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(2022年10月号) 会津坂下町は老朽化している役場本庁舎の新築事業を進めている。もともとは2017年度から検討を行い、2022年度に完成のスケジュールで進められていたが、2018年9月に「財政上の問題」を理由に事業延期を決めた。それから4年が経ち、今年度から再度、庁舎建設に向けて動き出したのだが、町内では賛否両論が上がっている。 「4年前の決定」継続派と再考派で割れる 4年前の議論に上がった候補地図 会津坂下町役場本庁舎は、1961年に建設され老朽化が進んでいること、1996年に実施した耐震診断結果で構造耐震指標を大きく下回ったこと、本庁舎のほかに東分庁舎・南分庁舎があり、機能が分散して不便であること等々から、2017年度から新庁舎建設を検討していた。その際、国の補助事業である「市町村役場機能緊急保全事業」を活用すること、そのためには2020年度までに着工することを条件としていた。 町は2017年に、町内の社会福祉協議会や商工会、観光物産協会、区長・自治会長会の役員などで構成する「会津坂下町新庁舎建設検討委員会」を立ち上げ、調査・検討を諮問した。それに当たり、最大のポイントになっていたのは建設場所をどこにするか、だった。 同委員会では、①現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地、②旧営林署・保健福祉センター・中央公園用地、③南幹線南側町取得予定県有地――の3案を基本線に検討を行い、2018年2月、「現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地が適地である」との答申をした。 同年3月議会では、同案に関する議案が提出され、賛成13、反対2の賛成多数で議決した。 ところが、同年9月、町(齋藤文英町長=当時)は「事務事業を見直し、将来の財政状況を算定したところ、計画通り進めれば住民サービスに大きな影響を及ぼすことが予想されることになった。財政健全化を重視し新庁舎建設延期という重い決断をした」として、庁舎建設の延期を決めた。 それから4年。町は今年度から役場内に「庁舎整備課」を新設し、庁舎建設事業再開を決定した。今年度予算では関連費用として約6700万円が計上されている。 そんな中、5月12日付で町民有志「まちづくりを考える青年の会」(加藤康明代表)から、議会に対して「会津坂下町役場新庁舎の建設場所について様々な現状を加味し再度協議することを求める請願」が提出された。内容は次の通り。 × × × × 町民にとって関心の高い新庁舎の建設については、これまで様々な議論がなされてきました。特に建設場所については平成30(2018)年2月15日に会津坂下町新庁舎建設検討委員会から「現本庁舎・北庁舎、東分庁舎及び東駐車場用地」を適地として選定した旨の答申がなされ、同年、町議会第1回定例会において、議案として提出され賛成多数で可決されました。 この流れを受け、昨年度までに用地買収や移転補償などのスケジュールが進捗していると聞き及んでおり、これについては本年3月において新聞報道等により周知の事実となりました。 しかしながら、この決定が既に4年前のものとなっており、その間、町における公共施設や公有地の状況の変化、社会情勢の変化に伴う民間施設や商業施設の状況の変化などが見られました。 会津坂下町新庁舎建設検討委員会からの答申書においても、選定理由の一つとして「中心市街地や周辺まちづくりへの寄与」といった観点が挙げられておりますが、この観点から新庁舎の建設場所を考えるにあたって、上記の様々な現状の変化を加味し、現状のままでよいか再度協議することは必要不可欠と考えます。 今後の会津坂下町のまちづくりを担う青年世代の多くがこの議論に関心をもっております。既に決定され、議決された内容ではありますが、下記の事項について強く請願いたします。 1、会津坂下町役場新庁舎の建設場所について様々な現状を加味し再度協議すること。 × × × × 同請願は6月議会で、総務産業建設常任委員会に付託され、請願者が同委員会で意図や内容を説明した。委員会では請願は採択された。 議員の賛成・反対意見 東分庁舎・東駐車場用地と町が取得した隣接地 その後、本会議に諮られ、以下のような賛成・反対討論があった(「議会だより 206号」=7月25日発行より)。 賛成討論 渡部正司議員 議決の建設場所は、国からの財政支援措置と平成32(2020)年度までの着工が条件で決められたものであり、建設延期によって候補地選定の前提は崩れた。改めて協議すべきであり、本議案に賛成する。 小畑博司議員 庁舎建設が計画され、そのために全国各地を行政調査したが、建設コストは主たる課題にはならなかった。検討委員会の結果を受けて建設場所を決議した流れも、財政状況を反映したものではなかった。提案した根拠が違ったままの決議をそのままに進めることは説明責任が果たせない。本意見書は採択すべき。 反対討論 酒井育子議員 町民を代表した建設検討委員会の答申を無視し、また、提出議案、土地買収・跡地取り壊し料の予算を満場一致でした議会議決を無視している。自主財源の少ない当町、未来を担う子供たちに「負」を残してはいけない観点から反対。 五十嵐一夫議員 建設場所は4年前に議決済で、周辺に多少の社会情勢の変化があるが、その後にこの決定済の場所に欠陥が生じたわけではない。再度位置について議論をすることは、混乱を招くだけで採択・意見書提出に反対する。 山口亨議員 請願内容的には建設場所は「現本庁舎、北庁舎、東分庁舎、東駐車場用地」であることに反対ではないとのことで、単に話し合いを求めるというものだった。庁舎建設場所は、平成30(2018)年第1回定例会で議決しているものである。もし、この請願を可決すれば、町民に対しあいまいな話が独り歩きしてしまう可能性がある。現在、旧江戸鮨の解体工事が始まろうとしている。更には、令和7(2025)年4月には新庁舎での業務開始とのスケジュールも組まれている。あいまいなメッセージを町民に与えるべきではない。よってこの請願には反対。 これら討論の後、採決が行われ、賛成8、反対5の賛成多数で同請願は採択された。これを受け、議会は前段で紹介した請願書の内容と同様の意見書を、町執行部(古川庄平町長)に提出した。 請願者である「まちづくりを考える青年の会」の加藤康明代表に話を聞いた。 