【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー(2024.2)

【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー(2024.2)

すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、22年11月から現職。

 新型コロナウイルスの感染拡大はひと段落したものの、円安や原油価格・物価高騰、人手不足により、中小・小規模事業所は厳しい状況に置かれている。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応にも追われている。白河商工会議所の鈴木俊雄会頭(アクティブワン代表取締役)に管内の現状と今後の展望について語ってもらった。

課題に直面する会員事業所の自己変革・生産性向上を支援。

 ――新型コロナウイルスが5類に移行しましたが、管内の現状は。

 「特に影響が大きかったのは飲食業ですが、コロナ前の水準に戻りつつあります。イベントに関しては、昨年から白河だるま市が通常開催となりましたが、大勢の人出でにぎわい、今年は昨年を上回る見込みです。

 一方で、各事業所が営業時間やスタッフ配置を見直して生き残りを図っていたところに急激に客足が戻ってきたので、飲食店は人手不足となり、大人数での宴会を断っている店もあります。運転手不足で帰りのタクシーや代行業者を探すのも一苦労の状況で、飲酒運転増加につながることが懸念されています」

 ――円安や燃料高・物価高も企業経営に大きな影響を与えています。

 「ロシアのウクライナ侵攻など外的要因もあるので、ある程度やむを得ない面があります。政府では原油・物価高騰に対応した補助金を設けたほか、取引先との取引適正化を図る『パートナーシップ構築宣言』を推進しています。会員事業所の中にも大手企業とのパートナーシップ宣言に着手したところがありますが、経費増分をすべて吸収する取引金額に設定するのはなかなか難しいと思います。

 1月1日からは電子帳簿保存法の猶予期間が終了し、電子データは保存要件に従った形で保存することが求められるようになりました。インボイス制度すら対応できていない会員事業所も多い中、本業以外に対応しなければならないことがありすぎて付いていくのは容易でありません。当会議所としても会員事業所に寄り添いながらサポートしています」

 ――中小・小規模事業所にとっては人手不足も大きな課題です。

 「当会議所の管内には大手企業の工場が多く進出していますが、それらの企業は政府が掲げる賃上げ政策、働き方改革を忠実に実行しており、人手不足の中でもそれなりに従業員を確保しているように見えます。

 問題は、経営的にそうした対策を講じる余裕がなく、大手企業に求職者を取られてしまう中小・小規模事業所です。当会議所で会員事業所にアンケート調査を行ったところ、新入社員の定着率は5年間で53%でした。新入社員の半分が、より良い条件を求めて、5年以内に離職していることになります。

 政府は『成長と分配の好循環』を掲げ、賃上げ政策や働き方改革を進めていますが、賃上げは売り上げが上がり、利益が確保されて初めて実行できるもの。政府が掲げている方針は順序が逆なのです。無理やり賃上げすることでデフレから脱却できる可能性は生まれるかもしれませんが〝痛み〟は伴うでしょう。

 加えてコロナ禍前後で経済構造が大きく変わってしまい、ビジネス形態や社会環境も様変わりしました。だからこそ中小・小規模事業所は現状維持でなく、生産性向上や自己変革を必須の課題として取り組んでいく必要があります」

人手不足解消に注力

 ――会員事業所の人手不足を解消するための施策は。

 「人手不足対策に関しては、就職を希望する高校生を対象とした就職説明会を続けています。また、進学で市外に出て行った学生が就職活動する際、無料通信アプリ『LINE』を使って地元企業の就職情報、地元情報にアクセスできる仕組みを作りました。『LINE』アカウントに登録した人には地元産の生活用品を贈呈しています。最近は学生の家族が登録するケースも増えています。

 管内には製造業が多いですが、市では今後、研究開発拠点の誘致を目指しています。当会議所としてもそうした拠点が増えていき、多様な人材が集まることを期待しています」

 ――今後の重点事業について。

 「本年4月1日から『中心市街地活性化基本計画』が第4期目に入ります。中心市街地には白河市立図書館や白河文化交流館コミネス、マンションなどが建設され、他自治体からの視察者も多いです。

 一方で中心市街地の課題となっているのは駐車場不足です。車社会の地方において駐車場が整備されていなければ、顧客が足を運ぶことはありません。商店街に並ぶ空き家・空き店舗を駐車場にする方法も考えられますが、そうなると今度は駐車場しかないまちになってしまいます。

 中心市街地はただ人が住める場所というだけではなく、歴史・伝統・文化が息づく環境での生活を通して、文化的な価値を共有できることが重要だと考えます。そのためにはただ活性化させるだけでなく、中心市街地が持つべき機能を一から考える必要があります。

 観光拠点としては、今年から小峰城の清水門を復元するプロジェクトが本格的にスタートします。その一方で、市は南湖公園の活性化を進めており、昨今は宮城・仙台育英が夏の甲子園で優勝したのをきっかけに白河の関跡も脚光を浴びています。これら観光資源を生かして地域経済活性化につなげていきたいですね。

 昨年、当会議所内に『道の駅検討特別委員会』を立ち上げました。詳細な整備計画などは決まっていませんが、実現するとなれば主力商品となる地場産品や地元農産物が必要になります。整備が決まってから準備し始めたのでは遅いので、6次化商品の開発などをこれから検討していきたいと考えています。

 このほか、地域内のIT企業やシステムエンジニアとの連携を図る組織作りの準備を進め、会員事業所のデジタル化を応援する取り組みも併せて進めていきます」

 ――今後の抱負。

 「コロナ禍がひと段落し、経済は間違いなく好転していますが、先ほどもお話しした通り、中小・小規模事業所はさまざまな課題に直面しています。当会議所でも新しい制度への対応に追われていますが、それでも『できることは何でもやろう』という合言葉を掲げ、役職員一丸となってさまざまな事業に取り組んでいきたいと思います。

 日経平均株価が33年ぶりに3万6000円台の高値となりましたが、かつての好景気とは異なり、中小・小規模事業所の厳しい経営環境は変わりません。しかしながら、愚痴ばかり言っていても始まりません。与えられた環境の中でも生き残りをかけて自己変革を果たし、生産性向上を目指し、従業員の働きがいや生きがいなどを大切にする企業へと変貌していかなければなりません。当会議所としてはそのために必要な支援を全力で進めていきます」

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