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東京電力

  • 【原発事故対応】東電優遇措置の実態

    会計検査院報告を読み解く  会計検査院は2022年11月7日、岸田文雄首相に「令和3年度決算検査報告」を提出した。同報告は、国の歳入・歳出・決算や、国関係機関の収入支出決算などについて、会計検査院が実施した会計検査結果をまとめたもの。その中に、「東京電力ホールディングスが実施する原子力損害の賠償及び廃炉・汚染水・処理水対策並びにこれらに対する国の支援等の状況について」という項目がある。国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通して東電に交付した資金などについて検査したものである。その中身を検証しつつ、原発事故の後処理のあり方について述べていく。  最初に、原発事故の後処理費用の仕組みについて説明する。原発事故の後処理は、大きく①廃炉、②賠償、③除染(中間貯蔵施設費用などを含む)の3つに分類される。当初、国・東電ではこれら費用を計約11兆円と想定していた。  ただ後に、経済産業省の第三者機関「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」(東電改革委)の試算で、当初想定の約2倍に当たる約21・5兆円に膨らむ見通しとなった。内訳は、廃炉が約8兆円、賠償が約7・9兆円、除染が約5・6兆円(除染約4兆円、中間貯蔵施設費用約1・6兆円)となっている(2016年12月にまとめた「東電改革提言」に基づく)。  東電では、これらの後処理を原子力損害賠償・廃炉等支援機構の支援を受けて実施している。同機構は今回の原発事故を受け、2011年9月に設立され、現在、東電の株式の50%超を保有している。東電は2012年7月に1兆円分の新株(優先株式)を発行し、同機構(※実質的には国)がそれを引き受けた。これによって同機構が東電の筆頭株主になった。「東電の実質国有化」と言われる所以である。  新株発行によって得られた1兆円は、廃炉費用に充てられている。加えて、東電ではコスト削減や資産売却などにより、残りの廃炉費用を捻出することにしていた。それらは廃炉のための基金に繰り入れられ、2021年、策定・認定された「第4次総合特別事業計画」によると、東電は年平均で約2600億円を廃炉費用として積み立てる方針。  会計検査院の報告によると、2021年度末までに廃炉、汚染水処理などに使われた費用は約1・7兆円。基金残高は5855億円という。  もっとも、当初、廃炉費用は2兆円と推測されていたが、東電改革委の再試算では8兆円になるとの見通しが示された。しかも、これは2016年12月に試算されたもので、今後さらに増える可能性もある。  次に賠償。これも原子力損害賠償・廃炉等支援機構の支援の下で実施されている。国は同機構に5兆円の交付国債をあてがい、後に2回にわたって積み増しされ、発行限度額は13・5兆円となった。同機構は東電から資金交付の申請があれば、その中身を審査し、それが通れば、国からあてがわれた交付国債を現金化して東電に交付する。東電は、それを賠償費用に充てているわけ。  東電発表のリリース(10月24日付)によると、これまでに10兆3310億円の資金交付を受けている。  一方、東電の賠償支払い実績は約10兆4916億円(10月末時点)となっており、金額はほぼ一致している。詳細は別表に示した通りで、「個人への賠償」は精神的損害賠償、就労不能損害賠償、自主避難に伴う損害賠償など、「法人・個人事業主への賠償」は営業損害賠償など、「共通・その他」は財物賠償、福島県民健康管理基金など。  なお、東電発表(表に示した数字)には閣議決定や放射性物質汚染対処特措法に基づく、除染費用3兆2899億円(9月末現在)も含まれている。そのため、「純粋な賠償」の合計は約7・2兆円となる。  東電改革委が示した要賠償額は7・9兆円だから、あと7000億円ほどでそれに達する。これから処理済み汚染水の海洋放出が長期間にわたって実施され、それに伴う賠償支払い義務が生じる可能性があること、東電を相手取った集団訴訟の判決が少しずつ確定しており、賠償の基本ルールを定めた原子力損害賠償紛争審査会が中間指針の見直し(新たな賠償項目の策定)を進めていることなどを踏まえると、要賠償額はさらに増える可能性もあるのではないか。  最後に除染。