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先月号で、JR郡山駅東口の結婚式場「オール・セインツウェディング」が6月8日に事業を停止したことを報じたが、10月に挙式を予定していた夫婦の母親が、その被害と精神的ショックを打ち明けてくれた。 支払い済みの190万円は戻る保証無し 事業停止を伝える張り紙 結婚式場の運営会社である㈱オール・セインツ(郡山市方八町二丁目2―11、2003年7月設立、資本金1000万円、黒﨑正壽社長)は福島地裁郡山支部に破産を申請する見通し。負債総額は少なくとも2億円を超えるとみられる。 ピーク時の2013年に5億0100万円あった売り上げ(決算期は9月)は、新型コロナ発生前の19年に2億4000万円と半減し、コロナ禍の22年には1億円と5分の1にまで落ち込んでいた。 《2014年9月期以降もパーティー会場の増設や新しいイベント企画の立案等を進め顧客獲得に努めていたが同業との競争は激しく、業績伸長に苦戦を強いられていた。そのような中、2020年3月以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、挙式・披露宴の日程変更やキャンセルが相次いだ他、招待人数の減少もあり(中略)収支一杯な状況を余儀無くされていた。2021年9月期以降も業況は好転せず、近時においても外注先との契約解消等もあったことから事業継続を断念》(東京商工リサーチ『TSR情報福島県版Weekly』6月26日付より) 関連会社にブライダルコンサルタント業の㈱プライムライフ、式場の運営管理を行う㈱TAKUSO(どちらも郡山市駅前一丁目11―7)があるが、オール・セインツの事業停止以降、事務所に人影はない。 「突然、事業停止を告げられ、しかも払ったお金は戻ってくるか分からない。今は騙されたという思いでいっぱいです」 憤った様子でこう話すのは、郡山市在住の主婦Aさん。Aさんは宮城県内に住む息子夫婦がオール・セインツで挙式とパーティーを開く予定だったが、今回の事態で見通しが立たなくなった。 「息子夫婦は5月29日に衣装や髪形などの打ち合わせをして、次回は食事の内容を詰めることになっていました。ところが、息子が担当者のラインに『次の打ち合わせはいつになりますか』と送っても『既読』になっただけで返信がなかった。いつもならすぐに返信があるので、息子も変だなと思ったそうですが、まさかこんなことになるなんて」(同) 息子夫婦が最後に打ち合わせをしたのは事業停止の10日前。おそらく担当者は、その時点では会社が破産することを認識していなかったのだろう。ラインが「既読」になっても返信がなかったということは、打ち合わせ後に黒﨑社長から社員に「6月8日に事業を停止する」旨が伝えられたとみられる。 とはいえ、顧客からすると「破産すると分かっていて説明せず、カネを騙し取ったのではないか」との疑念は拭えない。 「5月29日の打ち合わせには私も同席し、ちょうど黒﨑社長にも会っています。ただ、その日はいつもと様子が違っていました」(同) Aさんによると、黒﨑社長は愛嬌があり、丁寧な挨拶を欠かさないそうだが、その日はいつもの元気がなく、難しい表情を浮かべながら誰かと話し込む様子が見られたという。 「今思えば、破産の話をしていたのかもしれませんね」(同) 実は、Aさんの息子夫婦は他の被害カップルとは事情が異なる。 オール・セインツの約款には《挙式5万円、パーティー5万円の申込金支払いで契約成立とし、申込金は内金として当日費用に充当する》《挙式・パーティーの2週間前までに最終見積もり金額および請求金額を提出するので、挙式10日前までに当社指定の銀行口座にお振り込みください》と書かれている。つまり、被害カップルの損害額は最少で10万円、挙式まで10日を切っていると費用全額になる可能性がある。 そうした中、Aさんの息子夫婦は今年2月26日に挙式とパーティーを行う予定だったが、妻の妊娠が判明したため出産後の10月7日に延期。しかし、オール・セインツは約款で日程変更を認めていないことから、息子夫婦は特例で日程変更を承認してもらい、同社と覚書(昨年9月9日付)を交わしていたのだ。 