスの後部座席で使う食卓テーブル兼ベッドを作る動画だ。プリウスは後部座席を倒してフラットにしても、普段座るときの足置きのスペースがぽっかり空いてしまう。寝袋を敷いて寝ていると、どうしても足の部分がはみ出てしまい快適に眠れない。それを解決するために作られたのがこの台だった(写真)。このときの動画が初めて再生回数1000回を超え、戦力外さんにとって初バズり動画となった。戦力外さんは「釣りではなく、車中泊に需要があるのか!」と気付き、動画の内容を車中泊系へと変更していく。 車内に設置された食卓テーブル兼ベッド  2度目のバズり動画は「車上生活者の休日シリーズ」。その後、このシリーズが戦力外さんの主力コンテンツとなっていく。 戦力外さんは「このシリーズの第1弾で、いきなり1万回再生いったんです」と言う。  「再生回数が伸びた理由は、当時チャンネル登録者数20万人のユーチューバーさんが動画にコメントをくれたからなんです」  コメントの内容は「あなたみたいな人が、もしかしたらユーチューブで成功するのかもしれませんね。収益化するまで是非続けてください。わたしも応援します」だった。  ユーチューブに限らずSNSではよく起こる現象だ。多くのフォロワーやファンを持つ配信者(発信者)が、無名ユーチューバーの動画を一言「面白い」と紹介しただけで、瞬く間にその動画が拡散されていく。これをきっかけに戦力外さんは、収益化の条件であるチャンネル登録者数1000人・総再生時間4000時間を達成した。 動画を通じて疑似体験  動画の冒頭は、戦力外さんが車中泊をする場所に向かう道中の運転席を映している。無言で運転する戦力外さんが映し出され、テロップでその日にあった出来事などが紹介される。動画の説明欄に「この動画は半分くらいフィクションです」とある通り、テロップの内容は現実世界で起きたことに、戦力外さんが少し〝アレンジ〟を加えたものとなっている。  名前にあるもう一つのテーマ「戦力外」。これは、戦力外さんが日々の生活において「社会に出ると全然自分が役に立たない」、「俺って会社や社会では戦力外だな」と、打ちひしがれた経験が基になっている。   視聴者のコメント欄を見ると「おっちゃん見てると他人事には思えないんだよな。職場のストレスはよく分かる! この動画を見てると頑張んなきゃって不思議と思える。おっちゃん頑張って!」などと書き込まれている。  「動画の前半部分によく出てくる職場での失敗エピソードは、視聴者が自分よりきつい環境にいる人を見て、自分はまだまだマシだなって安心したい思いがあると思います。社会の戦力外おじさんが、もがきながら、ささやかな楽しみを見つけて楽しんでいる姿を見てシンパシーを感じるのでしょうね」 取材に応じる戦力外さん  メーンである動画の後半部分は、戦力外さんが車中で一人、ひたすら飲み食いするシーンだ。これがまた「食べ物がとても美味しそうで、美味しそうに食べる」動画なのだ。  視聴者のコメント欄には「見てると幸せな気持ちになれる動画を、ありがとうございます!」、「毎回、元気いただいてます」などと寄せられている。  「自分の好きなユーチューバーを見ることによって、自分もキャンプした気持ちになる。健康上の理由で食べたいけど食べられない人にとっては、私の動画を見て食べた気になる。そうやって疑似体験したいのかもしれませんね」 動画の編集時間は5時間  戦力外さんは1979(昭和54)年生まれの43歳。出身は山形県だが、幼少期から30代半ばまで猪苗代町で過ごす。学生時代は漠然と「物書きになりたい」という夢を持っていた。専門学生時代にはサブカルチャー雑誌『BURST(バースト)』にハマり、石丸元章、見沢知廉、花村萬月など、破天荒だが自由を感じるライフスタイルに憧れた。何か行動に移すということはなかったが、創作活動をしたいという思いは学生時代から抱いていた。  高校卒業後、家業である川魚の養殖業に就き、6年半前に実家を出て中通りに引っ越すタイミングで、インフラ系の会社に転職した。20代に真剣に打ち込んだのはフルコンタクト空手という格闘技だった。しかし膝のじん帯を断裂し、選手生命を断たれてしまう。  人生の大きな目標を失い「もう一つ生きがいを見つけたい」と思い立った戦力外さんが表現活動の第一歩として始めたのが、LIVEコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」だった。