【福島県沖地震】【会津北部大雨】被災地のその後

【福島県沖地震】【会津北部大雨】被災地のその後

 2022年3月16日に発生した福島県沖地震、同年8月3日から4日にかけての大雨によって、前者は伊達・相馬両地方、後者は会津北部を中心に大きな被害が出た。どちらも、発生から時間が経ったが、その後の動きを追った。

福島県沖地震

福島県沖地震
いまもブルーシートがかかっている家屋が目に付く

 国のまとめによると、3月の福島県沖地震により、県内では相馬市、南相馬市、国見町で最大震度6強を観測したほか、広い範囲で6弱から5弱の揺れが確認された。県内の被害状況は、人的被害が死者1人、重傷者9人、軽傷者92人。住家被害は全壊が165棟、半壊が4024棟、一部破損が3万0621棟となっている。こうした事態を受け、県内全域に災害救助法、被災者生活支援再建法が適用された。

 このほか、生活・生業再建のための支援策が打ち出され、生活再建(住まいの確保)については、応急修理が半壊以上上限59万5000円、準半壊上限30万円、瓦屋根の改修が上限55万2000円などとされた。受付は各市町村で行っている。

 こうして、支援策が示されているものの、実際の現場では、まだ住まいの修繕は追いついていないのが実情だ。特に顕著なのが屋根瓦。被害が大きかった相馬市、南相馬市鹿島区などを走行すると、屋根にブルーシートがかけられたまま、未修理の住宅があるのが目に付く。

 梅雨前、ある住民は次のように語っていた。

 「地震の数日後に修理業者に被害個所を見てもらいました。そのときはひとまず、屋根瓦が落下したところにブルーシートをかぶせて、土嚢で固定するといった応急処置をしてもらい、『(修理の準備が整ったら)また連絡します』とのことでした。ただ、それから2カ月ほどが経ちますが、まだ本格的な修理の連絡はもらっていません。この地域一帯で住宅被害が出ており、手が回らないのでしょう。幸い、雨漏りはしていないのでいいが、これから梅雨に入り、風が強い日があったらどうなるか分からないので、それまでに何とかしてもらいたいとは思っていますが、どうなるか」

修理待ちに半年以上

修理待ちに半年以上

 結局、この住民は10月に入って、ようやく屋根瓦の修理が終わったという。

 「(屋根瓦修理の)作業自体は1日で終わりましたが、修理業者によると『(そのくらいのペースで作業をしても)まだまだ順番待ちのところがある』と話していました。ウチも半年以上経って、ようやくでしたからね。しかも、家の中(内装で破損したところ)はまだ手付かずの状況です。そっちはいつになるやら」

 一方で、別の住民は「ウチは周囲の住宅と比べても屋根瓦の被害が大きかった。そのためか、早い段階で修理してもらえた」と話した。

 広範囲で住宅被害(屋根瓦の被害)が出ていたことから、被害が大きく生活に支障をきたす恐れがあるところから優先的に修理している実態がうかがえる。

 ちなみに、前者の住民の屋根瓦修理費用は約60万円、後者の住民は壊れた壁などを含めて120万円ほどだったという。

 前述したように、住まいの修繕には補助が受けられるが、そのためには罹災証明書が必要になる。相馬地方の各自治体では、東日本大震災や2021年の地震被害の経験から、有事の際に応援職員を派遣してもらえるような体制を整えており、被害が広範囲に及んだ割には、比較的早く罹災証明書を発行できた。

 ただ、同地方では1万軒ほどの住宅に被害が出ており、修理業者の手が行き届いていない。

 実際、相馬地方の修理業者に話を聞くと、「確かに早く何とかしてほしい、といった要望は多いが限界がある」という。

 「依頼があったら、ひとまず見に行って、応急処置を行い、被害が大きいところから順次修理に当たっています。ただ、南相馬市から新地町まで、広範囲にわたって被害が出ているため、本当に申し訳ないが、雨漏りをしていないところなどは、どうしても後回しになってしまっているのが現状です」

 この修理業者に限らず、休日返上で毎日のように南相馬市から新地町までを修理に駆け回っているが、なかなか追いつかないようだ。「モノ(瓦などの資材)が高騰して入手しにくいということもありますが、人手が足りていないのが最大の要因」(前出の修理業者)とのこと。

 本当に早く修理したいのであれば、地元以外の修理業者に依頼する方法もあるが、「普段の生活に支障をきたすほどの被害があったのなら別ですが、そうではなく多少は待てる状況だったので、ある程度知ったところにお願いしたいと思って、そうしています」(前出の住民)という。