「町内の仲間内での飲食時や雑談の中で、『延期になっていた庁舎建設事業が再開されることになったが、いま建てるべきなのか』、『財政的な問題が理由で延期になったが、それをクリアできたとは思えない』といった話が出ました。私自身、最初に庁舎建設の話が出たころから2年前まで行政区長を務めていましたが、区の要望として、例えば街灯を増やしてほしいとか、子どもたちの通学路で歩道がないところがあるから何とかしてほしいとか、生活に直接関係する部分について、町にお願いしてきましたが、そのほとんどが『予算の問題』で実現しませんでした。そんな状況で庁舎を建てられるのか、と。さらには、この4年間で町内の生活環境は大きく変化しました。そんな中で、4年前の計画をそのまま進めていいのかと思い、請願を出しました」 加藤代表によると、「建設場所が現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地となっていること自体に反対ではない」という。 ただ、この4年間で坂下厚生病院が新築移転したこと、坂下高校が大沼高校と統合して会津西陵高校になり、同校は旧大沼高校の校舎を使っているため、事実上、坂下高校がなくなったこと、新築移転した坂下厚生病院の近くに、今年11月に商業施設「メガステージ会津坂下」がオープン予定であること――等々から、「生活環境が変わっていることを考慮すべき」(加藤代表)というのだ。 さらには、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などの影響で、建設資材が高騰しており、4年前と比べるとコスト増加は間違いない。 「これだけ、社会情勢が変わっているのに、4年前の計画をそのまま進めることが正しいのか。もう一度、議論してもらいたいというのが請願の趣旨です」(同) 懇談会の模様 町は議会からの意見書を受け、新庁舎建設検討委員会を立ち上げ(※2017年に立ち上げた委員会が解散されておらず、正確には「再開」だが、委員に変更等があった)、7月から検討を再開した。その中で、今後、町民の声を聞くために、まちづくり懇談会、新庁舎建設に関するアンケートを実施することになった。 それまで、町は4年前に決まった現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地に新庁舎を建設する考えだったようだ。その証拠に、昨年8月に東分庁舎・東駐車場用地に隣接し、競売物件になっていた寿司店の土地・建物を取得、今年5月から解体工事を進めていた。しかし、請願・意見書を受けて、場所を含めて再考することにしたのだ。 懇談会で示された資料に本誌が必要情報を追加 「これまで(4年前)の議論がゼロになったわけではありません。それも踏まえて、請願・意見書を受けて町民の声を聞くために、懇談会やアンケートを実施することにしました。3月時点で議会には2024年度内の完成目標というスケジュールを示しましたが、(請願・意見書を受けての再考で)少し遅れることになると思います」(町庁舎整備課) 懇談会は9月15日から30日の日程で、町内7地区で開催された。本誌はこのうち9月20日に開かれた坂下地区(中央公民館)での模様を取材した。その席で配布された資料には「請願・意見書を尊重し、状況の変化などを鑑みて、建設場所を含めて総合的に判断することにしました。そのための判断材料として、懇談会やアンケートなど、幅広く町民の声を聞く機会を設けることにしました」と記されていた。 懇談会では、「4年前に決まったのに、なぜ再考しなければならないのか」、「こんなことをしていたら、いつまで経ってもできない。早く建設すべき」といった意見が出た。中には、「議会は4年前に自分たちが決めたことを覆すとはどういった了見か。しかも、今年3月議会では関連予算を可決しており、わずか3カ月で方針転換した」との指摘も。 これには、懇談会に出席していた議員(請願に賛成した議員)が前段で紹介した請願に対する賛成討論と同様の説明を行った。 古川町長は「4年前の議決も、今回の意見書も、どちらも重く受け止めている。そんな中で、あらためて意見を聞くことにしたのでご理解願いたい」旨を述べた。 同地区はまちなかで役場に近いエリアということもあり、「いまの場所で早急に進めてほしい」といった意見が目立った。ただ、それ以外の地区では「4年前の計画をそのまま進めるのではなく、もっと深く議論すべき」といった意見も出たようだ。つまりは、役場に近い地区とそうでない地区では温度差がある、ということだ。 依然厳しい財政 会津坂下町役場 懇談会では事業延期の原因となった財政面についても説明があった。それによると、町の貯金である財政調整基金、減債基金、行政センター建設整備基金の合計は、2017年度末が約3億円だったのに対して、昨年度末は約13億8000万円に増えた。一方、町の借金である町債残高は2017年度末が約97億円、昨年度末が約77億円。昨年度の実質公債費比率は11・0%、将来負担費比率は49・1%で、この数年で少しずつ改善されてはいるものの、全国市町村の平均値と比べると高い数値となっている。 当日配布された資料には、「財政健全化の取り組みを進めたことで、各種財政指標は改善の傾向にあります。しかし、令和2(2020)年度の全国市町村平均値と比較すると依然として悪い状況ですので、今後の新庁舎建設に備えるためにも、より健全な財政運営に努めます」と書かれている。 10月には町民アンケートの実施を予定しており、町庁舎整備課によると、「年代や地区を分けたうえで、無作為抽出で15歳以上の1000人を対象に実施する予定」という。懇談会とアンケートを踏まえて最終的な決定をしていく方針だが、やはり最大のポイントは場所ということになろう。すなわち、4年前に決めた現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地なのか、それ以外か。 ちなみに、懇談会で配布された資料にはあくまでも1つの目安として、以前の決定地、南幹線沿い県有地、旧坂下高校跡地、旧厚生病院跡地が示されている。 町内では「場所は4年前に決まったところでいい。早急に進めるべき」といった意見や、「場所を含め、もう一度、深く議論すべき」、「そもそも、いま建設を行うべきなのか」といった意見が出て紛糾しているわけだが、1つだけ言えるのは、役場に直接的に関わっている人はともかく、庁舎が新しくなったところで、町民の日々の生活が豊かになるわけではない、ということ。それを指摘して締めくくる。 あわせて読みたい 現在地か移転かで割れる【会津坂下町】庁舎新築議論(2023年2月号)