しかし、ポコチャはリスナーと直接会話するスタイルで、高度なコミュニケーション能力が要求されるため数カ月で挫折してしまう。  戦力外さんは「誰かと直接コミュニケーションせず、自分のタイミングで動画を撮り、じっくり編集できる方がいいんじゃないか」と考え、ユーチューブを始めた。  平日は会社で働き、休日になると動画撮影のため出掛ける。撮り終わったら自宅に戻って編集する。1つの動画の編集作業は平均5時間を要するが、「スマホを使ってベッドに寝ころびながらリラックスして作業しているので、そんなに大変ではないですよ」。  台本は作らず、頭の中で動画の構成を練っている。仕事は車の移動時間が長いため、その時間を有効活用し、面白いワードが出てくるのをひたすら待つのだという。 「美しいマンネリ目指す」  戦力外さんのチャンネルの視聴層は35~60歳までが多く、男女比では男性が9割を占める。  「理想は水戸黄門とか孤独のグルメなんです。視聴率トップは取れないけど、ずっと見てくれる人がいる。美しいマンネリっていうんですかね、そんな動画でありたいですね」  戦力外さんの動画が限られた層にしか見られていないと分かるエピソードがある。戦力外さんは自身のユーチューブチャンネルを母親に薦めたそうだが、母親が熱心に見るのは猫やフォークダンスの動画で、いくら薦めても自身の息子が配信している動画を全く見なかったという。戦力外さんは「興味がなければ肉親の動画でも見ないんですよ」と笑う。 プリウスと戦力外さん  ユーチューブはユーザー一人ひとりの趣味趣向に合った動画がトップ画面に表示されるような仕組みになっており、普段見ないジャンルの動画はそもそも表示もされない。これはユーチューブに限ったことではなく、買収騒動で話題のツイッターなどのSNS、ゾゾタウンなどの通販サイトも同様だ。  ただ、世の中の〝おじさん〟しか見ないニッチな動画を配信しているはずが、最近は少しずつファン層が拡大している様子。北海道に撮影に行った際、チャンネル登録しているファンの女性と奇跡的に出会い、お付き合いするまでに至ったという。  声をかけられる機会も増え、特にキャンピングカーで旅をしているシニア世代の夫婦からが多いようだ。 専業ユーチューバーへ  戦力外さんは6年半勤めた会社を辞め、12月から専業ユーチューバーとして活動を始めた。  「収入は不安定ですし、専業としてやっていくのに不安はありましたが、これからは創作活動一本で食っていくんだと決めました」  ユーチューブでの収入は「サラリーマンの月収の2倍くらい」だという。再生回数の変動などにより月の収入が100万円の時もあれば10万円の時もあるような世界だが、ユーチューブで最も広告収入を得やすいのは3月と12月なので、そのタイミングで退職を決意した。  ユーチューブは再生数によって広告収入が決まる。その単価についてはユーチューブの規約で公言しないよう定められている。戦力外さんも明かそうとしなかった。  しかし、さまざまなユーチューバーの書籍の情報によると、現在、ユーチューブの広告収入単価は1再生あたり0・05~0・7円と言われている。トップクラスの人気ユーチューバーは、1つの動画につき、サラリーマンの平均年収の3~4倍の広告収入が入る計算となる。  とは言っても、そこまで稼げるのはほんの一握りで、急に動画が見られなくなることだってあるのだ。  ただ、戦力外さんは「ユーチューブはプライベートすべてがネタになる」と前向きに捉える。  「仮にユーチューブで稼げなくなり、アルバイトをすることになっても、それを動画にすればいい。いいことも悪いこともネタにできるのがユーチューブなんです」  専業ユーチューバーになれば撮影回数を増やせるし、動画を配信する本数も増える。海外向けのチャンネル開設も目論んでいる。  「私のチャンネルは日本語のテロップを入れているので日本人しか見ません。次は世界に向けて、言葉なしでも伝わるような動画も作っていければと思っています」  戦力外さんは、テロップ無しに加え、ユーモアもプラスアルファしていきたいと考えている。  「チャップリンやミスタービーンみたいなコミカルな動きを入れていけば面白いかなと思っています」  一度見たら見続けてしまう中毒性。これがユーチューブの性質であり、作り手はそこを目指して動画を作成する。  