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メガソーラー

  • 遅すぎた福島市メガソーラー抑制宣言

    遅すぎた福島市メガソーラー抑制宣言

     福島市西部の住民から「先達山の周辺がメガソーラー開発のためにハゲ山と化した。景色が一変してしまった」という嘆きの声が聞かれている。市は山地でのメガソーラー開発抑制に動き出したが、すでに進められている計画を止めることはできず、遅きに失した感が否めない。  福島市は周囲を山に囲まれた盆地にあり、市西部には複数の山々からなる吾妻山(吾妻連峰)が広がる。その一角の先達山で、大規模メガソーラーの開発工事が進められている。  正式名称は「高湯温泉太陽光発電所」。事業者は外資系のAC7合同会社(東京都)。区域面積345㌶、発電出力40メ  ガ㍗。県の環境評価を経て、2021年11月22日に着工、今年3月27日に対象事業工事着手届が提出された。  今年に入ってから周辺の山林伐採が本格化。雪が解け始めた今年の春先には、山肌があらわになった状態となっていた。その様子は市街地からも肉眼で確認できる。  吾妻山を定点観測している年配男性は「この間森林伐採が進む様子に心を痛めていた。あんなところに太陽光パネルを設置されたら、たまったもんじゃない」と語る。  福島市環境課にも同じような市民からの問い合わせが多く寄せられた。そのため、市は8月31日の定例記者会見で、山地へのメガソーラー発電施設の設置をこれ以上望まない方針を示す「ノーモア メガソーラー宣言」を発表した。  木幡浩市長は会見で、景観悪化に加え、法面崩落や豪雨による土砂流出のリスクがあることを指摘。市では事業者に対し法令順守、地域住民等との調和を求める独自のガイドラインを設けていたが、法に基づいて進められた事業を覆すことはできない。そのため、市としての意思を示し、事業者に入口の段階であきらめてもらう狙いがある。条例で規制するより効果が大きいと判断したという。もし設置計画が出てきた際には、市民と連携し、実現しないよう強く働きかけていく。  もっとも、県から林地開発許可を得るなど、必要な手続きを経て進行している建設を止めることは難しいため、現在進行中のメガソーラーの開発中止は求めない方針だ。すなわち、先達山での開発はそのまま続けられることになる。  先達山の開発予定地のすぐ西側には別荘地・高湯平がある。2019年には計画の中止を求め、住民ら約1400人による署名が提出されるなどの反対運動が展開されていた。ただ、結局手続きが粛々と進められ、工事はスタート。今年の春先に高湯平の住民を訪ねた際は「結局押し切られてしまった。こうなったらもう止められないでしょ」とあきらめムードが漂っていたが、時間差で反対ムードに火が付いた。  前出の年配男性は「建設許可を取る際、こういう景観になると予想図を示したはず。自然破壊を予測できなかったとしたら怠慢であり、行政の責任を問うべき」と訴える。こうした意見に対し、県や福島市の担当者は「法に基づき進められた計画を覆すのは正直難しい」と答えた。  福島市以外でも、メガソーラー用地として山林伐採が進み、見慣れた山々の風景が一変してギョッとすることが多い。景観・自然を破壊しないように開発計画を抑制しながら、再生可能エネルギー普及も進めていかなければならない。各市町村には難しい舵取りが求められている。 森林が伐採された先達山

  • トラブル相次ぐ【磐梯猪苗代メガソーラー】

    トラブル相次ぐ【磐梯猪苗代メガソーラー】

     磐梯町と猪苗代町にまたがる林地で建設が進められている太陽光発電施設(メガソーラー)で、施工業者間による工事代金未払いトラブルが起きている。被害を訴える業者は損害賠償を求めて提訴する準備を進めているが、この業者によると、そもそも建設地は地層や土質の調査が不十分にもかかわらず県が林地開発許可を出したという。建設地でどのような調査が行われ、県の許可に問題はなかったのか検証する。 専門業者が県の林地開発許可を疑問視  JR磐越西線翁島駅から南西に約2㌔、線路と磐越自動車道に挟まれた広大な林地で今、メガソーラーの建設が進められている。  敷地は磐梯町と一部猪苗代町にまたがっており、面積約34・7㌶。記者は8月上旬に一度建設地を訪れたが、起伏のある土地に沿って無数のパネルが並び、遠くではこれからパネルが張られようとしている場所で重機が動いているのが確認できた。  不動産登記簿によると、一帯は主に都内の再エネ会社と奈良市在住の個人が所有しており、都内の再エネコンサル会社と投資会社が権利者として名前を連ねている。  開示された県の公文書によると、メガソーラーの正式名称は磐梯猪苗代太陽光発電所(設備容量28・0㍋㍗)、事業者は合同会社NRE―41インベストメント(東京都港区、以下、NRE―41と略。代表社員=日本再生可能エネルギー㈱、職務執行者=ニティン・アプテ氏)。同社は建設地に2019年12月から35年間の地上権を設定し、土地所有者の再エネ会社を債務者とする10億円の抵当権を設定している。  調べると、NRE―41と代表社員の日本再生可能エネルギーは同じ住所。さらにその住所には日本再生可能エネルギーの親会社であるヴィーナ・エナジー・ジャパン㈱が本社を構えている。  ヴィーナ・エナジーはアジア太平洋地域最大級の独立系再生可能エネルギー発電事業者で、シンガポールに本社、各国に現地法人を置く。日本では2013年から事業を開始し、日本法人のヴィーナ・エナジー・ジャパン(以下、ヴィーナ社と略)は国内29カ所でメガソーラーを稼働する。県内には国見町(運転開始16年2月、設備容量13・0㍋㍗)、二本松市(同17年8月、同29・5㍋㍗)、小野町(同20年8月、35・0㍋㍗)に施設がある。  ヴィーナ社にとって磐梯猪苗代太陽光発電所は県内4カ所目の施設となるが、実は前記3カ所もNRE―03インベストメント、同06、同39という合同会社がそれぞれ事業者になっている。合同会社は新会社法に基づく会社形態で、設立時の手間やコストを省ける一方、代表社員は出資額以上のリスクを負わされず(ちなみにNRE―41の資本金は10万円)、投資家と事業者で共同事業を行う際、定款で定めれば出資比率に関係なく平等の立場で利益を配分できるといった特徴がある。  そのため合同会社は、外資が手掛けるメガソーラーの事業者として登場する頻度が高い。ヴィーナ社にとっては、発電を終え利益を確定させたら撤退し、リスクが生じたら責任を負わせて切り捨てる、という使い勝手の良さが透けて見える。  そんな建設地で今、施工業者間によるトラブルが起きている。  「私は下請けとして2019年11月から現場に入ったが、元請けが適正な工事代金を払わず、再三抗議しても応じないため、やむなく現場から手を引いた」  こう話すのは、小川工業㈱(郡山市)の小川正克社長だ。  同社はヴィーナ社の元請けである㈱小又建設(青森県七戸町)から造成工事などを受注したが、地中から大量の転石が発生し、その処理に多大な労力を要した。当然、工事代金は当初予定よりかさんだが「小又建設はいくら言っても石にかかった工事代金を払わなかった」(同)。未払い金は5億円に上るという。 巨大な転石を測量する作業員(小川社長提供)  「こちらで転石の数量をきちんと把握し、一覧にして請求しても払ってくれないので青森の本社に行って小又進会長に直談判した。しかし、小又会長は『そんなに石が出るはずがない』と言うばかりで」(同)  小川社長は仕事を任せた作業員に迷惑をかけられないと、立て替え払いをしながら「石の工事代金を払ってほしい」と求め続けたという。  「小又建設の現場監督に『工事を止めないでほしい』と言われ、支払いがあると信じて工事を続けたが、状況は変わらなかった」(同)  このままでは会社が持ちこたえられないと判断した小川社長は2021年1月に現場から撤退。現在、小又建設を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こす準備を進めている。  これに対し、小又進会長は本誌の電話取材にこう反論する。  「石に関する工事代金は数回に分けて払い全額支払い済みだ。手元には小川工業からの請求書もあるし支払調書もある。うちは建設業法違反になるようなことはやらない」  小川社長と小又会長は自身の言い分を詳細に話してくれたが、もし裁判になった場合、記事中のコメントが訴訟の行方に影響を与える恐れもあるので、これ以上詳報するのは控えたい。ただ、これとは別に小川社長が問題提起するのが、NRE―41が県に行った林地開発許可申請だ。  NRE―41は2019年7月に県会津農林事務所に林地開発許可申請書を提出。同年8月に森林法の規定に基づき、県から林地開発を許可された。その申請に当たり同社は建設地でボーリング調査を行い、県に調査結果を提出しているが、小川社長は「書類が不備だらけ」と指摘するのだ。 不備だらけの書類 工事が続く磐梯猪苗代太陽光発電所(8月中旬撮影)  「NRE―41は建設地の3カ所でボーリング調査を行っているが、その結果が書かれた3枚のボーリング柱状図を見ると2枚は調査個所を示す北緯と東経が空欄になっていた。同社が提出したボーリング調査位置図には三つの赤い点で調査個所が示されているが、北緯と東経が不明では本当に赤い点の個所で調査が行われたのか疑わしい」(同)  記者も3枚のボーリング柱状図を見たが、そのうちの2枚は確かに北緯と東経が空欄になっていた。  「不可解なのは、ボーリング柱状図は3枚あるのに、コア(ボーリング調査で採取された石や土が棒状になった試料。これにより現場の地層や土質が把握できる)の写真は2枚しかないことです。また、調査の様子や看板の写真も1枚もない。こんな不備だらけの書類を、県はなぜ受理したのか不思議でならない」(同)  この3カ所以外に、NRE―41は別の3カ所でもボーリング調査を行っているが、そちらはボーリング柱状図に空欄はなく、コアの写真も3枚あり、調査の様子や看板の写真も一式揃っていた。  「そもそも34・7㌶もの林地を開発するのに、ボーリング調査をたった6カ所でしか行っていないのは少なすぎる。しかも6カ所は建設地の中央ではなく、すべて外側や境界線あたり。これで一帯の正確な地層や土質が把握できるのか」(同)  ならば、建設地中央の地層や土質はどうやって調査したのか。  「NRE―41は簡易動的コーン貫入試験で土質調査を済ませていた。調査位置図や調査結果書を見ると、建設地の主要18カ所で同試験が行われていた」  しかし、ボーリング調査が深度10~15㍍の地層まで把握できるのに対し、コーン貫入試験は3㍍未満の地層しか把握できず、正確な地層や土質を調べることはできない。  小川社長は「だから、造成工事をしたら大量に石が出てきたんだと思う」と指摘する。  「きちんとボーリング調査をしていれば一帯が石だらけなのは分かったはず。それをコーン貫入試験で済ませたから、表層は把握できても深層までは把握できなかった。ただ地元の人なら、昔起きた磐梯山の噴火で一帯に大量の石が埋まっていることは想像できる。ヴィーナ社は外資で、小又建設は青森だから分からなかったんだと思う」(同) 「私なら受理しない」  本誌はあるボーリング調査会社社長にNRE―41の書類一式を見てもらったが、開口一番発したのは「本当にこれで県は受理したんですか」という疑問だった。  「まずコアの写真がないのはおかしい。普通はコアの写真があってボーリング柱状図が作成され、調査の様子や看板の写真などと一緒に県に提出するからです。コアは役人が立ち会い、実物を確認したりもする大事なものなので、その写真がないのは明らかにおかしい」(同)  こうした調査結果に基づいて設計図がつくられ、造成工事はその設計図に沿って行われるため「調査が不正確だと設計図も誤ったものになり造成工事は成り立たなくなる」(同)という。  「そもそも最初のボーリング調査がたった3カ所というのは少なすぎる。普通は建設地の対角線上に一定の距離を置きながらボーリング調査をしていく。その調査個所をつないでいけば一帯の地層や土質が見えてくるし、さらに詳細に調べるなら物理探査を行って地中の様子を面的に見たりもする」(同)  調査会社社長は、今回のように広大な建設地を造成する場合はどれだけの強さの土がどれくらいあるか知っておくべきとして「地質断面図があればなおいい」と指摘したが、書類一式を見てもそれはなかった。  「建設地の中央をコーン貫入試験で済ませていては一帯の地層や土質を把握するのは無理。同試験では表土は分かっても地層は分からない。コーンを貫入して礫や転石に当たったら、それ以上は貫入不可能だからです。だいいち同試験は表層滑りのリスクがあるかどうかを調べるために行うので、NRE―41が行った同試験にどんな意味があるのか分からない。正直、こういう調査でよく設計図が書けたなと思う」(同)  その上で調査会社社長は「自分が県職員だったら、コーン貫入試験ではボーリング調査の〝代役〟にはならず、一帯の地層や土質は把握できないのでボーリング調査をやり直すよう命じる。もちろん申請書は受理しない」と断言する。  「理由は災害のリスクがあるからです。一帯の地層や土質が分からずに開発し、結果、災害が起きたら周囲に深刻な被害をもたらす恐れがある。だから、災害が起こらないようにボーリング調査を行い、調査結果に基づいて設計図をつくるのです。ボーリング調査も設計図も不正確では安全性を担保できない。もし災害が起きたら開発業者に責任があるのは言うまでもないが、私は許可を出した県の責任も問われてしかるべきだと思う」(同)  専門業者も疑問視する中、県はなぜ許可を出したのか。申請書を受理した会津農林事務所森林林業部の眞壁晴美副部長は次のように話す。  「森林法第10条には『知事は林地開発の申請があった時、災害や水害を発生させる恐れがないこと、水の確保や環境の保全に心配がないことが認められれば許可しなければならない』とある。これに基づき、NRE―41の申請は要件を満たしていたため許可を出した」  ボーリング調査も全体的に行う必要はないという。  「計画では敷地内に防災調節池を8カ所つくることになっており、そのうち6カ所は掘り込み式の調節池だが、残り2カ所は築堤する設計で基礎地盤を把握しなければならないため、NRE―41は一つの調節池につき3カ所、計6カ所のボーリング調査を行った。コーン貫入試験は太陽光パネルの足場を組むため現場の土質を調べたもので、許可申請とは何の関係もない」(同)  前出・小川社長が指摘する「書類の不備」(ボーリング柱状図に北緯と東経が載っていない、コアの写真がない、調査の様子や看板の写真一式がない)については、  「NRE―41が調査を依頼した調査会社に県が聞き取りを行い、事情を把握するとともに、欠けていた書類をあとから提出してもらった。北緯と東経が空欄になっているなどの不備があったのは、調査途中でも新しく分かったことがあれば記入してどんどん提出してほしいと県が要請したので、その時に未記入の書類が提出され、それが開示請求によって公開されたのではないか。県の手元には北緯と東経が書かれたボーリング柱状図がある」  県が調査未了でも書類の提出を求め、それが開示請求によって公開されるなんてことがあるのだろうか。  筆者が「造成工事を行った結果、設計図と実際の地層、土質が違っていた場合はどうなるのか」と質問すると、  「悪質な場合は県が行政指導を行い、計画の見直しや新たな書類を提出してもらうこともあるが、基本的には事業者自らの判断で林地開発計画変更届出書を提出し、必要な変更措置をしてもらう」(同)  ちなみにNRE―41はこの間、造成工事の遅れや計画の一部変更を理由に県に何度か変更届出書を提出している。直近では今年8月31日までとしていた造成工事期間を12月5日まで延長する変更届出書を提出しているが、行政指導を受けて変更届出書を提出したことがあるかどうか尋ねると「それは言えない」(同)。また、建設地で災害が起きた場合の対策は「森林法に基づき必要書類を提出させている」(同)とのこと。 〝ザル法〟の森林法  正直、現場の正確な地層や土質が分からないまま、簡易な構造物(太陽光パネル)を設置するだけとはいえ広大な林地を開発させてしまって大丈夫なのか心配になる。たとえそれが法的に問題なくても、である。  前出・調査会社社長も驚いた様子でこう話す。  「林地開発が〝ザル法〟の森林法で許可されてしまうことがよく分かった。現場の地層や土質が分からないまま、もしメガソーラーで災害が起きたら、第一義的な責任は事業者にあるが、私は許可した県の責任も問われてしかるべきだと思う。もっとも県は『法律上問題なかった』と言い逃れするんでしょうけどね」  実はこれに関連して、前出・小又進会長が気になる発言をしていた。  「設計はヴィーナ社で行い、石の大量発生についてはうちでも払ってほしいとお願いしたが、ヴィーナ社は予算がないの一点張りだった」  つまり小又建設も、小川建設と同様に転石の工事代金を払ってもらえずにいたのだ。  筆者が「ヴィーナ社がきちんと調査していればこんな事態にはならなかったのではないか」と尋ねると、小又会長は請負業者としての難しい立場を明かした。  「その時点でうちはヴィーナ社の工事を3カ所請け負っていた。業者は『請け負け』の立場。正直、発注者には言いづらい面がある」(同)  ある意味、小又建設も被害者なのかもしれないが「青森では十数億円の現場を2カ所世話になった」(同)とも言うから、ヴィーナ社とは持ちつ持たれつの関係なのだろう。逆に言うと、小又建設がヴィーナ社から正当な転石の工事代金を受け取っていれば、小川建設にもきちんと支払いが行き届いていたのではないか。  ヴィーナ社に取材を申し込むと、子会社の日本再生可能エネルギーから「回答するので時間がほしい」とメールで連絡があったが、その後、締め切りまでに返答はなかった。  前出・小川社長は「県はNRE―41の許可申請を受理すべきではなかった。そうすれば林地開発は行われず、私も被害を受けずに済んだ」と嘆くが、森林法が〝ザル法〟であることが明らかな以上、必要な是正をしないと、あちこちの林地で稼働するメガソーラーで災害が起きた時、対応する法律がない事態に直面するのではないか。

  • 【福島市】メガソーラー事業者の素顔

    【福島市】メガソーラー事業者の素顔

     福島市西部で進むメガソーラー計画の関係者が、思わぬ形で週刊誌に取り上げられた。中国系企業「上海電力日本」が発電所を整備する際、必ず関わっている人物なのだという。予定地の周辺住民は不安を口にしている。 週刊新潮が報じた「上海電力」との関係  本誌昨年12月号で「福島市西部で進むメガソーラー計画の余波」という記事を掲載した。同市西部の福島西工業団地近くの土地を太陽光発電事業者が狙っているというもの。 最初に浮上したのは、福島先達山太陽光発電事業の事業者による変電所計画。しばらくして立ち消えになったが、別の発電事業者がすぐそばの民有地を取得し、開閉所の設置を予定していることが分かった。 《発電事業者は合同会社開発72号(東京都)で、福島市桜本地区であづま小富士第2太陽光発電事業を進めている。営農事業者は営農法人マルナカファーム(=丸中建設の関連会社、二本松市)。開閉所を含む発電設備の建設、運転期間中の保守・維持管理はシャープエネルギーソリューション(=シャープの関連会社、大阪府八尾市)が請け負う。 発電所の敷地面積は約70㌶で、営農型太陽光発電を行う。最大出力約4万6000㌔㍗。今年7月に着工し、2024年3月に完工予定となっている。事業期間は約16年。 開閉所は20㍍×15㍍の敷地に建設される。変圧器や昇圧器は併設しないため、恒常的に音が出続けるようなことはないという。発電所から開閉所までは特別高圧送電線のケーブルを地下埋設してつなぐ》(本誌昨年12月号記事より) ところが、これらの計画について発電事業者側がおざなりな説明で一方的に進めようとしたため、周辺住民が反発。 開閉所につなぐ送電線は直前で地下から地上に出し、近くにある鉄塔から農地をまたぐ電線に接続する計画となっている。そのため、生活空間への影響を懸念する地権者や住民が計画変更を求めたが、開発72号は一度計画変更すると固定価格買い取り制度(FIT)の権利が失われることから応じなかった。 そこで、地元町内会は資源エネルギー庁に対し、3月28日付で、発電事業者への指導を求める125人分の要望署名を提出した。 そうした中で、さらに住民の不信感を増幅させる出来事があった。発電事業者である開発72号の代表者・戸谷英之氏と執行社員・石川公大氏が、『週刊新潮』が掲載した「上海電力」関連記事の中で繰り返し登場していたのだ。 上海電力(正式名称・上海電力股份有限公司)は、中国の国有発電会社「国家電力投資集団」の傘下企業で、石炭火力発電を中心にガス、風力、太陽光発電を手掛けている。 日本法人の上海電力日本(東京都千代田区、施伯红代表)は2013年9月に設立され、日本でのグリーンエネルギー(太陽光・太陽熱、風力、水力等)発電事業への投資、開発、建設、運営、メンテナンス、管理、電気の供給及び販売に関する事業を展開している。中国資本企業ではあるが、2015年8月に経団連に加入している。 『週刊新潮』の記事は、上海電力日本の子会社によるメガソーラーが山口県岩国市の海上自衛隊岩国航空基地の近くに整備されていることに触れたうえで、中国政府に近い企業に基幹インフラ事業を任せる危うさを指摘する内容だった(『週刊新潮』10月27日号)。 『週刊新潮』の記事  上海電力が進出する際の手口は、「合同会社」の転売を繰り返すというものだが、そこに出てくるのが前出・戸谷氏だ。 不動産登記簿によると、2020年12月28日、SBI証券が同発電所の土地に根抵当権を設定した。債務者はRSM清和コンサルティング内に事務所を構える合同会社開発77号。この会社の代表社員が戸谷英之氏だ。記事によると、RSM清和監査法人の代表社員である戸谷英之氏と同姓同名だという。 メガソーラー発電事業者・合同会社東日本ソーラー13には当初、一般社団法人開発77号(合同会社77号の親会社)が加入していたが、同年9月9日、合同会社SMW九州が合同会社東日本ソーラーに加入し、入れ替わるように一般社団法人77号が退社した。この合同会社SMW九州の現在の代表者は施伯红氏。上海電力日本の代表取締役だ。 要するに、戸谷氏の会社が、上海電力日本の進出の手引き役になっていると指摘しているわけ。 『週刊新潮』今年5月18日号では、北海道の航空自衛隊当別分屯基地に近い石狩市厚田区で進められている風力発電計画においても、全く同じスキームが採用されていることが報じられており、戸谷氏のほか、石川氏の名前も出てくる。 本誌2021年4月号で、宮城県丸森耕野地区でメガソーラー計画に対する反対運動が展開されたことをリポートした。用地交渉担当の事業統括会社社長が住民の賛同を広げるため行政区長に金を渡そうとしたとして、贈賄容疑で逮捕された経緯があったが、ここで事業者となっている合同会社開発65号の代表者も戸谷氏だった。 今年に入ってからは宮城県登米市に建設が予定されていたバイオガス発電所計画をめぐり、事業者が経産省に提出していた食品メーカーとの覚書を偽造していたことが発覚し、計画中止となった。事業者・合同会社開発73号の代表者は戸谷氏だ。 根強い地元住民の不信感 開閉所予定地  これらの会社の電話番号はアール・エス・アセットマネジメント(東京都)というエネルギーファンドの資産運用管理会社と同じ番号で、関連会社だと思われる。上海電力日本との関係は判然としないが、ずさんな計画に関わっていたのは確かだ。 たたでさえ、地元住民はメガソーラーやその関連設備が整備されることで、自然環境維持や防災などの面で影響を受けないか、不安視しているのに、投機目的丸出しのペーパーカンパニーでは不安が募るばかり。だからこそ、福島市桜本地区の住民も反対しているのだ。 地元住民が反対していることについてどう受け止めているのか、開発72号に連絡したが、期日までに返答はなかった。 地元町内会の代表者は「発電事業所は10年ほど前に権利を取得し、1㌔㍗36円という高い金額で売電できるので、住民の反対を押し切ってでも期限のうちに計画を進めたいのだと思います。そうした意向を受けてか、発電設備の建設を担うシャープエネルギーソリューションも地元住民の反対を押し切り、すでに工事に着手している。彼らは『地元住民に話をすればそれで了承を得た』と思っている節があります。農地への地上権設定にあっさり許可を出した市(木幡浩市長)にも、住民として協力できない意向を示す反対署名を提出する予定です」と語る。 地元住民の不信感は相当強い状況。過去の事例のように開発72号は上海電力日本など他社に売却する狙いがあるのか。同地区の住民ならず、その動向を注視しておく必要がある。