言うまでもなく、東電は撒き散らした放射性物質を除去する責任があり、本質的には除染は原因者である東電が実施するべきものだ。ただ、住民の健康への影響などを考慮すると、早急に対応しなければならないことから、2011年8月に「放射性物質汚染対処特措法」が公布され、旧警戒区域などの避難指示区域は国(環境省)が行い、それ以外で除染が必要な地域は市町村が実施することになった。  さらに、同法では「当該関係原子力事業者の負担の下に実施される」とされており、東電が費用負担することになっているが、一挙的に捻出できないことから、国が一時的に立て替え、後に東電に求償する、と規定されている。実際にどうやって国からの求償(請求)に応じているかというと、前段の賠償の項目で述べたように、支援機構が国からあてがわれた交付国債から資金援助を受けて、支払いに応じている。その分のこれまでの累計額が前述の表に示した約3・3兆円となっている。 会計検査院報告の中身  以上が原発事故の後処理費用のおおまかな仕組みである。 整理すると、国は東電の株式を引き受けた分の1兆円、支援機構を通して援助している交付国債分の13・5兆円の資金的援助を行っているのである。会計検査院は、それらの使われ方がどうなっているか、といった視点から「特定検査対象」として検査を行い、報告書にまとめたのだ。  以下、報告書の中身について見ていく。  まず、支援機構が所有している東電の株式だが、いずれは売却して、それで得た利益が国に返納される。東電の株価は原発事故前は2000円前後だったが、原発事故後は100円代にまで落ち込んだ。11月17日の終値は458円。国の当初の目論見からすると、伸び悩んでいると言えよう。  会計検査院の報告では東電株式の売却益が①4兆円、②2・5兆円、③1100億円になった場合の3ケースで試算されている。  もう1つ、東電が同機構から交付を受けた資金は、各原子力事業者が同機構に支払う「負担金」から償還される。別表は2022年度の負担金額と割合を示したもの。これを「一般負担金」と言い、〝当事者〟である東電はそのほかに「特別負担金」を納めている。2021年度は400億円で、東電の財務状況に応じて、同機構が徴収するもの。それを含めると負担金の合計は約2300億円となる。こうして同機構では毎年、原子力事業者から負担金を徴収し、それを国からの交付国債分の返済に充てる。要するに、原発事故の後処理にかかった費用は、東電だけでなくほかの原子力事業者も負担しているのだ。  2021年度までの一般負担金の累計額は1兆5168億円(うち東電負担額は5322億円)、特別負担金の累計額は5100億円で、計約2兆円。いまのペース(年間2300億円)で行くと、限度額である13・5兆円の返済にはあと50年ほどかかる計算だが、これに前段の東電株式の売却益が絡んでくる。 返済は最長42年後  会計検査院では、特別負担金が2022〜2025年度は500億円、2026年以降は1000億円になると仮定した場合(ケースa)、2022年度以降も2021年度同様400億円と仮定した場合(ケースb)に分け、株式売却益が①②③のケースと合わせて試算している。  返済終了時期は「ケースa①」が2044年度、「ケースa②」が2048年度、「ケースa③」が2056年度、「ケースb①」が2047年度、「ケースb②」が2053年度、「ケースb③」が2064年度となっている。最短で22年後、最長で42年後までかかるという試算である。  ここで問題になるのは、国は交付国債の利息分は東電に負担を求めないこと。当然、返済終了までの期間が長引けば利息(すなわち国負担)は増える。一部報道によると、利息分は前述の試算の最短で約1500億円、最長で約2400億円というから、約900億円違ってくる。  こうした状況から、会計検査院の報告では、国、支援機構、東電のそれぞれに以下のように求めている。  国(経済産業省)▽ALPS処理水の海洋放出に伴う風評被害や中間指針の見直しなどが明らかになり、交付国債の発行限度額を見直す場合は、その妥当性を検証し、負担のあり方や必要性を含めて国民に十分に説明すること。  支援機構▽一般負担金、特別負担金のあり方について説明を行い、電力安定供給や経理的基礎を毀損しない範囲で、できるだけ高額の負担金を求めたものになっているかについて、国民に丁寧に説明すること。廃炉の進捗状況、廃炉費用の見積もり状況などを適正に把握したうえで、適正な積立金の管理、十分な積立額を決定していくこと。  東電▽電力安定供給を実現しながら、賠償・廃炉などを行い、より一層の収益力改善、財務体質強化に取り組むこと。  