「好きなことで、生きていく」  これはユーチューブのキャッチフレーズだが、専業ユーチューバーとして生き残っていくためには、そうも言っていられない。戦力外さんは「自分が好きなものも大事ですが、それ以上に、視聴者が求めているものを常に考え、再生回数が落ちないように維持していかなければなりません」と漏らす。  「死ぬ時、『なんであの時に専業ユーチューバーにならなかったんだ』と思いたくないんです。やった後悔よりもやらない後悔の方が悔いが残るって言うじゃないですか」  そう笑って話す戦力外さん。この先、どのようなチャンネルや動画を作り、ファンを拡大していくのか。〝おじさんユーチューバー〟の挑戦は始まったばかりだ。

  • 【福島県ユーチューバー】車中泊×グルメで登録者数10万人【戦力外110kgおじさん

    【戦力外110kgおじさん】福島県内在住おじさんユーチューバーの素顔  テレビ離れが進む昨今、ユーチューブの全世代の利用率は9割だ。本誌の読者層であるシニア世代も、パソコンやスマートフォンで毎日のようにユーチューブを見ている人は多いはず。数あるチャンネルの中には、県内で活動するユーチューバーも多数存在する。その中に、異色のジャンル「車中泊&グルメ」系で人気を誇る「戦力外110kgおじさん(43歳)」がいる。なぜ視聴者はこのチャンネルにハマるのか、本人へのインタビューをもとに、その謎に迫ってみたい。  週末夜のキャンプ場。辺り一面、真っ暗の中、ポツンと明かりが灯る1台のプリウス。その車の後部座席で、一人焼肉をしながらチューハイ「ストロングゼロ」をキメる――。そんな様子をユーチューブに配信している男性がいる。男性の名は「戦力外110kgおじさん」(以下、戦力外さんと表記)。戦力外さんのユーチューブのチャンネル登録者数は10・5万人。1つの動画が配信されれば20万回再生するのは当たり前で、中にはミリオン(100万回再生)に届きそうな動画も複数ある。 / https://www.youtube.com/watch?v=_SxScudMxQ8&t=23s  「110kg」という名の通りの巨漢が、決して広いとは言えないセダンタイプのプリウスの後部座席で、好きなものをたらふく食べ、大酒を飲む。そんな動画がなぜ多くの人に見られ、そして見続けられるのか。  戦力外さんの動画はチャンネルを開設してすぐに〝バズった〟(人気が出た)わけではない。  戦力外さんがユーチューブに動画を配信し始めたのは2020年2月。当初は釣りの動画を配信していたが、再生回数は数十回程度で、チャンネル登録者数も伸びなかった。  浮上のきっかけとなったのは「顔出し」だった。   戦力外さんは「正直なところ、40代である自分らの世代ってネットで顔出しするなんて気が狂っているというか、抵抗があったんですよね」と話す。今の40代は、匿名性の高い「2ちゃんねる」などを見てきた世代であり、「インターネットでは絶対に顔を出すな」と言われてきた世代でもある。それでも、戦力外さんは再生回数を伸ばしたい一心で顔出しを決意した。  「顔出ししたら登録者が100人を超えたんですよ。ユーチューブには『チャンネル登録者数100人の壁』というのがあります。そこを自力で超えられると、収益化の条件である『チャンネル登録者数1000人・総再生時間4000時間』に近づくと言われています。大体の人はこの100人の壁を超えられず、やめてしまうみたいですね」  チャンネル登録者数100人に達するまで7カ月を要した戦力外さんだったが、そこから1000人になるまでは、わずか3カ月だった。  顔出しと前後して、現在の動画の原点となる「プリウスの快適車中泊キットを110kgおじさんがDIY」という動画を配信したことも追い風となった。  プリウスの後部座席で使う食卓テーブル兼ベッドを作る動画だ。プリウスは後部座席を倒してフラットにしても、普段座るときの足置きのスペースがぽっかり空いてしまう。寝袋を敷いて寝ていると、どうしても足の部分がはみ出てしまい快適に眠れない。それを解決するために作られたのがこの台だった(写真)。このときの動画が初めて再生回数1000回を超え、戦力外さんにとって初バズり動画となった。戦力外さんは「釣りではなく、車中泊に需要があるのか!」と気付き、動画の内容を車中泊系へと変更していく。 車内に設置された食卓テーブル兼ベッド  2度目のバズり動画は「車上生活者の休日シリーズ」。