  • 【相馬玉野メガソーラー】山林大規模開発への懸念

     本誌2021年8、10月号で、相馬市玉野地区で進められているメガソーラー事業についてリポートした。事業者は「GSSGソーラージャパンホールディングス2」という会社で、アメリカ・コロラド州に拠点を置く太陽光発電事業者「GSSG Solar」の日本法人。 メガソーラー事業への反対運動:地元の懸念と説明会 玉野メガソーラー事業地(工事前) 玉野メガソーラー事業地(今年5月撮影)  同事業については、大きく以下の2点から、近隣住民や河川下流域の住民から反対の声が出ていた。 1つは、事業地は主に山林のため、発電所建設(太陽光パネル設置)に当たっては大規模な林地開発を伴うこと。近隣・下流域の住民からは「大規模開発により、山の保水力が失われてしまう。近年は、各地で洪水・土砂災害などが頻発しており、周辺・下流域でそうした災害が起きるのではないか」といった不安が噴出していた。 もう1つは、計画立案者で事業用地の大部分を所有する人物が、2021年7月に発生した静岡県熱海市の「伊豆山土石流災害」現場の所有者と同一人物であること。この人物は地権者というだけで、直接的には事業に関与しないようだが、近隣住民などからは「あのような問題人物が関係しているとすれば不安だ」との声があった。 こうした事情もあり、2021年7月と10月に地元住民や下流域の住民を対象とした説明会が行われた。主催者は「相馬市民の会」という住民団体で、事業者の現場担当者を招いての説明会だった。 説明会で配布された資料によると、事業区域面積は約122㌶で、うち森林面積が約117㌶、開発行為にかかる森林面積が約82㌶、発電容量は約82メガ㍗、最大出力60メガ㍗、太陽光パネル設置枚数16万6964枚などと書かれていた。 当然、説明会では前述のような不安の声が上がり、事業者は「問題のないように事業を進める」、「保険に入り、災害の際はそれで対応する」と回答した。ただ、そうした説明に反対派の住民は納得せず、平行線をたどった。 メガソーラー事業の現状:山林開発の進行と地元の不安  それからしばらくして、昨年2月ごろに、地元住民から「われわれの訴えも虚しく工事がスタートした」との情報が寄せられた。その直後に現地を訪ねた際は分からなかったが、最近、あらためて現地を訪ねると、山林がかなり切り開かれている様子がうかがえた。 以前の説明会に出席していた事業者の現場担当者に進捗状況を尋ねたところ、「一度、社内で話を通さないと取材にはお答えできないので、そのうえで再度連絡します」とのことだったが、締め切りまでに連絡はなかった。 以前の説明会で、事業者は「調整池を設置して洪水・土砂災害などが起きないようにする」と話していたが、あらためて丸裸にされた山林を見ると、近隣・下流域の住民は不安を増大させているだろうと感じる。 あわせて読みたい 不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画 (2021年8月号) 相馬玉野メガソーラー計画への懸念 (2021年10月号) 相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定 (2021年11月号)

  • 福島市西部で進むメガソーラー計画の余波「開閉所の整備予定地」

    福島市西部で進むメガソーラー計画の余波

     「自宅の周辺を作業員が出入りして地質調査をしていると思ったら、目の前の農地に開閉所(家庭でのブレーカーの役割を担う施設)ができると分かった。一切話を聞いていなかったので驚きました」(福島西工業団地の近くに住む男性)  同市西部の福島西工業団地(同市桜本)の近くの土地を、太陽光発電事業者がこぞって取得している。東北電力の鉄塔に近く、変電所・開閉所などを設置するのに好都合な場所だからだ。  2022年2月、鉄塔がある地区の町内会長の家をAC7合同会社(東京都)という会社の担当者が訪ねた。外資系のAmp㈱(同)という会社が特別目的会社として設立した法人で、福島市西部の先達山(635・9㍍)で大規模太陽光発電施設を計画している。そのための変電所を、市から取得した土地に整備すべく、町内会長の了解を得ようと訪れたのだ。  町内会長は冒頭の男性と情報を共有するとともに、同社担当者に対し「寝耳に水の話で、とても了承できない」と答えた。  同計画の候補地は高湯温泉に向かう県道の北側で、すぐ西側に別荘地の高湯平がある。地元住民らは「ハザードマップの『土砂災害特別警戒地域』に隣接しており、大規模な森林伐採は危険を伴う。自然環境への影響も大きい」として、県や市に要望書を提出するなど、反対運動を展開している。  そうした事情もあってか、変電所計画にはその後動きがないようだが、2022年3月には、別の太陽光発電事業者が近くの民有地を取得し、開閉所の設置を予定していることが明らかになった。  発電事業者は合同会社開発72号(東京都)で、福島市桜本地区であづま小富士第2太陽光発電事業を進めている。開閉所を含む発電設備の建設、運転期間中の保守・維持管理はシャープエネルギーソリューション(=シャープの関連会社、大阪府八尾市)が請け負う。  発電所の敷地面積は約70㌶で、営農型太陽光発電を行う。営農事業者は営農法人マルナカファーム(=丸中建設の関連会社、二本松市)。2022年7月に着工し、2024年3月に完工予定となっている。  開閉所は20㍍×15㍍の敷地に設置される。変圧器や昇圧期は併設しないため、恒常的に音が出続けるようなことはないという。発電所から開閉所までは特別高圧送電線のケーブルを地下埋設してつなぐ。 開閉所の整備予定地  5月7日には地元住民への説明会が開かれた。大きな反対の声は出なかったようだが、冒頭・予定地の目の前に住む男性は「電磁波は出ないというが、子どもへの影響など心配になる。工事期間中、外部の人が出入りすることを考えると防犯面も気になります」と語った。  前出・町内会長は、一方的な進め方に違和感を抱き、市の複数の部署を訪ねたが、親身になって相談に乗ってくれるところはなかった。  特別高圧送電線のケーブルが歩道の地下に埋設される予定であることを知り、市に「小学生の通学路にもなっているので見直してほしい」と訴えたところ、車道側に移す方針を示した。だが、根本的に中止を求めるのは難しそうな気配だ。  「鉄塔周辺の地権者が応じれば、ほかにも関連施設ができるのではないかと危惧しています」(町内会長)  福島市西部地区で進むメガソーラー計画で、離れた地区の住民が思わぬ形で余波を受けた格好だ。2つのメガソーラー計画についてはあらためて詳細をリポートしたい。 あわせて読みたい 相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定 【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声 大玉村「メガソーラー望まない」 宣言の真意

  • 相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定(2021年11月号)

    相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定

    (2021年11月号)  本誌8月号、10月号で相馬市玉野地区に計画されている県内最大級のメガソーラーについて報じた。  事業者は「GSSGソーラージャパンホールディングス2」(東京都港区)で、アメリカ・コロラド州に拠点を置く太陽光発電事業者「GSSG Solar」の日本法人。 同計画の問題点は大きく2つ。 1つは、計画地は主に山林のため、大規模な林地開発を伴うこと。近隣や下流域の住民からは、「大規模開発により、山の保水力が失われてしまう。近年は、各地で洪水・土砂災害などが頻発しており、周辺・下流域でそうした災害が起きるのではないか」といった不安が出ている。 もう1つは、計画立案者で最大地権者は、7月に発生した静岡県熱海市の「伊豆山土砂災害」現場の所有者と同一人物であること。 関連報道によると、土石流が起きた原因は、河川上流の盛り土で、急な斜面に産廃を含む土砂が遺棄され、今回の豪雨で一気に崩落した、とされている。盛り土を行ったのは旧所有者だが、2011年に現所有者が取得。土石流の起点付近で不適切に土砂を投棄したほか、危険性を認識しながら適切な措置・対策を取っていなかったという。 遺族・被災者らは現旧所有者を相手取り損害賠償請求訴訟を起こすと同時に刑事告訴した。 その現所有者である麦島善光氏が玉野メガソーラー用地の約7割を所有しているのだ。登記簿謄本によると、東京都在住の個人が所有していたが、2002年に東京財務局が差押をした後、2011年8月、公売によって麦島氏が取得した。麦島氏が取得後、同所に抵当権などは設定されていない。 麦島氏はこの土地でメガソーラー事業を行う計画を立て、地元住民によると、「当初、麦島氏は自分でメガソーラーを開発、運営する考えだった。麦島氏とその部下がよくこちら(玉野地区)に来て、挨拶回りや説明を行っていた」という。 麦島氏は2016年9月、合同会社・相馬伊達太陽光発電所(東京都千代田区)を設立し、代表社員に就いた。しかし、自社での開発・運営を諦め、GSSGソーラージャパンホールディングス2が事業主体となった。麦島氏は同社に事業権を譲渡するとともに地代を受け取ることになる。 ただ、住民からすると「そういう問題人物が関わっていて、本当に大丈夫なのか」との不安は大きい。 10月11日、「相馬市民の会」主催で説明会が開かれた。当然、麦島氏のことが質問に出たのだが、事業者は「ただの地権者で事業そのものには関わらない」と、麦島氏の関与を否定した。 一方、「麦島氏は現在80歳を超えており、事業終了後(20〜40年後)はいない。開発で保水力を失った山林は事業終了後も管理が必要だが、その費用を麦島氏の後継者に請求できるか」との質問も出たが、これに対しては明確な回答はなかった。 麦島氏は直接的に事業に関与しないようだが、そういった点での不安は残されたままだ。 あわせて読みたい 不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画 相馬玉野メガソーラー計画への懸念

  • 相馬玉野メガソーラー計画へ  の懸念(2021年10月号)

    相馬玉野メガソーラー計画への懸念

    (2021年10月号)  本誌2021年8月号に「不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画 静岡県熱海市土砂災害との意外な接点」という記事を掲載した。その後、相馬市9月議会で同計画に関連する動きがあったので続報する。 実らなかった住民団体「必死の訴え」  現在、相馬市玉野地区で、県内最大級のメガソーラー計画が進められている。計画地は主に山林のため、発電所建設(太陽光パネル設置)に当たっては大規模な林地開発を伴う。そのため、近隣住民や下流域の住民からは、「大規模開発により、山の保水力が失われてしまう。近年は、各地で洪水・土砂災害などが頻発しており、周辺・下流域でそうした災害が起きるのではないか」といった不安の声が出ていた。 こうした事情もあり、7月15日に玉野地区だけでなく、ほかの地区の住民も交えた説明会が開催された。主催したのは「相馬市民の会」という住民団体で、事業者の「GSSGソーラージャパンホールディングス2」という会社の担当者を招いての説明会だった。 記事ではその模様を伝えたほか、①同事業用地の所有者で同事業の発案者は、7月に発生した静岡県熱海市の「伊豆山土砂災害」現場の所有者と同一人物であること、②県はそのことを認識しながら、7月15日に林地開発許可を出したこと――等々をリポートした。 一方、同記事では、説明会から4日後の7月19日に、住民団体「相馬市民有志の会」(※説明会を主催した「相馬市民の会」とは別団体)が県に対して、「同事業には安全面で問題があるため、林地開発許可を行わないよう求める」とする申入書を提出したことも伝えた。 申入書の趣旨は、1つは静岡県熱海市の「伊豆山土砂災害」を引き合いに、そうした問題人物の手掛ける事業に行政として、開発許可を出すのが妥当なのか、ということ。 もう1つは調整池の問題。「相馬市民有志の会」の関係者は当時の本誌取材に次のように話していた。 「2019年の台風では、同計画の設計基準とされている雨量を超えたほか、事業終了後の調整池の問題もあります。というのは、最初の説明会のとき、事業者は発電期間は20年間で、その後、メンテナンスを行い、さらに20年間、最大40年間を見込んでいるとのことでしたが、事業期間が終わり、パネルを撤退した時点では、山は丸裸のまんまです。一度剥いてしまった山林が保水力を取り戻すには数十年、場合によっては100年かかると言われており、事業終了後も調整池は残さなければならない。事業期間中は定期的にえん堤の修繕・堆積土浚渫などを行うそうだが、事業終了後は誰がそれをやるのか。国の制度では、2022年度から事業期間中に売電収入から外部積み立てをし、それを撤去費用に充てることになっていますが、調整池の保全管理費分も含むかどうかは不透明です。そういった面で、とにかく問題点が多過ぎる。将来的に、負の遺産になるかもしれないものは、地元住民として到底容認できないというのが申入書の趣旨です」 計画では事業区域は1号から7号までの各ブロックに分かれ、太陽光パネルが設置されたエリアはフェンスで覆い、その外側の周囲30㍍は残置森林とするほか、各ブロックに調整池を設置する、とされている。事業(発電)期間終了後、その調整池の管理の問題を問うのが申入書の趣旨だった。 8月号記事執筆時点では、この申入書に対する県からの回答はなかったが、8月11日付で県森林保全課から「相馬市民有志の会」に回答があった。内容は次の通り。   ×  ×  ×  × 林地開発許可について 令和3年4月28日付で合同会社相馬伊達太陽光発電所から林地開発許可申請があったこのことについて、「災害の防止」、「水害の防止」、「水の確保」、「環境の保全」の4要件で審査し、許可基準を満たすことを確認しました。さらに、福島県森林審議会に諮問した結果、「適当と認める」旨の答申を得たことから、令和3年7月15日付で許可しました。 GSSGソーラージャパンホールディングス2等の調査結果 申請者である合同会社相馬伊達太陽光発電所の代表社員GSSGソーラージャパンホールディングス2の存在を確認するとともに、開発行為が中断されることなく許可を受けた計画どおり適正に完遂させうる相当の資金力及び信用の有無を確認しています。なお、麦島善光氏(編集部注・静岡県熱海市の「伊豆山土砂災害」現場の所有者で、合同会社相馬伊達太陽光発電所の創設者、玉野地区メガソーラー計画地の地権者)につきましては、土地所有者であり、土地所有者の適正は審査項目に含まれておりません。 土砂災害警戒区域について 土砂災害防止法による開発規制は、指定区域において住宅分譲や災害時要援護者関連施設等の建築のための開発行為が対象であり、太陽光発電事業を目的とする開発行為は該当しない旨の回答を担当部局から得ています。また、当該地の警戒区域については、現時点で未指定であり、基礎調査の公表となっています。なお、環境省において再生可能エネルギーの促進地域から土砂災害の危険性が高い区域を除外する旨の通知等は示されていません   ×  ×  ×  × 資源エネ庁に申し入れ  「相馬市民有志の会」が県に申入書を提出した直後、県森林保全課に確認したところ、林地開発については、手続き上、要件を満たしていれば開発許可を出すことになる、とのこと。 さらに、静岡県熱海市の「伊豆山土砂災害」との関係については、県森林保全課では、熱海市の土地所有者と、玉野地区のメガソーラー計画の事業地所有者が同一人物であることは認識していた。 そこで、記者が「すでに開発許可は出ているそうだが、そういう人(問題人物と思しき人)が関わっているということで、開発許可を再考するということにはならないのか」と尋ねると、こう明かした。 「許可申請者は別(GSSGの傘下のようになった相馬伊達太陽光発電所)ですし、(熱海市の件と同一人物が)所有者に名を連ねているのは承知していますが、それだけ、と言ったら何ですが……。そういうこと(開発許可を再考すること)にはならないと思います」 申入書に対する回答を見ると、まさにそういった内容のものだ。 一方、「相馬市民有志の会」は同様の観点から、8月下旬、相馬市に要望を行うと同時に、相馬市議会に陳情書を提出した。 それに先立ち、「相馬市民有志の会」は8月10日に資源エネルギー庁にも同趣旨の申入書を提出している。その際、資源エネルギー庁は「調整池は長期にわたり維持管理される必要があるが、調整池保全管理費については、外部機関積み立ての対象になっていない」との回答だったという。 国は2020年6月、メガソーラーなどの事業終了時のために、施設撤去費用を外部機関に積み立てることなどを定めた「エネルギー供給強靭化法」を制定したが、そこで定められた「外部機関積み立て」には、調整池保全管理費は含んでいないことが資源エネルギー庁への申し入れで明らかになったということだ。 「市が義務付けは難しい」と市長  これを受け、「相馬市民有志の会」は市と議会に対して「長期にわたる調整池の保全管理費が本来負担すべき事業者ではなく、相馬市民に押し付けられることになる」として、「そうしたことにならないよう、事業者との間に①事業終了後においても、調整池の保全管理費は事業者が負担すること。事業者は保全管理費の総計を算出し、それを相馬市と共有して積み立て実態も公開すること、②万が一、メガソーラー設置に起因する災害が発生したときは事業者が復旧及び被害救済に責任を負うこと、などを内容とする協定書を取り交わすべき」と要望・陳情したのである。 陳情は市議会文教厚生常任委員会に付託され、9月定例会中の9月8日に審議が行われたが、それに先立ち、同2日に一般質問が行われ、村松恵美子議員が関連の質問を行った。 内容は「県内最大規模のメガソーラー発電施設が玉野地区に設置される計画が進んでいる。メガソーラー設置区域には土砂流出警戒区域も含まれる。さらに大雨対策の調整池の維持管理が事業継続中は事業者の責任だが、事業終了後は事業者責任が無くなることが分かった。このような法整備が不完全の状態で設置が進むことを市長はどう考えるかうかがう」というもの。 まさに、「相馬市民有志の会」が懸念する「事業終了後の調整池の維持管理の問題」を質したのである。 これに対する市当局の答弁だが、まず、林地開発申請後、県から地元自治体として意見を求められ、意見書を提出したという。 その内容は、令和元年東日本台風により大きな被害を受けた下流地区の住民に、特に丁寧な説明を行い、水害への懸念を払拭すること、激甚災害相当規模の雨量にも対応できる設備を設置すること、林地開発にあたっては、開発地周辺住民に十分な説明機会を設け、理解を得ながら事業を進めること、意見や要望に対して十分な説明や誠意を持って対応すること――というもの。 そのうえで、立谷秀清市長は次のように答弁した。 「『相馬市民有志の会』から環境協定の中で事業終了後の調整池の管理を義務付けるよう要望が出ている。弁護士とも協議したが、民間事業者と地権者の契約の中で、市が事業者にその義務付けをすることはできない。協定書に盛り込めるとしたら、県の基準を順守しなさい、安全性を確保しなさい、というところまでしかできない」 さらに、立谷市長は「この件は全国的な問題として、これから出てくる。発端は熱海市の件。熱海市長とは親しくしているが、憤懣やるかたない思いだと言っていた。全国的な問題だから、全国市長会長の立場で問題提起・議論していきたい」とも語っていた。 問題は認識しつつも、民間事業者と地権者による民民のビジネス契約だから、市としてそこに関与することは難しい、ということだ。 陳情「委員会審議」の模様  陳情の審議が行われたのは、この一般質問があった数日後で、当日は陳情者の意見陳述が行われ、「相馬市民有志の会」関係者が陳情趣旨などを説明した。その後、議員(委員)から陳情者への質問、議員から執行部への質問、議員間討議、討論などが行われ、最後に採決された。採決結果は賛成ゼロで不採択だった。 反対討論は3人の議員が行ったが、端的に言うと、その内容は「相馬市民有志の会」が指摘した問題点について理解は示しつつ、基本的には民間事業者が民間の土地を借りて行う事業であり、行政として関与できるものではない、というものだった。この数日前の立谷市長の答弁を受け、議会でもそういった結論になったということだろう。 「相馬市民有志の会」の懸念は、民間事業者がビジネス(金儲け)をした後の後処理を誰がするのか、場合によっては行政が税金によって担うことになり、それはおかしい、ということである。だったら、そうならないようにあらかじめ対策を取っておくべき、ということで、趣旨としては分かりやすい。 ただ、市や議会の判断は前述の通りで、住民の感情や懸念と、行政・議会としてできることには隔たりがあるということだ。 同日は「相馬市民有志の会」関係者ら十数人が傍聴に訪れていたが、落胆の声が聞かれた。 前述したように、国は2020年6月、メガソーラーなどの事業終了時のために、施設撤去費用を外部機関に積み立てることなどを定めた「エネルギー供給強靭化法」を制定したが、そこで定められた「外部機関積み立て」には、調整池保全管理費は含んでいない。そこに、調整池保全管理費なども含めるよう、法制度を変えていくしかないということだろう。 一方で、関係者によると、10月中に事業者を招いた「相馬市民の会」主催の説明会が再度行われるというが、その席であらためてこの問題が取り上げられるのは間違いない。そこで、事業者がどのような回答を用意しているか、ひとまずはそこに注目だ。 相馬市のホームページ あわせて読みたい 不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画 相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定