「ただし『日程変更の条件として見積もり金額180万円の全額を払う必要がある』と言われたので、息子夫婦は覚書に基づき全額を払ったのです」(Aさん) すなわち内金10万円と合わせ、息子夫婦は計190万円を既に支払っていたのだ。挙式が10月7日ということは、本来なら10万円の損害で免れていたかもしれないのに、想定外の被害に巻き込まれた格好だ。 「私は『延期するなら契約を白紙にしてもいいのでは』と言ったのですが、息子夫婦は『どうしてもオール・セインツで式を挙げたい』と言うので、最後は本人たちの意思を尊重した経緯があります。実際、ネットの口コミ評価も高かったし、チャペルの雰囲気も素敵だったので、ここで挙式したいという思いが強かったんでしょうね」(同) 債権者集会はいつ? 門が閉ざされ静まり返るチャペル 事業停止後、オール・セインツの代理人を務める山口大輔弁護士(山口大輔法律事務所、会津若松市大町一丁目10―14)からは「(オール・セインツを)結婚式という人生の大きな節目をお祝いする場に選んでいただけたにも拘わらず、このような結果になってしまったことをお詫び申し上げます」と謝罪すると共に、▽結婚式業務委託契約を会社都合により解除する、▽支払い済みの金額および損害賠償請求は破産手続きの対象になる旨が書かれた文書(6月9日付)が送られてきた。 「紙切れ1枚で連絡を済ませるなんて酷い。黒﨑社長には、息子夫婦の人生の門出を台無しにした責任を取ってほしい」(同) 黒﨑社長は79歳で、北海道札幌市に自宅があるが出身は福島県ということは先月号でも触れた。Aさんによると「以前、雑談していたら『私は会津出身なんです』と話していました」とのこと。 チャペルやパーティー施設などの不動産は、小野町の土木工事・産廃処理会社が所有していることも既報の通りだが、その他に目ぼしい財産があるか調べたものの、不動産登記簿等では追い切れなかった。 Aさんの息子夫婦は精神的ショックに打ちひしがれている。挙式は行いたいが、別の式場でもう一度最初から打ち合わせをする気持ちになれないという。もちろん費用の問題もあり、支払い済みの190万円が戻ってくる保証はない。 山口弁護士はオール・セインツから事業停止後の処理を一任されただけで、破産手続開始が決定されれば裁判所が破産管財人を選任する。破産手続きは、その破産管財人(山口弁護士とは別の弁護士)のもとで進められることになる。 山口大輔弁護士事務所によると、7月19日現在、負債総額の調査は終わっておらず、債権者集会を開催する見通しも立っていないという。「黒﨑社長と直接話せないか」と尋ねたが「当事務所が代理人を務めているため、直接話すのは難しい」とのことだった。 「幸せ」を商売にしてきた企業が顧客を「不幸」にしたのでは話にならない。債権者を選別するわけではないが、被害カップルを何とか救済できないかと思うのは本誌だけではないだろう。 あわせて読みたい 【オール・セインツ】郡山駅東口の結婚式場が突然閉鎖
事業を停止したオール・セインツウェディング JR郡山駅東口の結婚式場「オール・セインツウェディング」が突然閉鎖した。本誌に情報が入ったのは6月9日。市内のある式場幹部がこう教えてくれた。 「オール・セインツで結婚式を予定していたカップルが『式場と連絡が取れなくなった。どうすればいいのか』と相談してきたのです」 オール・セインツは英国式チャペルとゲストハウス型パーティー会場で構成されている。チャペルには英国で実際に使われていたステンドグラス、パイプオルガン、長椅子、説教台があり、司式者も認定証のある牧師に依頼するなど、本物志向の結婚式を提供していた。式会場は30~190人まで収容可能な3タイプを揃えていた。 ネットで検索すると、昨年度まで3年連続で「口コミランキング福島県総合1位」を獲得しており、人気の式場だったことが分かる。 6月10日、現地を訪ねると、チャペルに通じる門など全ての出入口が閉ざされていた。門やドアには次のような紙が貼られていた。 《オール・セインツは、令和5年6月8日をもって、法的整理準備のために事業を停止いたしました。債権者の皆様にはご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございません》 本誌に情報が入った前日に事業を停止していたわけ。 式場周辺を見て回ると、付属施設のドアが1個所開いているのを見つけた。「ごめんください」と声をかけると、中から大柄な男性が汗だくで出てきた。