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  • 東山・芦ノ牧温泉を悩ます廃墟ホテル【会津若松】

    東山・芦ノ牧温泉を悩ます廃墟ホテル【会津若松】

     会津若松市の東山温泉と芦ノ牧温泉では、廃業した旅館・ホテルが廃墟化しており、温泉街の景観を損ねている。なぜ解体は進まないのか。あるユーチューバーの動画をきっかけに、廃墟ホテルの現状と課題を取材した。(志賀) 横行する!?ユーチューバーの〝無断侵入〟 https://www.youtube.com/watch?v=JlLZ_6UfrsQ 【芦ノ牧の迷宮】増築を重ね巨大化した廃ホテルの現状調査」  動画投稿サイト・ユーチューブで「【芦ノ牧の迷宮】増築を重ね巨大化した廃ホテルの現状調査」という動画が公開されている。投稿者は廃墟探索の様子を投稿している蓮水柊斗(はすみ・しゅうと)氏。撮影されているのは芦ノ牧温泉でかつて営業していた芦ノ牧ホテルだ。  動画には事務室に営業当時の書類がそのまま残されている様子や、客室で何者かが生活していた様子が収められていた。  芦ノ牧ホテルは昭和41年に開業。運営会社は㈲芦牧ホテル。リゾートブームが起きるバブル期の前にいち早く新館、別館を増築し、一時期は温泉街で最大のホテルとなった。当時のデータが残っているホームページによると、客室全47室。収容人数一般200人(団体280人)。全室渓谷側で眺望の良さが売りだった。 芦ノ牧ホテル  会津若松市内にスイミングスクールがなかった昭和50年代にいち早く屋内プールを整備したほか、近くに総合体育館も建設し、スポーツ合宿の団体客の受け皿となった。  周りの宿泊施設も設備投資に乗り出し、大型化が進むと、団体客の宴会向けにセクシーなスーパーコンパニオンパックを導入したり、冬場の閑散期に大衆演劇と観劇する老人会の無料送迎(県外にも対応)を始めた。  それらのサービスも、周囲が追随し始めると差別化が図れなくなり、売り上げが落ち込んだ。団体旅行から個人旅行へとトレンドが移ったことも痛手となった。  経営は創業者(室井家)の家族が行っていたが、外部から経営者を招くようになった。2009年には運営会社を株式会社にして、元プロ野球選手・小野剛氏を社長として招いた。売り上げは順調に見えたが、同温泉の事情通によると、室井一族で経営していたころの決算内容などをめぐり、内部でゴタゴタが続いていたという。  それからまもなくして震災・原発事故が発生。賠償金が支払われて立て直しを図ると思われたが、しばらくすると休業に入った。  同温泉の事情に詳しい人物は、「休業と言っても、実質は廃業。旅行代理店や取引業者は『いきなり連絡が取れなくなった。未払い金があるがこのまま踏み倒されるだろう』と嘆いていた。大きな被害を被ったところもある」と指摘する。  その後は営業再開することなく、増築により巨大化した廃墟が温泉街に残されることになった。冒頭で触れたユーチューブ動画に「芦ノ牧の迷宮」というタイトルが付いているのはそのためだろう。  こうした経緯もあり、動画は芦ノ牧温泉の関係者の間で話題になり、視聴した人も多かったようだ。ただ、「物件の所有者様や管理者様から敷地内及び建物内の立入許可を頂いたうえで内部の現状調査を行っております」という表記に疑問の声も出ている。というのも、地元関係者は誰も立入許可をしていなかったからだ。  芦ノ牧温泉の温泉街の土地は地元住民の入会地となっており、住民で組織される㈲芦ノ牧温泉開発事業所が一括で管理している。だが、同社の関係者は「こちらに問い合わせなどはありませんでした。うちでは一度、財産管理を依頼されている弁護士に断って、警察立ち会いのもとで入ったぐらいです」と述べる。  芦ノ牧温泉観光協会などにも問い合わせはなかったという。  同ホテルの建物の不動産登記簿を確認したところ、所有権は㈱芦牧ホテルのままだったが、2012年に会津若松市、令和2年に埼玉県に差し押さえられていた。それらはすぐ解除されたものの、同年12月に会津若松市が差し押さえ、その後は解除されていない。おそらく固定資産税が納付されていないと思われる。 運営会社社長は取材に応じず  そこで会津若松市観光課に確認したが、「市の方では差し押さえただけで建物の管理はしていない。ユーチューバーから問い合わせも来ていない」とのことだった。  同ホテル関連の建物・土地には根抵当権者・会津信用金庫による極度額8000万円の根抵当権が設定されていた。そこで同金庫の担当者にも確認したが、市観光課同様、管理には携わっておらず、問い合わせも来ていないということだった。  芦ノ牧ホテルはほぼ廃業状態だが、運営会社の㈱芦牧ホテルは現在も存続している。社長を務める小野氏は埼玉県狭山市で㈱GSLという会社を経営している。2008年設立。資本金3000万円。主な事業は飲食(焼肉店「ベイサイドTOKYO牧場」の展開)、野球教室(プリマヴェーラ・リオーネ)の運営など。民間信用調査機関によると、2022年9月期の売上高は1億8000万円(ただし、3期連続で同じ数字)。  SNSは数日に一度更新している。10月4日にはX(旧ツイッター)で《ドラフト同期の阿部慎之助が読売巨人軍の監督となった。凄い事である》とつぶやき、過去の写真を掲載していた。週刊文春2022年5月19日号に掲載された横浜高校野球部でのパワハラ指導に関する記事では、被害者の父親として小野氏が取材に応じている。  にもかかわらず、芦ノ牧ホテルに関しては建物を廃墟のまま放置し、地権者である㈲芦ノ牧温泉開発事業所に地代を支払っていないというから驚く。  ユーチューバー・蓮水氏に立入許可を出したのか、税金・地代の支払いを滞納していることについてどう考えるのか、そして今後、「芦ノ牧の迷宮」と化した廃墟をどうするつもりなのか。小野氏の連絡先を入手し、繰り返し電話をかけたが、つながらなかった。そこで、狭山市の㈱GSLを直接訪ねたところ、同社営業企画・野球塾講師の米田和弘氏が応対した。  米田氏が差し出した名刺には「芦ノ牧ホテル」の文字があった。そこで同ホテルについて話を聞きたいと伝えると、「小野は東京・練馬の事務所にいたり、出張していることが多い。芦ノ牧ホテルは老朽化や地震の影響も含めて基本的に廃業している状態ですね。小野に伝えておきます」とあっさり答えたが、10日以上経っても電話はなかった。  あらためてメールで小野氏に取材を申し込んだが返事がなかったので、米田氏に連絡を取ったところ、「小野には伝えましたが、都合が合わないとのことでした。申し訳なかったです」と話した。都合が悪い取材には応じないのだろう。  一方で、ユーチューバーへの立入許可に関しては「担当弁護士の対応は小野が担当しているので私の方では分かりかねますが、私が把握している限り、ユーチューバーの立ち入りについて会社として許可を出したことはありません」と話した。  冒頭のユーチューバー・蓮水氏はいったい誰に許可を取ったのか。X(旧ツイッター)を通して質問を投げかけたところ、以下のような返信があった。  《動画の制作、編集は全て私が行っておりますが企画や、所有者様、管理者様の調査や立入許可については私1人ではなく、当YouTubeチャンネルの調査部がメインで行っております。倒産物件なども多く、所有権移転などされていない物件が大半です。そのなかでの所有者様や管理者様を探すのは並大抵ではありません。芦ノ牧は、4物件のホテル旅館を撮影していますが、全て所有者様や管理者様と直接お会いしています。