  • 不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画(2021年8月号)

    不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画

    (2021年8月号)  相馬市玉野地区で、県内最大級のメガソーラー計画が進められている。計画地は主に山林のため、発電所建設(太陽光パネル設置)に当たっては大規模な林地開発を伴う。そのため、近隣住民や下流域の住民からは、「大規模開発により、山の保水力が失われてしまう。近年は、各地で洪水・土砂災害などが頻発しており、周辺・下流域でそうした災害が起きるのではないか」といった不安の声が聞かれる。さらに、同事業用地の所有者は、2021年7月に発生した静岡県熱海市の土砂災害とも関係しているという。 【静岡県熱海市】土砂災害との意外な接点  相馬市玉野地区のメガソーラー計画について、本誌が最初に報じたのは2017年4月号「相馬市玉野地区に浮上したメガソーラー計画 災害・水資源枯渇を懸念する一部住民」という記事だった。 当時、地元住民は本誌取材にこう話していた。 「メガソーラーの計画地は、いまから25年ほど前のバブルのころにゴルフ場計画が持ち上がったところです。当時、地元の地権者がゴルフ場設置を計画していた会社に土地を売り、開発が進められようとしていたが、地元農家からは反対の声が上がり、そうこうしているうちにバブルが崩壊してゴルフ場計画はなくなりました。その後は同用地の所有者が何度か変わり、その度にさまざまな計画が浮上しましたが、結局、どれも実現しませんでした」 そうした中で浮上したのがメガソーラー計画だった。以下は、本誌2017年4月号記事より。   ×  ×  ×  × 地元住民によると、メガソーラーの計画地は、同地区スゲカリ地内にある山林。面積は約230㌶と、かなり広大な敷地である。 不動産登記簿謄本を確認すると、同所はもともとは東京在住の個人が所有していたが、2002年に東京国税局の差押を経て、2011年8月、同国税局の公売によって麦島善光氏が取得している。 麦島氏はグループ企業10社(※当時)からなるZENホールディングス(東京都千代田区)のオーナーのようだが、同社のHPを見ると「2015年3月の株主総会で、麦島善光はZENグループのすべての役職から退くことになった」旨の社報が出ていた。 その後、麦島氏は2016年9月に「相馬伊達太陽光発電所」、「相馬玉野地区活性化機構」という2つの合同会社を立ち上げ、その代表社員に就いている。いずれも、本社は東京都千代田区だが、前出の地元住民によると、「同社は最近、玉野地区の空き家を借り、現地事務所を設けました。ただ、人が常駐しているわけではないようです」とのこと。 両社の商業登記簿謄本を見ると、資本金はいずれも100万円。役員(業務執行社員)は両社とも代表社員の麦島氏のほか、櫻井修氏が就いている。事業目的は、相馬伊達太陽光発電所が発電プラント(風力発電、太陽光発電、燃料電池、バイオマス発電、その他の自然エネルギー発電)に関する事前調査、計画、設計、関連資材調達・販売、土木工事、建設、運転、保守点検事業、売電事業など、相馬玉野地区活性化機構が地域活性化事業、地域再生事業、雇用促進を図るための事業など。 なお、代表社員である麦島氏の住所は静岡県熱海市になっている。これは前述・ZENホールディングスの研修センターと同じ住所だから、同グループの役職をすべて辞めたといっても、同グループオーナーであることには違いはないようだ。 要するに、麦島氏はこれまで率いてきたグループ企業の経営を後進に委ね、自身は新会社を立ち上げてメガソーラー事業に乗り出したということだろう。 ちなみに、ZENグループは、建設業や住宅販売、マンション・賃貸住宅・貸店舗などの管理、フィットネスクラブの運営などを行っている会社がメーンで、太陽光発電所の実績があるかは定かでない。少なくとも、同グループのホームページを見る限りでは、そうした実績は見当たらない。 3月上旬、東京の相馬伊達太陽光発電所本社に電話をすると、電話口の男性は「相馬伊達太陽光発電所」ではなく、別の名称を名乗った。そこで、記者が「そちらは相馬伊達太陽光発電所ではないのですか」と聞くと、「相馬伊達太陽光発電所もこちらです」と答えた。どうやら、同じグループ内の別の事業所との兼用事務所のようだ。 記者が「相馬市玉野地区でメガソーラーを計画していると聞いたのだが詳細を教えてもらえないか」と尋ねると、「まだ、マスコミに公表できる段階ではないので。ただ、近々発表できるようになると思いますので、そういう状況になりましたら、こちらからご連絡します」との返答だった。そこで、本誌の電話番号と記者の名前を伝え電話を切った。 このため、その時点では詳しい計画概要などを聞くことはできなかったが、前出の地元住民によると、昨年(2016年)11月に開かれた住民説明会では、①山林を開発して太陽光発電所にすること、②敷地面積は約230㌶だが、実際に開発する(太陽光パネルを設置する)のは約130㌶になること、③発電量は60~80メ  ガ㍗になること、④発電した電力は伊達市の変電所に送ること、⑤2018年から工事をスタートし、2021年の発電開始を目指していること、⑥発電期間は20年間を想定していること――等々の説明があったという。運営会社の名称が「相馬伊達」とされているのは④が理由と思われる。 (中略)それからほどなくして、3月15日からは同計画の開発に当たっての環境影響評価方法書の縦覧が始まった。これを受け、地元紙などでも、同計画の存在が報じられることになった。 環境影響評価方法書を見ると、ある程度の計画概要が見えてくる。同方法書によると、事業実施区域の面積は230・44㌶で、このうち、太陽光パネルを設置するのは約162・52㌶。残りは残置森林が約46・78㌶、防災調整池が12・52㌶、管理用道路が8・62㌶。発電規模は約8万3000㌔㍗(83メ  ガ㍗)だが、「今後の詳細な事業計画検討で変動する可能性がある」とされている。 前出の地元住民の話では、昨年11月の説明会の際、事業者からは「太陽光パネルが設置されるのは約130㌶になる」旨の説明があったとのことだが、今回示された環境影響評価方法書では太陽光パネルを設置するのは約162㌶となっており、当初説明より規模が拡大していることが分かる。   ×  ×  ×  × 地元住民は賛否両論  当初説明や環境影響評価方法書などでは、「2018年から工事をスタートし、2021年の発電開始を目指している」とされていたが、現時点では発電はおろか、工事もスタートしていない。それは、事業主体、計画に何度も変更があったためだが、その詳細は後述する。 当時の地元住民への説明会では、同計画におおむね賛同の声が上がったという。その理由の1つとして、事業者(相馬伊達太陽光発電所)から地元住民に対して「用地を拡大したいため、用地周辺の地権者に協力(賃借)をお願いしたい」との申し出があったことが挙げられよう。 対象地の多くは農地だが、地区内では耕作放棄地が増えている。原発事故後、同地区の酪農家が「原発事故さえなかったら」といった書き置きを残して自殺したが、ただでさえ農家の高齢化といった問題があった中、原発事故により営農環境はさらに厳しくなっていた。近年は相馬福島道路が全線開通し、同地区にインターチェンジが開設されるなど、利便性が向上した一方、2017年3月には玉野小・中学校がともに閉校するなど、地域の活力が失われていたのは間違いない。 IC開設、小・中学校閉校は、最初にメガソーラー計画の話が出た後のことだが、いずれにしても、営農環境は厳しい状況になっている中、耕作せず(できず)に遊ばせている農地を借りてくれる(地代が得られる)のであればありがたいといった感じだったのだろう。 一方で、山林(森林)には、山地災害の防止、洪水の緩和、水資源の涵養といった機能があるが、大規模開発に伴い、土砂災害や水資源枯渇などの事態を招くのではないか、との理由から反対意見も聞かれた。 広範囲の説明会開催  その後、2018年1月に地元住民を対象とした説明会が開催された。事業者はその席に〝ビジネスパートナー〟を連れてきた。当時、説明会に参加した地元住民はこう話していた。 「事業者(相馬伊達太陽光発電所の担当者)は外国人の〝ビジネスパートナー〟を連れてきて、一緒に(メガソーラー事業を)やる、と。ちなみに、事業者はその〝ビジネスパートナー〟のことを『共同事業主』というフレーズを使って紹介していました」 その共同事業主はTOTAL(トタル)という会社。説明会当日、出席者に配られた資料によると、《TOTAL(トタル)社は、世界有数の多国籍エネルギー企業で、総従業員数9万8000人、世界130カ国で事業を展開している。子会社および関連会社を併せた規模は、いわゆる国際石油メジャーの中で世界第4位》と紹介されていた。 当時、本誌が調べたところ、同社はフランス・パリに本社があり、2016年の営業実績は、日本円で売上高約17兆9640億円、営業利益約1兆1468億円、当期純利益約9960億円となっていた。 実際に、相馬市玉野地区での事業に携わるのは、同社グループの日本支社のようで、同社グループでは石川県七尾市(27メガ㍗)、岩手県宮古市(25メガ㍗)などで太陽光発電事業を展開しており、ほかにも日本国内での事業展開を計画していた。 「説明会には、同社の担当者2人が出席し、1人はフランス人、もう1人は日本人でした。ただ、説明会では相馬伊達太陽光発電所とTOTALのどちらが開発行為を行うのか、具体的な運営はどういった形になるのか等々の詳細は明かされませんでした」(前出の地元住民) もっとも、この地元住民によると、「TOTALの関係者が来たのはその時だけだった」という。 「いつの間にか、同社との共同事業は頓挫したようです」(同) その後は、仙台市のクラスターゲートという会社が同計画に携わるようになり、行政手続きや周辺住民への根回しなどの矢面に立つようになった。 一方で、そのころになると、玉野地区の住民だけでなく、市街地などそのほかの地区の住民も、同計画に関心を寄せるようになった。計画地周辺は玉野川が流れ、宇田川と合流して市街地方面へと流れていく。つまり、下流域に住む人たちが不安を抱くようになったということだ。これは、令和元年東日本台風による被害も関係していよう。この水害で市内の1000戸以上が浸水被害を受け、上流で山林が伐採されると、同様の大雨などの際、さらに大きな被害になるのではないか、として同計画に関心を寄せるようになったのだ。 こうした事情もあり、2020年1月には、玉野地区だけでなく、ほかの地区の住民も交えた説明会が開催された。これを主催したのは「相馬市民の会」という住民団体で、同会はもともと、宇田川上流で産業廃棄物処分場の計画があり、それを阻止するために結成された住民団体。処分場計画は同会の反対運動によって白紙撤回されたが、宇田川上流では幾度となくそうした計画が浮上しており、またいつ同様の計画が持ち上がるか分からない、といった判断から存続しているようだ。 その説明会で、事業者側として対応に当たったのがクラスターゲートの担当者だった。 「説明会では、安全面に関する質問が相次ぎましたが、事業者からはまともな回答が得られなかった。そのため、『またこうした説明会の場を設けて、きちんと説明してほしい』ということになりました」(説明会に出席した地元住民) 2回目の広範囲説明会  ただその後、新型コロナウイルスの感染拡大により、なかなかそうした場を設ける機会がなかった。 ようやく、2回目の説明会が開催されたのは2021年7月15日だった。 その席で説明に当たったのは、クラスターゲートの担当者ではなく、「GSSGソーラージャパンホールディングス2」という会社の担当者だった。同社はアメリカ・コロラド州に拠点を置く太陽光発電事業者「GSSG Solar」の日本法人。 当日配布された資料によると、事業区域面積は約122㌶で、うち森林面積が約117㌶、開発行為にかかる森林面積が約82㌶、発電容量は約82メガ㍗、最大出力60メガ㍗、太陽光パネル設置枚数16万6964枚、開発行為の期間は2023年12月まで、となっている。事業区域は、1号から7号までの各ブロックに分かれており、主な部分は相馬福島道路と国道115号の交差地点の北側。太陽光パネルが設置されたエリアはフェンスで覆い、その外側の周囲30㍍は残置森林とするほか、各ブロックに調節池(調整池)を設置するという。この内容で行政手続きを進めていることも明かされた。 こうした説明の後、質疑応答の時間が設けられたのだが、住民側からは「2019年の台風では設計基準とされている雨量を超えたが、この計画で本当に大丈夫なのか」、「土砂災害などが起きた場合、事業者はどこまで補償できるのか」、「事業終了後、ソーラーパネルは撤去するとしても、切り開かれた山林の保水力が戻るわけではないので、調整池は残さなければならないと思うが、誰が維持・管理するのか」等々、やはり安全面に関する質問が相次いだ。 これに対し、事業者からは「問題のないように事業を進める」、「保険に入り、災害の際はそれで対応する」といった回答があったが、それで住民側の理解が得られたとは到底思えない。 一方で、こんな指摘もあった。 「最初にこの計画を立ち上げ、近隣住民にあいさつ・説明をして回っていたのは、土地所有者の麦島氏だった。その後、TOTALという会社が共同事業主として参加することになった。そうかと思ったら、今度はクラスターゲートという会社が入ってきて、前回の説明会は同社の担当者が受け答えをしていた。今日の説明会も、クラスターゲートの担当者が来るものだと思っていたが、また別の会社(GSSGソーラージャパン)が来た。これから開発行為が行われ、何十年と発電事業が続く中、こんなにコロコロ事業者が変わるようでは、とてもじゃないが信用できない」 この指摘に対するGSSG担当者の回答を整理すると、以下のようなものだった。 ○クラスターゲートは、GSSGの事業パートナーで、当初、GSSGには行政手続きや設計・開発などを自社で手がけるだけの体制が整っていなかったため、クラスターゲートに委託していた。 ○ただ、この間、国内他所で実績を積み重ねる中、そうした体制が整ってきたので、GSSG主体で事業を進めることになった。クラスターゲートには後方支援をしてもらう。 前段で本誌2017年4月号記事の一部を引用し、その中で直接的な事業者となる合同会社「相馬伊達太陽光発電所」の詳細について紹介した。説明会後、あらためて同社の商業登記簿を確認したところ、資本金や事業目的などに変化はなかったが、役員については大幅に変更があった。 当初は、同社を立ち上げた麦島氏が代表社員、麦島氏のサポート役だった櫻井修氏が業務執行社員の役員2人体制だったが、両氏とも2018年12月28日付で「退社」となった。その代わりに同日付で、クラスターゲート職務執行者の大堀稔氏が代表社員となった。ただ、その大堀氏(クラスターゲート)も、2019年3月5日付で「退任」となり、同日付でGSSGソーラージャパンホールディングス2職務執行者のブルス・ダリントン氏が代表社員となり、同年8月14日付でGSSGソーラージャパンホールディングス2職務執行者のエドワーズ・ヤノ・ケヴィン・ギャレス氏に代表社員が変更となった。同日付で本店所在地も東京都千代田区から港区に移転となっている。 GSSG担当者の説明と、相馬伊達太陽光発電所の商業登記簿を確認した限りでは、事業地の大部分の地権者であり、同計画を立案して国に固定価格買取制度の申請をしたのは麦島氏だが、GSSGに事業譲渡・事業地貸与した格好のようだ。事業主体はGSSGで、実際の運営は相馬伊達太陽光発電所が行い、林地開発許可申請も同社が行った。 なお、説明会には事業地の地元地権者も参加しており、「玉野地区の振興のことも考えてほしい」旨の発言をし、安全面の不安を訴える住民と、ちょっとした言い合いになる場面もあった。メガソーラーが地区の振興につながるかどうかはともかく、そうして険悪な雰囲気になった中、同説明会を主催した相馬市民の会の〝長老〟的立場の人が「市民同士がいがみ合うのは、この説明会の意図するところではない」とたしなめた。同計画はそうした構図を生んでしまったという側面もある。 いずれにしても、同説明会は住民側が納得する形では終わらず、その場で回答できなかったことは後に文書で相馬市民の会に回答すること、再度そうした説明会の場を設けることなどを約束して終了となった。 住民団体が申入書提出  その4日後の7月19日、住民団体「相馬市民有志の会」(※説明会を主催した「相馬市民の会」とは別団体)が県に対して、「同事業には安全面で問題があるため、林地開発許可を行わないよう求める」とする申入書を提出した。 同会の代表者は、原発事故の国・東電の責任を問う集団訴訟「生業訴訟」の原告団長でもある中島孝さん。 中島さんに話を聞いた。 「2019年の台風では、同計画の設計基準とされている雨量を超えたほか、事業終了後の調整池の問題もあります。というのは、最初の説明会のとき、事業者は発電期間は20年間で、その後、メンテナンスを行い、さらに20年間、最大40年間を見込んでいるとのことでしたが、事業期間が終わり、パネルを撤退した時点では、山は丸裸のまんまです。一度剥いてしまった山林が保水力を取り戻すには数十年、場合によっては100年かかると言われており、事業終了後も調整池は残さなければならない。事業期間中は定期的にえん堤の修繕・堆積土浚渫などを行うそうだが、事業終了後は誰がそれをやるのか。国の制度では、2022年度から事業期間中に売電収入から外部積み立てし、それを撤去費用に充てることになっていますが、調整池の保全管理費分も含むかどうかは不透明です。そういった面で、とにかく問題点が多過ぎる。将来的に、負の遺産になるかもしれないものは、地元住民として到底容認できないというのが申入書の趣旨です」 ただ、実はそうした申入書提出の前、ちょうど説明会が開催された7月15日に林地開発許可が下りたのだという。 中島さんら関係者は「県は同日に説明会が開催されることを認識していた。にもかかわらず、その結果を見ずに、それと同じ日に許可を出すのは何か裏があるのではないか」と疑いの目を向けているようだ。 熱海土砂災害との関係  一方で、申入書には「静岡県熱海市の豪雨による土砂崩落の土地所有者は、合同会社・相馬伊達太陽光発電所の創立者であり、玉野のメガソーラーを計画した麦島善光氏である」といった記述もある。 7月3日、静岡県熱海市で豪雨による大規模な土砂災害が発生した。その崩落現場の土地の所有者が相馬伊達太陽光発電所の創立者であり、玉野のメガソーラーを計画した麦島氏なのだという。 前段で本誌2017年4月号記事の一部を引用したが、その中に「(相馬伊達太陽光発電所の)代表社員である麦島氏の住所は静岡県熱海市になっている。これは前述・ZENホールディングスの研修センターと同じ住所」との記述がある。 まさに、その場所が崩落現場周辺ということになる。 『週刊新潮』(7月29日号)の特集「『殺人盛り土』2人のワル」という記事によると―― ○土砂災害の原因は、逢初川上流の盛り土であることが徐々に分かってきたこと。 ○急な斜面に産廃を含む土砂が遺棄され、今回の豪雨で一気に崩落したこと。 ○そこからすると、天災ではなく人災の疑いが濃厚であること。 ○その所有者が麦島氏であること。 ○麦島氏は過去に脱税で逮捕され、懲役2年の実刑判決を受けたこと。 ――等々が伝えられている。 現時点では崩落原因とされる盛り土に違法性があったかどうかを断定するところまでは至っていないが、ほかにもネットメディアなどで、麦島氏の責任を問う記事が出ている。 相馬市民有志の会では、前述した安全面の問題に加え、「そうした問題人物の手掛ける事業に行政として、開発許可を出すのが妥当なのか」といった意味で、申入書を提出したのだという。 「県にはできる範囲で構わないので、回答してほしいと伝えてきましたが、(本誌取材時の7月26日時点で)まだ回答は来ていません」(中島さん) あらためて、県森林保全課に確認したところ、まず、県としては手続き上、要件を満たしていれば開発許可を出すことになる、といったスタンス。では、その「要件」の中に、「地元住民の理解」は含まれるのかということだが、その点については次のような説明だった。 「地権者の同意は必要ですが、それ以外の地元住民の同意までは求めていません。ただ、絶対条件ではないものの、事業者には地元住民にきちんと説明するように、ということは伝えています」 一方で、静岡県熱海市の土砂災害との関係についてだが、県森林保全課では、熱海市の土地所有者と、玉野地区のメガソーラー計画の事業地所有者が同一人物であることは認識していた。 そこで、記者が「すでに開発許可は出ているそうだが、そういう人(問題人物と思しき人)が関わっているということで、開発許可を再考するということにはならないのか」と尋ねると、こう明かした。 「許可申請者は別(GSSGの傘下のようになった相馬伊達太陽光発電所)ですし、(熱海市の件と同一人物が)所有者に名を連ねているのは承知していますが、それだけ、と言ったら何ですが……。そういうこと(開発許可を再考すること)にはならないと思います」 確かに、事業主体は麦島氏から事業譲渡を受けた格好のGSSGだが、麦島氏が計画地のかなりの部分の土地を所有しているのは事実。同事業に関して、麦島氏がどの程度関わり、どれだけの権利・権限を残しているのかは不明だが、こうした構図を見ると、地元住民が不安に思うのは当然だろう。 あわせて読みたい 相馬玉野メガソーラー計画への懸念 相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定

  • 【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声(2021年3月号)