ふるかわ・しょうへい 1953年11月生まれ。喜多方工業高(現喜多方桐桜高)卒。アルス古川㈱相談役。会津坂下町議を連続5期、議長を6年務める。現在1期目。 ──町長就任から1年半が経過しました。 「『次世代に繫ぐまちづくり』に全力で取り組んできました。この間、切れ目のない伴走型の子育て支援として、不妊治療の検査に対する上限5万円の補助制度を創設しました。健康づくり事業では、阿賀川の支川の旧鶴沼川が国土強靭化の一環で堤塘(堤防)が舗装されたのでウオーキングコースとして整備しました。道の駅あいづ湯川・会津坂下西側の河川敷までの延長を検討しており、相乗効果を期待しています」 ──役場新庁舎整備事業の進捗について。 「まず第一に質の高い住民サービスを継続的に提供する拠点であるとの考えから、町民の安全・安心の確保や災害時における円滑な復旧・復興の拠点となりうる場所に建設するべきだと考えています。そのため、30年後を見据えて、町民の声やアンケート結果等を判断材料にしながら、2月22日の議会全員協議会において、建設場所を旧坂下厚生総合病院跡地へ変更することを発表しました。 今後、本町が会津西部地区の中核としての機能を果たせるよう、周辺地域との一体的な利活用を図るのに加えて、現役場庁舎周辺の利活用についても、町民の皆様や専門家のご意見を賜り、人が集まり、賑わいを創出する空間として整備していく考えです。今年度から新庁舎建設計画の具現化に向けて、基本構想・基本計画策定を進めていきます」 ──5月8日をめどに新型コロナウイルスの5類引き下げの方針が打ち出されましたが、これを見据えてどのような施策に取り組んでいきますか。 「関連する町の施策の総点検を進めています。特に感染防止の観点から中止を余儀なくされてきた各種事業についても、入念な準備のもと、町内へにぎわいと活気を呼び込んでいきたいです。また、高齢者の皆様の外出自粛による体力低下や孤立の集中的改善に向け、集いの場として各地区サロンを活用しながら、楽しく健康づくりに努めていきます」 ──今後の重点事業について。 「町の課題である財政健全化に引き続き取り組むのはもちろん、“人口が減少しても活力があり町民一人ひとりが生きがいを持てる持続可能なまち”を実現するため、令和4年度から『交流人口対策』『関係人口対策』『定住人口対策』の3つの人口対策に取り組んできました。 令和5年度からはそれらに『少子化対策』を加えた4つの人口対策を重点事業とした過疎対策事業を実施し、若者世代、子育て世代が住みやすく、町民の皆様が輝ける住み続けたいまちを目指してまいります」
一部議員が「厚生病院跡地は候補地に不適」と指摘 本誌昨年10月号に「会津坂下町 庁舎新築議論で紛糾 『4年前の決定』継続派と再考派で割れる」という記事を掲載した。会津坂下町で進められている役場庁舎新築議論についてリポートしたものだが、その後、新たな動きがあったので続報をお伝えしたい。 同町役場本庁舎は、1961年に建設され老朽化が進んでいること、1996年に実施した耐震診断結果で構造耐震指標を大きく下回ったこと、本庁舎のほかに東分庁舎・南分庁舎があり、機能が分散して不便であること等々から、2017年から新庁舎建設を検討していた。 同年、町は社会福祉協議会や商工会、観光物産協会、区長・自治会長会の役員などで構成する「会津坂下町新庁舎建設検討委員会」を立ち上げ、調査・検討を諮問した。 最大のポイントは「建設場所をどこにするか」だった。同委員会は、①現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地、②旧営林署・保健福祉センター・中央公園用地、③南幹線南側町取得予定県有地――の3案を基本線に検討を行い、2018年2月、町に「現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地が適地である」と答申した。 同年3月議会では、同案に関する議案が提出され、賛成13、反対2の賛成多数で議決した。これにより、最大のポイントである「建設場所をどこにするか」は現在地周辺で決着したことになる。 ところが、同年9月、町(齋藤文英町長=当時)は「事務事業を見直し、将来の財政状況を算定したところ、計画通り進めれば住民サービスに大きな影響を及ぼすことが予想されることになった。財政健全化を重視し新庁舎建設延期という重い決断をした」として、庁舎建設の延期を決めた。 それから3年半ほどは事業凍結状態だったが、昨年4月、役場内に「庁舎整備課」が新設され、庁舎建設事業が再開されることになった。 ただ、それを受け、昨年5月に町民有志「まちづくりを考える青年の会」(加藤康明代表)から議会に対して、庁舎建設場所の再考を促す請願が提出された。同請願は総務産業建設常任委員会に付託され、委員会で採択された。その後、本会議に諮られ、賛成・反対討論があった後に採決が行われ、賛成8、反対5の賛成多数で同請願は採択された。これを受け、議会は庁舎建設場所の再考を促す意見書を、町執行部(古川庄平町長)に提出した。 町は議会からの意見書を受け、新庁舎建設検討委員会を立ち上げ(※2017年に立ち上げた委員会が解散されておらず、正確には「再開」だが、委員に変更等があった)、昨年7月から検討を再開した。その中で、町民の声を聞くために、まちづくり懇談会、新庁舎建設に関するアンケートを実施することになった。 こうした動きに、議会内では意見が割れ、町内7地区で開催された町民懇談会でも賛否両論が出た。 再考反対派の意見は「4年前に建設場所が決まり、議会で議決しているのに、なぜ再考しなければならないのか」、「そんなことをしていたら、いつまで経ってもできない。早く建設すべき」、「2021年8月に東分庁舎・東駐車場用地の隣にある競売物件の寿司店の土地・建物を取得し、2022年5月から解体工事を進めている。場所を変えたら、取得・解体費が無駄になってしまう」というもの。 再考賛成派の意見は「事業休止していた4年間で、坂下厚生総合病院が新築移転したこと、坂下高校が大沼高校と統合して、事実上、坂下高校がなくなったこと、新築移転した坂下厚生総合病院の近くに商業施設『メガステージ会津坂下』がオープンしたこと等々から、生活環境や人の流れが変わっていることを考慮すべき」、「コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などの影響で、建設資材が高騰しており、コスト増加は間違いない。