最後に、《本院としては、今後の賠償及び廃炉に向けた取り組み等の進捗状況を踏まえつつ、今後とも東京電力が実施する原子力損害の賠償及び廃炉・汚染水・処理水対策並びにこれらに対する国の支援等の状況について引き続き検査していくこととする》と結ばれている。 福島第一原発敷地内の汚染水タンク群(2021年1月、代表撮影) 特定企業への優遇措置  そんな中で、本誌が指摘したいのは3つ。  1つは、国・東電の見通しの甘さだ。民間シンクタンクの「日本経済研究センター」が2019年に公表したリポートによると、「閉じ込め・管理方式」にした場合、汚染水を海洋放出した場合、汚染水を海洋放出しなかった場合の3ケースで試算を行ったところ、費用は35兆円から81兆円になるという。いずれも、国の試算(21・5兆円)を大きく上回っている。そもそも、廃炉(燃料デブリの取り出し)は可能かといった問題もあり、いままで経験したことがないことをやろうとしている割には、費用面を含めて甘く見過ぎている印象は否めない。  2つは、賠償のあり方。前段で述べたように、国(東電改革委)の試算で、要賠償額は7・9兆円とされた。東電は「何とかそこに収めよう」といった発想になっているのではないか。それが営業損害賠償の一方的な打ち切りや、ADR和解案の拒否連発につながっているように思えてならない。原則は、被害が続く限りは賠償するということで、「賠償をこの金額内に収める」といったことがあってはならない。  3つは、東電がいかに優遇されているか、である。ここで述べてきたように、東電は、国(支援機構)に新株を引き受けてもらい、無利子で資金援助を受けている。その返済も、本来関係がないほかの電力会社に協力してもらっている。除染にしても、本来なら東電主体で実施しなければならないが、国(環境省)や自治体が担った。除染作業を押し付けられた自治体では、例えば仮置き場の確保などに相当苦労していたが、本来は必要がなかった作業・苦労だ。  もちろん、原発事故は「国難」だから、国、自治体、住民みんなで乗り越えていかなければならない側面はあろう。ただ、これが「普通の企業」が起こした事故だったら、ここまでの救済措置は取られなかったに違いない。結局のところ、国による東電(特定企業)へのレント・シーキング(優遇措置)でしかない。

  • 【原発事故対応】東電優遇措置の実態

    会計検査院報告を読み解く  会計検査院は2022年11月7日、岸田文雄首相に「令和3年度決算検査報告」を提出した。同報告は、国の歳入・歳出・決算や、国関係機関の収入支出決算などについて、会計検査院が実施した会計検査結果をまとめたもの。その中に、「東京電力ホールディングスが実施する原子力損害の賠償及び廃炉・汚染水・処理水対策並びにこれらに対する国の支援等の状況について」という項目がある。国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通して東電に交付した資金などについて検査したものである。その中身を検証しつつ、原発事故の後処理のあり方について述べていく。  最初に、原発事故の後処理費用の仕組みについて説明する。原発事故の後処理は、大きく①廃炉、②賠償、③除染(中間貯蔵施設費用などを含む)の3つに分類される。当初、国・東電ではこれら費用を計約11兆円と想定していた。  ただ後に、経済産業省の第三者機関「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」(東電改革委)の試算で、当初想定の約2倍に当たる約21・5兆円に膨らむ見通しとなった。内訳は、廃炉が約8兆円、賠償が約7・9兆円、除染が約5・6兆円(除染約4兆円、中間貯蔵施設費用約1・6兆円)となっている(2016年12月にまとめた「東電改革提言」に基づく)。  東電では、これらの後処理を原子力損害賠償・廃炉等支援機構の支援を受けて実施している。同機構は今回の原発事故を受け、2011年9月に設立され、現在、東電の株式の50%超を保有している。東電は2012年7月に1兆円分の新株(優先株式)を発行し、同機構(※実質的には国)がそれを引き受けた。これによって同機構が東電の筆頭株主になった。「東電の実質国有化」と言われる所以である。  新株発行によって得られた1兆円は、廃炉費用に充てられている。加えて、東電ではコスト削減や資産売却などにより、残りの廃炉費用を捻出することにしていた。