    【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声

    (2021年3月号)  本誌2018年2月号に「二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上」という記事を掲載した。二本松市岩代地区で民間事業者によるメガソーラー計画が浮上しており、その詳細をリポートしたもの。その後、同事業ではすでに工事が始まっているが、かなりの大規模開発になるため、地元住民からは「大雨が降ったら大丈夫か」と心配する声が出ている。 令和元年東日本台風を経て地元民感情に変化  2018年当時、地元住民に話を聞いたところ、「この一帯でメガソーラーをやりたいということで、事業者がこの辺りの地権者を回っている」とのことだった。 さらにある地権者によると、計画地は二本松市岩代地区の上長折字加藤木地内の山林・農地で、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。用地交渉に来ているのは栃木県の会社で、同社から「買収を想定しているのは約150㌶」「送電鉄塔が近くにあるため、メガソーラー用地として適しており、ぜひここでやりたいから協力(用地売却)してほしい」と説明・協力要請されたのだという。 この地権者は当時の本誌取材に次のように述べていた。 「計画地の大部分は山林や農地で、私の所有地は農地ですが、いまは耕作していません。その近隣も遊休農地が少なくないため、売ってもいいという人は多いのではないかと思います。おおよそですが、地権者は20〜30人くらいになると思われ、そのうちの何人かに聞いてみたのですが、多くは売ってもいいと考えているほか、すでに土地を売った人もいます。ただ、最初に事業者が私のところに来たのは、確かいま(記事掲載時の2018年)から2年ほど前だったと思いますが、その後も近隣の地権者を回っている様子はうかがえるものの、進展が見られません」 そこで、事業者に電話で問い合わせたところ、次のように明かした。 「当社は企画を担当しており、現在は地元地権者に協力を求めている状況ですが、実際の発電事業者は別な会社になるため、そちらにも相談してみないとお答えできないこともあります」 ただ、少なくとも「計画自体が進行中なのは間違いありません」とのことだった。 そのほか、同社への取材で、その時点で用地の約8割がまとまっていること、地権者との交渉と並行して周辺の測量などを進めていること、環境影響評価などの開発行為に関する手続きの準備・協議を管轄行政と進めていること――等々が明らかになった。 なお、同社は「近く、発電事業者との打ち合わせがあるので、取材の問い合わせがあったことは伝えておきます。そのうえで、あらためてお伝えできることがあればお伝えします」とも述べていたが、その後、同社から前述したこと以外の説明はなかった。 それから3年ほどが経った2021年1月、当時本誌にコメントしていた地権者から、こんな情報が寄せられた。 「同計画では、すでに工事が始まっていますが、予定地の山林が丸裸にされており、大雨が降ったら大丈夫なのかと不安になってきました。最初は、私も(同計画に対して)『どうせ、使っていない(耕作していない)土地だし、まあいいだろう』と思って、用地買収に応じましたが、それはあの災害の前でしたし、実際に山林が剥かれた現場を見ると、やっぱり大丈夫なのかなとの思いは拭えません」 コロナで説明の場もナシ まだ手付かずの事業用地もあり、開発面積はかなりの規模になる。  この地権者が言う「あの災害」とは、令和元年東日本台風を指している。この災害で同市では2人の死者が出たほか、住宅、農地、道路など、さまざまな部分で大きな被害を受けた。とりわけ、同市東和地区、岩代地区での被害が大きかったという。 そうした大きな災害があった後だけに、当初こそメガソーラー計画に賛意を示したものの、「これだけの大規模開発が行われ、山林が丸裸になった現場を見ると、大丈夫なのかとの思いを抱かずにはいられない」というのだ。加えて、同地区では、令和元年東日本台風の数年前にも大きな水害に見舞われたことがあり、「何年かに一度はそういったことがあり、特に近年は自然災害が増えているから余計に不安になります」(前出の地権者)という。 開発対象の森林面積は全体で約38㌶に上り、そのうち実際に開発が行われるのは約18㌶というから、かなりの大規模開発であることがうかがえる。 「当然、事業者もその辺(水害対策)は考えているだろうと思いますし、環境影響評価や開発許可などの手続きも踏んでいます。何らかの違反・違法行為をしているわけではありませんから、表立って『抗議』や『非難』をできる状況ではないと思いますが、やっぱり心配です」(同) この地権者に、そういった不安を抱かせた背景には、「新型コロナウイルスの影響」も関係している。 その理由はこうだ。 「以前は何か動きがあると、事業者から詳細説明がありました。ただ、新型コロナウイルスの問題が浮上してからは、そういうことがなくなりました。一応、経過説明などの文書が回ってくることはありますが、それだけではよく分からないこともありますし、疑問に思ったことがあっても、なかなか質問しにくい状況になっています。だから、余計に心配なのです」(同) 以前は、関係者を集めて説明する、あるいは地権者・近隣住民宅を訪問して説明する、といったことがあったようだが、コロナ禍でそうしたことが省略されているというのだ。一応、事業者から経過説明などの文書が届くことはあるようだが、それだけではよく分からないこともあるほか、疑問に思ったことを質問することもできない、と。 その結果、これだけの大規模開発を行い、山を丸裸にして治水対策などは本当に大丈夫なのか、といった不安を募らせることになったわけ。 用地買収に当たった事業者と、実際の発電事業者が別なこともあり、事業者の正確な動きはつかめていないが、いずれにしても、地元住民の不安が解消されるような対策・説明が求められる。 あわせて読みたい 二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上

  • 大玉村「メガソーラー望まない」 宣言の真意(2019年8月号)

    大玉村「メガソーラー望まない」 宣言の真意

    (2019年8月号)  原発事故の被災地である福島県では、再生可能エネルギー推進の意識が高まっている。実際、県内ではさまざまな再生可能エネルギーの導入が進んでいるが、その中心的な存在は太陽光発電だろう。震災・原発事故以降、各地で太陽光発電設備(メガソーラー)を見かけるようになった。そんな中、大玉村では「村内にはもうメガソーラーをつくらないでほしい」とする宣言を出した。その真意とは。 心配される景観悪化や発電終了後の放置 田園風景が広がる大玉村  村は、6月議会に「大規模太陽光発電所と大玉村の自然環境保全との調和に関する宣言」の案を提出、同月18日に開かれた本会議で全会一致で可決された。同日、村は「宣言」文を村のHPで公開した。以下はその全文。   ×  ×  ×  × 大規模太陽光発電所と大玉村の自然環境保全との調和に関する宣言 私たちは、化石燃料や原子力発電に依存しない社会を目指すため、太陽光、小水力、バイオマス等再生可能エネルギーを積極的に活用し、地球温暖化防止や低炭素社会の実現に向けて自然環境へ与える負荷の軽減に取り組んで来ました。 本村においては、再生可能エネルギー利用推進の村として自然環境に大きな負荷をかけない住宅屋上への太陽光発電施設や薪ストーブへの助成、豊かな水資源を活用した小水力発電民間事業者への支援等を今後も積極的に行ってまいります。 しかし一方で、自然環境に影響を与え、かつ、自然景観に著しく違和感を与えるような大規模太陽光発電所の設置が各地で行われており、傾斜地での造成や山林の大規模伐採による土砂災害への危惧や発電事業終了後の廃棄物処理等、将来への負の遺産となりうる懸念を払拭することが出来ません。 本村においては、村勢振興の重要資源である豊かな自然環境や優れた農山村の景観を未来に継承するため、「大玉村ふるさと景観保護条例」を制定しております。 また、「日本で最も美しい村」連合に加盟し「自然との共生」を目指し、農山村や田畑の原風景の維持及び魅力発信に努めて来ました。 以上の現状を踏まえて、みどり豊かな自然環境、優れた景観を保護保全するとの、本村の基本理念と著しく調和を欠くと思われる大規模太陽光発電施設の設置を望まないことをここに宣言します。 令和元年6月     大玉村長 押山利一  ×  ×  ×  × https://www.vill.otama.fukushima.jp/file/contents/1841/17082/tyouwa_sengen.pdf  村に確認したところ、同宣言の真意は次のように集約される。 ○再生可能エネルギーの推進は今後も行っていく。 ○ただ、宣言にあった理由などから、できるならメガソーラーはもうつくってほしくない。 ○もし、つくるのであれば、最後まで責任を持ってほしい。 ○今後は、建設制限などの条例化も検討していく。 現在、村内には出力約1000㌔㍗以上のメガソーラーが4カ所あるほか、新たな建設計画もあるという。今回の宣言により、現在ある建設計画がすぐに進められなくなるわけではないようだが、「できるなら、もうつくってほしくない」と。 中でもポイントになるのは、景観への配慮と、発電(耐用年数)後のソーラーパネルの処分について、ということになろう。 大玉村と言えば、田園風景が魅力の1つ。その中に、突如、ソーラーパネル群が現れたら、確かに見栄えのいいものではない。 もう1つは、ソーラーパネルの耐用年数を超えた後、更新、あるいはきちんと撤去されるのか、といった問題があること。 ソーラーパネルには鉛やセレンなどの有害物質が含まれていることもあり、発電終了後、放置・不法投棄されるようなことがあれば、景観的にも環境的にもよくない。 資源エネルギー庁の「平成29年度新エネルギー等の導入促進のための基礎調査(太陽光発電に係る保守点検の普及動向等に関する調査)」によると、「将来的な廃棄を想定して、廃棄・リサイクル費用を確保しているか」という調査で、低圧(10〜50㌔㍗)の発電事業者の74%、高圧・特別高圧(50㌔㍗以上)の発電事業者の59%が「積立していない」と回答したという。 倒産相次ぐ関連事業者  さらに、民間信用調査会社の東京商工リサーチの調査で、近年、太陽光関連事業者の倒産が相次いでいることが明らかになっている。2012(平成24)年7月に「固定価格買い取り制度(FIT)」が導入されたことで、新規参入が相次いだが、競合激化や安易な参入が原因という。 ここ10年の太陽光関連事業者の倒産件数は次の通り。なお、ここで言う「太陽光関連事業者」は、発電・売電事業者だけでなく、ソーラーパネルの製造・販売や、同事業のコンサルティング業なども含む。 2009年 26件 2010年 9件 2011年 18件 2012年 27件 2013年 28件 2014年 28件 2015年 54件 2016年 65件 2017年 87件 2018年 84件 2019年 32件(1月〜6月) こうして見ても分かるように、近年は関連事業者の倒産が大幅に増えている。 こうした点から、ソーラーパネルの耐用年数を超えた後、更新、あるいはきちんと撤去されるのか、といった不安があるのだ。 大玉村によると、「メガソーラーは固定資産税などの面で村にとってメリットもある」としながら、以上のような課題があるため、「できるなら、つくってほしくない。ただ、どうしてもというのであれば、最後まで責任を持ってほしい」というのが「宣言」の真意である。 県では2040年ごろまでに「再生可能エネルギー100%」というビジョンを掲げており、大玉村でも「再生可能エネルギーの推進は今後も行っていく」という方針には変わりはないという。そのためには、メガソーラー以外の再生可能エネルギーの推進、これまで以上の家庭用太陽光発電の導入促進といった取り組みが求められよう。

  • 二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上(2018年2月号)

    二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上

    (2018年2月号)  二本松市岩代地区で、民間事業者による大規模太陽光発電(メガソーラー)計画が浮上している。ある地元地権者によると、「事業者から最初に用地交渉の話があったのは2年ほど前」とのことだが、その後、計画は進展している様子が見受けられないという。 進展の遅さにヤキモキする地権者  本誌2017年12月号に「増え続ける『太陽光発電』の倒産 それでも絶えない設置計画」という記事を掲載した。原発事故以降、再生可能エネルギーの必要性が叫ばれ、その中心的な存在となっていた太陽光発電だが、東京商工リサーチのリポートによると、近年は太陽光発電関連事業者の倒産が相次いでいるのだという。そこで、あらためて同事業の状況を見た中で、同事業は成長産業と見込まれていたが、新規参入が相次いだこともあり、倒産事例も増えていることなどをリポートしたもの。 ただ、そんな中でも、本誌には県内での太陽光発電の計画話がいくつか伝わっており、同記事では二本松市岩代地区の住民のこんな声を紹介した。 「この地域(二本松市岩代地区)で太陽光発電事業をやりたいということで、少し前から事業者が山(山林)や農地を持っている地権者のところを回っているようです。それも、その範囲はかなりの広範にわたっており、もし本当にできるとしたら、相当な規模の太陽光発電所になると思われます」 この時点ではそれ以上の詳しいことは分かっていなかったが、その後の取材で、少しずつ詳細が明らかになってきた。 ある地権者は次のように話す。 「ここで太陽光発電事業をやりたいということで、この辺(の山林や農地)の地権者を回っているのは、栃木県の『博栄商事』という会社です。その後、同社と一緒に『オーシャンズジャパン』という会社の名刺を持った人もあいさつに来ました。事業者の説明によると、『買収を想定しているのは150㌶ほど。送電鉄塔が近くにあるため、太陽光発電の用地として適しており、ぜひここでやりたいから、協力(土地売却)してもらえないか』とのことでした。ただ、事業者が最初に私のところに来たのは、確か2年ほど前だったと思いますが、その後も近隣の地権者を回っている様子はうかがえるものの、全くと言っていいほど進展している様子が見受けられません。私自身は協力してもいいと思っているのですが……」 計画地は、二本松市岩代地区の上長折字加藤木地内の山林・農地で、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。この地権者によると、事業者が用地として想定している面積は約150㌶とのことだから、かなりの規模であることがうかがえる。 「計画地の大部分は山林や農地です。私の所有地は農地だが、いまは耕作していません。その近隣も、遊休農地が少なくない。ですから、売ってもいいという人は多いと思います。実際、すでに土地を売った人もいるようです」(前出の地権者) なお、この地権者の話に出てきた博栄商事は、栃木県茂木町に本社を置く株式会社。1972(昭和47)年設立。資本金2000万円。同社のHPや商業登記簿謄本を見ると、不動産業が主業のようで、太陽光発電関連の事業実績は見当たらない。役員は代表取締役・細野正博、取締役・能代英樹の2氏。 もう一方のオーシャンズジャパンは、本社が東京都新宿区の合同会社。2015(平成27)年設立。資本金1万円。事業目的は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、太陽熱等の再生可能エネルギーによる発電事業及びその管理・運営・電気の供給・販売等に関する業務、発電設備の設置、保守管理業務など。役員は業務執行社員・坂尾純一氏。 こうして両社のHPや商業登記簿謄本などを見る限り、博栄商事は用地交渉役(仲介役)で、実際の発電事業者はオーシャンズジャパンと見るのが自然か。 前出の地権者によると、「すでに土地を売った人もいるようだ」とのことだから、すでに投資が発生している以上、事業者が〝本気〟なのは間違いなさそう。ただ、この地権者の話では、最初に相談があったのは2年ほど前で、以降も事業者が地権者宅を回っている様子はうかがえるものの、計画が進捗している様子は見えないというのだ。 「おおよそですが、地権者は20〜30人くらいになると思います。知り合いの地権者にも聞いてみたところ、多くの人が協力してもいいと考えているようで、すでに土地を売った人もいるようですが、逆にまだ全然そんな話(用地交渉)がないという人もいます。ただ、少なくとも、私は最初に相談があってから2年近くが経っています。それなのに話が進展しないので、一体どうなっているんだろう、と」(前出の地権者) 事業者が目星を付けたところは、多くが山林や遊休農地のため、地権者からしたら「買ってくれるならありがたい」ということなのだろうが、その後、話が進展している様子が見えないため、「本当にできるのか」といった思いを抱いていることがうかがえる。 「計画は進行中」と事業者  そこで、計画の進捗状況や事業概要などを聞くため、博栄商事に問い合わせてみたところ、同社担当者は「当社は企画を担当しており、実際の発電事業者は別な会社になるため、発電事業者に確認してみないことにはお答えできないこともあります」とのことだったが、「計画自体が進行中なのは間違いありません」と明かした。 そこで、本誌記者は「地元住民からは、『オーシャンズジャパン』という会社の名刺を持った人もあいさつに来ていたとの話も聞かれたが、いまの説明に出てきた『発電事業者』はオーシャンズジャパンのことか」と尋ねてみた。 すると、博栄商事の担当者は「当初はその予定で、もともとは同社から依頼があり、当社が企画を担当することになりました。ただその後、事情があって発電事業者は変わりました。新しい事業者は横浜市の会社で、二本松市に現地法人を立ち上げ、そこが太陽光発電所を運営することになります」と語った。 このほか、博栄商事の担当者への取材で明らかになったのは、①用地は8割ほどまとまっていること、②現在、境界周辺の測量を実施しているほか、環境影響評価などの開発行為に関する手続きの準備・協議を進めていること――等々。 そのうえで、同社担当者は「近く発電事業者と打ち合わせがあるので、問い合わせがあったことは伝えます。そこで発電事業者と相談のうえ、あらためてお伝えできることはお伝えします」と話した。 発電規模や発電開始時期の目標などは明らかにされなかったが、いずれにしても、計画が進行中なのは間違いないようだ。 ただ、前述したように、用地の大部分は山林・農地のため、開発の必要があり、そのためには各種手続きが必要になるから、近隣住民の目に見える形(工事など)で動きがあるまでにはもう少し時間がかかりそうな状況だ。おそらく、開発に当たっての環境影響評価方法書の縦覧などまで計画が進展しなければ、具体的なものは見えてこないのではないかと思われる。 近隣にも太陽光発電所が 二本松太陽光発電所(旧ゴルフ場)  ところで、一連の取材で同計画地周辺を歩いてみたところ、同所のほかにも太陽光発電所、あるいはそのための造成工事中のところがあることが目に付いた。 1つは、以前、本誌でも取り上げたサンフィールド二本松ゴルフ倶楽部岩代コース跡地。同ゴルフ場については、過去の本誌記事で次のようなことを伝えた。 ①同ゴルフ場は、東日本大震災を受け、クラブハウスやコースが被害を受けたほか、原発事故によりコース上で高い放射線量が計測されたため、一時閉鎖して施設修繕や除染を行ったうえで、営業再開を目指していた。 ②それと平行して、同ゴルフ場を運営するサンフィールドは、東京電力を相手取り放射性物質の除去などを求め、東京地裁に仮処分申し立てを行った。しかし、同申し立てが却下されたため、同社は2011年7月上旬ごろまでにホームページ上で「当面の休業」を発表した。なお、同仮処分申請の中で、東電が「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって東電には除染責任がない」との主張を展開し、県内外で大きな注目を集めた。 ③そんな中、同ゴルフ場では、「ゴルフ場をやめて大規模太陽光発電施設にするらしい」といったウワサが浮上した。ある関係者によると「大手ゼネコンが主体となり、京セラのシステムを使うそうだ」といったかなり具体的な話も出ていたが、「正式に打診があったわけではないらしく、結局、その話は立ち消えになった」(同)とのことだった。 ④その後、2012年秋ごろまでに、同ゴルフ場の駐車場に仮設住宅のような長屋風の建物がつくられ、除染作業員などの仮設宿舎になった。同ゴルフ場には立派なホテルも併設されているが、そこも作業員宿舎(食堂?)になった。ある地権者によると、「サンフィールドは『ビジネス上の付き合いから、除染事業者である大成建設に無償貸与している』と説明していた」とのことだった。そのため、少なくとも、この時点では、ゴルフ場再開の可能性は事実上なくなり、用地がどうなるのかが注目されていた。 ⑤2014年春になると、先のウワサとは別に、大規模太陽光発電施設にする目的で、ゴルフ場用地を買いたいという会社が現れた。その会社は、東京都港区に本社を置く日本再生可能エネルギーで、ある地権者は「同社の要請(土地売却)に応じた。私の知る限り、ほとんどが同様の意向だと思う」と話した。 過去の本誌記事でリポートしたのはここまでだが、その後も、この地権者(元地権者)からは「日本再生可能エネルギーで太陽光発電所に必要なだけの用地をまとめ、本格的に動き出した」といった話は聞かされていた。もっとも、この地権者(元地権者)自身が「土地を売ったことで、直接的には関係なくなったから、詳しいことは分からないけど……」とのことで、具体的な事業の進捗状況などは分かっていなかった。 今回、あらためて同所を訪ねてみると、「二本松太陽光発電所」という看板が立てられ、外から様子をうかがった限りでは、太陽光発電所として稼働しているように見受けられた。同所を取得した日本再生可能エネルギーのHPを見てみると、国内他所の太陽光発電所に関するリリースは出ているものの、二本松太陽光発電所についてのリリースは見当たらなかった。 そこで、同社に問い合わせてみたところ、①同発電所は2017年8月から稼働していること、②発電規模は29・5㍋㍗であること――が明らかになった。つまり、すでに発電・売電を行っている、と。 なお、同社は太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーを利用した発電・売電事業を手掛ける株式会社で、2013年5月10日設立。代表はアダム・バリーン氏。HPに掲載されたリリースを見る限り、国内各地で太陽光発電所を運営しており、県内では二本松市のほかに、国見町でも2016年2月から太陽光発電所を稼働している。 工事中の計画  一方、その近くでは別の太陽光発電所の工事が行われていた。工事案内板を見ると、場所は「初森字天狗塚69―1 外3筆」、目的は「太陽光発電所建設用地の造成」、林地開発について「許可を受けた者」は札幌市の「エム・エス・ケイ」と書かれていた。 同社について調べてみると、札幌市で「ホテル翔SAPPORO」を経営しており、ホテル経営が主業のようだ。ただ、同社の商業登記簿謄本を確認すると、事業目的は、以前は①ホテル及び旅館の運営管理、②不動産の売買及び賃貸、③古物商の経営などだったが、2016年8月に変更され、再生可能エネルギーによる発電事業及び発電設備の販売、施工工事請負が追加された。最近になり、同事業に参入したことがうかがえる。 同社に二本松市で太陽光発電事業をやることになった経緯などについて問い合わせたところ、一度、連絡はあったものの、質問に対する回答は本号締め切りには間に合わなかった。そのため、事業規模などは現時点では明らかになっていない。 ちなみに、冒頭紹介した計画は、前述した通り、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。そこから直線距離で1㌔ほど南にいったところに二本松太陽光発電所(ゴルフ場跡地)があり、さらに直線距離で南に1㌔ほどの辺りに現在工事中のエム・エス・ケイの事業地がある。 こうして見ると、同地区周辺は民間の、それも県外事業者による太陽光発電施設、あるいはその計画が多いことが分かる。 ある地元住民は「震災・原発事故を経て、結果的にそうなりましたね。課題はソーラー発電システムの耐用年数を超えた時にどうなるのかということでしょうけど、そこさえしっかりしてもらえれば、地域としてこういうものを推奨していくのもいいのではないか」と語った。 あわせて読みたい 【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声