4年前の計画をそのまま進められる状況ではない」というもの。 現在地か移転かで町が二分されている状況だ。 アンケートの結果 本誌昨年10月号記事では、そうした詳細をリポートしたわけだが、その後、昨年11月25日には新庁舎建設に関するアンケート結果が公表された。アンケートは昨年10月、町内在住の15歳以上の1500人を無作為抽出し、調査票を郵送して実施。期日までに回答があったのは726人で、回収率は48・4%だった。ちなみに、同町の人口(今年1月1日現在)は1万4352人だから、アンケート送付数は全人口の10%弱、回答数は約5%になる。 回答者の内訳(カッコ内は構成比)は、年齢別では10代24人(3・3%)、20代36人(5・0%)、30代59人(8・1%)、40代88人(12・1%)、50代100人(13・8%)、60代179人(24・7%)、70代以上239人(32・9%)、無回答1人(0・1%)。地区別では坂下地区310人(42・7%)、若宮地区109人(15・0%)、金上地区71人(9・8%)、広瀬地区92人(12・7%)、川西地区57人(7・9%)、八幡地区55人(7・6%)、高寺地区29人(4・0%)、無回答3人(0・4%)だった。 質問はいくつかに分かれているほか、自由記入欄もあるが、ポイントとなる「現在、建設予定地は『現本庁舎・北庁舎・東分庁舎及び東駐車場用地』ですが、再考すべきと考えますか」という質問では、「現建設予定地のままでよい」が248人(34・2%)、「再考すべきである」が430人(59・2%)、「その他」と「無回答」が合わせて48人(6・6%)だった。再考すべきが6割近くを占めた。 この質問で「再考すべき」「その他」と答えた人に「現時点において、町が把握している未利用地は、以下の箇所(※旧坂下厚生総合病院跡地、旧坂下高等学校跡地、南幹線沿線県有地)があります。建設地として望ましいと思うものを次の中からひとつだけ選んでください」という質問では以下のような回答結果だった。旧坂下厚生総合病院跡地273人(61・3%)、旧坂下高等学校跡地39人(8・8%)、南幹線沿線県有地95人(21・3%)、その他・無回答38人(8・5%)。 こうして見ると、最初の質問で「現建設予定地(現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地)のままでよい」と答えた248人より、「再考すべき」→「旧坂下厚生総合病院跡地」と答えた273人の方が多いことが分かる。前述のように、アンケート回答者は同町の人口の約5%だから、これを「町民の総意」と捉えていいかどうかは難しいところだが、この結果だけを見れば、町民が求めているのは旧坂下厚生総合病院跡地への庁舎建設ということになる。 解体工事が行われている厚生病院跡地 ただ、昨年12月議会で、それがひっくり返るようなことがあった。同議会で、五十嵐一夫議員が「新庁舎建設位置について、町長はどこにしたいのか。まちづくり懇談会の町民周知は適切か。旧坂下厚生総合病院跡地は候補地として適切か」といった内容で一般質問を行った。 その中で五十嵐議員が明かしたところでは、JA福島厚生連に質問状を出し、坂下厚生病院跡地の対応について尋ねたところ、「厚生連からは『〇〇社から購入したいと申し入れがあり、すでに売却を決定した』と回答があった。回答は10月3日付の文書でもらった」というのだ。 そのうえで、古川町長、庁舎整備課長に「そのことを知っていたのか」と質問した。これに対し、庁舎整備課長は「厚生病院跡地の買い手が決まったという正式な連絡は受けていない」と答弁した。 さらに町は、1万平方㍍以上の町内の未利用地を「庁舎建設の候補になり得る場所」として、町民懇談会やアンケートなどで示したものであり、ある程度、本決まりになるまでは所有者との事前協議はできない、といった考えを示した。 五十嵐議員は再質問で「(前述の事情から)厚生病院跡地は庁舎建設の候補地になり得ない」と指摘し、古川町長に「売却先が決定したことを知らなかったのか」と質問した。これに対して、古川町長は「知らなかった」と答弁した。 もっとも、今年1月中旬、本誌がJA福島厚生連に問い合わせたところ、担当者は「(坂下厚生病院跡地は)現在、解体工事を行っており、その後のことは未定」とのこと。「いま、会津坂下町では庁舎建設議論が進められており、その中で、坂下厚生病院跡地が候補地になっているが」と尋ねると、「町からはそういった話はない」と話した。 一方、五十嵐議員に確認すると、「昨年10月3日付文書で、間違いなくそういった(※売却先が決定したこと)回答を得ている。議会では『〇〇社』としたが、その回答文書には実名も記されていた」という。 近く議会に説明 あらためて、町庁舎整備課にこの件について尋ねたところ、次のように説明した。 「どんな事業でもそうですが、構想段階では権利者とは交渉できない。ある程度、決まってから用地交渉などに入ることになります。(今回の件でも)まだ構想が固まっていませんから(厚生連には)話をしていません」 記者が「アンケートでは厚生病院跡地への庁舎建設を望む声が一番多かった。ただ、五十嵐議員が指摘したように、そこが売却決定済みで候補地になり得ないとするならば、厚生病院跡地を外して、それ以外でどこがいいかを再度聞くなどの手順が必要になるということか」と尋ねると、同課担当者は「その件については近く町長から議会に対して説明することになっている」と話した。 要は、「議会に説明する前に本誌取材に答えることはできない」ということだが、何か含みをもたせた言い方だったのが気になるところ。「厚生病院跡地売却決定済み」話には、〝ウラ事情〟があるということか。 その点で言うと、福島民報(1月14日付)に《会津坂下町の坂下厚生総合病院跡地の土壌から、土壌汚染対策法の基準値を超える有害物質が検出された。県は土地の使途を変更する場合、県に届け出るよう県報に告示した(後略)》との記事が掲載された。この場合、用途・売買等、制約が伴うから、それが関係しているのかもしれない。 町は今年度中(3月末まで)に候補地を決定する方針だが、現在地周辺か移転かで意見が割れる中、どんな判断をするのか注目だ。 あわせて読みたい 【会津坂下町】庁舎新築議論で紛糾【継続派と再考派で割れる】(2022年10月号)