まだ未配信の物件も多数ありますが全て立入許可済みでの撮影を行っております》  結局誰から許可を得たのかよく分からず、何か隠していることがあるのではないかと疑わざるを得ない回答だった。そもそも「調査部」としているが、企業などで大規模にやっているアカウントには見えない。小野氏、弁護士と連絡が取れなかったので断言はできないが、廃墟ホテルの権利関係が複雑になっていることを逆手に取り、あえてテーマに選んでいるようにも見える。  そういう意味では〝限りなく黒に近いグレーな動画〟と思って見た方が良さそうだ。ほかの廃墟系ユーチューバーも推して知るべし。 廃墟ホテルが放置される理由  芦ノ牧ホテルの建物の窓ガラスには「不法侵入者を発見時、警察に通報いたします」と張り紙されており、鍵がかかっている。だが同温泉関係者によると、侵入経路があるようで、肝試しや動画配信目的で勝手に侵入する人が後を絶たない。  芦ノ牧温泉には芦ノ牧ホテル以外にも新湯、元湯、美好館、ホテルいづみやなどの廃墟ホテルがあるが、こちらに関しても中に入った形跡があったり、電気が通っていないのに夜に明かりがついていたりするという。  本誌昨年6月号「猪苗代〝廃墟ホテル〟で配信者が花火」という記事では、廃墟探索がユーチューバーにとって手軽に視聴回数を稼げる人気コンテンツとなっており、中には火災リスクお構いなしで、花火で遊ぶ動画もあったことを報じた。  「芦ノ牧温泉に限らず、廃墟ホテル内を通っている配線を盗んで売りさばく業者もいるようです。実際、各温泉の観光協会などに問い合わせがあるようで、廃墟ホテルの前で怪しい車を見かけることもあります」(同温泉の事情に詳しい人物)  廃墟化した旅館・ホテルが温泉街に残り続けることで、イメージ悪化につながるばかりか、実際に良からぬ輩が出入りしている、と。  だからこそ、廃墟ホテルは解消した方がいいが、ひとたび廃業し廃墟化してしまうと、解体するのは難しい。所有者と連絡が取れなくなっている可能性が高いためだ。  解体には億単位の金がかかり、所有者が必要額を捻出できないという事情もある。最近は解体費用が高騰しており、建物にアスベストなどが使われている場合は調査などの対策が求められるので、さらにハードルが上がっている。  仮に高額な解体費用を負担して更地にしたところで100万円単位の価値しかないし、芦ノ牧温泉の場合、原状復旧して地権者(芦ノ牧温泉開発事業所)に返さなければならない。逆に建物を残したままにしておくと、固定資産税はかかるものの、建物の固定資産税価格は耐用年数が満了となってからは新築時よりかなり低くなるので、所有者は「大した税額ではないし、解体するより安上がりで済む」と放置するようになる。  芦ノ牧ホテルのように固定資産税を滞納すれば、財産である不動産を当該自治体(芦ノ牧温泉の場合は会津若松市)に差し押さえられ、競売にかけられる。ただ、それに当たって行われる不動産鑑定には100万円単位の金額がかかるという。競売で売れる見込みがある物件ならともかく、誰も買う見込みのない廃墟ホテルにそれだけの経費をかけると自治体の損失につながりかねないため、担当者も対応に及び腰となる。  こうして廃墟ホテルが放置されていくわけ。  芦ノ牧温泉のある宿泊施設関係者は「今後も廃墟化が進む可能性が高い」と語る。 「丸峰観光ホテルの経営者が創業者一族からみちのりホテルズに代わりましたが(本誌9月号参照)、他の宿泊施設も経営者が大手・県外資本に代わったところが多い。安く買い叩けば、設備投資分の回収を考えなくて済むので、宿泊料金を安く抑えられ、より集客を図りやすいという狙いがあります。今後はインバウンド・富裕層狙いの高級路線と、大手資本による低価格路線の二極化が進むと予想されます。その流れに取り残された中途半端な宿泊施設は力尽き、廃墟化がさらに進むかもしれません」 東山温泉にも4つの廃墟ホテル ホテルキャニオン跡  芦ノ牧温泉と並び同市を代表する温泉街・東山温泉でも、新栄館、ホテルキャニオン、アネックスシンフォニー、玉屋と4つの廃墟ホテルがある。新栄館は芦ノ牧ホテル同様、休業中だが、残り3つは運営会社が倒産した。  市によると解体費用の概算は合計約10億円(新栄館約1億4500万円、ホテルキャニオン約3億5000万円、アネックスシンフォニー約2億9700万円、玉屋約2億1000万円)。ただ前述した通り、解体費用が高騰しているのでさらに金額が上がっている可能性が高い。  会津若松市は昨年、東山温泉、芦ノ牧温泉が今後10年間で目指すべき方向性などを取りまとめた会津若松市温泉地域景観創造ビジョンとそれに伴うアクションプランを策定した。その中で、東山温泉の4つの廃墟ホテルについて、令和14年度までに解体する方針が示された。撤去費用については《地域の事業者も負担をしながら国等の補助金を活用する》と示された。  ここで言う補助金とは観光地の施設改修や廃屋の撤去などを支援する「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値事業(旧・既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業)」のことだ。  事業によって補助率、補助上限額が定められており、廃屋撤去は補助率2分の1、補助上限額1億円となっている。  解体後の土地利用に関しては当初より緩和されており、公園緑地や足湯、オープンスペース、景観に配慮した駐車場などを整備する目的で解体する場合も補助対象になる。  休業中の新栄館の目の前には「くつろぎ宿 新滝」が立地する。同旅館を運営する㈱くつろぎ宿の深田智之社長は「自己負担分は当社が負担してもいいので、行政が音頭を取ってもっと早く解体に着手することを期待しています」と語る。  震災後の2013年に廃業した旅館・高橋館の建物が倒壊したまま放置される問題が起きたとき、新滝では約2000万円を負担し解体、顧客用の駐車場として整備し直した。この件も加えてこれまで5件の建物を自己負担で解体し、合計1億円超を投じてきたという。  「原瀧さんも数千万円かけて廃屋の解体に協力し、跡地を食事会場や駐車場として活用している。このほか安全対策や景観対策など民間レベルで話し合って取り組んでいます。ただ、それ以上に廃墟の負のイメージは大きい。行政は『所有者がいるから手を出せない』などの理由で動きが鈍いですが、お金ならわれわれ民間が負担しても構わないので、もっと積極的に動いてほしい」(深田氏)  深田氏によると、東山温泉には年間約50万人が宿泊する。平均単価1万5000円と考えると、50~100億円の売り上げが生まれる。たとえ解体費用に数億円かかるとしても、民間・行政が連携し、数年かけて取り組めば、廃墟ホテルをすべて解体して温泉街の景観を整備することも実現不可能ではない、と。  これに対し、会津若松市観光課の担当者はこのように話す。  「地元で解体費用を持つからすぐ解体しましょうと言われても、実際に解体を進めるとなれば、清算人を立て、裁判所での手続きを進めなければならない。差し押さえたと言っても所有権が移ったわけではないので、簡単に進まないのが実際のところです」  東山温泉の関係者からは「コロナ禍でダメージを受け、業績が低迷しているところも多い中、協力して解体費用を出そうと言っても意見をまとめるのは難しいだろう」、「過去に行政主導で同ビジョンのようなものが何度も作られたが、結局うまくいかなかった。今回もうやむやのうちに終わりそうだ」と冷ややかな意見も目立った。 