それらは廃炉のための基金に繰り入れられ、2021年、策定・認定された「第4次総合特別事業計画」によると、東電は年平均で約2600億円を廃炉費用として積み立てる方針。  会計検査院の報告によると、2021年度末までに廃炉、汚染水処理などに使われた費用は約1・7兆円。基金残高は5855億円という。  もっとも、当初、廃炉費用は2兆円と推測されていたが、東電改革委の再試算では8兆円になるとの見通しが示された。しかも、これは2016年12月に試算されたもので、今後さらに増える可能性もある。  次に賠償。これも原子力損害賠償・廃炉等支援機構の支援の下で実施されている。国は同機構に5兆円の交付国債をあてがい、後に2回にわたって積み増しされ、発行限度額は13・5兆円となった。同機構は東電から資金交付の申請があれば、その中身を審査し、それが通れば、国からあてがわれた交付国債を現金化して東電に交付する。東電は、それを賠償費用に充てているわけ。  東電発表のリリース(10月24日付)によると、これまでに10兆3310億円の資金交付を受けている。  一方、東電の賠償支払い実績は約10兆4916億円(10月末時点)となっており、金額はほぼ一致している。詳細は別表に示した通りで、「個人への賠償」は精神的損害賠償、就労不能損害賠償、自主避難に伴う損害賠償など、「法人・個人事業主への賠償」は営業損害賠償など、「共通・その他」は財物賠償、福島県民健康管理基金など。  なお、東電発表(表に示した数字)には閣議決定や放射性物質汚染対処特措法に基づく、除染費用3兆2899億円(9月末現在)も含まれている。そのため、「純粋な賠償」の合計は約7・2兆円となる。  東電改革委が示した要賠償額は7・9兆円だから、あと7000億円ほどでそれに達する。これから処理済み汚染水の海洋放出が長期間にわたって実施され、それに伴う賠償支払い義務が生じる可能性があること、東電を相手取った集団訴訟の判決が少しずつ確定しており、賠償の基本ルールを定めた原子力損害賠償紛争審査会が中間指針の見直し(新たな賠償項目の策定)を進めていることなどを踏まえると、要賠償額はさらに増える可能性もあるのではないか。  最後に除染。言うまでもなく、東電は撒き散らした放射性物質を除去する責任があり、本質的には除染は原因者である東電が実施するべきものだ。ただ、住民の健康への影響などを考慮すると、早急に対応しなければならないことから、2011年8月に「放射性物質汚染対処特措法」が公布され、旧警戒区域などの避難指示区域は国(環境省)が行い、それ以外で除染が必要な地域は市町村が実施することになった。  さらに、同法では「当該関係原子力事業者の負担の下に実施される」とされており、東電が費用負担することになっているが、一挙的に捻出できないことから、国が一時的に立て替え、後に東電に求償する、と規定されている。実際にどうやって国からの求償(請求)に応じているかというと、前段の賠償の項目で述べたように、支援機構が国からあてがわれた交付国債から資金援助を受けて、支払いに応じている。その分のこれまでの累計額が前述の表に示した約3・3兆円となっている。 会計検査院報告の中身  以上が原発事故の後処理費用のおおまかな仕組みである。 整理すると、国は東電の株式を引き受けた分の1兆円、支援機構を通して援助している交付国債分の13・5兆円の資金的援助を行っているのである。会計検査院は、それらの使われ方がどうなっているか、といった視点から「特定検査対象」として検査を行い、報告書にまとめたのだ。  以下、報告書の中身について見ていく。  まず、支援機構が所有している東電の株式だが、いずれは売却して、それで得た利益が国に返納される。東電の株価は原発事故前は2000円前後だったが、原発事故後は100円代にまで落ち込んだ。11月17日の終値は458円。国の当初の目論見からすると、伸び悩んでいると言えよう。  会計検査院の報告では東電株式の売却益が①4兆円、②2・5兆円、③1100億円になった場合の3ケースで試算されている。  もう1つ、東電が同機構から交付を受けた資金は、各原子力事業者が同機構に支払う「負担金」から償還される。別表は2022年度の負担金額と割合を示したもの。これを「一般負担金」と言い、〝当事者〟である東電はそのほかに「特別負担金」を納めている。2021年度は400億円で、東電の財務状況に応じて、同機構が徴収するもの。それを含めると負担金の合計は約2300億円となる。こうして同機構では毎年、原子力事業者から負担金を徴収し、それを国からの交付国債分の返済に充てる。