(2022年10月号) 会津坂下町は老朽化している役場本庁舎の新築事業を進めている。もともとは2017年度から検討を行い、2022年度に完成のスケジュールで進められていたが、2018年9月に「財政上の問題」を理由に事業延期を決めた。それから4年が経ち、今年度から再度、庁舎建設に向けて動き出したのだが、町内では賛否両論が上がっている。 「4年前の決定」継続派と再考派で割れる 4年前の議論に上がった候補地図 会津坂下町役場本庁舎は、1961年に建設され老朽化が進んでいること、1996年に実施した耐震診断結果で構造耐震指標を大きく下回ったこと、本庁舎のほかに東分庁舎・南分庁舎があり、機能が分散して不便であること等々から、2017年度から新庁舎建設を検討していた。その際、国の補助事業である「市町村役場機能緊急保全事業」を活用すること、そのためには2020年度までに着工することを条件としていた。 町は2017年に、町内の社会福祉協議会や商工会、観光物産協会、区長・自治会長会の役員などで構成する「会津坂下町新庁舎建設検討委員会」を立ち上げ、調査・検討を諮問した。それに当たり、最大のポイントになっていたのは建設場所をどこにするか、だった。 同委員会では、①現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地、②旧営林署・保健福祉センター・中央公園用地、③南幹線南側町取得予定県有地――の3案を基本線に検討を行い、2018年2月、「現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地が適地である」との答申をした。 同年3月議会では、同案に関する議案が提出され、賛成13、反対2の賛成多数で議決した。 ところが、同年9月、町(齋藤文英町長=当時)は「事務事業を見直し、将来の財政状況を算定したところ、計画通り進めれば住民サービスに大きな影響を及ぼすことが予想されることになった。財政健全化を重視し新庁舎建設延期という重い決断をした」として、庁舎建設の延期を決めた。 それから4年。町は今年度から役場内に「庁舎整備課」を新設し、庁舎建設事業再開を決定した。今年度予算では関連費用として約6700万円が計上されている。 そんな中、5月12日付で町民有志「まちづくりを考える青年の会」(加藤康明代表)から、議会に対して「会津坂下町役場新庁舎の建設場所について様々な現状を加味し再度協議することを求める請願」が提出された。内容は次の通り。 × × × × 町民にとって関心の高い新庁舎の建設については、これまで様々な議論がなされてきました。特に建設場所については平成30(2018)年2月15日に会津坂下町新庁舎建設検討委員会から「現本庁舎・北庁舎、東分庁舎及び東駐車場用地」を適地として選定した旨の答申がなされ、同年、町議会第1回定例会において、議案として提出され賛成多数で可決されました。 この流れを受け、昨年度までに用地買収や移転補償などのスケジュールが進捗していると聞き及んでおり、これについては本年3月において新聞報道等により周知の事実となりました。 しかしながら、この決定が既に4年前のものとなっており、その間、町における公共施設や公有地の状況の変化、社会情勢の変化に伴う民間施設や商業施設の状況の変化などが見られました。 会津坂下町新庁舎建設検討委員会からの答申書においても、選定理由の一つとして「中心市街地や周辺まちづくりへの寄与」といった観点が挙げられておりますが、この観点から新庁舎の建設場所を考えるにあたって、上記の様々な現状の変化を加味し、現状のままでよいか再度協議することは必要不可欠と考えます。 今後の会津坂下町のまちづくりを担う青年世代の多くがこの議論に関心をもっております。既に決定され、議決された内容ではありますが、下記の事項について強く請願いたします。 1、会津坂下町役場新庁舎の建設場所について様々な現状を加味し再度協議すること。 × × × × 同請願は6月議会で、総務産業建設常任委員会に付託され、請願者が同委員会で意図や内容を説明した。委員会では請願は採択された。 議員の賛成・反対意見 東分庁舎・東駐車場用地と町が取得した隣接地 その後、本会議に諮られ、以下のような賛成・反対討論があった(「議会だより 206号」=7月25日発行より)。 賛成討論 渡部正司議員 議決の建設場所は、国からの財政支援措置と平成32(2020)年度までの着工が条件で決められたものであり、建設延期によって候補地選定の前提は崩れた。改めて協議すべきであり、本議案に賛成する。 小畑博司議員 庁舎建設が計画され、そのために全国各地を行政調査したが、建設コストは主たる課題にはならなかった。検討委員会の結果を受けて建設場所を決議した流れも、財政状況を反映したものではなかった。提案した根拠が違ったままの決議をそのままに進めることは説明責任が果たせない。本意見書は採択すべき。 反対討論 酒井育子議員 町民を代表した建設検討委員会の答申を無視し、また、提出議案、土地買収・跡地取り壊し料の予算を満場一致でした議会議決を無視している。自主財源の少ない当町、未来を担う子供たちに「負」を残してはいけない観点から反対。 五十嵐一夫議員 建設場所は4年前に議決済で、周辺に多少の社会情勢の変化があるが、その後にこの決定済の場所に欠陥が生じたわけではない。再度位置について議論をすることは、混乱を招くだけで採択・意見書提出に反対する。 山口亨議員 請願内容的には建設場所は「現本庁舎、北庁舎、東分庁舎、東駐車場用地」であることに反対ではないとのことで、単に話し合いを求めるというものだった。庁舎建設場所は、平成30(2018)年第1回定例会で議決しているものである。もし、この請願を可決すれば、町民に対しあいまいな話が独り歩きしてしまう可能性がある。現在、旧江戸鮨の解体工事が始まろうとしている。更には、令和7(2025)年4月には新庁舎での業務開始とのスケジュールも組まれている。あいまいなメッセージを町民に与えるべきではない。よってこの請願には反対。 これら討論の後、採決が行われ、賛成8、反対5の賛成多数で同請願は採択された。これを受け、議会は前段で紹介した請願書の内容と同様の意見書を、町執行部(古川庄平町長)に提出した。 請願者である「まちづくりを考える青年の会」の加藤康明代表に話を聞いた。 