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  • 【検証・内堀県政 第3弾】公開資料で見えた内堀知事の懐事情(2022年10月号)

    【検証・内堀福島県政 第3弾】公開資料で見えた内堀知事の懐事情

    (2022年10月号) ジャーナリスト 牧内昇平(+本誌編集部)  福島県知事の内堀雅雄氏(58)にはクリーン(清浄)な印象を持つ人が多いのではないだろうか。しかし、選挙というものにはやはりお金がかかる。内堀氏も例外ではないだろう。「政治と金」を監視するのはメディアの役目の一つだ。前回の知事選で内堀氏がどのようなお金の集め方、使い方をしたか。公開資料に基づいて調べてみた。シリーズ第3弾。 公開資料で見えた内堀知事の懐事情  選挙に出た人はどのようにお金を集め、何に使ったかを選挙管理委員会に届け出る義務がある。「選挙運動に関する収支報告書」だ。また、政治上の主義・施策を推進したり、特定の候補者を支持したりする「政治団体」も、毎年の収入と支出を届け出る。「政治資金収支報告書」である。これらの保存が義務づけられているのは3年間だが、過去の分の要旨は県報などにも載っている。それらの公開資料を読み解いていく。 2018年の知事選(10月11日告示、10月28日投票)に関して、内堀陣営の収支をまとめたのが表1である。 表1)2018知事選、内堀氏のお金の「集め方」「使い道」 収  入(寄付)支  出「ふくしま」復興・創生県民会議1620万円人件費556万3000円福島県医師連盟100万円家屋費410万6436円福島県歯科医師連盟100万円通信費93万5745円福島県農業者政治連盟50万円交通費0円福島県商工政治連盟50万円印刷費524万3099円福井邦顕50万円広告費160万4012円福島県薬剤師連盟10万円文具費7万1555円福島県中小企業政治連盟10万円食糧費5万3111円その他の寄付43万円休泊費97万5408円雑費171万6383円合計2033万円合計2026万8749円※選挙運動に関する収支報告書を基に筆者作成  内堀氏は18年8月24日から11月19日までのあいだに2000万円以上集め、ほぼ同額を使った。収入源は団体・個人からの寄付だ。「『ふくしま』復興・創生県民会議」という政治団体からの寄付が段違いに多い。これについては後述しよう。 ほかは、いわゆる業界団体からの寄付である。100万円ずつ寄付していたのは、県医師連盟と県歯科医師連盟。それぞれ県医師会、県歯科医師会による政治団体だ。50万円出した県農業者政治連盟は、農協(JA)関係の政治団体だ。同連盟は郡山市、たむら、いわき市、ふたばの4支部も2万5000円ずつ寄付していた。 試しに県医師連盟の政治資金収支報告書を調べてみると、18年10月5日に「陣中見舞い」として内堀氏に100万円渡していることが確認できた。少なくとも18~20年の3年間に限って言えば、内堀氏のほかは特定の候補者に「陣中見舞い」を送った記載はなかった。話はそれるが、県医師連盟の会計責任者の欄には「星北斗」氏とあった。今年夏の参院選で当選した自民党議員と同じ名前である。 政治団体「県民会議」とは? 内堀氏関連の政治団体の事務所所在地には、内堀氏の看板が立っていた=9月16日、福島市、牧内昇平撮影  さて、断然トップの1620万円を内堀氏に寄付した「『ふくしま』復興・創生県民会議」(以下、「県民会議」)とは、どんな団体なのか。 ここも政治団体として県選管に登録していた。政治資金収支報告書を読んでみると、事務所の所在地は福島市豊田町。県庁から少し歩いて国道4号を渡ったあたりだった。代表者は「中川治男」氏。会計責任者は「堀切伸一」氏である。「中川治男」氏と言えば、副知事や福島テレビの社長を務めた人物に同じ名前の人がいた。佐藤栄佐久知事(在任は1988~2006)の政務秘書として活躍したのは「堀切伸一」氏だった。 県民会議の18年分の収支報告書には興味深い事実がいくつかある。まずは支出。内堀氏個人に対して、8月24日に1600万円、11月19日に20万円を寄付したことが書いてある。金額は表1とぴったり合う。 次に収入だ。県民会議は18年、「政治団体からの寄付」で3650万円の収入を得ていたことが分かった。寄付の日付は8月23日。県民会議が内堀氏個人に1600万円を送る前日である。 この政治団体とは、どこか。寄付者の欄に書いてあったのは「内堀雅雄政策懇話会」という名前だった。 内堀氏の選挙資金源 記者会見で語る内堀雅雄知事=8月29日、県庁、牧内昇平撮影  内堀雅雄政策懇話会(以下、「政策懇話会」)。政治資金収支報告書によると、内堀氏の資金管理団体だった。(資金管理団体とは、公職の候補者が政治資金の提供を受けるためにつくる団体のこと。政治家一人につき一つしかつくれない) 代表者は内堀雅雄氏本人。会計責任者と事務所の所在地は、先ほどの県民会議と同じく「堀切伸一」氏と「福島市豊田町」だった。所在地はもちろん番地まで同じである。 ちなみに筆者が調べる限り、内堀氏の名前がついた政治団体がもう一つある。「内堀雅雄連合後援会」だ。こちらも事務所は福島市豊田町の同じ場所。代表者は中川治男氏。会計責任者は堀切伸一氏だった。 この三つの団体のあいだで、どのようなお金のやりとりがあったのか。政治資金収支報告書の内容をまとめたのが、表2の上の部分である。  ・18年8月23日、政策懇話会から県民会議へ3650万円 ・8月24日、県民会議から内堀氏本人へ1600万円。11月19日、さらに20万円 ・19年3月31日、県民会議から政策懇話会へ500万円 このような流れである。県民会議は多額の寄付を受けたのと同じ18年8月23日付で県選管に「設立」を届け出ていた。そして翌19年4月19日には解散している。 政策懇話会が内堀氏の選挙資金の供給源であることを確かめることができた。では、この団体はどうやってお金を集めたのか。