鍵を握る官民の連携 会津若松市役所  こうして見ると、廃墟ホテル問題の解決は簡単ではなさそうだが、芦ノ牧温泉では3年前、宿泊施設が協力してお金を出し合うことを決め、前述の補助事業に申請し採択された経緯もある。  ホテルいづみや跡を解体し、約2700平方㍍の敷地を使ってグランピング施設、貸し切りの温泉浴場を備えた複合レジャー施設を整備するというもの。解体費用は約1億円。裁判所などの手続きを進め、芦ノ牧グランドホテルを運営するベンチャラー(新潟市)を中心に約5000万円を自己負担する方針がまとまった。  ところが、長引くコロナ禍で売り上げが激減したため、計画はストップ。資金繰りを優先し、申請を取り下げたのである。ただ、裁判所などの手続きは済んでおり、各ホテル・旅館の業績が回復次第、再挑戦できるという意味では明るい兆しと言えよう。  芦ノ牧温泉の関係者は「丸峰観光ホテルは経営者が変わって、地域と協力して盛り上げようというムードが出てきた。これからの展開に期待したい」と語る。  会津若松市観光課によると、昨年の宿泊者数は東山温泉約41万5000人、芦ノ牧温泉約12万2000人。コロナ禍前の2019年の宿泊者数は東山47万3000人、芦ノ牧21万4000人。20年前の2002年は東山50万2000人、芦ノ牧34万6000人。じりじりと減っていたところをコロナ禍が直撃した格好だ。  各ホテル・旅館は燃料費高騰などを反映して料金を上げているので、見かけ上の売り上げはそれほど落ち込んでいないとのことだが、「3年にわたり売り上げが低迷したダメージがどのように出るか分からない」(ある宿泊施設経営者)。こうしたときだからこそ、将来を見据えて温泉街の景観改善に取り組むことが重要になるのではないか。  島根県津和野町では廃墟ホテル問題を解決するため、所有者と相談し、土地と建物を合わせてタダ同然の1000円で取得。約1億5000万円かけて建物の撤去と公園の整備を進めた。関係者の熱意とアイデア次第でやりようはあるということだ。  8月に4選を果たした室井照平市長を中心に、市と温泉街がいかに一致団結して、問題解決に挑めるかが鍵を握る。

  • 【福島県ユーチューバー】車中泊×グルメで登録者数10万人【戦力外110kgおじさん】

    【櫻井・有吉THE夜会で紹介】車中泊×グルメで登録者数10万人【戦力外110kgおじさん】

     テレビ離れが進む昨今、ユーチューブの全世代の利用率は9割だ。本誌の読者層であるシニア世代も、パソコンやスマートフォンで毎日のようにユーチューブを見ている人は多いはず。数あるチャンネルの中には、県内で活動するユーチューバーも多数存在する。その中に、異色のジャンル「車中泊&グルメ」系で人気を誇る「戦力外110kgおじさん(43歳)」がいる。なぜ視聴者はこのチャンネルにハマるのか、本人へのインタビューをもとに、その謎に迫ってみたい。 【戦力外110kgおじさん】福島県内在住おじさんユーチューバーの素顔 https://www.youtube.com/watch?v=_SxScudMxQ8&t=23s  週末夜のキャンプ場。辺り一面、真っ暗の中、ポツンと明かりが灯る1台のプリウス。その車の後部座席で、一人焼肉をしながらチューハイ「ストロングゼロ」をキメる――。そんな様子をユーチューブに配信している男性がいる。男性の名は「戦力外110kgおじさん」(以下、戦力外さんと表記)。戦力外さんのユーチューブのチャンネル登録者数は10・5万人。1つの動画が配信されれば20万回再生するのは当たり前で、中にはミリオン(100万回再生)に届きそうな動画も複数ある。  「110kg」という名の通りの巨漢が、決して広いとは言えないセダンタイプのプリウスの後部座席で、好きなものをたらふく食べ、大酒を飲む。そんな動画がなぜ多くの人に見られ、そして見続けられるのか。  戦力外さんの動画はチャンネルを開設してすぐに〝バズった〟(人気が出た)わけではない。  戦力外さんがユーチューブに動画を配信し始めたのは2020年2月。当初は釣りの動画を配信していたが、再生回数は数十回程度で、チャンネル登録者数も伸びなかった。  浮上のきっかけとなったのは「顔出し」だった。   戦力外さんは「正直なところ、40代である自分らの世代ってネットで顔出しするなんて気が狂っているというか、抵抗があったんですよね」と話す。今の40代は、匿名性の高い「2ちゃんねる」などを見てきた世代であり、「インターネットでは絶対に顔を出すな」と言われてきた世代でもある。それでも、戦力外さんは再生回数を伸ばしたい一心で顔出しを決意した。  「顔出ししたら登録者が100人を超えたんですよ。ユーチューブには『チャンネル登録者数100人の壁』というのがあります。そこを自力で超えられると、収益化の条件である『チャンネル登録者数1000人・総再生時間4000時間』に近づくと言われています。大体の人はこの100人の壁を超えられず、やめてしまうみたいですね」  チャンネル登録者数100人に達するまで7カ月を要した戦力外さんだったが、そこから1000人になるまでは、わずか3カ月だった。  顔出しと前後して、現在の動画の原点となる「プリウスの快適車中泊キットを110kgおじさんがDIY」という動画を配信したことも追い風となった。  プリウスの後部座席で使う食卓テーブル兼ベッドを作る動画だ。プリウスは後部座席を倒してフラットにしても、普段座るときの足置きのスペースがぽっかり空いてしまう。寝袋を敷いて寝ていると、どうしても足の部分がはみ出てしまい快適に眠れない。それを解決するために作られたのがこの台だった(写真)。このときの動画が初めて再生回数1000回を超え、戦力外さんにとって初バズり動画となった。戦力外さんは「釣りではなく、車中泊に需要があるのか!」と気付き、動画の内容を車中泊系へと変更していく。 車内に設置された食卓テーブル兼ベッド  2度目のバズり動画は「車上生活者の休日シリーズ」。その後、このシリーズが戦力外さんの主力コンテンツとなっていく。 戦力外さんは「このシリーズの第1弾で、いきなり1万回再生いったんです」と言う。  「再生回数が伸びた理由は、当時チャンネル登録者数20万人のユーチューバーさんが動画にコメントをくれたからなんです」  コメントの内容は「あなたみたいな人が、もしかしたらユーチューブで成功するのかもしれませんね。収益化するまで是非続けてください。わたしも応援します」だった。  ユーチューブに限らずSNSではよく起こる現象だ。多くのフォロワーやファンを持つ配信者(発信者)が、無名ユーチューバーの動画を一言「面白い」と紹介しただけで、瞬く間にその動画が拡散されていく。これをきっかけに戦力外さんは、収益化の条件であるチャンネル登録者数1000人・総再生時間4000時間を達成した。 動画を通じて疑似体験  動画の冒頭は、戦力外さんが車中泊をする場所に向かう道中の運転席を映している。無言で運転する戦力外さんが映し出され、テロップでその日にあった出来事などが紹介される。動画の説明欄に「この動画は半分くらいフィクションです」とある通り、テロップの内容は現実世界で起きたことに、戦力外さんが少し〝アレンジ〟を加えたものとなっている。  名前にあるもう一つのテーマ「戦力外」。これは、戦力外さんが日々の生活において「社会に出ると全然自分が役に立たない」、「俺って会社や社会では戦力外だな」と、打ちひしがれた経験が基になっている。   視聴者のコメント欄を見ると「おっちゃん見てると他人事には思えないんだよな。