「町内の仲間内での飲食時や雑談の中で、『延期になっていた庁舎建設事業が再開されることになったが、いま建てるべきなのか』、『財政的な問題が理由で延期になったが、それをクリアできたとは思えない』といった話が出ました。私自身、最初に庁舎建設の話が出たころから2年前まで行政区長を務めていましたが、区の要望として、例えば街灯を増やしてほしいとか、子どもたちの通学路で歩道がないところがあるから何とかしてほしいとか、生活に直接関係する部分について、町にお願いしてきましたが、そのほとんどが『予算の問題』で実現しませんでした。そんな状況で庁舎を建てられるのか、と。さらには、この4年間で町内の生活環境は大きく変化しました。そんな中で、4年前の計画をそのまま進めていいのかと思い、請願を出しました」 加藤代表によると、「建設場所が現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地となっていること自体に反対ではない」という。 ただ、この4年間で坂下厚生病院が新築移転したこと、坂下高校が大沼高校と統合して会津西陵高校になり、同校は旧大沼高校の校舎を使っているため、事実上、坂下高校がなくなったこと、新築移転した坂下厚生病院の近くに、今年11月に商業施設「メガステージ会津坂下」がオープン予定であること――等々から、「生活環境が変わっていることを考慮すべき」(加藤代表)というのだ。 さらには、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などの影響で、建設資材が高騰しており、4年前と比べるとコスト増加は間違いない。 「これだけ、社会情勢が変わっているのに、4年前の計画をそのまま進めることが正しいのか。もう一度、議論してもらいたいというのが請願の趣旨です」(同) 懇談会の模様 町は議会からの意見書を受け、新庁舎建設検討委員会を立ち上げ(※2017年に立ち上げた委員会が解散されておらず、正確には「再開」だが、委員に変更等があった)、7月から検討を再開した。その中で、今後、町民の声を聞くために、まちづくり懇談会、新庁舎建設に関するアンケートを実施することになった。 それまで、町は4年前に決まった現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地に新庁舎を建設する考えだったようだ。その証拠に、昨年8月に東分庁舎・東駐車場用地に隣接し、競売物件になっていた寿司店の土地・建物を取得、今年5月から解体工事を進めていた。しかし、請願・意見書を受けて、場所を含めて再考することにしたのだ。 懇談会で示された資料に本誌が必要情報を追加 「これまで(4年前)の議論がゼロになったわけではありません。それも踏まえて、請願・意見書を受けて町民の声を聞くために、懇談会やアンケートを実施することにしました。3月時点で議会には2024年度内の完成目標というスケジュールを示しましたが、(請願・意見書を受けての再考で)少し遅れることになると思います」(町庁舎整備課) 懇談会は9月15日から30日の日程で、町内7地区で開催された。本誌はこのうち9月20日に開かれた坂下地区(中央公民館)での模様を取材した。その席で配布された資料には「請願・意見書を尊重し、状況の変化などを鑑みて、建設場所を含めて総合的に判断することにしました。そのための判断材料として、懇談会やアンケートなど、幅広く町民の声を聞く機会を設けることにしました」と記されていた。 懇談会では、「4年前に決まったのに、なぜ再考しなければならないのか」、「こんなことをしていたら、いつまで経ってもできない。早く建設すべき」といった意見が出た。中には、「議会は4年前に自分たちが決めたことを覆すとはどういった了見か。しかも、今年3月議会では関連予算を可決しており、わずか3カ月で方針転換した」との指摘も。 これには、懇談会に出席していた議員(請願に賛成した議員)が前段で紹介した請願に対する賛成討論と同様の説明を行った。 古川町長は「4年前の議決も、今回の意見書も、どちらも重く受け止めている。そんな中で、あらためて意見を聞くことにしたのでご理解願いたい」旨を述べた。 同地区はまちなかで役場に近いエリアということもあり、「いまの場所で早急に進めてほしい」といった意見が目立った。ただ、それ以外の地区では「4年前の計画をそのまま進めるのではなく、もっと深く議論すべき」といった意見も出たようだ。つまりは、役場に近い地区とそうでない地区では温度差がある、ということだ。 依然厳しい財政 会津坂下町役場 懇談会では事業延期の原因となった財政面についても説明があった。それによると、町の貯金である財政調整基金、減債基金、行政センター建設整備基金の合計は、2017年度末が約3億円だったのに対して、昨年度末は約13億8000万円に増えた。一方、町の借金である町債残高は2017年度末が約97億円、昨年度末が約77億円。昨年度の実質公債費比率は11・0%、将来負担費比率は49・1%で、この数年で少しずつ改善されてはいるものの、全国市町村の平均値と比べると高い数値となっている。 当日配布された資料には、「財政健全化の取り組みを進めたことで、各種財政指標は改善の傾向にあります。しかし、令和2(2020)年度の全国市町村平均値と比較すると依然として悪い状況ですので、今後の新庁舎建設に備えるためにも、より健全な財政運営に努めます」と書かれている。 10月には町民アンケートの実施を予定しており、町庁舎整備課によると、「年代や地区を分けたうえで、無作為抽出で15歳以上の1000人を対象に実施する予定」という。懇談会とアンケートを踏まえて最終的な決定をしていく方針だが、やはり最大のポイントは場所ということになろう。すなわち、4年前に決めた現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地なのか、それ以外か。 ちなみに、懇談会で配布された資料にはあくまでも1つの目安として、以前の決定地、南幹線沿い県有地、旧坂下高校跡地、旧厚生病院跡地が示されている。 町内では「場所は4年前に決まったところでいい。早急に進めるべき」といった意見や、「場所を含め、もう一度、深く議論すべき」、「そもそも、いま建設を行うべきなのか」といった意見が出て紛糾しているわけだが、1つだけ言えるのは、役場に直接的に関わっている人はともかく、庁舎が新しくなったところで、町民の日々の生活が豊かになるわけではない、ということ。それを指摘して締めくくる。 あわせて読みたい 現在地か移転かで割れる【会津坂下町】庁舎新築議論(2023年2月号)