オール・セインツの代理人を務める山口大輔弁護士(会津若松市)だった。 「私の一存でどこまで話していいのか判断がつかないので、取材は遠慮したい」(山口弁護士) 施設内で何をしていたのか尋ねると「電気が止まる前に食材の整理をしていた」と言う。代理人がそこまでするのかと更に問うと「いろいろあって……」と言葉を濁した。 近所のホテル従業員の話。 「オール・セインツを通して宿泊予約をされていたお客様から『式場と連絡が取れない』と聞かされ、見に行くと事業停止の張り紙がありました。直近で5、6組の宿泊予約が入っていたのですが、全てキャンセルでしょうね」 結婚式の予定が見通せなくなったカップルは少なくないようだ。 ㈱オール・セインツ(郡山市方八町二丁目2―11)は2003年7月設立。資本金1000万円。代表取締役の黒﨑正壽氏は79歳、札幌市在住だが、出身は福島県という。直近5年間の売り上げ(決算期9月)は2018年2億4000万円、19年2億4000万円、20年1億8000万円、21年1億5000万円、22年1億円。新型コロナの影響で苦戦していた様子がうかがえる。 関連会社にブライダルコンサルタント業の㈱プライムライフ、式場の管理運営を行う㈱TAKUSO(住所はいずれも郡山市駅前一丁目11―7)がある。両社の事務所も訪ねてみたが留守だった。 オール・セインツの土地と建物は小野町の土木工事・産廃処理会社が所有している。同社にも事情を聞いてみたが、社長から「当社が事業用地および事業用建物として賃貸しているのは事実です。賃借人弁護士から事業停止の通知が届き、驚いています。それ以上のことは多くの方が関係していることもあり、個人情報保護の観点からコメントは差し控えたい」というメールが寄せられ、詳しいことは分からなかった。 債権者の中には結婚式を予定していたカップルも含まれる。ネットの投稿などを見ると、オール・セインツは招待客1人当たり4万5000円かかるようなので、50人招待すると225万円の見積もりになる。事業を停止すると分かっていてカップルから前金を受け取っていたとすれば、悪質と言うほかない。 あわせて読みたい 【オール・セインツ】事業停止の郡山結婚式場に「被害者」が怒りの声
先月号で、JR郡山駅東口の結婚式場「オール・セインツウェディング」が6月8日に事業を停止したことを報じたが、10月に挙式を予定していた夫婦の母親が、その被害と精神的ショックを打ち明けてくれた。 支払い済みの190万円は戻る保証無し 事業停止を伝える張り紙 結婚式場の運営会社である㈱オール・セインツ(郡山市方八町二丁目2―11、2003年7月設立、資本金1000万円、黒﨑正壽社長)は福島地裁郡山支部に破産を申請する見通し。負債総額は少なくとも2億円を超えるとみられる。 ピーク時の2013年に5億0100万円あった売り上げ(決算期は9月)は、新型コロナ発生前の19年に2億4000万円と半減し、コロナ禍の22年には1億円と5分の1にまで落ち込んでいた。 《2014年9月期以降もパーティー会場の増設や新しいイベント企画の立案等を進め顧客獲得に努めていたが同業との競争は激しく、業績伸長に苦戦を強いられていた。そのような中、2020年3月以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、挙式・披露宴の日程変更やキャンセルが相次いだ他、招待人数の減少もあり(中略)収支一杯な状況を余儀無くされていた。2021年9月期以降も業況は好転せず、近時においても外注先との契約解消等もあったことから事業継続を断念》(東京商工リサーチ『TSR情報福島県版Weekly』6月26日付より) 関連会社にブライダルコンサルタント業の㈱プライムライフ、式場の運営管理を行う㈱TAKUSO(どちらも郡山市駅前一丁目11―7)があるが、オール・セインツの事業停止以降、事務所に人影はない。 「突然、事業停止を告げられ、しかも払ったお金は戻ってくるか分からない。今は騙されたという思いでいっぱいです」 憤った様子でこう話すのは、郡山市在住の主婦Aさん。Aさんは宮城県内に住む息子夫婦がオール・セインツで挙式とパーティーを開く予定だったが、今回の事態で見通しが立たなくなった。 「息子夫婦は5月29日に衣装や髪形などの打ち合わせをして、次回は食事の内容を詰めることになっていました。