職場のストレスはよく分かる! この動画を見てると頑張んなきゃって不思議と思える。おっちゃん頑張って!」などと書き込まれている。  「動画の前半部分によく出てくる職場での失敗エピソードは、視聴者が自分よりきつい環境にいる人を見て、自分はまだまだマシだなって安心したい思いがあると思います。社会の戦力外おじさんが、もがきながら、ささやかな楽しみを見つけて楽しんでいる姿を見てシンパシーを感じるのでしょうね」 取材に応じる戦力外さん  メーンである動画の後半部分は、戦力外さんが車中で一人、ひたすら飲み食いするシーンだ。これがまた「食べ物がとても美味しそうで、美味しそうに食べる」動画なのだ。  視聴者のコメント欄には「見てると幸せな気持ちになれる動画を、ありがとうございます!」、「毎回、元気いただいてます」などと寄せられている。  「自分の好きなユーチューバーを見ることによって、自分もキャンプした気持ちになる。健康上の理由で食べたいけど食べられない人にとっては、私の動画を見て食べた気になる。そうやって疑似体験したいのかもしれませんね」 動画の編集時間は5時間  戦力外さんは1979(昭和54)年生まれの43歳。出身は山形県だが、幼少期から30代半ばまで猪苗代町で過ごす。学生時代は漠然と「物書きになりたい」という夢を持っていた。専門学生時代にはサブカルチャー雑誌『BURST(バースト)』にハマり、石丸元章、見沢知廉、花村萬月など、破天荒だが自由を感じるライフスタイルに憧れた。何か行動に移すということはなかったが、創作活動をしたいという思いは学生時代から抱いていた。  高校卒業後、家業である川魚の養殖業に就き、6年半前に実家を出て中通りに引っ越すタイミングで、インフラ系の会社に転職した。20代に真剣に打ち込んだのはフルコンタクト空手という格闘技だった。しかし膝のじん帯を断裂し、選手生命を断たれてしまう。  人生の大きな目標を失い「もう一つ生きがいを見つけたい」と思い立った戦力外さんが表現活動の第一歩として始めたのが、LIVEコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」だった。しかし、ポコチャはリスナーと直接会話するスタイルで、高度なコミュニケーション能力が要求されるため数カ月で挫折してしまう。  戦力外さんは「誰かと直接コミュニケーションせず、自分のタイミングで動画を撮り、じっくり編集できる方がいいんじゃないか」と考え、ユーチューブを始めた。  平日は会社で働き、休日になると動画撮影のため出掛ける。撮り終わったら自宅に戻って編集する。1つの動画の編集作業は平均5時間を要するが、「スマホを使ってベッドに寝ころびながらリラックスして作業しているので、そんなに大変ではないですよ」。  台本は作らず、頭の中で動画の構成を練っている。仕事は車の移動時間が長いため、その時間を有効活用し、面白いワードが出てくるのをひたすら待つのだという。 「美しいマンネリ目指す」「理想は水戸黄門とか孤独のグルメ」  戦力外さんのチャンネルの視聴層は35~60歳までが多く、男女比では男性が9割を占める。  「理想は水戸黄門とか孤独のグルメなんです。視聴率トップは取れないけど、ずっと見てくれる人がいる。美しいマンネリっていうんですかね、そんな動画でありたいですね」  戦力外さんの動画が限られた層にしか見られていないと分かるエピソードがある。戦力外さんは自身のユーチューブチャンネルを母親に薦めたそうだが、母親が熱心に見るのは猫やフォークダンスの動画で、いくら薦めても自身の息子が配信している動画を全く見なかったという。戦力外さんは「興味がなければ肉親の動画でも見ないんですよ」と笑う。 プリウスと戦力外さん  ユーチューブはユーザー一人ひとりの趣味趣向に合った動画がトップ画面に表示されるような仕組みになっており、普段見ないジャンルの動画はそもそも表示もされない。これはユーチューブに限ったことではなく、買収騒動で話題のツイッターなどのSNS、ゾゾタウンなどの通販サイトも同様だ。  ただ、世の中の〝おじさん〟しか見ないニッチな動画を配信しているはずが、最近は少しずつファン層が拡大している様子。北海道に撮影に行った際、チャンネル登録しているファンの女性と奇跡的に出会い、お付き合いするまでに至ったという。  声をかけられる機会も増え、特にキャンピングカーで旅をしているシニア世代の夫婦からが多いようだ。 専業ユーチューバーへ  戦力外さんは6年半勤めた会社を辞め、12月から専業ユーチューバーとして活動を始めた。  「収入は不安定ですし、専業としてやっていくのに不安はありましたが、これからは創作活動一本で食っていくんだと決めました」  ユーチューブでの収入は「サラリーマンの月収の2倍くらい」だという。再生回数の変動などにより月の収入が100万円の時もあれば10万円の時もあるような世界だが、ユーチューブで最も広告収入を得やすいのは3月と12月なので、そのタイミングで退職を決意した。  ユーチューブは再生数によって広告収入が決まる。その単価についてはユーチューブの規約で公言しないよう定められている。戦力外さんも明かそうとしなかった。  しかし、さまざまなユーチューバーの書籍の情報によると、現在、ユーチューブの広告収入単価は1再生あたり0・05~0・7円と言われている。トップクラスの人気ユーチューバーは、1つの動画につき、サラリーマンの平均年収の3~4倍の広告収入が入る計算となる。  とは言っても、そこまで稼げるのはほんの一握りで、急に動画が見られなくなることだってあるのだ。  ただ、戦力外さんは「ユーチューブはプライベートすべてがネタになる」と前向きに捉える。  「仮にユーチューブで稼げなくなり、アルバイトをすることになっても、それを動画にすればいい。いいことも悪いこともネタにできるのがユーチューブなんです」  専業ユーチューバーになれば撮影回数を増やせるし、動画を配信する本数も増える。海外向けのチャンネル開設も目論んでいる。  「私のチャンネルは日本語のテロップを入れているので日本人しか見ません。次は世界に向けて、言葉なしでも伝わるような動画も作っていければと思っています」  戦力外さんは、テロップ無しに加え、ユーモアもプラスアルファしていきたいと考えている。  「チャップリンやミスタービーンみたいなコミカルな動きを入れていけば面白いかなと思っています」  一度見たら見続けてしまう中毒性。これがユーチューブの性質であり、作り手はそこを目指して動画を作成する。  「好きなことで、生きていく」  これはユーチューブのキャッチフレーズだが、専業ユーチューバーとして生き残っていくためには、そうも言っていられない。戦力外さんは「自分が好きなものも大事ですが、それ以上に、視聴者が求めているものを常に考え、再生回数が落ちないように維持していかなければなりません」と漏らす。  「死ぬ時、『なんであの時に専業ユーチューバーにならなかったんだ』と思いたくないんです。やった後悔よりもやらない後悔の方が悔いが残るって言うじゃないですか」  そう笑って話す戦力外さん。この先、どのようなチャンネルや動画を作り、ファンを拡大していくのか。〝おじさんユーチューバー〟の挑戦は始まったばかりだ。 追記【TBS 櫻井・有吉THE夜会で紹介】(2023年5月23日放送分)戦力外さんが紹介される! チュートリアル・徳井義実さんが、おすすめのユーチューブチャンネルを紹介するコーナーで戦力外さんを紹介!タイトルは「なぜか見てしまう!脱サラ親父の哀愁車内メシ」。23分30秒頃から。 Paravi(パラビ)で視聴する あわせて読みたい 鏡田辰也アナウンサー「独立後も福島で喋り続ける」