それを示したのが表2の下部である。 政治資金収支報告書や県選管作成の資料を読むと、政策懇話会の収入欄のうち、「個人の負担する党費または会費」の欄には毎年1000万円近い金額が記入されていた。金額の下には、何人で負担したかが書いてある。例えば、18年の場合はこうだ。 「金額960万円」「員数192人」960を192で割ると5だ。全員が同じ額を負担したとすれば、1人5万円ずつ出したということになる。19、20年分の収支報告書を確認しても、やはり同様に、1人5万円ずつ出したとすると、「金額」と「員数」がぴったり合う。 ただし、この「党費または会費」では選挙資金は賄えないだろう。政策懇話会は2015年以降、自分の団体の経常経費(人件費や光熱水費、事務所費など)に年間数百万円使っている。15年は363万円、16年は626万円、17年は788万円である。年間約1000万円の「党費または会費」では、それほど手元に残らないはずだ。 そこで出てくるのが、「事業による収入」である。15~19年のあいだ、政策懇話会には毎年、「事業による収入」がある。事業は2種類で、一つは政策懇話会の「総会」だ。1年につき30万~43万円の収入があったと書かれている。それほど多くはない。 もう一つの事業が政治資金パーティーである。会の名前は「内堀雅雄知事を励ます会」。16年はホテル辰巳屋(福島市)、17年はホテルハマツ(郡山市)で開催された。 こちらの収入は巨額だ。16年のパーティーは、1677人から合計3218万円の収入を得ていた。17年は1249人から合計2809万円だ。20万円を超える対価を支払った団体の名前が県選管の資料に載っていた。 ・16年 福島県農業者政治連盟148万円 連合福島      100万円 福島県医師連盟     40万円 ・17年 福島県農業者政治連盟149万円 連合福島    100万円 福島県医師連盟    30万円 内堀氏は政治資金パーティーで金を集め、選挙に備えていたことが分かってきた。 表2の左端にある内堀雅雄連合後援会(以下、「連合後援会」)は、政治資金収支報告書を読むかぎり、2018年の知事選前後に大きな金の動きはなかった。政策懇話会から16年に300万円、17年に400万円、知事選後の19年4月1日に100万円を寄付されていたことだけは書いておこう。 また、少し古くなるが、内堀氏が初めて知事選に出た2014年、連合後援会が6人の個人から10万円ずつ寄付を受けていたことが分かった(5万円を超える寄付が県選管の資料に載っていた)。6人の氏名をインターネットで検索すると、内堀氏の古巣、自治省・総務省の官僚たち(主にOB)に同姓同名の人がいた。そのうちの一人は「荒竹宏之」氏。内堀氏が副知事時代、県庁の生活環境部次長、同部長を務めた人物と同じ名前だった。 お金の使い道は?  では次に、集めたお金の使い道である。表1にもどって右側を見てほしい。 2018年知事選における内堀氏の「選挙運動に関する収支報告書」によると、支出総額は2026万円。内訳として最も高額なのは「人件費」の556万円だった。 人件費は一般的に、ポスター貼りや演説会の会場設営などの単純作業を行う「労務者」、選挙カーに乗る「車上運動員」、選挙事務所で働く「事務員」らに支払われる。内堀氏陣営は労務者413人、車上運動員15人、事務員14人に日当を支払っていた。1人あたりの日当は労務者が5000円、車上運動員が1万円か1万5000円、事務員が8000円から1万円だった。 次に金額が大きいのが「印刷費」の524万円だ。内訳を見るとポスターの作成に149万円、法定ハガキの印刷などに180万円、などとあった。郡山市と福島市の宣伝・広告会社2社が受注していた。 支出の3番目が「家屋費」の410万円である。このうち334万円が「選挙事務所費」、76万円が個人演説会のための「会場費」だった。そのほか、「食糧費」は弁当や茶菓子代で、ドラッグストアなどで買っていた。「休泊費」は運動員のホテル宿泊代だった。 内堀氏が18年の知事選に使った費用の紹介は、ざっとこんなものである。しかし、一つ気がかりなことが残る。もう一度、表2を見てほしい。政策懇話会から県民会議に渡ったのは3650万円だ。そのうち1620万円が内堀氏本人に渡り、残った500万円は政策懇話会に戻された。それでも1500万円くらいが県民会議の手元に残るはずだ。県民会議はその金をどう使ったのか。 表3が県民会議の2018年の収支である。支出総額は3105万円。「政治活動費」(1683万円)の大半は先述した内堀氏本人への寄付である。気になるのは、「経常経費」が1421万円もかかっていることだ。光熱水費以外は数百万円、人件費に至っては800万円以上も使っている。誰に対して、いくら支払われているのか。調べてみると……。 表3)「県民会議」の収支 収入総額3650万円(前年からの繰越額)0円(本年の収入額)3650万円支出総額3015万円翌年への繰越額544万円 ※支出の内訳経常経費人件費853万円光熱水費7万円備品・消耗品費357万円事務所費203万円小計1421万円政治活動費組織活動費63万円寄付1620万円小計1683万円※2018年の収支 政治資金収支報告書を基に筆者作成  残念、これ以上のことは政治資金収支報告書を読んでも分からなかった。県民会議のような一般の政治団体の経常経費は、各項目の総額だけ届け出ればよいことになっているからだ。「選挙運動に関する収支報告書」と違って、各支出の内訳までは分からない仕組みになっていた。 前述した通り、県民会議は知事選の約2カ月前に設立届が出され、翌春に解散している。そのあいだの金の動きを見ても、知事選のための団体だったと考えていい。その団体の金の使い道について分からないのはモヤモヤが残る。 総務省は政治団体の経常経費について、「団体として存続していくために恒常的に必要な経費」としている。