その後、このシリーズが戦力外さんの主力コンテンツとなっていく。 戦力外さんは「このシリーズの第1弾で、いきなり1万回再生いったんです」と言う。  「再生回数が伸びた理由は、当時チャンネル登録者数20万人のユーチューバーさんが動画にコメントをくれたからなんです」  コメントの内容は「あなたみたいな人が、もしかしたらユーチューブで成功するのかもしれませんね。収益化するまで是非続けてください。わたしも応援します」だった。  ユーチューブに限らずSNSではよく起こる現象だ。多くのフォロワーやファンを持つ配信者(発信者)が、無名ユーチューバーの動画を一言「面白い」と紹介しただけで、瞬く間にその動画が拡散されていく。これをきっかけに戦力外さんは、収益化の条件であるチャンネル登録者数1000人・総再生時間4000時間を達成した。 動画を通じて疑似体験  動画の冒頭は、戦力外さんが車中泊をする場所に向かう道中の運転席を映している。無言で運転する戦力外さんが映し出され、テロップでその日にあった出来事などが紹介される。動画の説明欄に「この動画は半分くらいフィクションです」とある通り、テロップの内容は現実世界で起きたことに、戦力外さんが少し〝アレンジ〟を加えたものとなっている。  名前にあるもう一つのテーマ「戦力外」。これは、戦力外さんが日々の生活において「社会に出ると全然自分が役に立たない」、「俺って会社や社会では戦力外だな」と、打ちひしがれた経験が基になっている。   視聴者のコメント欄を見ると「おっちゃん見てると他人事には思えないんだよな。職場のストレスはよく分かる! この動画を見てると頑張んなきゃって不思議と思える。おっちゃん頑張って!」などと書き込まれている。  「動画の前半部分によく出てくる職場での失敗エピソードは、視聴者が自分よりきつい環境にいる人を見て、自分はまだまだマシだなって安心したい思いがあると思います。社会の戦力外おじさんが、もがきながら、ささやかな楽しみを見つけて楽しんでいる姿を見てシンパシーを感じるのでしょうね」 取材に応じる戦力外さん  メーンである動画の後半部分は、戦力外さんが車中で一人、ひたすら飲み食いするシーンだ。これがまた「食べ物がとても美味しそうで、美味しそうに食べる」動画なのだ。  視聴者のコメント欄には「見てると幸せな気持ちになれる動画を、ありがとうございます!」、「毎回、元気いただいてます」などと寄せられている。  「自分の好きなユーチューバーを見ることによって、自分もキャンプした気持ちになる。健康上の理由で食べたいけど食べられない人にとっては、私の動画を見て食べた気になる。そうやって疑似体験したいのかもしれませんね」 動画の編集時間は5時間  戦力外さんは1979(昭和54)年生まれの43歳。出身は山形県だが、幼少期から30代半ばまで猪苗代町で過ごす。学生時代は漠然と「物書きになりたい」という夢を持っていた。専門学生時代にはサブカルチャー雑誌『BURST(バースト)』にハマり、石丸元章、見沢知廉、花村萬月など、破天荒だが自由を感じるライフスタイルに憧れた。何か行動に移すということはなかったが、創作活動をしたいという思いは学生時代から抱いていた。  高校卒業後、家業である川魚の養殖業に就き、6年半前に実家を出て中通りに引っ越すタイミングで、インフラ系の会社に転職した。20代に真剣に打ち込んだのはフルコンタクト空手という格闘技だった。しかし膝のじん帯を断裂し、選手生命を断たれてしまう。  人生の大きな目標を失い「もう一つ生きがいを見つけたい」と思い立った戦力外さんが表現活動の第一歩として始めたのが、LIVEコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」だった。しかし、ポコチャはリスナーと直接会話するスタイルで、高度なコミュニケーション能力が要求されるため数カ月で挫折してしまう。  戦力外さんは「誰かと直接コミュニケーションせず、自分のタイミングで動画を撮り、じっくり編集できる方がいいんじゃないか」と考え、ユーチューブを始めた。  平日は会社で働き、休日になると動画撮影のため出掛ける。撮り終わったら自宅に戻って編集する。1つの動画の編集作業は平均5時間を要するが、「スマホを使ってベッドに寝ころびながらリラックスして作業しているので、そんなに大変ではないですよ」。  台本は作らず、頭の中で動画の構成を練っている。