  • 東山・芦ノ牧温泉を悩ます廃墟ホテル【会津若松】

     会津若松市の東山温泉と芦ノ牧温泉では、廃業した旅館・ホテルが廃墟化しており、温泉街の景観を損ねている。なぜ解体は進まないのか。あるユーチューバーの動画をきっかけに、廃墟ホテルの現状と課題を取材した。(志賀) 横行する!?ユーチューバーの〝無断侵入〟 https://www.youtube.com/watch?v=JlLZ_6UfrsQ 【芦ノ牧の迷宮】増築を重ね巨大化した廃ホテルの現状調査」  動画投稿サイト・ユーチューブで「【芦ノ牧の迷宮】増築を重ね巨大化した廃ホテルの現状調査」という動画が公開されている。投稿者は廃墟探索の様子を投稿している蓮水柊斗(はすみ・しゅうと)氏。撮影されているのは芦ノ牧温泉でかつて営業していた芦ノ牧ホテルだ。  動画には事務室に営業当時の書類がそのまま残されている様子や、客室で何者かが生活していた様子が収められていた。  芦ノ牧ホテルは昭和41年に開業。運営会社は㈲芦牧ホテル。リゾートブームが起きるバブル期の前にいち早く新館、別館を増築し、一時期は温泉街で最大のホテルとなった。当時のデータが残っているホームページによると、客室全47室。収容人数一般200人(団体280人)。全室渓谷側で眺望の良さが売りだった。 芦ノ牧ホテル  会津若松市内にスイミングスクールがなかった昭和50年代にいち早く屋内プールを整備したほか、近くに総合体育館も建設し、スポーツ合宿の団体客の受け皿となった。  周りの宿泊施設も設備投資に乗り出し、大型化が進むと、団体客の宴会向けにセクシーなスーパーコンパニオンパックを導入したり、冬場の閑散期に大衆演劇と観劇する老人会の無料送迎(県外にも対応)を始めた。  それらのサービスも、周囲が追随し始めると差別化が図れなくなり、売り上げが落ち込んだ。団体旅行から個人旅行へとトレンドが移ったことも痛手となった。  経営は創業者(室井家)の家族が行っていたが、外部から経営者を招くようになった。2009年には運営会社を株式会社にして、元プロ野球選手・小野剛氏を社長として招いた。売り上げは順調に見えたが、同温泉の事情通によると、室井一族で経営していたころの決算内容などをめぐり、内部でゴタゴタが続いていたという。  それからまもなくして震災・原発事故が発生。賠償金が支払われて立て直しを図ると思われたが、しばらくすると休業に入った。  同温泉の事情に詳しい人物は、「休業と言っても、実質は廃業。旅行代理店や取引業者は『いきなり連絡が取れなくなった。未払い金があるがこのまま踏み倒されるだろう』と嘆いていた。大きな被害を被ったところもある」と指摘する。  その後は営業再開することなく、増築により巨大化した廃墟が温泉街に残されることになった。冒頭で触れたユーチューブ動画に「芦ノ牧の迷宮」というタイトルが付いているのはそのためだろう。  こうした経緯もあり、動画は芦ノ牧温泉の関係者の間で話題になり、視聴した人も多かったようだ。ただ、「物件の所有者様や管理者様から敷地内及び建物内の立入許可を頂いたうえで内部の現状調査を行っております」という表記に疑問の声も出ている。というのも、地元関係者は誰も立入許可をしていなかったからだ。  芦ノ牧温泉の温泉街の土地は地元住民の入会地となっており、住民で組織される㈲芦ノ牧温泉開発事業所が一括で管理している。だが、同社の関係者は「こちらに問い合わせなどはありませんでした。うちでは一度、財産管理を依頼されている弁護士に断って、警察立ち会いのもとで入ったぐらいです」と述べる。  芦ノ牧温泉観光協会などにも問い合わせはなかったという。  同ホテルの建物の不動産登記簿を確認したところ、所有権は㈱芦牧ホテルのままだったが、2012年に会津若松市、令和2年に埼玉県に差し押さえられていた。それらはすぐ解除されたものの、同年12月に会津若松市が差し押さえ、その後は解除されていない。おそらく固定資産税が納付されていないと思われる。 運営会社社長は取材に応じず  そこで会津若松市観光課に確認したが、「市の方では差し押さえただけで建物の管理はしていない。ユーチューバーから問い合わせも来ていない」とのことだった。  同ホテル関連の建物・土地には根抵当権者・会津信用金庫による極度額8000万円の根抵当権が設定されていた。そこで同金庫の担当者にも確認したが、市観光課同様、管理には携わっておらず、問い合わせも来ていないということだった。  芦ノ牧ホテルはほぼ廃業状態だが、運営会社の㈱芦牧ホテルは現在も存続している。社長を務める小野氏は埼玉県狭山市で㈱GSLという会社を経営している。2008年設立。資本金3000万円。主な事業は飲食(焼肉店「ベイサイドTOKYO牧場」の展開)、野球教室(プリマヴェーラ・リオーネ)の運営など。民間信用調査機関によると、2022年9月期の売上高は1億8000万円(ただし、3期連続で同じ数字)。  SNSは数日に一度更新している。10月4日にはX(旧ツイッター)で《ドラフト同期の阿部慎之助が読売巨人軍の監督となった。凄い事である》とつぶやき、過去の写真を掲載していた。週刊文春2022年5月19日号に掲載された横浜高校野球部でのパワハラ指導に関する記事では、被害者の父親として小野氏が取材に応じている。  にもかかわらず、芦ノ牧ホテルに関しては建物を廃墟のまま放置し、地権者である㈲芦ノ牧温泉開発事業所に地代を支払っていないというから驚く。  ユーチューバー・蓮水氏に立入許可を出したのか、税金・地代の支払いを滞納していることについてどう考えるのか、そして今後、「芦ノ牧の迷宮」と化した廃墟をどうするつもりなのか。小野氏の連絡先を入手し、繰り返し電話をかけたが、つながらなかった。そこで、狭山市の㈱GSLを直接訪ねたところ、同社営業企画・野球塾講師の米田和弘氏が応対した。  米田氏が差し出した名刺には「芦ノ牧ホテル」の文字があった。そこで同ホテルについて話を聞きたいと伝えると、「小野は東京・練馬の事務所にいたり、出張していることが多い。芦ノ牧ホテルは老朽化や地震の影響も含めて基本的に廃業している状態ですね。小野に伝えておきます」とあっさり答えたが、10日以上経っても電話はなかった。  あらためてメールで小野氏に取材を申し込んだが返事がなかったので、米田氏に連絡を取ったところ、「小野には伝えましたが、都合が合わないとのことでした。申し訳なかったです」と話した。都合が悪い取材には応じないのだろう。  一方で、ユーチューバーへの立入許可に関しては「担当弁護士の対応は小野が担当しているので私の方では分かりかねますが、私が把握している限り、ユーチューバーの立ち入りについて会社として許可を出したことはありません」と話した。  冒頭のユーチューバー・蓮水氏はいったい誰に許可を取ったのか。X(旧ツイッター)を通して質問を投げかけたところ、以下のような返信があった。  《動画の制作、編集は全て私が行っておりますが企画や、所有者様、管理者様の調査や立入許可については私1人ではなく、当YouTubeチャンネルの調査部がメインで行っております。倒産物件なども多く、所有権移転などされていない物件が大半です。そのなかでの所有者様や管理者様を探すのは並大抵ではありません。芦ノ牧は、4物件のホテル旅館を撮影していますが、全て所有者様や管理者様と直接お会いしています。