また一般的な意味で「経常費」と言えば、「毎年きまって支出する経費」(広辞苑)のことだ。 くり返しになるが、県民会議の活動が始まったのは8月中旬以降だ。設立からおよそ4カ月半で1421万円もの大金を経常経費として使ったことになる。1か月あたり約315万円である。知事選が行われた2018年にこれだけ多額の経費を何に使ったかが気になるところだ。一般の政治団体でも、特定の候補者を支持するためなどの「政治活動費」の支出は、1件あたり5万円を超えた場合、支払先などを明記する必要がある。県民会議の「経常経費」はこれに該当しないはずだが……。筆者は、登録上の代表者、会計責任者が同じ「連合後援会」に宛てて、県民会議の経常経費の使途を問う質問状を送ったが、9月26日の時点で返答はない。 もちろん、内堀氏や関連する政治団体が悪いことをしていると指摘するつもりはない。政治資金規正法に則ってきちんと届け出ている。しかし、それでも不明点が残ったのは事実である。「政治と金」は最大限透明化する必要がある。現行の政治資金規正法には改善すべき点が多い。 東北6県でトップの選挙運動費用  さて、ここからはほかと比べてみよう。表4は2018年の知事選に出た各候補者の得票数と選挙運動に使った金額である。一目瞭然。有効投票数の9割を超える票を獲得した内堀氏だが、その資金力も他の候補を圧倒していたと言える。 表4)2018知事選各候補の得票数と選挙運動費用 得票数(票)得票率運動費用(円)内堀雅雄65098291.20%20268749金山屯102591.40%197371高橋翔171592.40%467900町田和史350294.90%3175992※選挙運動に関する収支報告書を基に筆者作成  表5は東北6県の知事が選挙でどのくらい使ったかをまとめている。他県の知事と比べても内堀氏の選挙費用は少なくない。 表5)知事たちの選挙運動費用 都道府県氏名選挙実施日選挙運動費用青森県三村申吾2019年6月2日1400万円岩手県達増拓也2019年9月8日1054万円宮城県村井嘉浩2021年10月31日499万円秋田県佐竹敬久2021年4月4日1737万円山形県吉村美栄子2021年1月24日1793万円福島内堀雅雄2018年10月28日2026万円福島内堀雅雄2014年10月26日2427万円福島佐藤雄平2010年10月31日1633万円※選挙運動に関する収支報告書(要旨)などを基に筆者作成  別の観点から内堀氏の「お金」について考えてみる。県知事は「資産」、「所得」、「報酬を得て役員などを務める関連会社」の情報を報告する義務がある。内堀氏が2期目就任以降福島県に提出した各種報告書を表6にまとめた。この表を見ると、「預貯金 該当なし」などの記載に驚く人もいるかもしれない。しかし、これには理由がある。報告書に記載する必要があるのは、「普通預金と当座預金を除く」預貯金だ。つまり主に定期預金が報告対象になっている。また、土地・建物や自動車などは、本人ではなく家族名義のものには報告義務がない。政治資金収支報告書と同じで、ここにも透明化を阻む壁があった。ちなみに、知事を1期(4年)務めると約3400万円の退職金が出る。再選した場合は最後に一括して受け取ることもでき、内堀氏が現時点で退職金を受け取っているかどうかは分からない。     ◇ 以上、18年知事選での内堀氏陣営のお金の動きを調べてみた。新聞記事などによると、内堀氏の政治資金パーティーは今年5月に久しぶりに開催されたようだ。また、9月21日付の福島民報によると、今回の知事選では「チャレンジ・ふくしま」という政治団体が新たに設立され、再び中川治男氏が代表に就いたという。選挙に向けて内堀氏がどのくらいのお金を集め、どのように使うのかは要注目だが、筆者がそれを調べられるのは選挙が終わってしばらく経った頃のことだろう。 また、今回紹介できたのは、選管に報告されたいわゆる「表の金」にすぎない。「裏の金」があるのかないのか、それがいくらなのかは分からない。県民の関心が高い知事選について、有力候補者である内堀氏にスポットライトを当てて調べたが、県内のほかの選挙についても同様のチェックは必要だと考えている。 まきうち・しょうへい。41歳。東京大学教育学部卒。元朝日新聞経済部記者。現在はフリー記者として福島を拠点に取材・執筆中。著書に『過労死 その仕事、命より大切ですか』、『「れいわ現象」の正体』(ともにポプラ社)。公式サイト「ウネリウネラ」。   あわせて読みたい 無意味な海外出張を再開した内堀雅雄【福島県知事】 「尊敬する人」に箭内道彦氏を挙げた内堀知事

  • 内堀雅雄福島県知事

    無意味な海外出張を再開した内堀雅雄【福島県知事】

     内堀雅雄知事は1月16日から21日、米国・ロサンゼルスとワシントンを訪れた。県産米や日本酒の販路開拓を目指し、トップセールスを展開するのが主な目的。知事の海外訪問は約3年3カ月ぶり。 ロサンゼルスではスーパーマーケットの店頭で県産米「天のつぶ」を販売し、県産日本酒とともに取引拡大を働き掛けた。さらに飲食店経営者や料理人などを招いた試食会、地元県人会との交流会も開いた。 ワシントンでは国務省や駐米大使などを表敬訪問。両都市で米国政府関係者を招いたレセプションを催し、県産品の魅力を発信した。震災直後、被災地救援活動「トモダチ作戦」に従事した米軍関係者や、2021年の東京五輪で来県し、県産モモを絶賛した前ソフトボール女子米国代表監督のケン・エリクセン氏に謝意を伝える一幕もあった。 新聞報道によると、トップセールスにはJA福島五連の管野啓二会長、全農県本部の渡部俊男本部長らが加わったほか、福島民報社報道部県政キャップの斎藤直幸記者、福島民友新聞社の渡辺美幸記者らマスコミも同行した。そのためか、期間中は訪米に関する記事が大々的に紹介され、地元紙は一面で取り上げた。 内堀知事は1月23日に開かれた定例記者会見で、「3年3カ月ぶりの海外渡航となったが、長い戦いとなる原子力災害による風評払拭、新型感染症からの回復に向けて、海外を訪問し本県の現状や魅力を知事として直接お伝えする重要性をあらためて実感した。