ふるかわ・しょうへい 1953年11月生まれ。喜多方工業高(現喜多方桐桜高)卒。アルス古川㈱相談役。会津坂下町議を連続5期、議長を6年務める。現在1期目。 ──町長就任から1年半が経過しました。 「『次世代に繫ぐまちづくり』に全力で取り組んできました。この間、切れ目のない伴走型の子育て支援として、不妊治療の検査に対する上限5万円の補助制度を創設しました。健康づくり事業では、阿賀川の支川の旧鶴沼川が国土強靭化の一環で堤塘(堤防)が舗装されたのでウオーキングコースとして整備しました。道の駅あいづ湯川・会津坂下西側の河川敷までの延長を検討しており、相乗効果を期待しています」 ──役場新庁舎整備事業の進捗について。 「まず第一に質の高い住民サービスを継続的に提供する拠点であるとの考えから、町民の安全・安心の確保や災害時における円滑な復旧・復興の拠点となりうる場所に建設するべきだと考えています。そのため、30年後を見据えて、町民の声やアンケート結果等を判断材料にしながら、2月22日の議会全員協議会において、建設場所を旧坂下厚生総合病院跡地へ変更することを発表しました。 今後、本町が会津西部地区の中核としての機能を果たせるよう、周辺地域との一体的な利活用を図るのに加えて、現役場庁舎周辺の利活用についても、町民の皆様や専門家のご意見を賜り、人が集まり、賑わいを創出する空間として整備していく考えです。今年度から新庁舎建設計画の具現化に向けて、基本構想・基本計画策定を進めていきます」 ──5月8日をめどに新型コロナウイルスの5類引き下げの方針が打ち出されましたが、これを見据えてどのような施策に取り組んでいきますか。 「関連する町の施策の総点検を進めています。特に感染防止の観点から中止を余儀なくされてきた各種事業についても、入念な準備のもと、町内へにぎわいと活気を呼び込んでいきたいです。また、高齢者の皆様の外出自粛による体力低下や孤立の集中的改善に向け、集いの場として各地区サロンを活用しながら、楽しく健康づくりに努めていきます」 ──今後の重点事業について。 「町の課題である財政健全化に引き続き取り組むのはもちろん、“人口が減少しても活力があり町民一人ひとりが生きがいを持てる持続可能なまち”を実現するため、令和4年度から『交流人口対策』『関係人口対策』『定住人口対策』の3つの人口対策に取り組んできました。 令和5年度からはそれらに『少子化対策』を加えた4つの人口対策を重点事業とした過疎対策事業を実施し、若者世代、子育て世代が住みやすく、町民の皆様が輝ける住み続けたいまちを目指してまいります」
一部議員が「厚生病院跡地は候補地に不適」と指摘 本誌昨年10月号に「会津坂下町 庁舎新築議論で紛糾 『4年前の決定』継続派と再考派で割れる」という記事を掲載した。会津坂下町で進められている役場庁舎新築議論についてリポートしたものだが、その後、新たな動きがあったので続報をお伝えしたい。 同町役場本庁舎は、1961年に建設され老朽化が進んでいること、1996年に実施した耐震診断結果で構造耐震指標を大きく下回ったこと、本庁舎のほかに東分庁舎・南分庁舎があり、機能が分散して不便であること等々から、2017年から新庁舎建設を検討していた。 同年、町は社会福祉協議会や商工会、観光物産協会、区長・自治会長会の役員などで構成する「会津坂下町新庁舎建設検討委員会」を立ち上げ、調査・検討を諮問した。 最大のポイントは「建設場所をどこにするか」だった。同委員会は、①現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地、②旧営林署・保健福祉センター・中央公園用地、③南幹線南側町取得予定県有地――の3案を基本線に検討を行い、2018年2月、町に「現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地が適地である」と答申した。 同年3月議会では、同案に関する議案が提出され、賛成13、反対2の賛成多数で議決した。これにより、最大のポイントである「建設場所をどこにするか」は現在地周辺で決着したことになる。 ところが、同年9月、町(齋藤文英町長=当時)は「事務事業を見直し、将来の財政状況を算定したところ、計画通り進めれば住民サービスに大きな影響を及ぼすことが予想されることになった。財政健全化を重視し新庁舎建設延期という重い決断をした」として、庁舎建設の延期を決めた。 それから3年半ほどは事業凍結状態だったが、昨年4月、役場内に「庁舎整備課」が新設され、庁舎建設事業が再開されることになった。 ただ、それを受け、昨年5月に町民有志「まちづくりを考える青年の会」(加藤康明代表)から議会に対して、庁舎建設場所の再考を促す請願が提出された。同請願は総務産業建設常任委員会に付託され、委員会で採択された。その後、本会議に諮られ、賛成・反対討論があった後に採決が行われ、賛成8、反対5の賛成多数で同請願は採択された。これを受け、議会は庁舎建設場所の再考を促す意見書を、町執行部(古川庄平町長)に提出した。 町は議会からの意見書を受け、新庁舎建設検討委員会を立ち上げ(※2017年に立ち上げた委員会が解散されておらず、正確には「再開」だが、委員に変更等があった)、昨年7月から検討を再開した。その中で、町民の声を聞くために、まちづくり懇談会、新庁舎建設に関するアンケートを実施することになった。 こうした動きに、議会内では意見が割れ、町内7地区で開催された町民懇談会でも賛否両論が出た。 再考反対派の意見は「4年前に建設場所が決まり、議会で議決しているのに、なぜ再考しなければならないのか」、「そんなことをしていたら、いつまで経ってもできない。早く建設すべき」、「2021年8月に東分庁舎・東駐車場用地の隣にある競売物件の寿司店の土地・建物を取得し、2022年5月から解体工事を進めている。場所を変えたら、取得・解体費が無駄になってしまう」というもの。 再考賛成派の意見は「事業休止していた4年間で、坂下厚生総合病院が新築移転したこと、坂下高校が大沼高校と統合して、事実上、坂下高校がなくなったこと、新築移転した坂下厚生総合病院の近くに商業施設『メガステージ会津坂下』がオープンしたこと等々から、生活環境や人の流れが変わっていることを考慮すべき」、「コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などの影響で、建設資材が高騰しており、コスト増加は間違いない。