要するに、原発事故の後処理にかかった費用は、東電だけでなくほかの原子力事業者も負担しているのだ。  2021年度までの一般負担金の累計額は1兆5168億円(うち東電負担額は5322億円)、特別負担金の累計額は5100億円で、計約2兆円。いまのペース(年間2300億円)で行くと、限度額である13・5兆円の返済にはあと50年ほどかかる計算だが、これに前段の東電株式の売却益が絡んでくる。 返済は最長42年後  会計検査院では、特別負担金が2022〜2025年度は500億円、2026年以降は1000億円になると仮定した場合(ケースa)、2022年度以降も2021年度同様400億円と仮定した場合(ケースb)に分け、株式売却益が①②③のケースと合わせて試算している。  返済終了時期は「ケースa①」が2044年度、「ケースa②」が2048年度、「ケースa③」が2056年度、「ケースb①」が2047年度、「ケースb②」が2053年度、「ケースb③」が2064年度となっている。最短で22年後、最長で42年後までかかるという試算である。  ここで問題になるのは、国は交付国債の利息分は東電に負担を求めないこと。当然、返済終了までの期間が長引けば利息(すなわち国負担)は増える。一部報道によると、利息分は前述の試算の最短で約1500億円、最長で約2400億円というから、約900億円違ってくる。  こうした状況から、会計検査院の報告では、国、支援機構、東電のそれぞれに以下のように求めている。  国(経済産業省)▽ALPS処理水の海洋放出に伴う風評被害や中間指針の見直しなどが明らかになり、交付国債の発行限度額を見直す場合は、その妥当性を検証し、負担のあり方や必要性を含めて国民に十分に説明すること。  支援機構▽一般負担金、特別負担金のあり方について説明を行い、電力安定供給や経理的基礎を毀損しない範囲で、できるだけ高額の負担金を求めたものになっているかについて、国民に丁寧に説明すること。廃炉の進捗状況、廃炉費用の見積もり状況などを適正に把握したうえで、適正な積立金の管理、十分な積立額を決定していくこと。  東電▽電力安定供給を実現しながら、賠償・廃炉などを行い、より一層の収益力改善、財務体質強化に取り組むこと。  最後に、《本院としては、今後の賠償及び廃炉に向けた取り組み等の進捗状況を踏まえつつ、今後とも東京電力が実施する原子力損害の賠償及び廃炉・汚染水・処理水対策並びにこれらに対する国の支援等の状況について引き続き検査していくこととする》と結ばれている。 福島第一原発敷地内の汚染水タンク群(2021年1月、代表撮影) 特定企業への優遇措置  そんな中で、本誌が指摘したいのは3つ。  1つは、国・東電の見通しの甘さだ。民間シンクタンクの「日本経済研究センター」が2019年に公表したリポートによると、「閉じ込め・管理方式」にした場合、汚染水を海洋放出した場合、汚染水を海洋放出しなかった場合の3ケースで試算を行ったところ、費用は35兆円から81兆円になるという。いずれも、国の試算(21・5兆円)を大きく上回っている。そもそも、廃炉(燃料デブリの取り出し)は可能かといった問題もあり、いままで経験したことがないことをやろうとしている割には、費用面を含めて甘く見過ぎている印象は否めない。  2つは、賠償のあり方。前段で述べたように、国(東電改革委)の試算で、要賠償額は7・9兆円とされた。東電は「何とかそこに収めよう」といった発想になっているのではないか。それが営業損害賠償の一方的な打ち切りや、ADR和解案の拒否連発につながっているように思えてならない。原則は、被害が続く限りは賠償するということで、「賠償をこの金額内に収める」といったことがあってはならない。  3つは、東電がいかに優遇されているか、である。ここで述べてきたように、東電は、国(支援機構)に新株を引き受けてもらい、無利子で資金援助を受けている。その返済も、本来関係がないほかの電力会社に協力してもらっている。除染にしても、本来なら東電主体で実施しなければならないが、国(環境省)や自治体が担った。除染作業を押し付けられた自治体では、例えば仮置き場の確保などに相当苦労していたが、本来は必要がなかった作業・苦労だ。  もちろん、原発事故は「国難」だから、国、自治体、住民みんなで乗り越えていかなければならない側面はあろう。ただ、これが「普通の企業」が起こした事故だったら、ここまでの救済措置は取られなかったに違いない。結局のところ、国による東電(特定企業)へのレント・シーキング(優遇措置)でしかない。