【南相馬市】元市幹部が地元紙に「ウソの証言」

【南相馬市】元市幹部が地元紙に「ウソの証言」

 2022年10月12日付の福島民友に震災・原発事故当時、原町区役所長だった元職員の発言や行動を紹介する記事が載った。しかし、その内容は〝真っ赤なウソ〟だった。

裏取り怠った記者に市OBが憤慨

裏取り怠った記者に市OBが憤慨

 記事は「緊急時避難準備区域 残る市民置いてはいけず」という見出しで、震災・原発事故当時、原町区役所長を務めていた鈴木好喜氏の発言や行動を紹介している。

 どんなことが書かれていたか、一部抜粋する。

 《南相馬市は、市役所が緊急時避難準備区域に入ったが、行政機能をそのまま残す道を選択した。「避難できない市民を置いてはいけない。(移転には)賛成しかねる」。当時、市原町区役所長だった鈴木好喜さん(71)は市役所機能の一部を残して職員は市内にとどまるよう桜井勝延市長に進言した》

 《市執行部内で「行政機能も移転すべきではないか」との議論が持ち上がった。それでは、避難できず、残された市民のケアはどうするのか―。幹部会議で口火を切ったのは鈴木さんだった。「健康状態が悪い人や体が不自由な人は自宅に残らざるを得ない。行政機能を残すにしても支所、出張所として市役所に一定の機能を残すべきだ」と主張。市は最終的に、行政機能をとどめる方針を決定した》

 福島第一原発に近い双葉郡の町村は、全住民を避難させるとともに行政機能を他の自治体に移転したが、南相馬市は小高区の全住民を中心に避難させたものの、市役所はその場(原町区)にとどめた。

 同紙の記事によれば、当時の桜井市長がそれを決定したのは、原町区役所長だった鈴木氏の進言があったから、というわけ。

ウソに憤慨するOBたち

 「とんでもないデタラメ。よくこんなウソが言えるなと、記事を読んで呆れ返った」

 そう話すのはある市役所OB。OBたちの間では今、この記事に強く憤慨しているという。

 「鈴木氏は原発事故後、真っ先に市外へと避難した。そんな人が『市役所機能を残せ』などと偉そうなことを言うはずがない。当時を知る職員が見たら即ウソとバレる内容を、よく堂々と話せたものです」(同)

 前稿に登場した桜井氏にも確認してみた。

 「記事をそのまま読むと、市役所機能が市内にとどまったのは鈴木氏の進言のおかげ、となるが、そうした事実はない」

 桜井氏によると、鈴木氏は当時、県外の避難所を回ると称して市内にいなかったという。市民をバスなどで市外に避難させた後、桜井氏は秘書課職員と運転手の計3人で、避難者を受け入れてくれた自治体に挨拶回りをしたが、新潟県妙高市を訪ねた際、現地のビジネスホテルに着くと駐車場に見覚えのある車が停まっていたという。当時、鈴木氏が乗っていた車だった。

 すると、翌日の朝食会場で鈴木氏に遭遇。桜井氏が「こんなところで何をしているのか」と尋ねると、鈴木氏は「避難者を受け入れてくれた自治体を訪ね歩いて、お礼を言っている」と説明した。しかし、各地の首長に直接会って挨拶していた桜井氏に対し、鈴木氏はどこの自治体の誰に会っていたか定かでなく、市役所が公務として命じたこともなければ、鈴木氏から復命書が提出されたわけでもなかった。

 「私が市役所機能を市内にとどめると決めたのは3月20日です。あの時、私の決定に賛同する幹部職員はほとんどいなかったが、そもそも鈴木氏は避難してその場にすらいなかったので、彼から進言を受けることはあり得ない」(桜井氏)

 では、鈴木氏はなぜ福島民友にあんなウソをついたのか。真意を確かめるため、原町区内にある鈴木氏の自宅に文書で質問を送ったが、本稿締め切りまでに返答はなかった。

 市役所OBや桜井氏は、鈴木氏だけでなく、記事を掲載した同紙にも強く憤っている。確認すればすぐにウソと分かる発言を、なぜ真に受けたのか。桜井氏も同紙に「きちんと裏取りしたのか」と抗議したが、記事執筆から掲載までの経緯は説明がなかったという。

 同紙に事実関係を尋ねると、担当者は次のようにコメントした。

 「記事は取材に基づき書かれたものとご理解ください」

 ウソをついた鈴木氏に問題の根源があることは言うまでもないが、それをそのまま記事にして市民に誤解を与えた同紙も反省すべきだろう。

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