仕事は車の移動時間が長いため、その時間を有効活用し、面白いワードが出てくるのをひたすら待つのだという。 「美しいマンネリ目指す」  戦力外さんのチャンネルの視聴層は35~60歳までが多く、男女比では男性が9割を占める。  「理想は水戸黄門とか孤独のグルメなんです。視聴率トップは取れないけど、ずっと見てくれる人がいる。美しいマンネリっていうんですかね、そんな動画でありたいですね」  戦力外さんの動画が限られた層にしか見られていないと分かるエピソードがある。戦力外さんは自身のユーチューブチャンネルを母親に薦めたそうだが、母親が熱心に見るのは猫やフォークダンスの動画で、いくら薦めても自身の息子が配信している動画を全く見なかったという。戦力外さんは「興味がなければ肉親の動画でも見ないんですよ」と笑う。 プリウスと戦力外さん  ユーチューブはユーザー一人ひとりの趣味趣向に合った動画がトップ画面に表示されるような仕組みになっており、普段見ないジャンルの動画はそもそも表示もされない。これはユーチューブに限ったことではなく、買収騒動で話題のツイッターなどのSNS、ゾゾタウンなどの通販サイトも同様だ。  ただ、世の中の〝おじさん〟しか見ないニッチな動画を配信しているはずが、最近は少しずつファン層が拡大している様子。北海道に撮影に行った際、チャンネル登録しているファンの女性と奇跡的に出会い、お付き合いするまでに至ったという。  声をかけられる機会も増え、特にキャンピングカーで旅をしているシニア世代の夫婦からが多いようだ。 専業ユーチューバーへ  戦力外さんは6年半勤めた会社を辞め、12月から専業ユーチューバーとして活動を始めた。  「収入は不安定ですし、専業としてやっていくのに不安はありましたが、これからは創作活動一本で食っていくんだと決めました」  ユーチューブでの収入は「サラリーマンの月収の2倍くらい」だという。再生回数の変動などにより月の収入が100万円の時もあれば10万円の時もあるような世界だが、ユーチューブで最も広告収入を得やすいのは3月と12月なので、そのタイミングで退職を決意した。  ユーチューブは再生数によって広告収入が決まる。その単価についてはユーチューブの規約で公言しないよう定められている。戦力外さんも明かそうとしなかった。  しかし、さまざまなユーチューバーの書籍の情報によると、現在、ユーチューブの広告収入単価は1再生あたり0・05~0・7円と言われている。トップクラスの人気ユーチューバーは、1つの動画につき、サラリーマンの平均年収の3~4倍の広告収入が入る計算となる。  とは言っても、そこまで稼げるのはほんの一握りで、急に動画が見られなくなることだってあるのだ。  ただ、戦力外さんは「ユーチューブはプライベートすべてがネタになる」と前向きに捉える。  「仮にユーチューブで稼げなくなり、アルバイトをすることになっても、それを動画にすればいい。いいことも悪いこともネタにできるのがユーチューブなんです」  専業ユーチューバーになれば撮影回数を増やせるし、動画を配信する本数も増える。海外向けのチャンネル開設も目論んでいる。  「私のチャンネルは日本語のテロップを入れているので日本人しか見ません。次は世界に向けて、言葉なしでも伝わるような動画も作っていければと思っています」  戦力外さんは、テロップ無しに加え、ユーモアもプラスアルファしていきたいと考えている。  「チャップリンやミスタービーンみたいなコミカルな動きを入れていけば面白いかなと思っています」  一度見たら見続けてしまう中毒性。これがユーチューブの性質であり、作り手はそこを目指して動画を作成する。  「好きなことで、生きていく」  これはユーチューブのキャッチフレーズだが、専業ユーチューバーとして生き残っていくためには、そうも言っていられない。戦力外さんは「自分が好きなものも大事ですが、それ以上に、視聴者が求めているものを常に考え、再生回数が落ちないように維持していかなければなりません」と漏らす。  「死ぬ時、『なんであの時に専業ユーチューバーにならなかったんだ』と思いたくないんです。やった後悔よりもやらない後悔の方が悔いが残るって言うじゃないですか」  そう笑って話す戦力外さん。この先、どのようなチャンネルや動画を作り、ファンを拡大していくのか。〝おじさんユーチューバー〟の挑戦は始まったばかりだ。