しっかりと発信しさらなる理解と共感の輪を広げる」と訪米の成果を強調した。 米国は原発事故の後に続いてきた輸入規制を2021年に撤廃した。だからこそ、トップセールスに向かったのだろうが、果たしてそれで県産米や日本酒の売り上げがどこまで伸びるのか。国内ですら放射能汚染を危惧して県産品を忌避する人が一定数いるのに、遠く離れた海外で理解を得てファンを増やし、販路を拡大するのは限界があろう。 そもそも県全体の出荷額に対し、輸出額は微々たる金額だ。 県によると、2021年度の県産米を含む県産農畜産物の輸出額は3億3200万円。県の農業産出額は2086億円(2019年度)。 県産日本酒の輸出額は分からなかったが、県酒造組合によると、令和3酒造年度(2020年7月~2021年6月)の輸出量は255㌔㍑。同酒造年度の県全体の出荷量は1万1000㌔㍑だ。指標はそれぞれ異なるので分かりにくいが、輸出が全体に占める割合の小ささがイメージできるのではないか。 過去には農産物の生産者から「輸出は手間がかかるわりに、諸経費などがかさむし、国内需要を凌駕する勢いで売れるわけではないので大した儲けにならない」と冷ややかな声を聞いたこともあった。 本誌2019年10月号では内堀知事が知事就任後の5年間で、11回にわたり海外出張に出かけ、累計約4000万円の旅費がかかっていたことを紹介した。今回の訪米もそれなりの金額がかかっているだろう。 本誌2019年10月号『【福島】無意味な内堀知事の海外出張』は下記のリンクから読めます!  輸出を〝伸びしろ〟と捉え、販路拡大に努めること自体は否定しないし、トップセールスの効果もある程度は見込めるかもしれない。だが、費用対効果という点では意味があるとは言えないということだ。 地元紙はそうした課題にほとんど触れず、海外訪問のメリットを大々的に記事で取り上げるから毎回呆れさせられる。ただ、定例記者会見を見る限り、そんなことはお構いなしで、内堀知事は今後も年2、3回ペースで海外を訪問するのだろう。 あわせて読みたい 【検証・内堀福島県政 第3弾】公開資料で見えた内堀知事の懐事情 「尊敬する人」に箭内道彦氏を挙げた内堀知事

  • 「尊敬する人」に箭内道彦氏を挙げた内堀知事

    「尊敬する人」に箭内道彦氏を挙げた内堀知事

     この原稿は知事選投票日(2022年10月30日)の3日前に書いている。3期目を目指す現職の内堀雅雄氏(58)と新人の草野芳明氏(66)が立候補しているが、2022年11月号が書店に並ぶころには内堀氏が3選を果たしているのは間違いないだろう。 それはともかく知事選告示日(同13日)の2日後、福島民報に「立候補者の素顔」という記事が載った。内堀・草野両氏の人となりが紹介されているが、「尊敬する人」という質問に内堀氏が「箭内道彦」と答えたことが密かな注目を集めた。 箭内道彦氏(58)は郡山市出身。安積高校、東京芸術大学を経て博報堂に入社。その後独立し、フリーペーパーの刊行、番組制作、イベント開催、バンド活動など幅広い分野で活躍している。携わった広告、ロゴマーク、グラフィック、ミュージックビデオ等々は数知れず、まさに日本を代表するクリエイティブディレクター(CD)と言っても過言ではない。 そんな箭内氏と内堀氏の接点は震災前、箭内氏が地元紙の広告に書いた「207万人の天才。」というコピーに興味を持った内堀氏が、箭内氏のライブの楽屋を訪ねたことがきっかけだった。当時副知事だった内堀氏の来訪を「最初は警戒した」という箭内氏だが、話し始めると福島に対する思いは共通する部分が多く、年齢もちょうど同じだったため、ふたりはすぐに意気投合したという。 その数年後、震災と原発事故が起こり、当時ふたりで話していた「福島県民は伝えるのが下手」、すなわちコミュニケーションや発信力のあり方が問われるようになった。地震・津波・放射能汚染といった直接的被害だけではなく風評・差別・分断といった間接的被害など、さまざまな困難に直面する福島の姿を広く知ってもらうには「伝わる力を持った言葉」を操る箭内氏の力が必要――そう考えた内堀氏が箭内氏を〝三顧の礼〟で迎え入れ、全国の自治体の先駆けとなる「福島県クリエイティブディレクター」が誕生したのである。 福島県CD就任後、箭内氏は県の広報活動に積極的に関わり、2022年8月からは県が創設したクリエイター育成道場「誇心館」の館長として地元クリエイターの育成・指導もスタートさせた。 箭内道彦氏(クリエイター育成道場「誇心館」HPより)  とはいえ箭内氏をめぐっては、県の広報活動に〝関わり過ぎている〟として、地元CDや広告代理店からさまざまな弊害が指摘されるようになっている。その詳細は本誌2021年3月号と2022年9月号で触れているので割愛するが、内堀氏が尊敬する人に箭内氏を挙げたことで、弊害がますます大きくなる懸念が持ち上がっているのだ。 あわせて読みたい 箭内道彦氏の〝功罪〟 【箭内道彦】福島県クリエイター育成事業「誇心館」が冷視されるワケ  「内堀氏は、箭内氏がやることは何でも素晴らしいと言う。しかし中には『これってどうなの?』と首を傾げる広報もある。県庁内からもそういう声が少しずつ漏れている。そうした中で、内堀氏が箭内氏を尊敬していると言ってしまったら『いくらなんでも、これはない』という広報まで認められてしまう」(ある広告代理店の営業マン) 要するに、内堀氏の「尊敬している発言」は「箭内氏の今後の活動は何でもOK」とお墨付きを与えたのと同じ、というわけだ。 8年前、内堀氏が初めて知事選に立候補した時、尊敬する人に挙げていたのは自身が副知事として仕えた佐藤雄平元知事だった。それが箭内氏に代わった理由はよく分からないが「内堀氏はヘビメタ好きを公言するなど文化に強い関心を示すことがあるが、実は文化コンプレックスを持っているのかもしれない。だから文化の最先端を行く箭内氏に一種の憧れを感じている、と」(同)。 知事に尊敬された箭内氏が、どういう心境なのか興味深い。