ところが、息子が担当者のラインに『次の打ち合わせはいつになりますか』と送っても『既読』になっただけで返信がなかった。いつもならすぐに返信があるので、息子も変だなと思ったそうですが、まさかこんなことになるなんて」(同) 息子夫婦が最後に打ち合わせをしたのは事業停止の10日前。おそらく担当者は、その時点では会社が破産することを認識していなかったのだろう。ラインが「既読」になっても返信がなかったということは、打ち合わせ後に黒﨑社長から社員に「6月8日に事業を停止する」旨が伝えられたとみられる。 とはいえ、顧客からすると「破産すると分かっていて説明せず、カネを騙し取ったのではないか」との疑念は拭えない。 「5月29日の打ち合わせには私も同席し、ちょうど黒﨑社長にも会っています。ただ、その日はいつもと様子が違っていました」(同) Aさんによると、黒﨑社長は愛嬌があり、丁寧な挨拶を欠かさないそうだが、その日はいつもの元気がなく、難しい表情を浮かべながら誰かと話し込む様子が見られたという。 「今思えば、破産の話をしていたのかもしれませんね」(同) 実は、Aさんの息子夫婦は他の被害カップルとは事情が異なる。 オール・セインツの約款には《挙式5万円、パーティー5万円の申込金支払いで契約成立とし、申込金は内金として当日費用に充当する》《挙式・パーティーの2週間前までに最終見積もり金額および請求金額を提出するので、挙式10日前までに当社指定の銀行口座にお振り込みください》と書かれている。つまり、被害カップルの損害額は最少で10万円、挙式まで10日を切っていると費用全額になる可能性がある。 そうした中、Aさんの息子夫婦は今年2月26日に挙式とパーティーを行う予定だったが、妻の妊娠が判明したため出産後の10月7日に延期。しかし、オール・セインツは約款で日程変更を認めていないことから、息子夫婦は特例で日程変更を承認してもらい、同社と覚書(昨年9月9日付)を交わしていたのだ。 「ただし『日程変更の条件として見積もり金額180万円の全額を払う必要がある』と言われたので、息子夫婦は覚書に基づき全額を払ったのです」(Aさん) すなわち内金10万円と合わせ、息子夫婦は計190万円を既に支払っていたのだ。挙式が10月7日ということは、本来なら10万円の損害で免れていたかもしれないのに、想定外の被害に巻き込まれた格好だ。 「私は『延期するなら契約を白紙にしてもいいのでは』と言ったのですが、息子夫婦は『どうしてもオール・セインツで式を挙げたい』と言うので、最後は本人たちの意思を尊重した経緯があります。実際、ネットの口コミ評価も高かったし、チャペルの雰囲気も素敵だったので、ここで挙式したいという思いが強かったんでしょうね」(同) 債権者集会はいつ? 門が閉ざされ静まり返るチャペル 事業停止後、オール・セインツの代理人を務める山口大輔弁護士(山口大輔法律事務所、会津若松市大町一丁目10―14)からは「(オール・セインツを)結婚式という人生の大きな節目をお祝いする場に選んでいただけたにも拘わらず、このような結果になってしまったことをお詫び申し上げます」と謝罪すると共に、▽結婚式業務委託契約を会社都合により解除する、▽支払い済みの金額および損害賠償請求は破産手続きの対象になる旨が書かれた文書(6月9日付)が送られてきた。 「紙切れ1枚で連絡を済ませるなんて酷い。黒﨑社長には、息子夫婦の人生の門出を台無しにした責任を取ってほしい」(同) 黒﨑社長は79歳で、北海道札幌市に自宅があるが出身は福島県ということは先月号でも触れた。Aさんによると「以前、雑談していたら『私は会津出身なんです』と話していました」とのこと。 チャペルやパーティー施設などの不動産は、小野町の土木工事・産廃処理会社が所有していることも既報の通りだが、その他に目ぼしい財産があるか調べたものの、不動産登記簿等では追い切れなかった。 Aさんの息子夫婦は精神的ショックに打ちひしがれている。挙式は行いたいが、別の式場でもう一度最初から打ち合わせをする気持ちになれないという。もちろん費用の問題もあり、支払い済みの190万円が戻ってくる保証はない。 山口弁護士はオール・セインツから事業停止後の処理を一任されただけで、破産手続開始が決定されれば裁判所が破産管財人を選任する。破産手続きは、その破産管財人(山口弁護士とは別の弁護士)のもとで進められることになる。 山口大輔弁護士事務所によると、7月19日現在、負債総額の調査は終わっておらず、債権者集会を開催する見通しも立っていないという。「黒﨑社長と直接話せないか」と尋ねたが「当事務所が代理人を務めているため、直接話すのは難しい」とのことだった。 「幸せ」を商売にしてきた企業が顧客を「不幸」にしたのでは話にならない。債権者を選別するわけではないが、被害カップルを何とか救済できないかと思うのは本誌だけではないだろう。 あわせて読みたい 【オール・セインツ】郡山駅東口の結婚式場が突然閉鎖