  • 遅すぎた福島市メガソーラー抑制宣言

     福島市西部の住民から「先達山の周辺がメガソーラー開発のためにハゲ山と化した。景色が一変してしまった」という嘆きの声が聞かれている。市は山地でのメガソーラー開発抑制に動き出したが、すでに進められている計画を止めることはできず、遅きに失した感が否めない。  福島市は周囲を山に囲まれた盆地にあり、市西部には複数の山々からなる吾妻山(吾妻連峰)が広がる。その一角の先達山で、大規模メガソーラーの開発工事が進められている。  正式名称は「高湯温泉太陽光発電所」。事業者は外資系のAC7合同会社(東京都)。区域面積345㌶、発電出力40メ  ガ㍗。県の環境評価を経て、2021年11月22日に着工、今年3月27日に対象事業工事着手届が提出された。  今年に入ってから周辺の山林伐採が本格化。雪が解け始めた今年の春先には、山肌があらわになった状態となっていた。その様子は市街地からも肉眼で確認できる。  吾妻山を定点観測している年配男性は「この間森林伐採が進む様子に心を痛めていた。あんなところに太陽光パネルを設置されたら、たまったもんじゃない」と語る。  福島市環境課にも同じような市民からの問い合わせが多く寄せられた。そのため、市は8月31日の定例記者会見で、山地へのメガソーラー発電施設の設置をこれ以上望まない方針を示す「ノーモア メガソーラー宣言」を発表した。  木幡浩市長は会見で、景観悪化に加え、法面崩落や豪雨による土砂流出のリスクがあることを指摘。市では事業者に対し法令順守、地域住民等との調和を求める独自のガイドラインを設けていたが、法に基づいて進められた事業を覆すことはできない。そのため、市としての意思を示し、事業者に入口の段階であきらめてもらう狙いがある。条例で規制するより効果が大きいと判断したという。もし設置計画が出てきた際には、市民と連携し、実現しないよう強く働きかけていく。  もっとも、県から林地開発許可を得るなど、必要な手続きを経て進行している建設を止めることは難しいため、現在進行中のメガソーラーの開発中止は求めない方針だ。すなわち、先達山での開発はそのまま続けられることになる。  先達山の開発予定地のすぐ西側には別荘地・高湯平がある。2019年には計画の中止を求め、住民ら約1400人による署名が提出されるなどの反対運動が展開されていた。ただ、結局手続きが粛々と進められ、工事はスタート。今年の春先に高湯平の住民を訪ねた際は「結局押し切られてしまった。こうなったらもう止められないでしょ」とあきらめムードが漂っていたが、時間差で反対ムードに火が付いた。  前出の年配男性は「建設許可を取る際、こういう景観になると予想図を示したはず。自然破壊を予測できなかったとしたら怠慢であり、行政の責任を問うべき」と訴える。こうした意見に対し、県や福島市の担当者は「法に基づき進められた計画を覆すのは正直難しい」と答えた。  福島市以外でも、メガソーラー用地として山林伐採が進み、見慣れた山々の風景が一変してギョッとすることが多い。景観・自然を破壊しないように開発計画を抑制しながら、再生可能エネルギー普及も進めていかなければならない。各市町村には難しい舵取りが求められている。 森林が伐採された先達山

  • トラブル相次ぐ【磐梯猪苗代メガソーラー】

     磐梯町と猪苗代町にまたがる林地で建設が進められている太陽光発電施設(メガソーラー)で、施工業者間による工事代金未払いトラブルが起きている。被害を訴える業者は損害賠償を求めて提訴する準備を進めているが、この業者によると、そもそも建設地は地層や土質の調査が不十分にもかかわらず県が林地開発許可を出したという。建設地でどのような調査が行われ、県の許可に問題はなかったのか検証する。 専門業者が県の林地開発許可を疑問視  JR磐越西線翁島駅から南西に約2㌔、線路と磐越自動車道に挟まれた広大な林地で今、メガソーラーの建設が進められている。  敷地は磐梯町と一部猪苗代町にまたがっており、面積約34・7㌶。記者は8月上旬に一度建設地を訪れたが、起伏のある土地に沿って無数のパネルが並び、遠くではこれからパネルが張られようとしている場所で重機が動いているのが確認できた。  不動産登記簿によると、一帯は主に都内の再エネ会社と奈良市在住の個人が所有しており、都内の再エネコンサル会社と投資会社が権利者として名前を連ねている。  開示された県の公文書によると、メガソーラーの正式名称は磐梯猪苗代太陽光発電所(設備容量28・0㍋㍗)、事業者は合同会社NRE―41インベストメント(東京都港区、以下、NRE―41と略。代表社員=日本再生可能エネルギー㈱、職務執行者=ニティン・アプテ氏)。同社は建設地に2019年12月から35年間の地上権を設定し、土地所有者の再エネ会社を債務者とする10億円の抵当権を設定している。  調べると、NRE―41と代表社員の日本再生可能エネルギーは同じ住所。さらにその住所には日本再生可能エネルギーの親会社であるヴィーナ・エナジー・ジャパン㈱が本社を構えている。  ヴィーナ・エナジーはアジア太平洋地域最大級の独立系再生可能エネルギー発電事業者で、シンガポールに本社、各国に現地法人を置く。日本では2013年から事業を開始し、日本法人のヴィーナ・エナジー・ジャパン(以下、ヴィーナ社と略)は国内29カ所でメガソーラーを稼働する。県内には国見町(運転開始16年2月、設備容量13・0㍋㍗)、二本松市(同17年8月、同29・5㍋㍗)、小野町(同20年8月、35・0㍋㍗)に施設がある。  ヴィーナ社にとって磐梯猪苗代太陽光発電所は県内4カ所目の施設となるが、実は前記3カ所もNRE―03インベストメント、同06、同39という合同会社がそれぞれ事業者になっている。合同会社は新会社法に基づく会社形態で、設立時の手間やコストを省ける一方、代表社員は出資額以上のリスクを負わされず(ちなみにNRE―41の資本金は10万円)、投資家と事業者で共同事業を行う際、定款で定めれば出資比率に関係なく平等の立場で利益を配分できるといった特徴がある。  そのため合同会社は、外資が手掛けるメガソーラーの事業者として登場する頻度が高い。ヴィーナ社にとっては、発電を終え利益を確定させたら撤退し、リスクが生じたら責任を負わせて切り捨てる、という使い勝手の良さが透けて見える。  そんな建設地で今、施工業者間によるトラブルが起きている。  「私は下請けとして2019年11月から現場に入ったが、元請けが適正な工事代金を払わず、再三抗議しても応じないため、やむなく現場から手を引いた」  こう話すのは、小川工業㈱(郡山市)の小川正克社長だ。  同社はヴィーナ社の元請けである㈱小又建設(青森県七戸町)から造成工事などを受注したが、地中から大量の転石が発生し、その処理に多大な労力を要した。当然、工事代金は当初予定よりかさんだが「小又建設はいくら言っても石にかかった工事代金を払わなかった」(同)。未払い金は5億円に上るという。 巨大な転石を測量する作業員(小川社長提供)  「こちらで転石の数量をきちんと把握し、一覧にして請求しても払ってくれないので青森の本社に行って小又進会長に直談判した。しかし、小又会長は『そんなに石が出るはずがない』と言うばかりで」(同)  小川社長は仕事を任せた作業員に迷惑をかけられないと、立て替え払いをしながら「石の工事代金を払ってほしい」と求め続けたという。  「小又建設の現場監督に『工事を止めないでほしい』と言われ、支払いがあると信じて工事を続けたが、状況は変わらなかった」(同)  このままでは会社が持ちこたえられないと判断した小川社長は2021年1月に現場から撤退。現在、小又建設を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こす準備を進めている。  これに対し、小又進会長は本誌の電話取材にこう反論する。  「石に関する工事代金は数回に分けて払い全額支払い済みだ。手元には小川工業からの請求書もあるし支払調書もある。うちは建設業法違反になるようなことはやらない」  小川社長と小又会長は自身の言い分を詳細に話してくれたが、もし裁判になった場合、記事中のコメントが訴訟の行方に影響を与える恐れもあるので、これ以上詳報するのは控えたい。ただ、これとは別に小川社長が問題提起するのが、NRE―41が県に行った林地開発許可申請だ。  NRE―41は2019年7月に県会津農林事務所に林地開発許可申請書を提出。同年8月に森林法の規定に基づき、県から林地開発を許可された。その申請に当たり同社は建設地でボーリング調査を行い、県に調査結果を提出しているが、小川社長は「書類が不備だらけ」と指摘するのだ。 不備だらけの書類 工事が続く磐梯猪苗代太陽光発電所(8月中旬撮影)  「NRE―41は建設地の3カ所でボーリング調査を行っているが、その結果が書かれた3枚のボーリング柱状図を見ると2枚は調査個所を示す北緯と東経が空欄になっていた。同社が提出したボーリング調査位置図には三つの赤い点で調査個所が示されているが、北緯と東経が不明では本当に赤い点の個所で調査が行われたのか疑わしい」(同)  記者も3枚のボーリング柱状図を見たが、そのうちの2枚は確かに北緯と東経が空欄になっていた。  「不可解なのは、ボーリング柱状図は3枚あるのに、コア(ボーリング調査で採取された石や土が棒状になった試料。これにより現場の地層や土質が把握できる)の写真は2枚しかないことです。また、調査の様子や看板の写真も1枚もない。こんな不備だらけの書類を、県はなぜ受理したのか不思議でならない」(同)  この3カ所以外に、NRE―41は別の3カ所でもボーリング調査を行っているが、そちらはボーリング柱状図に空欄はなく、コアの写真も3枚あり、調査の様子や看板の写真も一式揃っていた。  「そもそも34・7㌶もの林地を開発するのに、ボーリング調査をたった6カ所でしか行っていないのは少なすぎる。しかも6カ所は建設地の中央ではなく、すべて外側や境界線あたり。これで一帯の正確な地層や土質が把握できるのか」(同)  ならば、建設地中央の地層や土質はどうやって調査したのか。  「NRE―41は簡易動的コーン貫入試験で土質調査を済ませていた。調査位置図や調査結果書を見ると、建設地の主要18カ所で同試験が行われていた」  しかし、ボーリング調査が深度10~15㍍の地層まで把握できるのに対し、コーン貫入試験は3㍍未満の地層しか把握できず、正確な地層や土質を調べることはできない。  小川社長は「だから、造成工事をしたら大量に石が出てきたんだと思う」と指摘する。  「きちんとボーリング調査をしていれば一帯が石だらけなのは分かったはず。それをコーン貫入試験で済ませたから、表層は把握できても深層までは把握できなかった。ただ地元の人なら、昔起きた磐梯山の噴火で一帯に大量の石が埋まっていることは想像できる。ヴィーナ社は外資で、小又建設は青森だから分からなかったんだと思う」(同) 「私なら受理しない」  本誌はあるボーリング調査会社社長にNRE―41の書類一式を見てもらったが、開口一番発したのは「本当にこれで県は受理したんですか」という疑問だった。  「まずコアの写真がないのはおかしい。普通はコアの写真があってボーリング柱状図が作成され、調査の様子や看板の写真などと一緒に県に提出するからです。コアは役人が立ち会い、実物を確認したりもする大事なものなので、その写真がないのは明らかにおかしい」(同)  こうした調査結果に基づいて設計図がつくられ、造成工事はその設計図に沿って行われるため「調査が不正確だと設計図も誤ったものになり造成工事は成り立たなくなる」(同)という。  「そもそも最初のボーリング調査がたった3カ所というのは少なすぎる。普通は建設地の対角線上に一定の距離を置きながらボーリング調査をしていく。その調査個所をつないでいけば一帯の地層や土質が見えてくるし、さらに詳細に調べるなら物理探査を行って地中の様子を面的に見たりもする」(同)  調査会社社長は、今回のように広大な建設地を造成する場合はどれだけの強さの土がどれくらいあるか知っておくべきとして「地質断面図があればなおいい」と指摘したが、書類一式を見てもそれはなかった。  「建設地の中央をコーン貫入試験で済ませていては一帯の地層や土質を把握するのは無理。同試験では表土は分かっても地層は分からない。コーンを貫入して礫や転石に当たったら、それ以上は貫入不可能だからです。だいいち同試験は表層滑りのリスクがあるかどうかを調べるために行うので、NRE―41が行った同試験にどんな意味があるのか分からない。正直、こういう調査でよく設計図が書けたなと思う」(同)  その上で調査会社社長は「自分が県職員だったら、コーン貫入試験ではボーリング調査の〝代役〟にはならず、一帯の地層や土質は把握できないのでボーリング調査をやり直すよう命じる。もちろん申請書は受理しない」と断言する。  「理由は災害のリスクがあるからです。一帯の地層や土質が分からずに開発し、結果、災害が起きたら周囲に深刻な被害をもたらす恐れがある。だから、災害が起こらないようにボーリング調査を行い、調査結果に基づいて設計図をつくるのです。ボーリング調査も設計図も不正確では安全性を担保できない。もし災害が起きたら開発業者に責任があるのは言うまでもないが、私は許可を出した県の責任も問われてしかるべきだと思う」(同)  専門業者も疑問視する中、県はなぜ許可を出したのか。申請書を受理した会津農林事務所森林林業部の眞壁晴美副部長は次のように話す。  「森林法第10条には『知事は林地開発の申請があった時、災害や水害を発生させる恐れがないこと、水の確保や環境の保全に心配がないことが認められれば許可しなければならない』とある。これに基づき、NRE―41の申請は要件を満たしていたため許可を出した」  ボーリング調査も全体的に行う必要はないという。  「計画では敷地内に防災調節池を8カ所つくることになっており、そのうち6カ所は掘り込み式の調節池だが、残り2カ所は築堤する設計で基礎地盤を把握しなければならないため、NRE―41は一つの調節池につき3カ所、計6カ所のボーリング調査を行った。コーン貫入試験は太陽光パネルの足場を組むため現場の土質を調べたもので、許可申請とは何の関係もない」(同)  前出・小川社長が指摘する「書類の不備」(ボーリング柱状図に北緯と東経が載っていない、コアの写真がない、調査の様子や看板の写真一式がない)については、  「NRE―41が調査を依頼した調査会社に県が聞き取りを行い、事情を把握するとともに、欠けていた書類をあとから提出してもらった。北緯と東経が空欄になっているなどの不備があったのは、調査途中でも新しく分かったことがあれば記入してどんどん提出してほしいと県が要請したので、その時に未記入の書類が提出され、それが開示請求によって公開されたのではないか。県の手元には北緯と東経が書かれたボーリング柱状図がある」  県が調査未了でも書類の提出を求め、それが開示請求によって公開されるなんてことがあるのだろうか。  筆者が「造成工事を行った結果、設計図と実際の地層、土質が違っていた場合はどうなるのか」と質問すると、  「悪質な場合は県が行政指導を行い、計画の見直しや新たな書類を提出してもらうこともあるが、基本的には事業者自らの判断で林地開発計画変更届出書を提出し、必要な変更措置をしてもらう」(同)  ちなみにNRE―41はこの間、造成工事の遅れや計画の一部変更を理由に県に何度か変更届出書を提出している。直近では今年8月31日までとしていた造成工事期間を12月5日まで延長する変更届出書を提出しているが、行政指導を受けて変更届出書を提出したことがあるかどうか尋ねると「それは言えない」(同)。また、建設地で災害が起きた場合の対策は「森林法に基づき必要書類を提出させている」(同)とのこと。 〝ザル法〟の森林法  正直、現場の正確な地層や土質が分からないまま、簡易な構造物(太陽光パネル)を設置するだけとはいえ広大な林地を開発させてしまって大丈夫なのか心配になる。たとえそれが法的に問題なくても、である。  前出・調査会社社長も驚いた様子でこう話す。  「林地開発が〝ザル法〟の森林法で許可されてしまうことがよく分かった。現場の地層や土質が分からないまま、もしメガソーラーで災害が起きたら、第一義的な責任は事業者にあるが、私は許可した県の責任も問われてしかるべきだと思う。もっとも県は『法律上問題なかった』と言い逃れするんでしょうけどね」  実はこれに関連して、前出・小又進会長が気になる発言をしていた。  「設計はヴィーナ社で行い、石の大量発生についてはうちでも払ってほしいとお願いしたが、ヴィーナ社は予算がないの一点張りだった」  つまり小又建設も、小川建設と同様に転石の工事代金を払ってもらえずにいたのだ。  筆者が「ヴィーナ社がきちんと調査していればこんな事態にはならなかったのではないか」と尋ねると、小又会長は請負業者としての難しい立場を明かした。  「その時点でうちはヴィーナ社の工事を3カ所請け負っていた。業者は『請け負け』の立場。正直、発注者には言いづらい面がある」(同)  ある意味、小又建設も被害者なのかもしれないが「青森では十数億円の現場を2カ所世話になった」(同)とも言うから、ヴィーナ社とは持ちつ持たれつの関係なのだろう。逆に言うと、小又建設がヴィーナ社から正当な転石の工事代金を受け取っていれば、小川建設にもきちんと支払いが行き届いていたのではないか。  ヴィーナ社に取材を申し込むと、子会社の日本再生可能エネルギーから「回答するので時間がほしい」とメールで連絡があったが、その後、締め切りまでに返答はなかった。  前出・小川社長は「県はNRE―41の許可申請を受理すべきではなかった。そうすれば林地開発は行われず、私も被害を受けずに済んだ」と嘆くが、森林法が〝ザル法〟であることが明らかな以上、必要な是正をしないと、あちこちの林地で稼働するメガソーラーで災害が起きた時、対応する法律がない事態に直面するのではないか。

  • 【福島市】メガソーラー事業者の素顔

     福島市西部で進むメガソーラー計画の関係者が、思わぬ形で週刊誌に取り上げられた。中国系企業「上海電力日本」が発電所を整備する際、必ず関わっている人物なのだという。予定地の周辺住民は不安を口にしている。 週刊新潮が報じた「上海電力」との関係  本誌昨年12月号で「福島市西部で進むメガソーラー計画の余波」という記事を掲載した。同市西部の福島西工業団地近くの土地を太陽光発電事業者が狙っているというもの。 最初に浮上したのは、福島先達山太陽光発電事業の事業者による変電所計画。しばらくして立ち消えになったが、別の発電事業者がすぐそばの民有地を取得し、開閉所の設置を予定していることが分かった。 《発電事業者は合同会社開発72号(東京都)で、福島市桜本地区であづま小富士第2太陽光発電事業を進めている。営農事業者は営農法人マルナカファーム(=丸中建設の関連会社、二本松市)。開閉所を含む発電設備の建設、運転期間中の保守・維持管理はシャープエネルギーソリューション(=シャープの関連会社、大阪府八尾市)が請け負う。 発電所の敷地面積は約70㌶で、営農型太陽光発電を行う。最大出力約4万6000㌔㍗。今年7月に着工し、2024年3月に完工予定となっている。事業期間は約16年。 開閉所は20㍍×15㍍の敷地に建設される。変圧器や昇圧器は併設しないため、恒常的に音が出続けるようなことはないという。発電所から開閉所までは特別高圧送電線のケーブルを地下埋設してつなぐ》(本誌昨年12月号記事より) ところが、これらの計画について発電事業者側がおざなりな説明で一方的に進めようとしたため、周辺住民が反発。 開閉所につなぐ送電線は直前で地下から地上に出し、近くにある鉄塔から農地をまたぐ電線に接続する計画となっている。そのため、生活空間への影響を懸念する地権者や住民が計画変更を求めたが、開発72号は一度計画変更すると固定価格買い取り制度(FIT)の権利が失われることから応じなかった。 そこで、地元町内会は資源エネルギー庁に対し、3月28日付で、発電事業者への指導を求める125人分の要望署名を提出した。 そうした中で、さらに住民の不信感を増幅させる出来事があった。発電事業者である開発72号の代表者・戸谷英之氏と執行社員・石川公大氏が、『週刊新潮』が掲載した「上海電力」関連記事の中で繰り返し登場していたのだ。 上海電力(正式名称・上海電力股份有限公司)は、中国の国有発電会社「国家電力投資集団」の傘下企業で、石炭火力発電を中心にガス、風力、太陽光発電を手掛けている。 日本法人の上海電力日本(東京都千代田区、施伯红代表)は2013年9月に設立され、日本でのグリーンエネルギー(太陽光・太陽熱、風力、水力等)発電事業への投資、開発、建設、運営、メンテナンス、管理、電気の供給及び販売に関する事業を展開している。中国資本企業ではあるが、2015年8月に経団連に加入している。 『週刊新潮』の記事は、上海電力日本の子会社によるメガソーラーが山口県岩国市の海上自衛隊岩国航空基地の近くに整備されていることに触れたうえで、中国政府に近い企業に基幹インフラ事業を任せる危うさを指摘する内容だった(『週刊新潮』10月27日号)。 『週刊新潮』の記事  上海電力が進出する際の手口は、「合同会社」の転売を繰り返すというものだが、そこに出てくるのが前出・戸谷氏だ。 不動産登記簿によると、2020年12月28日、SBI証券が同発電所の土地に根抵当権を設定した。債務者はRSM清和コンサルティング内に事務所を構える合同会社開発77号。この会社の代表社員が戸谷英之氏だ。記事によると、RSM清和監査法人の代表社員である戸谷英之氏と同姓同名だという。 メガソーラー発電事業者・合同会社東日本ソーラー13には当初、一般社団法人開発77号(合同会社77号の親会社)が加入していたが、同年9月9日、合同会社SMW九州が合同会社東日本ソーラーに加入し、入れ替わるように一般社団法人77号が退社した。この合同会社SMW九州の現在の代表者は施伯红氏。上海電力日本の代表取締役だ。 要するに、戸谷氏の会社が、上海電力日本の進出の手引き役になっていると指摘しているわけ。 『週刊新潮』今年5月18日号では、北海道の航空自衛隊当別分屯基地に近い石狩市厚田区で進められている風力発電計画においても、全く同じスキームが採用されていることが報じられており、戸谷氏のほか、石川氏の名前も出てくる。 本誌2021年4月号で、宮城県丸森耕野地区でメガソーラー計画に対する反対運動が展開されたことをリポートした。用地交渉担当の事業統括会社社長が住民の賛同を広げるため行政区長に金を渡そうとしたとして、贈賄容疑で逮捕された経緯があったが、ここで事業者となっている合同会社開発65号の代表者も戸谷氏だった。 今年に入ってからは宮城県登米市に建設が予定されていたバイオガス発電所計画をめぐり、事業者が経産省に提出していた食品メーカーとの覚書を偽造していたことが発覚し、計画中止となった。事業者・合同会社開発73号の代表者は戸谷氏だ。 根強い地元住民の不信感 開閉所予定地  これらの会社の電話番号はアール・エス・アセットマネジメント(東京都)というエネルギーファンドの資産運用管理会社と同じ番号で、関連会社だと思われる。上海電力日本との関係は判然としないが、ずさんな計画に関わっていたのは確かだ。 たたでさえ、地元住民はメガソーラーやその関連設備が整備されることで、自然環境維持や防災などの面で影響を受けないか、不安視しているのに、投機目的丸出しのペーパーカンパニーでは不安が募るばかり。だからこそ、福島市桜本地区の住民も反対しているのだ。 地元住民が反対していることについてどう受け止めているのか、開発72号に連絡したが、期日までに返答はなかった。 地元町内会の代表者は「発電事業所は10年ほど前に権利を取得し、1㌔㍗36円という高い金額で売電できるので、住民の反対を押し切ってでも期限のうちに計画を進めたいのだと思います。そうした意向を受けてか、発電設備の建設を担うシャープエネルギーソリューションも地元住民の反対を押し切り、すでに工事に着手している。彼らは『地元住民に話をすればそれで了承を得た』と思っている節があります。農地への地上権設定にあっさり許可を出した市(木幡浩市長)にも、住民として協力できない意向を示す反対署名を提出する予定です」と語る。 地元住民の不信感は相当強い状況。過去の事例のように開発72号は上海電力日本など他社に売却する狙いがあるのか。同地区の住民ならず、その動向を注視しておく必要がある。