まだ未配信の物件も多数ありますが全て立入許可済みでの撮影を行っております》  結局誰から許可を得たのかよく分からず、何か隠していることがあるのではないかと疑わざるを得ない回答だった。そもそも「調査部」としているが、企業などで大規模にやっているアカウントには見えない。小野氏、弁護士と連絡が取れなかったので断言はできないが、廃墟ホテルの権利関係が複雑になっていることを逆手に取り、あえてテーマに選んでいるようにも見える。  そういう意味では〝限りなく黒に近いグレーな動画〟と思って見た方が良さそうだ。ほかの廃墟系ユーチューバーも推して知るべし。 廃墟ホテルが放置される理由  芦ノ牧ホテルの建物の窓ガラスには「不法侵入者を発見時、警察に通報いたします」と張り紙されており、鍵がかかっている。だが同温泉関係者によると、侵入経路があるようで、肝試しや動画配信目的で勝手に侵入する人が後を絶たない。  芦ノ牧温泉には芦ノ牧ホテル以外にも新湯、元湯、美好館、ホテルいづみやなどの廃墟ホテルがあるが、こちらに関しても中に入った形跡があったり、電気が通っていないのに夜に明かりがついていたりするという。  本誌昨年6月号「猪苗代〝廃墟ホテル〟で配信者が花火」という記事では、廃墟探索がユーチューバーにとって手軽に視聴回数を稼げる人気コンテンツとなっており、中には火災リスクお構いなしで、花火で遊ぶ動画もあったことを報じた。  「芦ノ牧温泉に限らず、廃墟ホテル内を通っている配線を盗んで売りさばく業者もいるようです。実際、各温泉の観光協会などに問い合わせがあるようで、廃墟ホテルの前で怪しい車を見かけることもあります」(同温泉の事情に詳しい人物)  廃墟化した旅館・ホテルが温泉街に残り続けることで、イメージ悪化につながるばかりか、実際に良からぬ輩が出入りしている、と。  だからこそ、廃墟ホテルは解消した方がいいが、ひとたび廃業し廃墟化してしまうと、解体するのは難しい。所有者と連絡が取れなくなっている可能性が高いためだ。  解体には億単位の金がかかり、所有者が必要額を捻出できないという事情もある。最近は解体費用が高騰しており、建物にアスベストなどが使われている場合は調査などの対策が求められるので、さらにハードルが上がっている。  仮に高額な解体費用を負担して更地にしたところで100万円単位の価値しかないし、芦ノ牧温泉の場合、原状復旧して地権者(芦ノ牧温泉開発事業所)に返さなければならない。逆に建物を残したままにしておくと、固定資産税はかかるものの、建物の固定資産税価格は耐用年数が満了となってからは新築時よりかなり低くなるので、所有者は「大した税額ではないし、解体するより安上がりで済む」と放置するようになる。  芦ノ牧ホテルのように固定資産税を滞納すれば、財産である不動産を当該自治体(芦ノ牧温泉の場合は会津若松市)に差し押さえられ、競売にかけられる。ただ、それに当たって行われる不動産鑑定には100万円単位の金額がかかるという。競売で売れる見込みがある物件ならともかく、誰も買う見込みのない廃墟ホテルにそれだけの経費をかけると自治体の損失につながりかねないため、担当者も対応に及び腰となる。  こうして廃墟ホテルが放置されていくわけ。  芦ノ牧温泉のある宿泊施設関係者は「今後も廃墟化が進む可能性が高い」と語る。 「丸峰観光ホテルの経営者が創業者一族からみちのりホテルズに代わりましたが(本誌9月号参照)、他の宿泊施設も経営者が大手・県外資本に代わったところが多い。安く買い叩けば、設備投資分の回収を考えなくて済むので、宿泊料金を安く抑えられ、より集客を図りやすいという狙いがあります。今後はインバウンド・富裕層狙いの高級路線と、大手資本による低価格路線の二極化が進むと予想されます。その流れに取り残された中途半端な宿泊施設は力尽き、廃墟化がさらに進むかもしれません」 東山温泉にも4つの廃墟ホテル ホテルキャニオン跡  芦ノ牧温泉と並び同市を代表する温泉街・東山温泉でも、新栄館、ホテルキャニオン、アネックスシンフォニー、玉屋と4つの廃墟ホテルがある。新栄館は芦ノ牧ホテル同様、休業中だが、残り3つは運営会社が倒産した。  市によると解体費用の概算は合計約10億円(新栄館約1億4500万円、ホテルキャニオン約3億5000万円、アネックスシンフォニー約2億9700万円、玉屋約2億1000万円)。ただ前述した通り、解体費用が高騰しているのでさらに金額が上がっている可能性が高い。  会津若松市は昨年、東山温泉、芦ノ牧温泉が今後10年間で目指すべき方向性などを取りまとめた会津若松市温泉地域景観創造ビジョンとそれに伴うアクションプランを策定した。その中で、東山温泉の4つの廃墟ホテルについて、令和14年度までに解体する方針が示された。撤去費用については《地域の事業者も負担をしながら国等の補助金を活用する》と示された。  ここで言う補助金とは観光地の施設改修や廃屋の撤去などを支援する「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値事業(旧・既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業)」のことだ。  事業によって補助率、補助上限額が定められており、廃屋撤去は補助率2分の1、補助上限額1億円となっている。  解体後の土地利用に関しては当初より緩和されており、公園緑地や足湯、オープンスペース、景観に配慮した駐車場などを整備する目的で解体する場合も補助対象になる。  休業中の新栄館の目の前には「くつろぎ宿 新滝」が立地する。同旅館を運営する㈱くつろぎ宿の深田智之社長は「自己負担分は当社が負担してもいいので、行政が音頭を取ってもっと早く解体に着手することを期待しています」と語る。  震災後の2013年に廃業した旅館・高橋館の建物が倒壊したまま放置される問題が起きたとき、新滝では約2000万円を負担し解体、顧客用の駐車場として整備し直した。この件も加えてこれまで5件の建物を自己負担で解体し、合計1億円超を投じてきたという。  「原瀧さんも数千万円かけて廃屋の解体に協力し、跡地を食事会場や駐車場として活用している。このほか安全対策や景観対策など民間レベルで話し合って取り組んでいます。ただ、それ以上に廃墟の負のイメージは大きい。行政は『所有者がいるから手を出せない』などの理由で動きが鈍いですが、お金ならわれわれ民間が負担しても構わないので、もっと積極的に動いてほしい」(深田氏)  深田氏によると、東山温泉には年間約50万人が宿泊する。平均単価1万5000円と考えると、50~100億円の売り上げが生まれる。たとえ解体費用に数億円かかるとしても、民間・行政が連携し、数年かけて取り組めば、廃墟ホテルをすべて解体して温泉街の景観を整備することも実現不可能ではない、と。  これに対し、会津若松市観光課の担当者はこのように話す。  「地元で解体費用を持つからすぐ解体しましょうと言われても、実際に解体を進めるとなれば、清算人を立て、裁判所での手続きを進めなければならない。差し押さえたと言っても所有権が移ったわけではないので、簡単に進まないのが実際のところです」  東山温泉の関係者からは「コロナ禍でダメージを受け、業績が低迷しているところも多い中、協力して解体費用を出そうと言っても意見をまとめるのは難しいだろう」、「過去に行政主導で同ビジョンのようなものが何度も作られたが、結局うまくいかなかった。今回もうやむやのうちに終わりそうだ」と冷ややかな意見も目立った。 