  • 【検証・内堀福島県政 第3弾】公開資料で見えた内堀知事の懐事情

    (2022年10月号) ジャーナリスト 牧内昇平(+本誌編集部)  福島県知事の内堀雅雄氏(58)にはクリーン(清浄)な印象を持つ人が多いのではないだろうか。しかし、選挙というものにはやはりお金がかかる。内堀氏も例外ではないだろう。「政治と金」を監視するのはメディアの役目の一つだ。前回の知事選で内堀氏がどのようなお金の集め方、使い方をしたか。公開資料に基づいて調べてみた。シリーズ第3弾。 公開資料で見えた内堀知事の懐事情  選挙に出た人はどのようにお金を集め、何に使ったかを選挙管理委員会に届け出る義務がある。「選挙運動に関する収支報告書」だ。また、政治上の主義・施策を推進したり、特定の候補者を支持したりする「政治団体」も、毎年の収入と支出を届け出る。「政治資金収支報告書」である。これらの保存が義務づけられているのは3年間だが、過去の分の要旨は県報などにも載っている。それらの公開資料を読み解いていく。 2018年の知事選(10月11日告示、10月28日投票)に関して、内堀陣営の収支をまとめたのが表1である。 表1)2018知事選、内堀氏のお金の「集め方」「使い道」 収  入(寄付)支  出「ふくしま」復興・創生県民会議1620万円人件費556万3000円福島県医師連盟100万円家屋費410万6436円福島県歯科医師連盟100万円通信費93万5745円福島県農業者政治連盟50万円交通費0円福島県商工政治連盟50万円印刷費524万3099円福井邦顕50万円広告費160万4012円福島県薬剤師連盟10万円文具費7万1555円福島県中小企業政治連盟10万円食糧費5万3111円その他の寄付43万円休泊費97万5408円雑費171万6383円合計2033万円合計2026万8749円※選挙運動に関する収支報告書を基に筆者作成  内堀氏は18年8月24日から11月19日までのあいだに2000万円以上集め、ほぼ同額を使った。収入源は団体・個人からの寄付だ。「『ふくしま』復興・創生県民会議」という政治団体からの寄付が段違いに多い。これについては後述しよう。 ほかは、いわゆる業界団体からの寄付である。100万円ずつ寄付していたのは、県医師連盟と県歯科医師連盟。それぞれ県医師会、県歯科医師会による政治団体だ。50万円出した県農業者政治連盟は、農協(JA)関係の政治団体だ。同連盟は郡山市、たむら、いわき市、ふたばの4支部も2万5000円ずつ寄付していた。 試しに県医師連盟の政治資金収支報告書を調べてみると、18年10月5日に「陣中見舞い」として内堀氏に100万円渡していることが確認できた。少なくとも18~20年の3年間に限って言えば、内堀氏のほかは特定の候補者に「陣中見舞い」を送った記載はなかった。話はそれるが、県医師連盟の会計責任者の欄には「星北斗」氏とあった。今年夏の参院選で当選した自民党議員と同じ名前である。 政治団体「県民会議」とは? 内堀氏関連の政治団体の事務所所在地には、内堀氏の看板が立っていた=9月16日、福島市、牧内昇平撮影  さて、断然トップの1620万円を内堀氏に寄付した「『ふくしま』復興・創生県民会議」(以下、「県民会議」)とは、どんな団体なのか。 ここも政治団体として県選管に登録していた。政治資金収支報告書を読んでみると、事務所の所在地は福島市豊田町。県庁から少し歩いて国道4号を渡ったあたりだった。代表者は「中川治男」氏。会計責任者は「堀切伸一」氏である。「中川治男」氏と言えば、副知事や福島テレビの社長を務めた人物に同じ名前の人がいた。佐藤栄佐久知事(在任は1988~2006)の政務秘書として活躍したのは「堀切伸一」氏だった。 県民会議の18年分の収支報告書には興味深い事実がいくつかある。まずは支出。内堀氏個人に対して、8月24日に1600万円、11月19日に20万円を寄付したことが書いてある。金額は表1とぴったり合う。 次に収入だ。県民会議は18年、「政治団体からの寄付」で3650万円の収入を得ていたことが分かった。寄付の日付は8月23日。県民会議が内堀氏個人に1600万円を送る前日である。 この政治団体とは、どこか。寄付者の欄に書いてあったのは「内堀雅雄政策懇話会」という名前だった。 内堀氏の選挙資金源 記者会見で語る内堀雅雄知事=8月29日、県庁、牧内昇平撮影  内堀雅雄政策懇話会(以下、「政策懇話会」)。政治資金収支報告書によると、内堀氏の資金管理団体だった。(資金管理団体とは、公職の候補者が政治資金の提供を受けるためにつくる団体のこと。政治家一人につき一つしかつくれない) 代表者は内堀雅雄氏本人。会計責任者と事務所の所在地は、先ほどの県民会議と同じく「堀切伸一」氏と「福島市豊田町」だった。所在地はもちろん番地まで同じである。 ちなみに筆者が調べる限り、内堀氏の名前がついた政治団体がもう一つある。「内堀雅雄連合後援会」だ。こちらも事務所は福島市豊田町の同じ場所。代表者は中川治男氏。会計責任者は堀切伸一氏だった。 この三つの団体のあいだで、どのようなお金のやりとりがあったのか。政治資金収支報告書の内容をまとめたのが、表2の上の部分である。  ・18年8月23日、政策懇話会から県民会議へ3650万円 ・8月24日、県民会議から内堀氏本人へ1600万円。11月19日、さらに20万円 ・19年3月31日、県民会議から政策懇話会へ500万円 このような流れである。県民会議は多額の寄付を受けたのと同じ18年8月23日付で県選管に「設立」を届け出ていた。そして翌19年4月19日には解散している。 政策懇話会が内堀氏の選挙資金の供給源であることを確かめることができた。では、この団体はどうやってお金を集めたのか。それを示したのが表2の下部である。 