  • 【相馬玉野メガソーラー】山林大規模開発への懸念

     本誌2021年8、10月号で、相馬市玉野地区で進められているメガソーラー事業についてリポートした。事業者は「GSSGソーラージャパンホールディングス2」という会社で、アメリカ・コロラド州に拠点を置く太陽光発電事業者「GSSG Solar」の日本法人。 メガソーラー事業への反対運動:地元の懸念と説明会 玉野メガソーラー事業地(工事前) 玉野メガソーラー事業地(今年5月撮影)  同事業については、大きく以下の2点から、近隣住民や河川下流域の住民から反対の声が出ていた。 1つは、事業地は主に山林のため、発電所建設(太陽光パネル設置)に当たっては大規模な林地開発を伴うこと。近隣・下流域の住民からは「大規模開発により、山の保水力が失われてしまう。近年は、各地で洪水・土砂災害などが頻発しており、周辺・下流域でそうした災害が起きるのではないか」といった不安が噴出していた。 もう1つは、計画立案者で事業用地の大部分を所有する人物が、2021年7月に発生した静岡県熱海市の「伊豆山土石流災害」現場の所有者と同一人物であること。この人物は地権者というだけで、直接的には事業に関与しないようだが、近隣住民などからは「あのような問題人物が関係しているとすれば不安だ」との声があった。 こうした事情もあり、2021年7月と10月に地元住民や下流域の住民を対象とした説明会が行われた。主催者は「相馬市民の会」という住民団体で、事業者の現場担当者を招いての説明会だった。 説明会で配布された資料によると、事業区域面積は約122㌶で、うち森林面積が約117㌶、開発行為にかかる森林面積が約82㌶、発電容量は約82メガ㍗、最大出力60メガ㍗、太陽光パネル設置枚数16万6964枚などと書かれていた。 当然、説明会では前述のような不安の声が上がり、事業者は「問題のないように事業を進める」、「保険に入り、災害の際はそれで対応する」と回答した。ただ、そうした説明に反対派の住民は納得せず、平行線をたどった。 メガソーラー事業の現状:山林開発の進行と地元の不安  それからしばらくして、昨年2月ごろに、地元住民から「われわれの訴えも虚しく工事がスタートした」との情報が寄せられた。その直後に現地を訪ねた際は分からなかったが、最近、あらためて現地を訪ねると、山林がかなり切り開かれている様子がうかがえた。 以前の説明会に出席していた事業者の現場担当者に進捗状況を尋ねたところ、「一度、社内で話を通さないと取材にはお答えできないので、そのうえで再度連絡します」とのことだったが、締め切りまでに連絡はなかった。 以前の説明会で、事業者は「調整池を設置して洪水・土砂災害などが起きないようにする」と話していたが、あらためて丸裸にされた山林を見ると、近隣・下流域の住民は不安を増大させているだろうと感じる。 あわせて読みたい 不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画 (2021年8月号) 相馬玉野メガソーラー計画への懸念 (2021年10月号) 相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定 (2021年11月号)

  • 福島市西部で進むメガソーラー計画の余波

     「自宅の周辺を作業員が出入りして地質調査をしていると思ったら、目の前の農地に開閉所(家庭でのブレーカーの役割を担う施設)ができると分かった。一切話を聞いていなかったので驚きました」(福島西工業団地の近くに住む男性)  同市西部の福島西工業団地(同市桜本)の近くの土地を、太陽光発電事業者がこぞって取得している。東北電力の鉄塔に近く、変電所・開閉所などを設置するのに好都合な場所だからだ。  2022年2月、鉄塔がある地区の町内会長の家をAC7合同会社(東京都)という会社の担当者が訪ねた。外資系のAmp㈱(同)という会社が特別目的会社として設立した法人で、福島市西部の先達山(635・9㍍)で大規模太陽光発電施設を計画している。そのための変電所を、市から取得した土地に整備すべく、町内会長の了解を得ようと訪れたのだ。  町内会長は冒頭の男性と情報を共有するとともに、同社担当者に対し「寝耳に水の話で、とても了承できない」と答えた。  同計画の候補地は高湯温泉に向かう県道の北側で、すぐ西側に別荘地の高湯平がある。地元住民らは「ハザードマップの『土砂災害特別警戒地域』に隣接しており、大規模な森林伐採は危険を伴う。自然環境への影響も大きい」として、県や市に要望書を提出するなど、反対運動を展開している。  そうした事情もあってか、変電所計画にはその後動きがないようだが、2022年3月には、別の太陽光発電事業者が近くの民有地を取得し、開閉所の設置を予定していることが明らかになった。  発電事業者は合同会社開発72号(東京都)で、福島市桜本地区であづま小富士第2太陽光発電事業を進めている。開閉所を含む発電設備の建設、運転期間中の保守・維持管理はシャープエネルギーソリューション(=シャープの関連会社、大阪府八尾市)が請け負う。  発電所の敷地面積は約70㌶で、営農型太陽光発電を行う。営農事業者は営農法人マルナカファーム(=丸中建設の関連会社、二本松市)。2022年7月に着工し、2024年3月に完工予定となっている。  開閉所は20㍍×15㍍の敷地に設置される。変圧器や昇圧期は併設しないため、恒常的に音が出続けるようなことはないという。発電所から開閉所までは特別高圧送電線のケーブルを地下埋設してつなぐ。 開閉所の整備予定地  5月7日には地元住民への説明会が開かれた。大きな反対の声は出なかったようだが、冒頭・予定地の目の前に住む男性は「電磁波は出ないというが、子どもへの影響など心配になる。工事期間中、外部の人が出入りすることを考えると防犯面も気になります」と語った。  前出・町内会長は、一方的な進め方に違和感を抱き、市の複数の部署を訪ねたが、親身になって相談に乗ってくれるところはなかった。  特別高圧送電線のケーブルが歩道の地下に埋設される予定であることを知り、市に「小学生の通学路にもなっているので見直してほしい」と訴えたところ、車道側に移す方針を示した。だが、根本的に中止を求めるのは難しそうな気配だ。  「鉄塔周辺の地権者が応じれば、ほかにも関連施設ができるのではないかと危惧しています」(町内会長)  福島市西部地区で進むメガソーラー計画で、離れた地区の住民が思わぬ形で余波を受けた格好だ。2つのメガソーラー計画についてはあらためて詳細をリポートしたい。 あわせて読みたい 相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定 【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声 大玉村「メガソーラー望まない」 宣言の真意

  • 相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定

    (2021年11月号)  本誌8月号、10月号で相馬市玉野地区に計画されている県内最大級のメガソーラーについて報じた。  事業者は「GSSGソーラージャパンホールディングス2」(東京都港区)で、アメリカ・コロラド州に拠点を置く太陽光発電事業者「GSSG Solar」の日本法人。 同計画の問題点は大きく2つ。 1つは、計画地は主に山林のため、大規模な林地開発を伴うこと。近隣や下流域の住民からは、「大規模開発により、山の保水力が失われてしまう。近年は、各地で洪水・土砂災害などが頻発しており、周辺・下流域でそうした災害が起きるのではないか」といった不安が出ている。 もう1つは、計画立案者で最大地権者は、7月に発生した静岡県熱海市の「伊豆山土砂災害」現場の所有者と同一人物であること。 関連報道によると、土石流が起きた原因は、河川上流の盛り土で、急な斜面に産廃を含む土砂が遺棄され、今回の豪雨で一気に崩落した、とされている。盛り土を行ったのは旧所有者だが、2011年に現所有者が取得。土石流の起点付近で不適切に土砂を投棄したほか、危険性を認識しながら適切な措置・対策を取っていなかったという。 遺族・被災者らは現旧所有者を相手取り損害賠償請求訴訟を起こすと同時に刑事告訴した。 その現所有者である麦島善光氏が玉野メガソーラー用地の約7割を所有しているのだ。登記簿謄本によると、東京都在住の個人が所有していたが、2002年に東京財務局が差押をした後、2011年8月、公売によって麦島氏が取得した。麦島氏が取得後、同所に抵当権などは設定されていない。 麦島氏はこの土地でメガソーラー事業を行う計画を立て、地元住民によると、「当初、麦島氏は自分でメガソーラーを開発、運営する考えだった。麦島氏とその部下がよくこちら(玉野地区)に来て、挨拶回りや説明を行っていた」という。 麦島氏は2016年9月、合同会社・相馬伊達太陽光発電所(東京都千代田区)を設立し、代表社員に就いた。しかし、自社での開発・運営を諦め、GSSGソーラージャパンホールディングス2が事業主体となった。麦島氏は同社に事業権を譲渡するとともに地代を受け取ることになる。 ただ、住民からすると「そういう問題人物が関わっていて、本当に大丈夫なのか」との不安は大きい。 10月11日、「相馬市民の会」主催で説明会が開かれた。当然、麦島氏のことが質問に出たのだが、事業者は「ただの地権者で事業そのものには関わらない」と、麦島氏の関与を否定した。 一方、「麦島氏は現在80歳を超えており、事業終了後(20〜40年後)はいない。開発で保水力を失った山林は事業終了後も管理が必要だが、その費用を麦島氏の後継者に請求できるか」との質問も出たが、これに対しては明確な回答はなかった。 麦島氏は直接的に事業に関与しないようだが、そういった点での不安は残されたままだ。 あわせて読みたい 不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画 相馬玉野メガソーラー計画への懸念

  • 相馬玉野メガソーラー計画への懸念

    (2021年10月号)  本誌2021年8月号に「不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画 静岡県熱海市土砂災害との意外な接点」という記事を掲載した。その後、相馬市9月議会で同計画に関連する動きがあったので続報する。 実らなかった住民団体「必死の訴え」  現在、相馬市玉野地区で、県内最大級のメガソーラー計画が進められている。計画地は主に山林のため、発電所建設(太陽光パネル設置)に当たっては大規模な林地開発を伴う。そのため、近隣住民や下流域の住民からは、「大規模開発により、山の保水力が失われてしまう。近年は、各地で洪水・土砂災害などが頻発しており、周辺・下流域でそうした災害が起きるのではないか」といった不安の声が出ていた。 こうした事情もあり、7月15日に玉野地区だけでなく、ほかの地区の住民も交えた説明会が開催された。主催したのは「相馬市民の会」という住民団体で、事業者の「GSSGソーラージャパンホールディングス2」という会社の担当者を招いての説明会だった。 記事ではその模様を伝えたほか、①同事業用地の所有者で同事業の発案者は、7月に発生した静岡県熱海市の「伊豆山土砂災害」現場の所有者と同一人物であること、②県はそのことを認識しながら、7月15日に林地開発許可を出したこと――等々をリポートした。 一方、同記事では、説明会から4日後の7月19日に、住民団体「相馬市民有志の会」(※説明会を主催した「相馬市民の会」とは別団体)が県に対して、「同事業には安全面で問題があるため、林地開発許可を行わないよう求める」とする申入書を提出したことも伝えた。 申入書の趣旨は、1つは静岡県熱海市の「伊豆山土砂災害」を引き合いに、そうした問題人物の手掛ける事業に行政として、開発許可を出すのが妥当なのか、ということ。 もう1つは調整池の問題。「相馬市民有志の会」の関係者は当時の本誌取材に次のように話していた。 「2019年の台風では、同計画の設計基準とされている雨量を超えたほか、事業終了後の調整池の問題もあります。というのは、最初の説明会のとき、事業者は発電期間は20年間で、その後、メンテナンスを行い、さらに20年間、最大40年間を見込んでいるとのことでしたが、事業期間が終わり、パネルを撤退した時点では、山は丸裸のまんまです。一度剥いてしまった山林が保水力を取り戻すには数十年、場合によっては100年かかると言われており、事業終了後も調整池は残さなければならない。事業期間中は定期的にえん堤の修繕・堆積土浚渫などを行うそうだが、事業終了後は誰がそれをやるのか。国の制度では、2022年度から事業期間中に売電収入から外部積み立てをし、それを撤去費用に充てることになっていますが、調整池の保全管理費分も含むかどうかは不透明です。そういった面で、とにかく問題点が多過ぎる。将来的に、負の遺産になるかもしれないものは、地元住民として到底容認できないというのが申入書の趣旨です」 計画では事業区域は1号から7号までの各ブロックに分かれ、太陽光パネルが設置されたエリアはフェンスで覆い、その外側の周囲30㍍は残置森林とするほか、各ブロックに調整池を設置する、とされている。事業(発電)期間終了後、その調整池の管理の問題を問うのが申入書の趣旨だった。 8月号記事執筆時点では、この申入書に対する県からの回答はなかったが、8月11日付で県森林保全課から「相馬市民有志の会」に回答があった。内容は次の通り。   ×  ×  ×  × 林地開発許可について 令和3年4月28日付で合同会社相馬伊達太陽光発電所から林地開発許可申請があったこのことについて、「災害の防止」、「水害の防止」、「水の確保」、「環境の保全」の4要件で審査し、許可基準を満たすことを確認しました。さらに、福島県森林審議会に諮問した結果、「適当と認める」旨の答申を得たことから、令和3年7月15日付で許可しました。 GSSGソーラージャパンホールディングス2等の調査結果 申請者である合同会社相馬伊達太陽光発電所の代表社員GSSGソーラージャパンホールディングス2の存在を確認するとともに、開発行為が中断されることなく許可を受けた計画どおり適正に完遂させうる相当の資金力及び信用の有無を確認しています。なお、麦島善光氏(編集部注・静岡県熱海市の「伊豆山土砂災害」現場の所有者で、合同会社相馬伊達太陽光発電所の創設者、玉野地区メガソーラー計画地の地権者)につきましては、土地所有者であり、土地所有者の適正は審査項目に含まれておりません。 土砂災害警戒区域について 土砂災害防止法による開発規制は、指定区域において住宅分譲や災害時要援護者関連施設等の建築のための開発行為が対象であり、太陽光発電事業を目的とする開発行為は該当しない旨の回答を担当部局から得ています。また、当該地の警戒区域については、現時点で未指定であり、基礎調査の公表となっています。なお、環境省において再生可能エネルギーの促進地域から土砂災害の危険性が高い区域を除外する旨の通知等は示されていません   ×  ×  ×  × 資源エネ庁に申し入れ  「相馬市民有志の会」が県に申入書を提出した直後、県森林保全課に確認したところ、林地開発については、手続き上、要件を満たしていれば開発許可を出すことになる、とのこと。 さらに、静岡県熱海市の「伊豆山土砂災害」との関係については、県森林保全課では、熱海市の土地所有者と、玉野地区のメガソーラー計画の事業地所有者が同一人物であることは認識していた。 そこで、記者が「すでに開発許可は出ているそうだが、そういう人(問題人物と思しき人)が関わっているということで、開発許可を再考するということにはならないのか」と尋ねると、こう明かした。 「許可申請者は別(GSSGの傘下のようになった相馬伊達太陽光発電所)ですし、(熱海市の件と同一人物が)所有者に名を連ねているのは承知していますが、それだけ、と言ったら何ですが……。そういうこと(開発許可を再考すること)にはならないと思います」 申入書に対する回答を見ると、まさにそういった内容のものだ。 一方、「相馬市民有志の会」は同様の観点から、8月下旬、相馬市に要望を行うと同時に、相馬市議会に陳情書を提出した。 それに先立ち、「相馬市民有志の会」は8月10日に資源エネルギー庁にも同趣旨の申入書を提出している。その際、資源エネルギー庁は「調整池は長期にわたり維持管理される必要があるが、調整池保全管理費については、外部機関積み立ての対象になっていない」との回答だったという。 国は2020年6月、メガソーラーなどの事業終了時のために、施設撤去費用を外部機関に積み立てることなどを定めた「エネルギー供給強靭化法」を制定したが、そこで定められた「外部機関積み立て」には、調整池保全管理費は含んでいないことが資源エネルギー庁への申し入れで明らかになったということだ。 「市が義務付けは難しい」と市長  これを受け、「相馬市民有志の会」は市と議会に対して「長期にわたる調整池の保全管理費が本来負担すべき事業者ではなく、相馬市民に押し付けられることになる」として、「そうしたことにならないよう、事業者との間に①事業終了後においても、調整池の保全管理費は事業者が負担すること。事業者は保全管理費の総計を算出し、それを相馬市と共有して積み立て実態も公開すること、②万が一、メガソーラー設置に起因する災害が発生したときは事業者が復旧及び被害救済に責任を負うこと、などを内容とする協定書を取り交わすべき」と要望・陳情したのである。 陳情は市議会文教厚生常任委員会に付託され、9月定例会中の9月8日に審議が行われたが、それに先立ち、同2日に一般質問が行われ、村松恵美子議員が関連の質問を行った。 内容は「県内最大規模のメガソーラー発電施設が玉野地区に設置される計画が進んでいる。メガソーラー設置区域には土砂流出警戒区域も含まれる。さらに大雨対策の調整池の維持管理が事業継続中は事業者の責任だが、事業終了後は事業者責任が無くなることが分かった。このような法整備が不完全の状態で設置が進むことを市長はどう考えるかうかがう」というもの。 まさに、「相馬市民有志の会」が懸念する「事業終了後の調整池の維持管理の問題」を質したのである。 これに対する市当局の答弁だが、まず、林地開発申請後、県から地元自治体として意見を求められ、意見書を提出したという。 その内容は、令和元年東日本台風により大きな被害を受けた下流地区の住民に、特に丁寧な説明を行い、水害への懸念を払拭すること、激甚災害相当規模の雨量にも対応できる設備を設置すること、林地開発にあたっては、開発地周辺住民に十分な説明機会を設け、理解を得ながら事業を進めること、意見や要望に対して十分な説明や誠意を持って対応すること――というもの。 そのうえで、立谷秀清市長は次のように答弁した。 「『相馬市民有志の会』から環境協定の中で事業終了後の調整池の管理を義務付けるよう要望が出ている。弁護士とも協議したが、民間事業者と地権者の契約の中で、市が事業者にその義務付けをすることはできない。協定書に盛り込めるとしたら、県の基準を順守しなさい、安全性を確保しなさい、というところまでしかできない」 さらに、立谷市長は「この件は全国的な問題として、これから出てくる。発端は熱海市の件。熱海市長とは親しくしているが、憤懣やるかたない思いだと言っていた。全国的な問題だから、全国市長会長の立場で問題提起・議論していきたい」とも語っていた。 問題は認識しつつも、民間事業者と地権者による民民のビジネス契約だから、市としてそこに関与することは難しい、ということだ。 陳情「委員会審議」の模様  陳情の審議が行われたのは、この一般質問があった数日後で、当日は陳情者の意見陳述が行われ、「相馬市民有志の会」関係者が陳情趣旨などを説明した。その後、議員(委員)から陳情者への質問、議員から執行部への質問、議員間討議、討論などが行われ、最後に採決された。採決結果は賛成ゼロで不採択だった。 反対討論は3人の議員が行ったが、端的に言うと、その内容は「相馬市民有志の会」が指摘した問題点について理解は示しつつ、基本的には民間事業者が民間の土地を借りて行う事業であり、行政として関与できるものではない、というものだった。この数日前の立谷市長の答弁を受け、議会でもそういった結論になったということだろう。 「相馬市民有志の会」の懸念は、民間事業者がビジネス(金儲け)をした後の後処理を誰がするのか、場合によっては行政が税金によって担うことになり、それはおかしい、ということである。だったら、そうならないようにあらかじめ対策を取っておくべき、ということで、趣旨としては分かりやすい。 ただ、市や議会の判断は前述の通りで、住民の感情や懸念と、行政・議会としてできることには隔たりがあるということだ。 同日は「相馬市民有志の会」関係者ら十数人が傍聴に訪れていたが、落胆の声が聞かれた。 前述したように、国は2020年6月、メガソーラーなどの事業終了時のために、施設撤去費用を外部機関に積み立てることなどを定めた「エネルギー供給強靭化法」を制定したが、そこで定められた「外部機関積み立て」には、調整池保全管理費は含んでいない。そこに、調整池保全管理費なども含めるよう、法制度を変えていくしかないということだろう。 一方で、関係者によると、10月中に事業者を招いた「相馬市民の会」主催の説明会が再度行われるというが、その席であらためてこの問題が取り上げられるのは間違いない。そこで、事業者がどのような回答を用意しているか、ひとまずはそこに注目だ。 相馬市のホームページ あわせて読みたい 不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画 相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定