鍵を握る官民の連携 会津若松市役所  こうして見ると、廃墟ホテル問題の解決は簡単ではなさそうだが、芦ノ牧温泉では3年前、宿泊施設が協力してお金を出し合うことを決め、前述の補助事業に申請し採択された経緯もある。  ホテルいづみや跡を解体し、約2700平方㍍の敷地を使ってグランピング施設、貸し切りの温泉浴場を備えた複合レジャー施設を整備するというもの。解体費用は約1億円。裁判所などの手続きを進め、芦ノ牧グランドホテルを運営するベンチャラー(新潟市)を中心に約5000万円を自己負担する方針がまとまった。  ところが、長引くコロナ禍で売り上げが激減したため、計画はストップ。資金繰りを優先し、申請を取り下げたのである。ただ、裁判所などの手続きは済んでおり、各ホテル・旅館の業績が回復次第、再挑戦できるという意味では明るい兆しと言えよう。  芦ノ牧温泉の関係者は「丸峰観光ホテルは経営者が変わって、地域と協力して盛り上げようというムードが出てきた。これからの展開に期待したい」と語る。  会津若松市観光課によると、昨年の宿泊者数は東山温泉約41万5000人、芦ノ牧温泉約12万2000人。コロナ禍前の2019年の宿泊者数は東山47万3000人、芦ノ牧21万4000人。20年前の2002年は東山50万2000人、芦ノ牧34万6000人。じりじりと減っていたところをコロナ禍が直撃した格好だ。  各ホテル・旅館は燃料費高騰などを反映して料金を上げているので、見かけ上の売り上げはそれほど落ち込んでいないとのことだが、「3年にわたり売り上げが低迷したダメージがどのように出るか分からない」(ある宿泊施設経営者)。こうしたときだからこそ、将来を見据えて温泉街の景観改善に取り組むことが重要になるのではないか。  島根県津和野町では廃墟ホテル問題を解決するため、所有者と相談し、土地と建物を合わせてタダ同然の1000円で取得。約1億5000万円かけて建物の撤去と公園の整備を進めた。関係者の熱意とアイデア次第でやりようはあるということだ。  8月に4選を果たした室井照平市長を中心に、市と温泉街がいかに一致団結して、問題解決に挑めるかが鍵を握る。

  • 【櫻井・有吉THE夜会で紹介】車中泊×グルメで登録者数10万人【戦力外110kgおじさん】

     テレビ離れが進む昨今、ユーチューブの全世代の利用率は9割だ。本誌の読者層であるシニア世代も、パソコンやスマートフォンで毎日のようにユーチューブを見ている人は多いはず。数あるチャンネルの中には、県内で活動するユーチューバーも多数存在する。その中に、異色のジャンル「車中泊&グルメ」系で人気を誇る「戦力外110kgおじさん(43歳)」がいる。なぜ視聴者はこのチャンネルにハマるのか、本人へのインタビューをもとに、その謎に迫ってみたい。 【戦力外110kgおじさん】福島県内在住おじさんユーチューバーの素顔 https://www.youtube.com/watch?v=_SxScudMxQ8&t=23s  週末夜のキャンプ場。辺り一面、真っ暗の中、ポツンと明かりが灯る1台のプリウス。その車の後部座席で、一人焼肉をしながらチューハイ「ストロングゼロ」をキメる――。そんな様子をユーチューブに配信している男性がいる。男性の名は「戦力外110kgおじさん」(以下、戦力外さんと表記)。戦力外さんのユーチューブのチャンネル登録者数は10・5万人。1つの動画が配信されれば20万回再生するのは当たり前で、中にはミリオン(100万回再生)に届きそうな動画も複数ある。  「110kg」という名の通りの巨漢が、決して広いとは言えないセダンタイプのプリウスの後部座席で、好きなものをたらふく食べ、大酒を飲む。そんな動画がなぜ多くの人に見られ、そして見続けられるのか。  戦力外さんの動画はチャンネルを開設してすぐに〝バズった〟(人気が出た)わけではない。  戦力外さんがユーチューブに動画を配信し始めたのは2020年2月。当初は釣りの動画を配信していたが、再生回数は数十回程度で、チャンネル登録者数も伸びなかった。  浮上のきっかけとなったのは「顔出し」だった。   戦力外さんは「正直なところ、40代である自分らの世代ってネットで顔出しするなんて気が狂っているというか、抵抗があったんですよね」と話す。今の40代は、匿名性の高い「2ちゃんねる」などを見てきた世代であり、「インターネットでは絶対に顔を出すな」と言われてきた世代でもある。それでも、戦力外さんは再生回数を伸ばしたい一心で顔出しを決意した。  「顔出ししたら登録者が100人を超えたんですよ。ユーチューブには『チャンネル登録者数100人の壁』というのがあります。そこを自力で超えられると、収益化の条件である『チャンネル登録者数1000人・総再生時間4000時間』に近づくと言われています。大体の人はこの100人の壁を超えられず、やめてしまうみたいですね」  チャンネル登録者数100人に達するまで7カ月を要した戦力外さんだったが、そこから1000人になるまでは、わずか3カ月だった。  顔出しと前後して、現在の動画の原点となる「プリウスの快適車中泊キットを110kgおじさんがDIY」という動画を配信したことも追い風となった。  プリウスの後部座席で使う食卓テーブル兼ベッドを作る動画だ。プリウスは後部座席を倒してフラットにしても、普段座るときの足置きのスペースがぽっかり空いてしまう。寝袋を敷いて寝ていると、どうしても足の部分がはみ出てしまい快適に眠れない。それを解決するために作られたのがこの台だった(写真)。このときの動画が初めて再生回数1000回を超え、戦力外さんにとって初バズり動画となった。戦力外さんは「釣りではなく、車中泊に需要があるのか!」と気付き、動画の内容を車中泊系へと変更していく。 車内に設置された食卓テーブル兼ベッド  2度目のバズり動画は「車上生活者の休日シリーズ」。その後、このシリーズが戦力外さんの主力コンテンツとなっていく。 戦力外さんは「このシリーズの第1弾で、いきなり1万回再生いったんです」と言う。  「再生回数が伸びた理由は、当時チャンネル登録者数20万人のユーチューバーさんが動画にコメントをくれたからなんです」  コメントの内容は「あなたみたいな人が、もしかしたらユーチューブで成功するのかもしれませんね。収益化するまで是非続けてください。わたしも応援します」だった。  ユーチューブに限らずSNSではよく起こる現象だ。多くのフォロワーやファンを持つ配信者(発信者)が、無名ユーチューバーの動画を一言「面白い」と紹介しただけで、瞬く間にその動画が拡散されていく。これをきっかけに戦力外さんは、収益化の条件であるチャンネル登録者数1000人・総再生時間4000時間を達成した。 動画を通じて疑似体験  動画の冒頭は、戦力外さんが車中泊をする場所に向かう道中の運転席を映している。無言で運転する戦力外さんが映し出され、テロップでその日にあった出来事などが紹介される。動画の説明欄に「この動画は半分くらいフィクションです」とある通り、テロップの内容は現実世界で起きたことに、戦力外さんが少し〝アレンジ〟を加えたものとなっている。  名前にあるもう一つのテーマ「戦力外」。これは、戦力外さんが日々の生活において「社会に出ると全然自分が役に立たない」、「俺って会社や社会では戦力外だな」と、打ちひしがれた経験が基になっている。   視聴者のコメント欄を見ると「おっちゃん見てると他人事には思えないんだよな。職場のストレスはよく分かる! この動画を見てると頑張んなきゃって不思議と思える。おっちゃん頑張って!」などと書き込まれている。  