事業を停止したオール・セインツウェディング JR郡山駅東口の結婚式場「オール・セインツウェディング」が突然閉鎖した。本誌に情報が入ったのは6月9日。市内のある式場幹部がこう教えてくれた。 「オール・セインツで結婚式を予定していたカップルが『式場と連絡が取れなくなった。どうすればいいのか』と相談してきたのです」 オール・セインツは英国式チャペルとゲストハウス型パーティー会場で構成されている。チャペルには英国で実際に使われていたステンドグラス、パイプオルガン、長椅子、説教台があり、司式者も認定証のある牧師に依頼するなど、本物志向の結婚式を提供していた。式会場は30~190人まで収容可能な3タイプを揃えていた。 ネットで検索すると、昨年度まで3年連続で「口コミランキング福島県総合1位」を獲得しており、人気の式場だったことが分かる。 6月10日、現地を訪ねると、チャペルに通じる門など全ての出入口が閉ざされていた。門やドアには次のような紙が貼られていた。 《オール・セインツは、令和5年6月8日をもって、法的整理準備のために事業を停止いたしました。債権者の皆様にはご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございません》 本誌に情報が入った前日に事業を停止していたわけ。 式場周辺を見て回ると、付属施設のドアが1個所開いているのを見つけた。「ごめんください」と声をかけると、中から大柄な男性が汗だくで出てきた。オール・セインツの代理人を務める山口大輔弁護士(会津若松市)だった。 「私の一存でどこまで話していいのか判断がつかないので、取材は遠慮したい」(山口弁護士) 施設内で何をしていたのか尋ねると「電気が止まる前に食材の整理をしていた」と言う。代理人がそこまでするのかと更に問うと「いろいろあって……」と言葉を濁した。 近所のホテル従業員の話。 「オール・セインツを通して宿泊予約をされていたお客様から『式場と連絡が取れない』と聞かされ、見に行くと事業停止の張り紙がありました。直近で5、6組の宿泊予約が入っていたのですが、全てキャンセルでしょうね」 結婚式の予定が見通せなくなったカップルは少なくないようだ。 ㈱オール・セインツ(郡山市方八町二丁目2―11)は2003年7月設立。資本金1000万円。代表取締役の黒﨑正壽氏は79歳、札幌市在住だが、出身は福島県という。直近5年間の売り上げ(決算期9月)は2018年2億4000万円、19年2億4000万円、20年1億8000万円、21年1億5000万円、22年1億円。新型コロナの影響で苦戦していた様子がうかがえる。 関連会社にブライダルコンサルタント業の㈱プライムライフ、式場の管理運営を行う㈱TAKUSO(住所はいずれも郡山市駅前一丁目11―7)がある。両社の事務所も訪ねてみたが留守だった。 オール・セインツの土地と建物は小野町の土木工事・産廃処理会社が所有している。同社にも事情を聞いてみたが、社長から「当社が事業用地および事業用建物として賃貸しているのは事実です。賃借人弁護士から事業停止の通知が届き、驚いています。それ以上のことは多くの方が関係していることもあり、個人情報保護の観点からコメントは差し控えたい」というメールが寄せられ、詳しいことは分からなかった。 債権者の中には結婚式を予定していたカップルも含まれる。ネットの投稿などを見ると、オール・セインツは招待客1人当たり4万5000円かかるようなので、50人招待すると225万円の見積もりになる。事業を停止すると分かっていてカップルから前金を受け取っていたとすれば、悪質と言うほかない。 あわせて読みたい 【オール・セインツ】事業停止の郡山結婚式場に「被害者」が怒りの声