4年前の計画をそのまま進められる状況ではない」というもの。 現在地か移転かで町が二分されている状況だ。 アンケートの結果 本誌昨年10月号記事では、そうした詳細をリポートしたわけだが、その後、昨年11月25日には新庁舎建設に関するアンケート結果が公表された。アンケートは昨年10月、町内在住の15歳以上の1500人を無作為抽出し、調査票を郵送して実施。期日までに回答があったのは726人で、回収率は48・4%だった。ちなみに、同町の人口(今年1月1日現在)は1万4352人だから、アンケート送付数は全人口の10%弱、回答数は約5%になる。 回答者の内訳(カッコ内は構成比)は、年齢別では10代24人(3・3%)、20代36人(5・0%)、30代59人(8・1%)、40代88人(12・1%)、50代100人(13・8%)、60代179人(24・7%)、70代以上239人(32・9%)、無回答1人(0・1%)。地区別では坂下地区310人(42・7%)、若宮地区109人(15・0%)、金上地区71人(9・8%)、広瀬地区92人(12・7%)、川西地区57人(7・9%)、八幡地区55人(7・6%)、高寺地区29人(4・0%)、無回答3人(0・4%)だった。 質問はいくつかに分かれているほか、自由記入欄もあるが、ポイントとなる「現在、建設予定地は『現本庁舎・北庁舎・東分庁舎及び東駐車場用地』ですが、再考すべきと考えますか」という質問では、「現建設予定地のままでよい」が248人(34・2%)、「再考すべきである」が430人(59・2%)、「その他」と「無回答」が合わせて48人(6・6%)だった。再考すべきが6割近くを占めた。 この質問で「再考すべき」「その他」と答えた人に「現時点において、町が把握している未利用地は、以下の箇所(※旧坂下厚生総合病院跡地、旧坂下高等学校跡地、南幹線沿線県有地)があります。建設地として望ましいと思うものを次の中からひとつだけ選んでください」という質問では以下のような回答結果だった。旧坂下厚生総合病院跡地273人(61・3%)、旧坂下高等学校跡地39人(8・8%)、南幹線沿線県有地95人(21・3%)、その他・無回答38人(8・5%)。 こうして見ると、最初の質問で「現建設予定地(現本庁舎・北庁舎・東分庁舎・東駐車場用地)のままでよい」と答えた248人より、「再考すべき」→「旧坂下厚生総合病院跡地」と答えた273人の方が多いことが分かる。前述のように、アンケート回答者は同町の人口の約5%だから、これを「町民の総意」と捉えていいかどうかは難しいところだが、この結果だけを見れば、町民が求めているのは旧坂下厚生総合病院跡地への庁舎建設ということになる。 解体工事が行われている厚生病院跡地 ただ、昨年12月議会で、それがひっくり返るようなことがあった。同議会で、五十嵐一夫議員が「新庁舎建設位置について、町長はどこにしたいのか。まちづくり懇談会の町民周知は適切か。旧坂下厚生総合病院跡地は候補地として適切か」といった内容で一般質問を行った。 その中で五十嵐議員が明かしたところでは、JA福島厚生連に質問状を出し、坂下厚生病院跡地の対応について尋ねたところ、「厚生連からは『〇〇社から購入したいと申し入れがあり、すでに売却を決定した』と回答があった。回答は10月3日付の文書でもらった」というのだ。 そのうえで、古川町長、庁舎整備課長に「そのことを知っていたのか」と質問した。これに対し、庁舎整備課長は「厚生病院跡地の買い手が決まったという正式な連絡は受けていない」と答弁した。 さらに町は、1万平方㍍以上の町内の未利用地を「庁舎建設の候補になり得る場所」として、町民懇談会やアンケートなどで示したものであり、ある程度、本決まりになるまでは所有者との事前協議はできない、といった考えを示した。 五十嵐議員は再質問で「(前述の事情から)厚生病院跡地は庁舎建設の候補地になり得ない」と指摘し、古川町長に「売却先が決定したことを知らなかったのか」と質問した。これに対して、古川町長は「知らなかった」と答弁した。 もっとも、今年1月中旬、本誌がJA福島厚生連に問い合わせたところ、担当者は「(坂下厚生病院跡地は)現在、解体工事を行っており、その後のことは未定」とのこと。「いま、会津坂下町では庁舎建設議論が進められており、その中で、坂下厚生病院跡地が候補地になっているが」と尋ねると、「町からはそういった話はない」と話した。 一方、五十嵐議員に確認すると、「昨年10月3日付文書で、間違いなくそういった(※売却先が決定したこと)回答を得ている。議会では『〇〇社』としたが、その回答文書には実名も記されていた」という。 近く議会に説明 あらためて、町庁舎整備課にこの件について尋ねたところ、次のように説明した。 「どんな事業でもそうですが、構想段階では権利者とは交渉できない。ある程度、決まってから用地交渉などに入ることになります。(今回の件でも)まだ構想が固まっていませんから(厚生連には)話をしていません」 記者が「アンケートでは厚生病院跡地への庁舎建設を望む声が一番多かった。ただ、五十嵐議員が指摘したように、そこが売却決定済みで候補地になり得ないとするならば、厚生病院跡地を外して、それ以外でどこがいいかを再度聞くなどの手順が必要になるということか」と尋ねると、同課担当者は「その件については近く町長から議会に対して説明することになっている」と話した。 要は、「議会に説明する前に本誌取材に答えることはできない」ということだが、何か含みをもたせた言い方だったのが気になるところ。「厚生病院跡地売却決定済み」話には、〝ウラ事情〟があるということか。 その点で言うと、福島民報(1月14日付)に《会津坂下町の坂下厚生総合病院跡地の土壌から、土壌汚染対策法の基準値を超える有害物質が検出された。県は土地の使途を変更する場合、県に届け出るよう県報に告示した(後略)》との記事が掲載された。この場合、用途・売買等、制約が伴うから、それが関係しているのかもしれない。 町は今年度中(3月末まで)に候補地を決定する方針だが、現在地周辺か移転かで意見が割れる中、どんな判断をするのか注目だ。 あわせて読みたい 【会津坂下町】庁舎新築議論で紛糾【継続派と再考派で割れる】(2022年10月号)