政治資金収支報告書や県選管作成の資料を読むと、政策懇話会の収入欄のうち、「個人の負担する党費または会費」の欄には毎年1000万円近い金額が記入されていた。金額の下には、何人で負担したかが書いてある。例えば、18年の場合はこうだ。 「金額960万円」「員数192人」960を192で割ると5だ。全員が同じ額を負担したとすれば、1人5万円ずつ出したということになる。19、20年分の収支報告書を確認しても、やはり同様に、1人5万円ずつ出したとすると、「金額」と「員数」がぴったり合う。 ただし、この「党費または会費」では選挙資金は賄えないだろう。政策懇話会は2015年以降、自分の団体の経常経費(人件費や光熱水費、事務所費など)に年間数百万円使っている。15年は363万円、16年は626万円、17年は788万円である。年間約1000万円の「党費または会費」では、それほど手元に残らないはずだ。 そこで出てくるのが、「事業による収入」である。15~19年のあいだ、政策懇話会には毎年、「事業による収入」がある。事業は2種類で、一つは政策懇話会の「総会」だ。1年につき30万~43万円の収入があったと書かれている。それほど多くはない。 もう一つの事業が政治資金パーティーである。会の名前は「内堀雅雄知事を励ます会」。16年はホテル辰巳屋(福島市)、17年はホテルハマツ(郡山市)で開催された。 こちらの収入は巨額だ。16年のパーティーは、1677人から合計3218万円の収入を得ていた。17年は1249人から合計2809万円だ。20万円を超える対価を支払った団体の名前が県選管の資料に載っていた。 ・16年 福島県農業者政治連盟148万円 連合福島      100万円 福島県医師連盟     40万円 ・17年 福島県農業者政治連盟149万円 連合福島    100万円 福島県医師連盟    30万円 内堀氏は政治資金パーティーで金を集め、選挙に備えていたことが分かってきた。 表2の左端にある内堀雅雄連合後援会(以下、「連合後援会」)は、政治資金収支報告書を読むかぎり、2018年の知事選前後に大きな金の動きはなかった。政策懇話会から16年に300万円、17年に400万円、知事選後の19年4月1日に100万円を寄付されていたことだけは書いておこう。 また、少し古くなるが、内堀氏が初めて知事選に出た2014年、連合後援会が6人の個人から10万円ずつ寄付を受けていたことが分かった(5万円を超える寄付が県選管の資料に載っていた)。6人の氏名をインターネットで検索すると、内堀氏の古巣、自治省・総務省の官僚たち(主にOB)に同姓同名の人がいた。そのうちの一人は「荒竹宏之」氏。内堀氏が副知事時代、県庁の生活環境部次長、同部長を務めた人物と同じ名前だった。 お金の使い道は?  では次に、集めたお金の使い道である。表1にもどって右側を見てほしい。 2018年知事選における内堀氏の「選挙運動に関する収支報告書」によると、支出総額は2026万円。内訳として最も高額なのは「人件費」の556万円だった。 人件費は一般的に、ポスター貼りや演説会の会場設営などの単純作業を行う「労務者」、選挙カーに乗る「車上運動員」、選挙事務所で働く「事務員」らに支払われる。内堀氏陣営は労務者413人、車上運動員15人、事務員14人に日当を支払っていた。1人あたりの日当は労務者が5000円、車上運動員が1万円か1万5000円、事務員が8000円から1万円だった。 次に金額が大きいのが「印刷費」の524万円だ。内訳を見るとポスターの作成に149万円、法定ハガキの印刷などに180万円、などとあった。郡山市と福島市の宣伝・広告会社2社が受注していた。 支出の3番目が「家屋費」の410万円である。このうち334万円が「選挙事務所費」、76万円が個人演説会のための「会場費」だった。そのほか、「食糧費」は弁当や茶菓子代で、ドラッグストアなどで買っていた。「休泊費」は運動員のホテル宿泊代だった。 内堀氏が18年の知事選に使った費用の紹介は、ざっとこんなものである。しかし、一つ気がかりなことが残る。もう一度、表2を見てほしい。政策懇話会から県民会議に渡ったのは3650万円だ。そのうち1620万円が内堀氏本人に渡り、残った500万円は政策懇話会に戻された。それでも1500万円くらいが県民会議の手元に残るはずだ。県民会議はその金をどう使ったのか。 表3が県民会議の2018年の収支である。支出総額は3105万円。「政治活動費」(1683万円)の大半は先述した内堀氏本人への寄付である。気になるのは、「経常経費」が1421万円もかかっていることだ。光熱水費以外は数百万円、人件費に至っては800万円以上も使っている。誰に対して、いくら支払われているのか。調べてみると……。 表3)「県民会議」の収支 収入総額3650万円(前年からの繰越額)0円(本年の収入額)3650万円支出総額3015万円翌年への繰越額544万円 ※支出の内訳経常経費人件費853万円光熱水費7万円備品・消耗品費357万円事務所費203万円小計1421万円政治活動費組織活動費63万円寄付1620万円小計1683万円※2018年の収支 政治資金収支報告書を基に筆者作成  残念、これ以上のことは政治資金収支報告書を読んでも分からなかった。県民会議のような一般の政治団体の経常経費は、各項目の総額だけ届け出ればよいことになっているからだ。「選挙運動に関する収支報告書」と違って、各支出の内訳までは分からない仕組みになっていた。 前述した通り、県民会議は知事選の約2カ月前に設立届が出され、翌春に解散している。そのあいだの金の動きを見ても、知事選のための団体だったと考えていい。その団体の金の使い道について分からないのはモヤモヤが残る。 総務省は政治団体の経常経費について、「団体として存続していくために恒常的に必要な経費」としている。また一般的な意味で「経常費」と言えば、「毎年きまって支出する経費」(広辞苑)のことだ。 