  • 不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画

    (2021年8月号)  相馬市玉野地区で、県内最大級のメガソーラー計画が進められている。計画地は主に山林のため、発電所建設(太陽光パネル設置)に当たっては大規模な林地開発を伴う。そのため、近隣住民や下流域の住民からは、「大規模開発により、山の保水力が失われてしまう。近年は、各地で洪水・土砂災害などが頻発しており、周辺・下流域でそうした災害が起きるのではないか」といった不安の声が聞かれる。さらに、同事業用地の所有者は、2021年7月に発生した静岡県熱海市の土砂災害とも関係しているという。 【静岡県熱海市】土砂災害との意外な接点  相馬市玉野地区のメガソーラー計画について、本誌が最初に報じたのは2017年4月号「相馬市玉野地区に浮上したメガソーラー計画 災害・水資源枯渇を懸念する一部住民」という記事だった。 当時、地元住民は本誌取材にこう話していた。 「メガソーラーの計画地は、いまから25年ほど前のバブルのころにゴルフ場計画が持ち上がったところです。当時、地元の地権者がゴルフ場設置を計画していた会社に土地を売り、開発が進められようとしていたが、地元農家からは反対の声が上がり、そうこうしているうちにバブルが崩壊してゴルフ場計画はなくなりました。その後は同用地の所有者が何度か変わり、その度にさまざまな計画が浮上しましたが、結局、どれも実現しませんでした」 そうした中で浮上したのがメガソーラー計画だった。以下は、本誌2017年4月号記事より。   ×  ×  ×  × 地元住民によると、メガソーラーの計画地は、同地区スゲカリ地内にある山林。面積は約230㌶と、かなり広大な敷地である。 不動産登記簿謄本を確認すると、同所はもともとは東京在住の個人が所有していたが、2002年に東京国税局の差押を経て、2011年8月、同国税局の公売によって麦島善光氏が取得している。 麦島氏はグループ企業10社(※当時)からなるZENホールディングス(東京都千代田区)のオーナーのようだが、同社のHPを見ると「2015年3月の株主総会で、麦島善光はZENグループのすべての役職から退くことになった」旨の社報が出ていた。 その後、麦島氏は2016年9月に「相馬伊達太陽光発電所」、「相馬玉野地区活性化機構」という2つの合同会社を立ち上げ、その代表社員に就いている。いずれも、本社は東京都千代田区だが、前出の地元住民によると、「同社は最近、玉野地区の空き家を借り、現地事務所を設けました。ただ、人が常駐しているわけではないようです」とのこと。 両社の商業登記簿謄本を見ると、資本金はいずれも100万円。役員(業務執行社員)は両社とも代表社員の麦島氏のほか、櫻井修氏が就いている。事業目的は、相馬伊達太陽光発電所が発電プラント(風力発電、太陽光発電、燃料電池、バイオマス発電、その他の自然エネルギー発電)に関する事前調査、計画、設計、関連資材調達・販売、土木工事、建設、運転、保守点検事業、売電事業など、相馬玉野地区活性化機構が地域活性化事業、地域再生事業、雇用促進を図るための事業など。 なお、代表社員である麦島氏の住所は静岡県熱海市になっている。これは前述・ZENホールディングスの研修センターと同じ住所だから、同グループの役職をすべて辞めたといっても、同グループオーナーであることには違いはないようだ。 要するに、麦島氏はこれまで率いてきたグループ企業の経営を後進に委ね、自身は新会社を立ち上げてメガソーラー事業に乗り出したということだろう。 ちなみに、ZENグループは、建設業や住宅販売、マンション・賃貸住宅・貸店舗などの管理、フィットネスクラブの運営などを行っている会社がメーンで、太陽光発電所の実績があるかは定かでない。少なくとも、同グループのホームページを見る限りでは、そうした実績は見当たらない。 3月上旬、東京の相馬伊達太陽光発電所本社に電話をすると、電話口の男性は「相馬伊達太陽光発電所」ではなく、別の名称を名乗った。そこで、記者が「そちらは相馬伊達太陽光発電所ではないのですか」と聞くと、「相馬伊達太陽光発電所もこちらです」と答えた。どうやら、同じグループ内の別の事業所との兼用事務所のようだ。 記者が「相馬市玉野地区でメガソーラーを計画していると聞いたのだが詳細を教えてもらえないか」と尋ねると、「まだ、マスコミに公表できる段階ではないので。ただ、近々発表できるようになると思いますので、そういう状況になりましたら、こちらからご連絡します」との返答だった。そこで、本誌の電話番号と記者の名前を伝え電話を切った。 このため、その時点では詳しい計画概要などを聞くことはできなかったが、前出の地元住民によると、昨年(2016年)11月に開かれた住民説明会では、①山林を開発して太陽光発電所にすること、②敷地面積は約230㌶だが、実際に開発する(太陽光パネルを設置する)のは約130㌶になること、③発電量は60~80メ  ガ㍗になること、④発電した電力は伊達市の変電所に送ること、⑤2018年から工事をスタートし、2021年の発電開始を目指していること、⑥発電期間は20年間を想定していること――等々の説明があったという。運営会社の名称が「相馬伊達」とされているのは④が理由と思われる。 (中略)それからほどなくして、3月15日からは同計画の開発に当たっての環境影響評価方法書の縦覧が始まった。これを受け、地元紙などでも、同計画の存在が報じられることになった。 環境影響評価方法書を見ると、ある程度の計画概要が見えてくる。同方法書によると、事業実施区域の面積は230・44㌶で、このうち、太陽光パネルを設置するのは約162・52㌶。残りは残置森林が約46・78㌶、防災調整池が12・52㌶、管理用道路が8・62㌶。発電規模は約8万3000㌔㍗(83メ  ガ㍗)だが、「今後の詳細な事業計画検討で変動する可能性がある」とされている。 前出の地元住民の話では、昨年11月の説明会の際、事業者からは「太陽光パネルが設置されるのは約130㌶になる」旨の説明があったとのことだが、今回示された環境影響評価方法書では太陽光パネルを設置するのは約162㌶となっており、当初説明より規模が拡大していることが分かる。   ×  ×  ×  × 地元住民は賛否両論  当初説明や環境影響評価方法書などでは、「2018年から工事をスタートし、2021年の発電開始を目指している」とされていたが、現時点では発電はおろか、工事もスタートしていない。それは、事業主体、計画に何度も変更があったためだが、その詳細は後述する。 当時の地元住民への説明会では、同計画におおむね賛同の声が上がったという。その理由の1つとして、事業者(相馬伊達太陽光発電所)から地元住民に対して「用地を拡大したいため、用地周辺の地権者に協力(賃借)をお願いしたい」との申し出があったことが挙げられよう。 対象地の多くは農地だが、地区内では耕作放棄地が増えている。原発事故後、同地区の酪農家が「原発事故さえなかったら」といった書き置きを残して自殺したが、ただでさえ農家の高齢化といった問題があった中、原発事故により営農環境はさらに厳しくなっていた。近年は相馬福島道路が全線開通し、同地区にインターチェンジが開設されるなど、利便性が向上した一方、2017年3月には玉野小・中学校がともに閉校するなど、地域の活力が失われていたのは間違いない。 IC開設、小・中学校閉校は、最初にメガソーラー計画の話が出た後のことだが、いずれにしても、営農環境は厳しい状況になっている中、耕作せず(できず)に遊ばせている農地を借りてくれる(地代が得られる)のであればありがたいといった感じだったのだろう。 一方で、山林(森林)には、山地災害の防止、洪水の緩和、水資源の涵養といった機能があるが、大規模開発に伴い、土砂災害や水資源枯渇などの事態を招くのではないか、との理由から反対意見も聞かれた。 広範囲の説明会開催  その後、2018年1月に地元住民を対象とした説明会が開催された。事業者はその席に〝ビジネスパートナー〟を連れてきた。当時、説明会に参加した地元住民はこう話していた。 「事業者(相馬伊達太陽光発電所の担当者)は外国人の〝ビジネスパートナー〟を連れてきて、一緒に(メガソーラー事業を)やる、と。ちなみに、事業者はその〝ビジネスパートナー〟のことを『共同事業主』というフレーズを使って紹介していました」 その共同事業主はTOTAL(トタル)という会社。説明会当日、出席者に配られた資料によると、《TOTAL(トタル)社は、世界有数の多国籍エネルギー企業で、総従業員数9万8000人、世界130カ国で事業を展開している。子会社および関連会社を併せた規模は、いわゆる国際石油メジャーの中で世界第4位》と紹介されていた。 当時、本誌が調べたところ、同社はフランス・パリに本社があり、2016年の営業実績は、日本円で売上高約17兆9640億円、営業利益約1兆1468億円、当期純利益約9960億円となっていた。 実際に、相馬市玉野地区での事業に携わるのは、同社グループの日本支社のようで、同社グループでは石川県七尾市(27メガ㍗)、岩手県宮古市(25メガ㍗)などで太陽光発電事業を展開しており、ほかにも日本国内での事業展開を計画していた。 「説明会には、同社の担当者2人が出席し、1人はフランス人、もう1人は日本人でした。ただ、説明会では相馬伊達太陽光発電所とTOTALのどちらが開発行為を行うのか、具体的な運営はどういった形になるのか等々の詳細は明かされませんでした」(前出の地元住民) もっとも、この地元住民によると、「TOTALの関係者が来たのはその時だけだった」という。 「いつの間にか、同社との共同事業は頓挫したようです」(同) その後は、仙台市のクラスターゲートという会社が同計画に携わるようになり、行政手続きや周辺住民への根回しなどの矢面に立つようになった。 一方で、そのころになると、玉野地区の住民だけでなく、市街地などそのほかの地区の住民も、同計画に関心を寄せるようになった。計画地周辺は玉野川が流れ、宇田川と合流して市街地方面へと流れていく。つまり、下流域に住む人たちが不安を抱くようになったということだ。これは、令和元年東日本台風による被害も関係していよう。この水害で市内の1000戸以上が浸水被害を受け、上流で山林が伐採されると、同様の大雨などの際、さらに大きな被害になるのではないか、として同計画に関心を寄せるようになったのだ。 こうした事情もあり、2020年1月には、玉野地区だけでなく、ほかの地区の住民も交えた説明会が開催された。これを主催したのは「相馬市民の会」という住民団体で、同会はもともと、宇田川上流で産業廃棄物処分場の計画があり、それを阻止するために結成された住民団体。処分場計画は同会の反対運動によって白紙撤回されたが、宇田川上流では幾度となくそうした計画が浮上しており、またいつ同様の計画が持ち上がるか分からない、といった判断から存続しているようだ。 その説明会で、事業者側として対応に当たったのがクラスターゲートの担当者だった。 「説明会では、安全面に関する質問が相次ぎましたが、事業者からはまともな回答が得られなかった。そのため、『またこうした説明会の場を設けて、きちんと説明してほしい』ということになりました」(説明会に出席した地元住民) 2回目の広範囲説明会  ただその後、新型コロナウイルスの感染拡大により、なかなかそうした場を設ける機会がなかった。 ようやく、2回目の説明会が開催されたのは2021年7月15日だった。 その席で説明に当たったのは、クラスターゲートの担当者ではなく、「GSSGソーラージャパンホールディングス2」という会社の担当者だった。同社はアメリカ・コロラド州に拠点を置く太陽光発電事業者「GSSG Solar」の日本法人。 当日配布された資料によると、事業区域面積は約122㌶で、うち森林面積が約117㌶、開発行為にかかる森林面積が約82㌶、発電容量は約82メガ㍗、最大出力60メガ㍗、太陽光パネル設置枚数16万6964枚、開発行為の期間は2023年12月まで、となっている。事業区域は、1号から7号までの各ブロックに分かれており、主な部分は相馬福島道路と国道115号の交差地点の北側。太陽光パネルが設置されたエリアはフェンスで覆い、その外側の周囲30㍍は残置森林とするほか、各ブロックに調節池(調整池)を設置するという。この内容で行政手続きを進めていることも明かされた。 こうした説明の後、質疑応答の時間が設けられたのだが、住民側からは「2019年の台風では設計基準とされている雨量を超えたが、この計画で本当に大丈夫なのか」、「土砂災害などが起きた場合、事業者はどこまで補償できるのか」、「事業終了後、ソーラーパネルは撤去するとしても、切り開かれた山林の保水力が戻るわけではないので、調整池は残さなければならないと思うが、誰が維持・管理するのか」等々、やはり安全面に関する質問が相次いだ。 これに対し、事業者からは「問題のないように事業を進める」、「保険に入り、災害の際はそれで対応する」といった回答があったが、それで住民側の理解が得られたとは到底思えない。 一方で、こんな指摘もあった。 「最初にこの計画を立ち上げ、近隣住民にあいさつ・説明をして回っていたのは、土地所有者の麦島氏だった。その後、TOTALという会社が共同事業主として参加することになった。そうかと思ったら、今度はクラスターゲートという会社が入ってきて、前回の説明会は同社の担当者が受け答えをしていた。今日の説明会も、クラスターゲートの担当者が来るものだと思っていたが、また別の会社(GSSGソーラージャパン)が来た。これから開発行為が行われ、何十年と発電事業が続く中、こんなにコロコロ事業者が変わるようでは、とてもじゃないが信用できない」 この指摘に対するGSSG担当者の回答を整理すると、以下のようなものだった。 ○クラスターゲートは、GSSGの事業パートナーで、当初、GSSGには行政手続きや設計・開発などを自社で手がけるだけの体制が整っていなかったため、クラスターゲートに委託していた。 ○ただ、この間、国内他所で実績を積み重ねる中、そうした体制が整ってきたので、GSSG主体で事業を進めることになった。クラスターゲートには後方支援をしてもらう。 前段で本誌2017年4月号記事の一部を引用し、その中で直接的な事業者となる合同会社「相馬伊達太陽光発電所」の詳細について紹介した。説明会後、あらためて同社の商業登記簿を確認したところ、資本金や事業目的などに変化はなかったが、役員については大幅に変更があった。 当初は、同社を立ち上げた麦島氏が代表社員、麦島氏のサポート役だった櫻井修氏が業務執行社員の役員2人体制だったが、両氏とも2018年12月28日付で「退社」となった。その代わりに同日付で、クラスターゲート職務執行者の大堀稔氏が代表社員となった。ただ、その大堀氏(クラスターゲート)も、2019年3月5日付で「退任」となり、同日付でGSSGソーラージャパンホールディングス2職務執行者のブルス・ダリントン氏が代表社員となり、同年8月14日付でGSSGソーラージャパンホールディングス2職務執行者のエドワーズ・ヤノ・ケヴィン・ギャレス氏に代表社員が変更となった。同日付で本店所在地も東京都千代田区から港区に移転となっている。 GSSG担当者の説明と、相馬伊達太陽光発電所の商業登記簿を確認した限りでは、事業地の大部分の地権者であり、同計画を立案して国に固定価格買取制度の申請をしたのは麦島氏だが、GSSGに事業譲渡・事業地貸与した格好のようだ。事業主体はGSSGで、実際の運営は相馬伊達太陽光発電所が行い、林地開発許可申請も同社が行った。 なお、説明会には事業地の地元地権者も参加しており、「玉野地区の振興のことも考えてほしい」旨の発言をし、安全面の不安を訴える住民と、ちょっとした言い合いになる場面もあった。メガソーラーが地区の振興につながるかどうかはともかく、そうして険悪な雰囲気になった中、同説明会を主催した相馬市民の会の〝長老〟的立場の人が「市民同士がいがみ合うのは、この説明会の意図するところではない」とたしなめた。同計画はそうした構図を生んでしまったという側面もある。 いずれにしても、同説明会は住民側が納得する形では終わらず、その場で回答できなかったことは後に文書で相馬市民の会に回答すること、再度そうした説明会の場を設けることなどを約束して終了となった。 住民団体が申入書提出  その4日後の7月19日、住民団体「相馬市民有志の会」(※説明会を主催した「相馬市民の会」とは別団体)が県に対して、「同事業には安全面で問題があるため、林地開発許可を行わないよう求める」とする申入書を提出した。 同会の代表者は、原発事故の国・東電の責任を問う集団訴訟「生業訴訟」の原告団長でもある中島孝さん。 中島さんに話を聞いた。 「2019年の台風では、同計画の設計基準とされている雨量を超えたほか、事業終了後の調整池の問題もあります。というのは、最初の説明会のとき、事業者は発電期間は20年間で、その後、メンテナンスを行い、さらに20年間、最大40年間を見込んでいるとのことでしたが、事業期間が終わり、パネルを撤退した時点では、山は丸裸のまんまです。一度剥いてしまった山林が保水力を取り戻すには数十年、場合によっては100年かかると言われており、事業終了後も調整池は残さなければならない。事業期間中は定期的にえん堤の修繕・堆積土浚渫などを行うそうだが、事業終了後は誰がそれをやるのか。国の制度では、2022年度から事業期間中に売電収入から外部積み立てし、それを撤去費用に充てることになっていますが、調整池の保全管理費分も含むかどうかは不透明です。そういった面で、とにかく問題点が多過ぎる。将来的に、負の遺産になるかもしれないものは、地元住民として到底容認できないというのが申入書の趣旨です」 ただ、実はそうした申入書提出の前、ちょうど説明会が開催された7月15日に林地開発許可が下りたのだという。 中島さんら関係者は「県は同日に説明会が開催されることを認識していた。にもかかわらず、その結果を見ずに、それと同じ日に許可を出すのは何か裏があるのではないか」と疑いの目を向けているようだ。 熱海土砂災害との関係  一方で、申入書には「静岡県熱海市の豪雨による土砂崩落の土地所有者は、合同会社・相馬伊達太陽光発電所の創立者であり、玉野のメガソーラーを計画した麦島善光氏である」といった記述もある。 7月3日、静岡県熱海市で豪雨による大規模な土砂災害が発生した。その崩落現場の土地の所有者が相馬伊達太陽光発電所の創立者であり、玉野のメガソーラーを計画した麦島氏なのだという。 前段で本誌2017年4月号記事の一部を引用したが、その中に「(相馬伊達太陽光発電所の)代表社員である麦島氏の住所は静岡県熱海市になっている。これは前述・ZENホールディングスの研修センターと同じ住所」との記述がある。 まさに、その場所が崩落現場周辺ということになる。 『週刊新潮』(7月29日号)の特集「『殺人盛り土』2人のワル」という記事によると―― ○土砂災害の原因は、逢初川上流の盛り土であることが徐々に分かってきたこと。 ○急な斜面に産廃を含む土砂が遺棄され、今回の豪雨で一気に崩落したこと。 ○そこからすると、天災ではなく人災の疑いが濃厚であること。 ○その所有者が麦島氏であること。 ○麦島氏は過去に脱税で逮捕され、懲役2年の実刑判決を受けたこと。 ――等々が伝えられている。 現時点では崩落原因とされる盛り土に違法性があったかどうかを断定するところまでは至っていないが、ほかにもネットメディアなどで、麦島氏の責任を問う記事が出ている。 相馬市民有志の会では、前述した安全面の問題に加え、「そうした問題人物の手掛ける事業に行政として、開発許可を出すのが妥当なのか」といった意味で、申入書を提出したのだという。 「県にはできる範囲で構わないので、回答してほしいと伝えてきましたが、(本誌取材時の7月26日時点で)まだ回答は来ていません」(中島さん) あらためて、県森林保全課に確認したところ、まず、県としては手続き上、要件を満たしていれば開発許可を出すことになる、といったスタンス。では、その「要件」の中に、「地元住民の理解」は含まれるのかということだが、その点については次のような説明だった。 「地権者の同意は必要ですが、それ以外の地元住民の同意までは求めていません。ただ、絶対条件ではないものの、事業者には地元住民にきちんと説明するように、ということは伝えています」 一方で、静岡県熱海市の土砂災害との関係についてだが、県森林保全課では、熱海市の土地所有者と、玉野地区のメガソーラー計画の事業地所有者が同一人物であることは認識していた。 そこで、記者が「すでに開発許可は出ているそうだが、そういう人(問題人物と思しき人)が関わっているということで、開発許可を再考するということにはならないのか」と尋ねると、こう明かした。 「許可申請者は別(GSSGの傘下のようになった相馬伊達太陽光発電所)ですし、(熱海市の件と同一人物が)所有者に名を連ねているのは承知していますが、それだけ、と言ったら何ですが……。そういうこと(開発許可を再考すること)にはならないと思います」 確かに、事業主体は麦島氏から事業譲渡を受けた格好のGSSGだが、麦島氏が計画地のかなりの部分の土地を所有しているのは事実。同事業に関して、麦島氏がどの程度関わり、どれだけの権利・権限を残しているのかは不明だが、こうした構図を見ると、地元住民が不安に思うのは当然だろう。 あわせて読みたい 相馬玉野メガソーラー計画への懸念 相馬玉野メガソーラー事業者が「渦中の所有者」の関与を否定