 同様の考えの人が多いのだろう。そのため、地元業者はフル回転しているが、なかなか住宅修繕が追いつかないのが現状のようだ。

会津北部大雨

会津北部大雨
2カ月以上通行できなかかった国道121号

 8月3日から4日にかけて、北日本を中心に大雨に見舞われ、県内では広い範囲で大雨・洪水警報、土砂災害警戒情報が順次発令された。

 福島地方気象台は8月9日、《8月3日から4日にかけて、東北地方に前線が停滞した。福島県は、前線に向かう暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で大気の状態が非常に不安定となったため、3日夕方から雷を伴った非常に激しい雨が降り、会津北部を中心に大雨となった。特に4日明け方は、5時28分に西会津町付近で1時間に約100㍉の猛烈な雨を解析し、福島県記録的短時間大雨情報を発表するなど、局地的に猛烈な雨が降った。期間降水量(3日5時〜4日15時)は桧原(※北塩原村)と鷲倉(福島市)が300㍉を超え、日降水量としては桧原と喜多方が通年での1位を更新するなど、記録的な大雨となった》と発表した。

 3日5時〜4日15時までの総雨量は北塩原村桧原と福島市鷲倉で315㍉、喜多方市で276㍉などとなっており、北塩原村桧原と喜多方市では、通年での観測史上最高を更新する大雨になったという。

 県の発表(8月24日13時時点)によると、人的被害(死者、行方不明者、重傷者、軽傷者)は確認されていないが、住家被害は全壊1棟、半壊3棟、一部破損8棟、床上浸水14棟、床下浸水145棟、非住家111棟が被害を受けた。道路は県管理道路27件、市町村管理道路51件で被害を受け、公共土木施設の被害額は県・市町村を合わせて約60億円。そのほか、農地、農道、農業用施設などで250件以上の被害が確認され、農林水産業の被害額は35億円以上になるという。

 国は、今回の大雨被害を激甚災害に指定し、公共施設や農業用施設の復旧事業について、国の補助率を引き上げ、自治体の負担を軽減する方針を示した。

 福島地方気象台の発表にもあったように、中でも被害が大きかったのは北塩原村や喜多方市などの会津北部で、本誌は9月号「会津北部 大雨被災地を行く 住家、農業、市民生活、経済……多方面に影響」という記事で、被害状況や被災者の声などを紹介した。

 その中で、住家や農地の被害などのほかに象徴的な被害として、喜多方市と山形県米沢市をつなぐ国道121号が通行止めになったことを伝えた。山形県側で斜面が崩落したのが原因で、大雨被害から2カ月半以上が経った10月24日に片側交互通行ながら、ようやく通行できるようになった。

 2カ月以上通行できなかった影響は多方面に及んだ。被害直後、ある喜多方市民はこう話していた。

 「(喜多方市)熱塩加納町などでは、米沢市の高校に通っている人もおり、スクールバスが運行されているが、国道121号が通れなくなったことで、スクールバスは郡山市経由で高速道路を使って米沢市まで行かなければならなくなった。それに伴い、所要時間は2倍くらいかかるようになったそうです」(ある市民)

影響受けた道の駅

影響受けた道の駅

 会津方面から米沢市に行くルートとしては、裏磐梯経由(西吾妻スカイバレー)があるが、急峻な山道でスクールバスが通行するのは難儀。普通の乗用車であっても尻込みするような山道だ。結果、中通り経由で行くことになり、通常の2倍くらいの所要時間がかかっていたわけ。

 このほか、大きな影響を受けていたのが道の駅喜多の郷。同道の駅は国道121号沿いで、喜多方市街地から外れたところにある。利用者の多くは米沢方面から喜多方市に来る人、あるいはその逆になり、喜多方―米沢間が通り抜けできないとなれば交通量は大きく減る。

 道の駅を運営する喜多方市ふるさと振興公社は、当時本誌取材に「国道121号が通行止めとなったことで、交通量は大幅に減り、道の駅の売り上げは7〜8割減となっています。振興公社としてはかなり厳しい状況です」と話した。

 実は、国道121号は6月末の大雨で法面が崩落し、7月4日から7日までの3日間、通行止めとなっていた。その時は3日間だったが、今回は通行できるようになるまで2カ月以上かかり、かなりの痛手だったようだ。

 実際、再開通直前の週末に同道の駅を訪ねたところ、入り込みはまばらだった。同日、近隣の猪苗代、ばんだい、裏磐梯の道の駅は駐車場にクルマを止められないくらい混み合っていたことを考えると、やはり影響は大きかったと言えよう。

 開通当日、道の駅を運営する喜多方市ふるさと振興公社に問い合わせると、「何とか紅葉シーズンに間に合い、これから半月ぐらい(11月中旬ごろまで)はお客さんが見込めると思います。今日(24日の開通日)も早速、山形ナンバーのクルマが何台か見えました」と話した。

 これから積雪シーズンに入ると、また客足は鈍るだろうが、紅葉シーズンでどれだけ巻き返せるか。

 こうした一例を見ても、福島県沖地震、会津北部大雨ともに被害が長期化していることがうかがえよう。

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