くり返しになるが、県民会議の活動が始まったのは8月中旬以降だ。設立からおよそ4カ月半で1421万円もの大金を経常経費として使ったことになる。1か月あたり約315万円である。知事選が行われた2018年にこれだけ多額の経費を何に使ったかが気になるところだ。一般の政治団体でも、特定の候補者を支持するためなどの「政治活動費」の支出は、1件あたり5万円を超えた場合、支払先などを明記する必要がある。県民会議の「経常経費」はこれに該当しないはずだが……。筆者は、登録上の代表者、会計責任者が同じ「連合後援会」に宛てて、県民会議の経常経費の使途を問う質問状を送ったが、9月26日の時点で返答はない。 もちろん、内堀氏や関連する政治団体が悪いことをしていると指摘するつもりはない。政治資金規正法に則ってきちんと届け出ている。しかし、それでも不明点が残ったのは事実である。「政治と金」は最大限透明化する必要がある。現行の政治資金規正法には改善すべき点が多い。 東北6県でトップの選挙運動費用  さて、ここからはほかと比べてみよう。表4は2018年の知事選に出た各候補者の得票数と選挙運動に使った金額である。一目瞭然。有効投票数の9割を超える票を獲得した内堀氏だが、その資金力も他の候補を圧倒していたと言える。 表4)2018知事選各候補の得票数と選挙運動費用 得票数(票)得票率運動費用(円)内堀雅雄65098291.20%20268749金山屯102591.40%197371高橋翔171592.40%467900町田和史350294.90%3175992※選挙運動に関する収支報告書を基に筆者作成  表5は東北6県の知事が選挙でどのくらい使ったかをまとめている。他県の知事と比べても内堀氏の選挙費用は少なくない。 表5)知事たちの選挙運動費用 都道府県氏名選挙実施日選挙運動費用青森県三村申吾2019年6月2日1400万円岩手県達増拓也2019年9月8日1054万円宮城県村井嘉浩2021年10月31日499万円秋田県佐竹敬久2021年4月4日1737万円山形県吉村美栄子2021年1月24日1793万円福島内堀雅雄2018年10月28日2026万円福島内堀雅雄2014年10月26日2427万円福島佐藤雄平2010年10月31日1633万円※選挙運動に関する収支報告書(要旨)などを基に筆者作成  別の観点から内堀氏の「お金」について考えてみる。県知事は「資産」、「所得」、「報酬を得て役員などを務める関連会社」の情報を報告する義務がある。内堀氏が2期目就任以降福島県に提出した各種報告書を表6にまとめた。この表を見ると、「預貯金 該当なし」などの記載に驚く人もいるかもしれない。しかし、これには理由がある。報告書に記載する必要があるのは、「普通預金と当座預金を除く」預貯金だ。つまり主に定期預金が報告対象になっている。また、土地・建物や自動車などは、本人ではなく家族名義のものには報告義務がない。政治資金収支報告書と同じで、ここにも透明化を阻む壁があった。ちなみに、知事を1期(4年)務めると約3400万円の退職金が出る。再選した場合は最後に一括して受け取ることもでき、内堀氏が現時点で退職金を受け取っているかどうかは分からない。     ◇ 以上、18年知事選での内堀氏陣営のお金の動きを調べてみた。新聞記事などによると、内堀氏の政治資金パーティーは今年5月に久しぶりに開催されたようだ。また、9月21日付の福島民報によると、今回の知事選では「チャレンジ・ふくしま」という政治団体が新たに設立され、再び中川治男氏が代表に就いたという。選挙に向けて内堀氏がどのくらいのお金を集め、どのように使うのかは要注目だが、筆者がそれを調べられるのは選挙が終わってしばらく経った頃のことだろう。 また、今回紹介できたのは、選管に報告されたいわゆる「表の金」にすぎない。「裏の金」があるのかないのか、それがいくらなのかは分からない。県民の関心が高い知事選について、有力候補者である内堀氏にスポットライトを当てて調べたが、県内のほかの選挙についても同様のチェックは必要だと考えている。 まきうち・しょうへい。41歳。東京大学教育学部卒。元朝日新聞経済部記者。現在はフリー記者として福島を拠点に取材・執筆中。著書に『過労死 その仕事、命より大切ですか』、『「れいわ現象」の正体』(ともにポプラ社)。公式サイト「ウネリウネラ」。   あわせて読みたい 無意味な海外出張を再開した内堀雅雄【福島県知事】 「尊敬する人」に箭内道彦氏を挙げた内堀知事

  • 無意味な海外出張を再開した内堀雅雄【福島県知事】

     内堀雅雄知事は1月16日から21日、米国・ロサンゼルスとワシントンを訪れた。県産米や日本酒の販路開拓を目指し、トップセールスを展開するのが主な目的。知事の海外訪問は約3年3カ月ぶり。 ロサンゼルスではスーパーマーケットの店頭で県産米「天のつぶ」を販売し、県産日本酒とともに取引拡大を働き掛けた。さらに飲食店経営者や料理人などを招いた試食会、地元県人会との交流会も開いた。 ワシントンでは国務省や駐米大使などを表敬訪問。両都市で米国政府関係者を招いたレセプションを催し、県産品の魅力を発信した。震災直後、被災地救援活動「トモダチ作戦」に従事した米軍関係者や、2021年の東京五輪で来県し、県産モモを絶賛した前ソフトボール女子米国代表監督のケン・エリクセン氏に謝意を伝える一幕もあった。 新聞報道によると、トップセールスにはJA福島五連の管野啓二会長、全農県本部の渡部俊男本部長らが加わったほか、福島民報社報道部県政キャップの斎藤直幸記者、福島民友新聞社の渡辺美幸記者らマスコミも同行した。そのためか、期間中は訪米に関する記事が大々的に紹介され、地元紙は一面で取り上げた。 内堀知事は1月23日に開かれた定例記者会見で、「3年3カ月ぶりの海外渡航となったが、長い戦いとなる原子力災害による風評払拭、新型感染症からの回復に向けて、海外を訪問し本県の現状や魅力を知事として直接お伝えする重要性をあらためて実感した。