「動画の前半部分によく出てくる職場での失敗エピソードは、視聴者が自分よりきつい環境にいる人を見て、自分はまだまだマシだなって安心したい思いがあると思います。社会の戦力外おじさんが、もがきながら、ささやかな楽しみを見つけて楽しんでいる姿を見てシンパシーを感じるのでしょうね」 取材に応じる戦力外さん  メーンである動画の後半部分は、戦力外さんが車中で一人、ひたすら飲み食いするシーンだ。これがまた「食べ物がとても美味しそうで、美味しそうに食べる」動画なのだ。  視聴者のコメント欄には「見てると幸せな気持ちになれる動画を、ありがとうございます!」、「毎回、元気いただいてます」などと寄せられている。  「自分の好きなユーチューバーを見ることによって、自分もキャンプした気持ちになる。健康上の理由で食べたいけど食べられない人にとっては、私の動画を見て食べた気になる。そうやって疑似体験したいのかもしれませんね」 動画の編集時間は5時間  戦力外さんは1979(昭和54)年生まれの43歳。出身は山形県だが、幼少期から30代半ばまで猪苗代町で過ごす。学生時代は漠然と「物書きになりたい」という夢を持っていた。専門学生時代にはサブカルチャー雑誌『BURST(バースト)』にハマり、石丸元章、見沢知廉、花村萬月など、破天荒だが自由を感じるライフスタイルに憧れた。何か行動に移すということはなかったが、創作活動をしたいという思いは学生時代から抱いていた。  高校卒業後、家業である川魚の養殖業に就き、6年半前に実家を出て中通りに引っ越すタイミングで、インフラ系の会社に転職した。20代に真剣に打ち込んだのはフルコンタクト空手という格闘技だった。しかし膝のじん帯を断裂し、選手生命を断たれてしまう。  人生の大きな目標を失い「もう一つ生きがいを見つけたい」と思い立った戦力外さんが表現活動の第一歩として始めたのが、LIVEコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」だった。しかし、ポコチャはリスナーと直接会話するスタイルで、高度なコミュニケーション能力が要求されるため数カ月で挫折してしまう。  戦力外さんは「誰かと直接コミュニケーションせず、自分のタイミングで動画を撮り、じっくり編集できる方がいいんじゃないか」と考え、ユーチューブを始めた。  平日は会社で働き、休日になると動画撮影のため出掛ける。撮り終わったら自宅に戻って編集する。1つの動画の編集作業は平均5時間を要するが、「スマホを使ってベッドに寝ころびながらリラックスして作業しているので、そんなに大変ではないですよ」。  台本は作らず、頭の中で動画の構成を練っている。仕事は車の移動時間が長いため、その時間を有効活用し、面白いワードが出てくるのをひたすら待つのだという。 「美しいマンネリ目指す」「理想は水戸黄門とか孤独のグルメ」  戦力外さんのチャンネルの視聴層は35~60歳までが多く、男女比では男性が9割を占める。  「理想は水戸黄門とか孤独のグルメなんです。視聴率トップは取れないけど、ずっと見てくれる人がいる。美しいマンネリっていうんですかね、そんな動画でありたいですね」  戦力外さんの動画が限られた層にしか見られていないと分かるエピソードがある。戦力外さんは自身のユーチューブチャンネルを母親に薦めたそうだが、母親が熱心に見るのは猫やフォークダンスの動画で、いくら薦めても自身の息子が配信している動画を全く見なかったという。戦力外さんは「興味がなければ肉親の動画でも見ないんですよ」と笑う。 プリウスと戦力外さん  ユーチューブはユーザー一人ひとりの趣味趣向に合った動画がトップ画面に表示されるような仕組みになっており、普段見ないジャンルの動画はそもそも表示もされない。これはユーチューブに限ったことではなく、買収騒動で話題のツイッターなどのSNS、ゾゾタウンなどの通販サイトも同様だ。  ただ、世の中の〝おじさん〟しか見ないニッチな動画を配信しているはずが、最近は少しずつファン層が拡大している様子。北海道に撮影に行った際、チャンネル登録しているファンの女性と奇跡的に出会い、お付き合いするまでに至ったという。  声をかけられる機会も増え、特にキャンピングカーで旅をしているシニア世代の夫婦からが多いようだ。 専業ユーチューバーへ  戦力外さんは6年半勤めた会社を辞め、12月から専業ユーチューバーとして活動を始めた。  「収入は不安定ですし、専業としてやっていくのに不安はありましたが、これからは創作活動一本で食っていくんだと決めました」  ユーチューブでの収入は「サラリーマンの月収の2倍くらい」だという。再生回数の変動などにより月の収入が100万円の時もあれば10万円の時もあるような世界だが、ユーチューブで最も広告収入を得やすいのは3月と12月なので、そのタイミングで退職を決意した。  ユーチューブは再生数によって広告収入が決まる。その単価についてはユーチューブの規約で公言しないよう定められている。戦力外さんも明かそうとしなかった。  しかし、さまざまなユーチューバーの書籍の情報によると、現在、ユーチューブの広告収入単価は1再生あたり0・05~0・7円と言われている。トップクラスの人気ユーチューバーは、1つの動画につき、サラリーマンの平均年収の3~4倍の広告収入が入る計算となる。  とは言っても、そこまで稼げるのはほんの一握りで、急に動画が見られなくなることだってあるのだ。  ただ、戦力外さんは「ユーチューブはプライベートすべてがネタになる」と前向きに捉える。  「仮にユーチューブで稼げなくなり、アルバイトをすることになっても、それを動画にすればいい。いいことも悪いこともネタにできるのがユーチューブなんです」  専業ユーチューバーになれば撮影回数を増やせるし、動画を配信する本数も増える。海外向けのチャンネル開設も目論んでいる。  「私のチャンネルは日本語のテロップを入れているので日本人しか見ません。次は世界に向けて、言葉なしでも伝わるような動画も作っていければと思っています」  戦力外さんは、テロップ無しに加え、ユーモアもプラスアルファしていきたいと考えている。  「チャップリンやミスタービーンみたいなコミカルな動きを入れていけば面白いかなと思っています」  一度見たら見続けてしまう中毒性。これがユーチューブの性質であり、作り手はそこを目指して動画を作成する。  「好きなことで、生きていく」  これはユーチューブのキャッチフレーズだが、専業ユーチューバーとして生き残っていくためには、そうも言っていられない。戦力外さんは「自分が好きなものも大事ですが、それ以上に、視聴者が求めているものを常に考え、再生回数が落ちないように維持していかなければなりません」と漏らす。  「死ぬ時、『なんであの時に専業ユーチューバーにならなかったんだ』と思いたくないんです。やった後悔よりもやらない後悔の方が悔いが残るって言うじゃないですか」  そう笑って話す戦力外さん。この先、どのようなチャンネルや動画を作り、ファンを拡大していくのか。〝おじさんユーチューバー〟の挑戦は始まったばかりだ。 追記【TBS 櫻井・有吉THE夜会で紹介】(2023年5月23日放送分)戦力外さんが紹介される! チュートリアル・徳井義実さんが、おすすめのユーチューブチャンネルを紹介するコーナーで戦力外さんを紹介!タイトルは「なぜか見てしまう!脱サラ親父の哀愁車内メシ」。23分30秒頃から。 Paravi(パラビ)で視聴する あわせて読みたい 鏡田辰也アナウンサー「独立後も福島で喋り続ける」