  • 【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声

    (2021年3月号)  本誌2018年2月号に「二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上」という記事を掲載した。二本松市岩代地区で民間事業者によるメガソーラー計画が浮上しており、その詳細をリポートしたもの。その後、同事業ではすでに工事が始まっているが、かなりの大規模開発になるため、地元住民からは「大雨が降ったら大丈夫か」と心配する声が出ている。 令和元年東日本台風を経て地元民感情に変化  2018年当時、地元住民に話を聞いたところ、「この一帯でメガソーラーをやりたいということで、事業者がこの辺りの地権者を回っている」とのことだった。 さらにある地権者によると、計画地は二本松市岩代地区の上長折字加藤木地内の山林・農地で、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。用地交渉に来ているのは栃木県の会社で、同社から「買収を想定しているのは約150㌶」「送電鉄塔が近くにあるため、メガソーラー用地として適しており、ぜひここでやりたいから協力(用地売却)してほしい」と説明・協力要請されたのだという。 この地権者は当時の本誌取材に次のように述べていた。 「計画地の大部分は山林や農地で、私の所有地は農地ですが、いまは耕作していません。その近隣も遊休農地が少なくないため、売ってもいいという人は多いのではないかと思います。おおよそですが、地権者は20〜30人くらいになると思われ、そのうちの何人かに聞いてみたのですが、多くは売ってもいいと考えているほか、すでに土地を売った人もいます。ただ、最初に事業者が私のところに来たのは、確かいま(記事掲載時の2018年)から2年ほど前だったと思いますが、その後も近隣の地権者を回っている様子はうかがえるものの、進展が見られません」 そこで、事業者に電話で問い合わせたところ、次のように明かした。 「当社は企画を担当しており、現在は地元地権者に協力を求めている状況ですが、実際の発電事業者は別な会社になるため、そちらにも相談してみないとお答えできないこともあります」 ただ、少なくとも「計画自体が進行中なのは間違いありません」とのことだった。 そのほか、同社への取材で、その時点で用地の約8割がまとまっていること、地権者との交渉と並行して周辺の測量などを進めていること、環境影響評価などの開発行為に関する手続きの準備・協議を管轄行政と進めていること――等々が明らかになった。 なお、同社は「近く、発電事業者との打ち合わせがあるので、取材の問い合わせがあったことは伝えておきます。そのうえで、あらためてお伝えできることがあればお伝えします」とも述べていたが、その後、同社から前述したこと以外の説明はなかった。 それから3年ほどが経った2021年1月、当時本誌にコメントしていた地権者から、こんな情報が寄せられた。 「同計画では、すでに工事が始まっていますが、予定地の山林が丸裸にされており、大雨が降ったら大丈夫なのかと不安になってきました。最初は、私も(同計画に対して)『どうせ、使っていない(耕作していない)土地だし、まあいいだろう』と思って、用地買収に応じましたが、それはあの災害の前でしたし、実際に山林が剥かれた現場を見ると、やっぱり大丈夫なのかなとの思いは拭えません」 コロナで説明の場もナシ まだ手付かずの事業用地もあり、開発面積はかなりの規模になる。  この地権者が言う「あの災害」とは、令和元年東日本台風を指している。この災害で同市では2人の死者が出たほか、住宅、農地、道路など、さまざまな部分で大きな被害を受けた。とりわけ、同市東和地区、岩代地区での被害が大きかったという。 そうした大きな災害があった後だけに、当初こそメガソーラー計画に賛意を示したものの、「これだけの大規模開発が行われ、山林が丸裸になった現場を見ると、大丈夫なのかとの思いを抱かずにはいられない」というのだ。加えて、同地区では、令和元年東日本台風の数年前にも大きな水害に見舞われたことがあり、「何年かに一度はそういったことがあり、特に近年は自然災害が増えているから余計に不安になります」(前出の地権者)という。 開発対象の森林面積は全体で約38㌶に上り、そのうち実際に開発が行われるのは約18㌶というから、かなりの大規模開発であることがうかがえる。 「当然、事業者もその辺(水害対策)は考えているだろうと思いますし、環境影響評価や開発許可などの手続きも踏んでいます。何らかの違反・違法行為をしているわけではありませんから、表立って『抗議』や『非難』をできる状況ではないと思いますが、やっぱり心配です」(同) この地権者に、そういった不安を抱かせた背景には、「新型コロナウイルスの影響」も関係している。 その理由はこうだ。 「以前は何か動きがあると、事業者から詳細説明がありました。ただ、新型コロナウイルスの問題が浮上してからは、そういうことがなくなりました。一応、経過説明などの文書が回ってくることはありますが、それだけではよく分からないこともありますし、疑問に思ったことがあっても、なかなか質問しにくい状況になっています。だから、余計に心配なのです」(同) 以前は、関係者を集めて説明する、あるいは地権者・近隣住民宅を訪問して説明する、といったことがあったようだが、コロナ禍でそうしたことが省略されているというのだ。一応、事業者から経過説明などの文書が届くことはあるようだが、それだけではよく分からないこともあるほか、疑問に思ったことを質問することもできない、と。 その結果、これだけの大規模開発を行い、山を丸裸にして治水対策などは本当に大丈夫なのか、といった不安を募らせることになったわけ。 用地買収に当たった事業者と、実際の発電事業者が別なこともあり、事業者の正確な動きはつかめていないが、いずれにしても、地元住民の不安が解消されるような対策・説明が求められる。 あわせて読みたい 二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上

  • 大玉村「メガソーラー望まない」 宣言の真意

    (2019年8月号)  原発事故の被災地である福島県では、再生可能エネルギー推進の意識が高まっている。実際、県内ではさまざまな再生可能エネルギーの導入が進んでいるが、その中心的な存在は太陽光発電だろう。震災・原発事故以降、各地で太陽光発電設備(メガソーラー)を見かけるようになった。そんな中、大玉村では「村内にはもうメガソーラーをつくらないでほしい」とする宣言を出した。その真意とは。 心配される景観悪化や発電終了後の放置 田園風景が広がる大玉村  村は、6月議会に「大規模太陽光発電所と大玉村の自然環境保全との調和に関する宣言」の案を提出、同月18日に開かれた本会議で全会一致で可決された。同日、村は「宣言」文を村のHPで公開した。以下はその全文。   ×  ×  ×  × 大規模太陽光発電所と大玉村の自然環境保全との調和に関する宣言 私たちは、化石燃料や原子力発電に依存しない社会を目指すため、太陽光、小水力、バイオマス等再生可能エネルギーを積極的に活用し、地球温暖化防止や低炭素社会の実現に向けて自然環境へ与える負荷の軽減に取り組んで来ました。 本村においては、再生可能エネルギー利用推進の村として自然環境に大きな負荷をかけない住宅屋上への太陽光発電施設や薪ストーブへの助成、豊かな水資源を活用した小水力発電民間事業者への支援等を今後も積極的に行ってまいります。 しかし一方で、自然環境に影響を与え、かつ、自然景観に著しく違和感を与えるような大規模太陽光発電所の設置が各地で行われており、傾斜地での造成や山林の大規模伐採による土砂災害への危惧や発電事業終了後の廃棄物処理等、将来への負の遺産となりうる懸念を払拭することが出来ません。 本村においては、村勢振興の重要資源である豊かな自然環境や優れた農山村の景観を未来に継承するため、「大玉村ふるさと景観保護条例」を制定しております。 また、「日本で最も美しい村」連合に加盟し「自然との共生」を目指し、農山村や田畑の原風景の維持及び魅力発信に努めて来ました。 以上の現状を踏まえて、みどり豊かな自然環境、優れた景観を保護保全するとの、本村の基本理念と著しく調和を欠くと思われる大規模太陽光発電施設の設置を望まないことをここに宣言します。 令和元年6月     大玉村長 押山利一  ×  ×  ×  × https://www.vill.otama.fukushima.jp/file/contents/1841/17082/tyouwa_sengen.pdf  村に確認したところ、同宣言の真意は次のように集約される。 ○再生可能エネルギーの推進は今後も行っていく。 ○ただ、宣言にあった理由などから、できるならメガソーラーはもうつくってほしくない。 ○もし、つくるのであれば、最後まで責任を持ってほしい。 ○今後は、建設制限などの条例化も検討していく。 現在、村内には出力約1000㌔㍗以上のメガソーラーが4カ所あるほか、新たな建設計画もあるという。今回の宣言により、現在ある建設計画がすぐに進められなくなるわけではないようだが、「できるなら、もうつくってほしくない」と。 中でもポイントになるのは、景観への配慮と、発電(耐用年数)後のソーラーパネルの処分について、ということになろう。 大玉村と言えば、田園風景が魅力の1つ。その中に、突如、ソーラーパネル群が現れたら、確かに見栄えのいいものではない。 もう1つは、ソーラーパネルの耐用年数を超えた後、更新、あるいはきちんと撤去されるのか、といった問題があること。 ソーラーパネルには鉛やセレンなどの有害物質が含まれていることもあり、発電終了後、放置・不法投棄されるようなことがあれば、景観的にも環境的にもよくない。 資源エネルギー庁の「平成29年度新エネルギー等の導入促進のための基礎調査(太陽光発電に係る保守点検の普及動向等に関する調査)」によると、「将来的な廃棄を想定して、廃棄・リサイクル費用を確保しているか」という調査で、低圧(10〜50㌔㍗)の発電事業者の74%、高圧・特別高圧(50㌔㍗以上)の発電事業者の59%が「積立していない」と回答したという。 倒産相次ぐ関連事業者  さらに、民間信用調査会社の東京商工リサーチの調査で、近年、太陽光関連事業者の倒産が相次いでいることが明らかになっている。2012(平成24)年7月に「固定価格買い取り制度(FIT)」が導入されたことで、新規参入が相次いだが、競合激化や安易な参入が原因という。 ここ10年の太陽光関連事業者の倒産件数は次の通り。なお、ここで言う「太陽光関連事業者」は、発電・売電事業者だけでなく、ソーラーパネルの製造・販売や、同事業のコンサルティング業なども含む。 2009年 26件 2010年 9件 2011年 18件 2012年 27件 2013年 28件 2014年 28件 2015年 54件 2016年 65件 2017年 87件 2018年 84件 2019年 32件(1月〜6月) こうして見ても分かるように、近年は関連事業者の倒産が大幅に増えている。 こうした点から、ソーラーパネルの耐用年数を超えた後、更新、あるいはきちんと撤去されるのか、といった不安があるのだ。 大玉村によると、「メガソーラーは固定資産税などの面で村にとってメリットもある」としながら、以上のような課題があるため、「できるなら、つくってほしくない。ただ、どうしてもというのであれば、最後まで責任を持ってほしい」というのが「宣言」の真意である。 県では2040年ごろまでに「再生可能エネルギー100%」というビジョンを掲げており、大玉村でも「再生可能エネルギーの推進は今後も行っていく」という方針には変わりはないという。そのためには、メガソーラー以外の再生可能エネルギーの推進、これまで以上の家庭用太陽光発電の導入促進といった取り組みが求められよう。

  • 二本松市岩代地区でメガソーラー計画が浮上

    (2018年2月号)  二本松市岩代地区で、民間事業者による大規模太陽光発電(メガソーラー)計画が浮上している。ある地元地権者によると、「事業者から最初に用地交渉の話があったのは2年ほど前」とのことだが、その後、計画は進展している様子が見受けられないという。 進展の遅さにヤキモキする地権者  本誌2017年12月号に「増え続ける『太陽光発電』の倒産 それでも絶えない設置計画」という記事を掲載した。原発事故以降、再生可能エネルギーの必要性が叫ばれ、その中心的な存在となっていた太陽光発電だが、東京商工リサーチのリポートによると、近年は太陽光発電関連事業者の倒産が相次いでいるのだという。そこで、あらためて同事業の状況を見た中で、同事業は成長産業と見込まれていたが、新規参入が相次いだこともあり、倒産事例も増えていることなどをリポートしたもの。 ただ、そんな中でも、本誌には県内での太陽光発電の計画話がいくつか伝わっており、同記事では二本松市岩代地区の住民のこんな声を紹介した。 「この地域(二本松市岩代地区)で太陽光発電事業をやりたいということで、少し前から事業者が山(山林)や農地を持っている地権者のところを回っているようです。それも、その範囲はかなりの広範にわたっており、もし本当にできるとしたら、相当な規模の太陽光発電所になると思われます」 この時点ではそれ以上の詳しいことは分かっていなかったが、その後の取材で、少しずつ詳細が明らかになってきた。 ある地権者は次のように話す。 「ここで太陽光発電事業をやりたいということで、この辺(の山林や農地)の地権者を回っているのは、栃木県の『博栄商事』という会社です。その後、同社と一緒に『オーシャンズジャパン』という会社の名刺を持った人もあいさつに来ました。事業者の説明によると、『買収を想定しているのは150㌶ほど。送電鉄塔が近くにあるため、太陽光発電の用地として適しており、ぜひここでやりたいから、協力(土地売却)してもらえないか』とのことでした。ただ、事業者が最初に私のところに来たのは、確か2年ほど前だったと思いますが、その後も近隣の地権者を回っている様子はうかがえるものの、全くと言っていいほど進展している様子が見受けられません。私自身は協力してもいいと思っているのですが……」 計画地は、二本松市岩代地区の上長折字加藤木地内の山林・農地で、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。この地権者によると、事業者が用地として想定している面積は約150㌶とのことだから、かなりの規模であることがうかがえる。 「計画地の大部分は山林や農地です。私の所有地は農地だが、いまは耕作していません。その近隣も、遊休農地が少なくない。ですから、売ってもいいという人は多いと思います。実際、すでに土地を売った人もいるようです」(前出の地権者) なお、この地権者の話に出てきた博栄商事は、栃木県茂木町に本社を置く株式会社。1972(昭和47)年設立。資本金2000万円。同社のHPや商業登記簿謄本を見ると、不動産業が主業のようで、太陽光発電関連の事業実績は見当たらない。役員は代表取締役・細野正博、取締役・能代英樹の2氏。 もう一方のオーシャンズジャパンは、本社が東京都新宿区の合同会社。2015(平成27)年設立。資本金1万円。事業目的は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、太陽熱等の再生可能エネルギーによる発電事業及びその管理・運営・電気の供給・販売等に関する業務、発電設備の設置、保守管理業務など。役員は業務執行社員・坂尾純一氏。 こうして両社のHPや商業登記簿謄本などを見る限り、博栄商事は用地交渉役(仲介役)で、実際の発電事業者はオーシャンズジャパンと見るのが自然か。 前出の地権者によると、「すでに土地を売った人もいるようだ」とのことだから、すでに投資が発生している以上、事業者が〝本気〟なのは間違いなさそう。ただ、この地権者の話では、最初に相談があったのは2年ほど前で、以降も事業者が地権者宅を回っている様子はうかがえるものの、計画が進捗している様子は見えないというのだ。 「おおよそですが、地権者は20〜30人くらいになると思います。知り合いの地権者にも聞いてみたところ、多くの人が協力してもいいと考えているようで、すでに土地を売った人もいるようですが、逆にまだ全然そんな話(用地交渉)がないという人もいます。ただ、少なくとも、私は最初に相談があってから2年近くが経っています。それなのに話が進展しないので、一体どうなっているんだろう、と」(前出の地権者) 事業者が目星を付けたところは、多くが山林や遊休農地のため、地権者からしたら「買ってくれるならありがたい」ということなのだろうが、その後、話が進展している様子が見えないため、「本当にできるのか」といった思いを抱いていることがうかがえる。 「計画は進行中」と事業者  そこで、計画の進捗状況や事業概要などを聞くため、博栄商事に問い合わせてみたところ、同社担当者は「当社は企画を担当しており、実際の発電事業者は別な会社になるため、発電事業者に確認してみないことにはお答えできないこともあります」とのことだったが、「計画自体が進行中なのは間違いありません」と明かした。 そこで、本誌記者は「地元住民からは、『オーシャンズジャパン』という会社の名刺を持った人もあいさつに来ていたとの話も聞かれたが、いまの説明に出てきた『発電事業者』はオーシャンズジャパンのことか」と尋ねてみた。 すると、博栄商事の担当者は「当初はその予定で、もともとは同社から依頼があり、当社が企画を担当することになりました。ただその後、事情があって発電事業者は変わりました。新しい事業者は横浜市の会社で、二本松市に現地法人を立ち上げ、そこが太陽光発電所を運営することになります」と語った。 このほか、博栄商事の担当者への取材で明らかになったのは、①用地は8割ほどまとまっていること、②現在、境界周辺の測量を実施しているほか、環境影響評価などの開発行為に関する手続きの準備・協議を進めていること――等々。 そのうえで、同社担当者は「近く発電事業者と打ち合わせがあるので、問い合わせがあったことは伝えます。そこで発電事業者と相談のうえ、あらためてお伝えできることはお伝えします」と話した。 発電規模や発電開始時期の目標などは明らかにされなかったが、いずれにしても、計画が進行中なのは間違いないようだ。 ただ、前述したように、用地の大部分は山林・農地のため、開発の必要があり、そのためには各種手続きが必要になるから、近隣住民の目に見える形(工事など)で動きがあるまでにはもう少し時間がかかりそうな状況だ。おそらく、開発に当たっての環境影響評価方法書の縦覧などまで計画が進展しなければ、具体的なものは見えてこないのではないかと思われる。 近隣にも太陽光発電所が 二本松太陽光発電所(旧ゴルフ場)  ところで、一連の取材で同計画地周辺を歩いてみたところ、同所のほかにも太陽光発電所、あるいはそのための造成工事中のところがあることが目に付いた。 1つは、以前、本誌でも取り上げたサンフィールド二本松ゴルフ倶楽部岩代コース跡地。同ゴルフ場については、過去の本誌記事で次のようなことを伝えた。 ①同ゴルフ場は、東日本大震災を受け、クラブハウスやコースが被害を受けたほか、原発事故によりコース上で高い放射線量が計測されたため、一時閉鎖して施設修繕や除染を行ったうえで、営業再開を目指していた。 ②それと平行して、同ゴルフ場を運営するサンフィールドは、東京電力を相手取り放射性物質の除去などを求め、東京地裁に仮処分申し立てを行った。しかし、同申し立てが却下されたため、同社は2011年7月上旬ごろまでにホームページ上で「当面の休業」を発表した。なお、同仮処分申請の中で、東電が「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって東電には除染責任がない」との主張を展開し、県内外で大きな注目を集めた。 ③そんな中、同ゴルフ場では、「ゴルフ場をやめて大規模太陽光発電施設にするらしい」といったウワサが浮上した。ある関係者によると「大手ゼネコンが主体となり、京セラのシステムを使うそうだ」といったかなり具体的な話も出ていたが、「正式に打診があったわけではないらしく、結局、その話は立ち消えになった」(同)とのことだった。 ④その後、2012年秋ごろまでに、同ゴルフ場の駐車場に仮設住宅のような長屋風の建物がつくられ、除染作業員などの仮設宿舎になった。同ゴルフ場には立派なホテルも併設されているが、そこも作業員宿舎(食堂?)になった。ある地権者によると、「サンフィールドは『ビジネス上の付き合いから、除染事業者である大成建設に無償貸与している』と説明していた」とのことだった。そのため、少なくとも、この時点では、ゴルフ場再開の可能性は事実上なくなり、用地がどうなるのかが注目されていた。 ⑤2014年春になると、先のウワサとは別に、大規模太陽光発電施設にする目的で、ゴルフ場用地を買いたいという会社が現れた。その会社は、東京都港区に本社を置く日本再生可能エネルギーで、ある地権者は「同社の要請(土地売却)に応じた。私の知る限り、ほとんどが同様の意向だと思う」と話した。 過去の本誌記事でリポートしたのはここまでだが、その後も、この地権者(元地権者)からは「日本再生可能エネルギーで太陽光発電所に必要なだけの用地をまとめ、本格的に動き出した」といった話は聞かされていた。もっとも、この地権者(元地権者)自身が「土地を売ったことで、直接的には関係なくなったから、詳しいことは分からないけど……」とのことで、具体的な事業の進捗状況などは分かっていなかった。 今回、あらためて同所を訪ねてみると、「二本松太陽光発電所」という看板が立てられ、外から様子をうかがった限りでは、太陽光発電所として稼働しているように見受けられた。同所を取得した日本再生可能エネルギーのHPを見てみると、国内他所の太陽光発電所に関するリリースは出ているものの、二本松太陽光発電所についてのリリースは見当たらなかった。 そこで、同社に問い合わせてみたところ、①同発電所は2017年8月から稼働していること、②発電規模は29・5㍋㍗であること――が明らかになった。つまり、すでに発電・売電を行っている、と。 なお、同社は太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーを利用した発電・売電事業を手掛ける株式会社で、2013年5月10日設立。代表はアダム・バリーン氏。HPに掲載されたリリースを見る限り、国内各地で太陽光発電所を運営しており、県内では二本松市のほかに、国見町でも2016年2月から太陽光発電所を稼働している。 工事中の計画  一方、その近くでは別の太陽光発電所の工事が行われていた。工事案内板を見ると、場所は「初森字天狗塚69―1 外3筆」、目的は「太陽光発電所建設用地の造成」、林地開発について「許可を受けた者」は札幌市の「エム・エス・ケイ」と書かれていた。 同社について調べてみると、札幌市で「ホテル翔SAPPORO」を経営しており、ホテル経営が主業のようだ。ただ、同社の商業登記簿謄本を確認すると、事業目的は、以前は①ホテル及び旅館の運営管理、②不動産の売買及び賃貸、③古物商の経営などだったが、2016年8月に変更され、再生可能エネルギーによる発電事業及び発電設備の販売、施工工事請負が追加された。最近になり、同事業に参入したことがうかがえる。 同社に二本松市で太陽光発電事業をやることになった経緯などについて問い合わせたところ、一度、連絡はあったものの、質問に対する回答は本号締め切りには間に合わなかった。そのため、事業規模などは現時点では明らかになっていない。 ちなみに、冒頭紹介した計画は、前述した通り、市役所岩代支所から国道459号沿いに3㌔ほど東に行った辺り。そこから直線距離で1㌔ほど南にいったところに二本松太陽光発電所(ゴルフ場跡地)があり、さらに直線距離で南に1㌔ほどの辺りに現在工事中のエム・エス・ケイの事業地がある。 こうして見ると、同地区周辺は民間の、それも県外事業者による太陽光発電施設、あるいはその計画が多いことが分かる。 ある地元住民は「震災・原発事故を経て、結果的にそうなりましたね。課題はソーラー発電システムの耐用年数を超えた時にどうなるのかということでしょうけど、そこさえしっかりしてもらえれば、地域としてこういうものを推奨していくのもいいのではないか」と語った。 あわせて読みたい 【二本松市岩代地区】民間メガソーラー事業に不安の声