しっかりと発信しさらなる理解と共感の輪を広げる」と訪米の成果を強調した。 米国は原発事故の後に続いてきた輸入規制を2021年に撤廃した。だからこそ、トップセールスに向かったのだろうが、果たしてそれで県産米や日本酒の売り上げがどこまで伸びるのか。国内ですら放射能汚染を危惧して県産品を忌避する人が一定数いるのに、遠く離れた海外で理解を得てファンを増やし、販路を拡大するのは限界があろう。 そもそも県全体の出荷額に対し、輸出額は微々たる金額だ。 県によると、2021年度の県産米を含む県産農畜産物の輸出額は3億3200万円。県の農業産出額は2086億円(2019年度)。 県産日本酒の輸出額は分からなかったが、県酒造組合によると、令和3酒造年度(2020年7月~2021年6月)の輸出量は255㌔㍑。同酒造年度の県全体の出荷量は1万1000㌔㍑だ。指標はそれぞれ異なるので分かりにくいが、輸出が全体に占める割合の小ささがイメージできるのではないか。 過去には農産物の生産者から「輸出は手間がかかるわりに、諸経費などがかさむし、国内需要を凌駕する勢いで売れるわけではないので大した儲けにならない」と冷ややかな声を聞いたこともあった。 本誌2019年10月号では内堀知事が知事就任後の5年間で、11回にわたり海外出張に出かけ、累計約4000万円の旅費がかかっていたことを紹介した。今回の訪米もそれなりの金額がかかっているだろう。 本誌2019年10月号『【福島】無意味な内堀知事の海外出張』は下記のリンクから読めます!  輸出を〝伸びしろ〟と捉え、販路拡大に努めること自体は否定しないし、トップセールスの効果もある程度は見込めるかもしれない。だが、費用対効果という点では意味があるとは言えないということだ。 地元紙はそうした課題にほとんど触れず、海外訪問のメリットを大々的に記事で取り上げるから毎回呆れさせられる。ただ、定例記者会見を見る限り、そんなことはお構いなしで、内堀知事は今後も年2、3回ペースで海外を訪問するのだろう。 あわせて読みたい 【検証・内堀福島県政 第3弾】公開資料で見えた内堀知事の懐事情 「尊敬する人」に箭内道彦氏を挙げた内堀知事

  • 「尊敬する人」に箭内道彦氏を挙げた内堀知事

     この原稿は知事選投票日(2022年10月30日)の3日前に書いている。3期目を目指す現職の内堀雅雄氏(58)と新人の草野芳明氏(66)が立候補しているが、2022年11月号が書店に並ぶころには内堀氏が3選を果たしているのは間違いないだろう。 それはともかく知事選告示日(同13日)の2日後、福島民報に「立候補者の素顔」という記事が載った。内堀・草野両氏の人となりが紹介されているが、「尊敬する人」という質問に内堀氏が「箭内道彦」と答えたことが密かな注目を集めた。 箭内道彦氏(58)は郡山市出身。安積高校、東京芸術大学を経て博報堂に入社。その後独立し、フリーペーパーの刊行、番組制作、イベント開催、バンド活動など幅広い分野で活躍している。携わった広告、ロゴマーク、グラフィック、ミュージックビデオ等々は数知れず、まさに日本を代表するクリエイティブディレクター(CD)と言っても過言ではない。 そんな箭内氏と内堀氏の接点は震災前、箭内氏が地元紙の広告に書いた「207万人の天才。」というコピーに興味を持った内堀氏が、箭内氏のライブの楽屋を訪ねたことがきっかけだった。当時副知事だった内堀氏の来訪を「最初は警戒した」という箭内氏だが、話し始めると福島に対する思いは共通する部分が多く、年齢もちょうど同じだったため、ふたりはすぐに意気投合したという。 その数年後、震災と原発事故が起こり、当時ふたりで話していた「福島県民は伝えるのが下手」、すなわちコミュニケーションや発信力のあり方が問われるようになった。地震・津波・放射能汚染といった直接的被害だけではなく風評・差別・分断といった間接的被害など、さまざまな困難に直面する福島の姿を広く知ってもらうには「伝わる力を持った言葉」を操る箭内氏の力が必要――そう考えた内堀氏が箭内氏を〝三顧の礼〟で迎え入れ、全国の自治体の先駆けとなる「福島県クリエイティブディレクター」が誕生したのである。 福島県CD就任後、箭内氏は県の広報活動に積極的に関わり、2022年8月からは県が創設したクリエイター育成道場「誇心館」の館長として地元クリエイターの育成・指導もスタートさせた。 箭内道彦氏(クリエイター育成道場「誇心館」HPより)  とはいえ箭内氏をめぐっては、県の広報活動に〝関わり過ぎている〟として、地元CDや広告代理店からさまざまな弊害が指摘されるようになっている。その詳細は本誌2021年3月号と2022年9月号で触れているので割愛するが、内堀氏が尊敬する人に箭内氏を挙げたことで、弊害がますます大きくなる懸念が持ち上がっているのだ。 あわせて読みたい 箭内道彦氏の〝功罪〟 【箭内道彦】福島県クリエイター育成事業「誇心館」が冷視されるワケ  「内堀氏は、箭内氏がやることは何でも素晴らしいと言う。しかし中には『これってどうなの?』と首を傾げる広報もある。県庁内からもそういう声が少しずつ漏れている。そうした中で、内堀氏が箭内氏を尊敬していると言ってしまったら『いくらなんでも、これはない』という広報まで認められてしまう」(ある広告代理店の営業マン) 要するに、内堀氏の「尊敬している発言」は「箭内氏の今後の活動は何でもOK」とお墨付きを与えたのと同じ、というわけだ。 8年前、内堀氏が初めて知事選に立候補した時、尊敬する人に挙げていたのは自身が副知事として仕えた佐藤雄平元知事だった。それが箭内氏に代わった理由はよく分からないが「内堀氏はヘビメタ好きを公言するなど文化に強い関心を示すことがあるが、実は文化コンプレックスを持っているのかもしれない。だから文化の最先端を行く箭内氏に一種の憧れを感じている、と」(同)。 知事に尊敬された箭内氏が、どういう心境なのか興味深い。